１．


　私は一度離婚し、今の夫と再婚しました。
　私は、その夫を裏切りました。
　勿論、私は夫を大切な人と、今でも思っていますが．．．．

　一度目の結婚は大学の同じサークルで知り合った人でした。
　すらっと背が高く、ハンサムで、しかもお金持ちの御曹司。
　友達の誰からも、玉の輿とねたまれつつ、うらやましがられました。

　でもその結婚は、２年余りで終わりました。
　考えてみれば、その時も、夫を裏切ったことになったのかもしれません。

　結婚して、彼の実家にご両親と一緒に住むことになっていました。
　夫とは大学からのつきあいですので、友達感覚が抜けきらない夫婦であったと思います。
　夫が、それまで私が知っている夫と、違う面を見せるようになったのは結婚して３ヶ月ほどたった頃からでした。
　夜の生活の時、夫が私をむしょうに縛りたがっていることに気づいたのです。
　遠慮気味に言い始め、最後には、半ば命令口調で縛らせろとまで言うようになりました。
　学生の頃はそんな気振も見せなかったので、ちょっと違和感を覚えました。
　後でわかったことなんですが、それは彼自身の好みでもあったのでしょうが、むしろ彼の父、義父の強い好みであったようです。
　さらに夫の要求はエスカレートし、縛ったまま外に連れ出そうとしました。
　私はかなり抵抗しました。友達感覚も残っていましたし、夫を頭から「いやらしい、変態」と言って、拒否もしました。
　でもその内に、夫の熱心さに負けて、縛られてｓｅｘするのが日常となり、抵抗しながらも外に連れ出されることもありました。

　夫は、どこで覚えたのか、亀甲縛りという縛り方できつく縛り、私は手の自由も奪われました。
　裸に縄目だけをつけられて、その上から薄手のレインコートを着せられました。
　車で３０分ほど走ると、私たちの住む町が一望できる小高い丘の上の公園に行くことが出来ました。
　たいがいその公園に連れ出されるのですが、その途中、夫は運転しながらずっと私の身体をもてあそぶのです。
　私はその経験で知ったのですが、足、特にふくらはぎと膝の裏側がとっても感じる身体であるようです。
　夫は必要にそこを愛撫しながら運転をするのです。勿論、愛撫されやすいように足を夫に預けるさせられるのですが．．．．。
　公園に着くまでの３０分で私の身体はかなり興奮しています。
　それは、きつく股間に締め付けられた縄をも濡らすので、夫も十分知っているところです。

　その公園は若いカップルがよく行くところとして有名なところであり、夜の１０時でも車が２，３台は必ず止まっていました。
　それだけに最初の頃は、夫の要求も、車の外に出て歩き、人目のないところで、レインコートの裾をまくる程度のものでした。
　しかし、回を重ねるごとに、その要求はエスカレートしていきました。
　レインコートの前を開けて歩かせたり、レインコートそのものを取り上げられることもありました。
　私は抵抗しました。
　しかし、レインコートを取り上げられ、裸に亀甲縛りのままで、展望台から駐車場の車まで一人で歩かされたとき、私は激しく興奮し、車につくなり、夫のズボンにしがみつき、夢中で夫のものを口にして吸い上げていました。
　車の中でのｓｅｘは初めてではありませんでしたが、その夜ほど激しく感じたことはありませんでした。
　後から思えば、誰かにいくらでも覗かれる不安があったんですが、その時はそんなことは少しも気になりませんでした。
　私の中の何かが壊れたのか、はじけたのか、それ以来、夫の要求をむしろ喜んで受け入れようとしている私がありました。

　私は誰かに見られるのではにかという不安、そんな不安を感じる状況に激しく興奮する質なのだとわかったのは、そのすぐ後のことです。
　部屋の中でどんなに夫にきつく縛られ、何時間も身体をももてあそばれ、激しく突き上げられても、あの車の中での快楽と比べれば、ものの数には入りません。
　外に連れ出され、公園のベンチの陰で夫に突き上げられたときは、頭の先からつま先までに快感が走り、あわてて夫が私の口を手でふさごうとするぐらい、声をあげていたようです。

　男という生き物はどういう生き物なのか。
　女の快楽の為に大変な努力をする生き物、そういえるかも知れません。
　そういう男を夫にできたことは、女にとって最上の幸せかも知れません。
　夫は努力しました。
　昼間のデパートの屋上、地下鉄の駅の端の陰、神社の社の裏．．．．思いつくところすべてに私を連れ出し、私に快楽をつき入れました。
　放課後の中学校、部活帰りの男子生徒の前で裸にされたこともあり、先生が警察に通報し、あわやということもありました。
　しかし、夫の努力にもかかわらず、新しい刺激もいずれ慣れていく運命でした。
　もはや夫が考え、思いつくことはたいがいにやってしまい、新しい思いつきも結局は以前にやったことの２番煎じということを知るようになりました。
　私は今のことを繰り返しやっているだけで、たしかに、あのめくるめくような快楽は訪れないにしても、夫の努力を感じるだけで十分という思いもありました。
　女はどん欲のように思われがちですが、心から身も心も任せられる愛する夫の抱擁があれば、十分に満足できる部分もあり、劇薬のような快楽を味わったからといって、それがなければ我慢ならないということはないように思うのです。
　しかし夫は、そうは思わないようでした。
　この上なく激しく感じ、我を忘れるような快楽にうちふるえる女を、そういう妻を見たいという欲望があるようでした。

　そんなある日、夫は新しいアイデアを打ち明けました。
　それは、以前から計画の中にあったようですが、夫として言い出せないものであったようでした。
　夫と私の２人だけの世界ではもう限界であること、２人だけの世界に第３者を入れることを言い出したのです。
　私は即座に拒否しました。
　頭の中では、そんな馬鹿なこと出来るものですか、と明快に考えられました。
　しかし、身体の奥では、何かうずくものを感じたのも事実でした。
　結局、私の強い拒否でその話は流れました。
　　
　それから１週間ほどたった頃でしょうか、義母が階段で足を踏み外してねんざし、義父の用事に義母の代わりに同伴することになりました。
　それは義父の古い友人を訪ねるものでした。
　その義父の友人が私の故郷の隣町で味噌造店をしているということもあり、里帰りもかねて同伴していくことになったのです。
　義父は水道工事会社の社長で、といっても経営は専務がほとんど取り仕切っているので、名ばかりとも言えましたが、オーナー社長であり、厳然とした力を持っていました。
　この２０年間、下水道の完備と水洗トイレの設置が進められる中で、義父の会社は大成長し、現在では従業員１００人を超える企業となっていました。
　もともと若い頃は、ご自分でもツルハシをっもって工事しておられたということもあり、６０歳をすぎた今も、その体力は４０歳代の人にも負けないと、日頃から豪語されるようなタイプの人でした。
　このように言いますと、粗野な荒々しい人のように思われるかも知れませんが、その一方では読書家でもあり、フランス文学には蔵志が深く、有名な古典は勿論、私の知らない現代の作家のものまで読まれておりました。
　さらに趣味の写真はプロ級の腕前で、自宅に大きな暗室までつくり、業務用の現像機械や引伸機もそろえておられると聞きました。
　私も結婚当初に撮っていただいたのですが、私自身が私とは思えないというような雰囲気のポートレイトをいただき、部屋に飾らしていただきました。

　久しぶりに実家に帰るということもあり、私自身少し興奮気味であったかも知れません。行きの列車の中では、これまで以上に義父との話が弾みました。
　言うのも恥ずかしいのですが、私も大学では一応フランス文学を専攻しました。１８世紀から１９世紀のフランス文学をボードレールを中心に学びました。
　義父は私の話をよく理解し、特にボードレールの耽美的な、その意味では虚無的な在り方についてご自分の考えをも述べてくれ、精神は肉体を裏切っている、今こそ肉体の解放が大切だ、いやむしろ精神を裏切る肉体にこそ、私たちの本当の存在があるのではないか、という議論には久方の文学論議に我を忘れた私は、何の違和感もなく受け入れることが出来ました。
　勿論その時、夫との性生活が私の頭をかすめました。
　夫との性生活については、満足しているのはまちがいないことですが、どこかで私自身が私の肉体に引きずられているという思いがあり、倫理的な引け目を感じていたのも事実でした。
　そんなことを考えているその時、義父の手が私のふとももに触れたのです。それは明らかに意志をともなった義父の手でした。
　私は激しく動揺しました。どうすべきか、そんなことは解り切っています。義父の手を振り払うべきなのです。
　頭の中では、明快に私は私に「振り払え」と命じました。
　私は義父の手が内股に入りやすいように脚を広げ、さらにお尻を少し前に出して、私自身を愛撫しやすいような姿勢をとっていました。
　何をしているのか、私の頭の中は大混乱しています。
　その後の記憶は、しばらく思い出せませんでした。

　我にかえった私は、驚きと恥ずかしさで、義父の顔を見ることが出来ませんでした。　 ストッキングとショーツは脱がされ、義父の手が私のクリトリスをまさぐっており、私はハンカチで口を押さえ、義父の手が奏でるリズムに身を任せていました。
　グリーン車で乗客は少ないとはいえ、いつ人が通るかも知れない車内で、私は大きく脚を広げさせられ、クリトリスからヴァギナへ、ヴァギナからクリトリスへ必要に動く義父の手は、まるで魔法の手でもあるかのようで、その手が動くたびに、私は深く大きな快楽に、まるで奈落の底へ落ちるかのように落ちていったのです。
　頭の毛の先からつま先まで全身で感じる快楽、あの激しい快楽が私を襲い、私は再び意識を失いました。

　４日後、私は里帰りを終え、駅で義父と待ち合わせました。
　義父は隣町の友人宅で過ごし、その友人と駅に現れました。
　私は少し気まずい思いがあったのですが、義父はいつものように明るく、実家では楽しめたか、など聞いてくれ、義母と夫へのおみやげとともに、私へのおみやげも用意してくれていました。
　義父の友人（岡倉と名乗られました）に紹介され、岡倉さんも所用があって、同じ列車に乗られるということでしたので、私自身も岡倉さんの手前、義父とはいつも通りに振る舞うよう心がけました。

　列車では義父と岡倉さんが並んで座り、その後ろの席に私が座ることになりました。
　私は義父と岡倉さんと顔を合わせなくていいので、いくらか気が軽くなったように思いました。
　しばらくすると、義父が私の横に来て、岡倉さんから借りた本を見せてくれました。
　それはボードレールの『悪の華』の原書、それも初版本でした。
　もう一度勉強してみてはどうだ、というように義父は言ったと思います。
　私は、学生時代にからのテーマであり、やれるならやってみたいと思い、はいやってみますと答え、その本を手にとって頁をめくり、その装丁などを確かめていました。
　その時、私の身体に電流が走ったように思いました。
　義父のあの手が、スカートの上から私のクリトリスをまさぐったのです。
　私は危うく本を落としかけ、義父の手を払いのけようとしたと思います。
　しかし現実は、足を開いていたのです。
　義父は、私の耳元で、トイレでストキングとショーツを脱いでおいでと言いました。
　私は、義父の手でスイッチが入れられたからくり人形のように、その声の通りに動いていました。
　
　ストッキングとショーツををバッグに入れて席に戻ってみると、窓側の私の席に義父が座っていました。
　私は通路側に座らされるのか、という不安を一瞬持ったのですが、仕方なくそこに座ろうとすると、義父は、君の席は一つ前の席だよ、と言いました。
　私はその一瞬に血の気を失いました。その場に倒れてしまいそうでした。
　義父は、優しい笑顔で、君の席は一つ前の席だよ、ともう一度言いました。
　私は、岡倉さんと並んで座ることになりました。
　座るとすぐに、岡倉さんの手が私の太ももの上に置かれ、私の耳元で、この手はどこへ行くのですか、と小さな声で尋ねられました。
　私は、頭の中では、やめてください、許してください、と叫んでいました。
　しかし、一体誰がそんなことをしているのでしょうか。
　私の手は、スカートをめくりあげ、私の右足は、岡倉さんの膝の上に載せられ、大きく開かれていたのです。
　私のヴァギナは岡倉さんの目の前で、別の生き物であるかのように、よだれのような汁を垂らしていました。
　岡倉さんの手が私のヴァギナに触れたとたん、私は失神してしまいました。

　気がつくと、隣には義父が座っており、岡倉さんの姿は見えませんでした。
　私の服装には何の乱れもなく、何か悪い夢を見ていたかのように思えるほどでした。
　しかし、体の芯にうずきがあり、意識がしっかりしてくると、ヴァギナに激しいかゆみのような感覚を感じ、早く自分でいじくりまわしたいという欲望がはっきりと自覚できました。
　スカートの上からそこを抑えようとすると、義父は、だめだよ、我慢も大切だからね、と言い、私の右手を自分の股間にもっていきました。
　私は、自分の身体の感覚を我慢できず、その感覚を紛らわしたい一心で、義父の男をズボンの上からもみしごきました。
　義父は、もっと優しく、上手に出来ないとだめだね、と言い、私の手を私の膝の上に戻しました。
　私はもう気が狂いそうでした。こんなに激しく欲情している自分。とても私とは思えませんでした。
　私は我慢できません、お義父さん、お願いです．．．．と義父に言いました。
　義父は、いい子だから、もう少し我慢をおし、とやさしく微笑みながら言うのでした。　結局、義父はその後も触れてくれませんでした。

　家に帰り着くと、私は気分が悪いからと、義母への挨拶もそこそこに、寝室に戻り横になりました。
　ともかく早く自分の身体を何とかしたかったのです。
　上着も下着もその場に脱ぎ捨て、夫が早く戻ってくれないかとベッドの中で、自分で自分を慰めようとしたのです。
　しかし、自分でどんなに自分の身体をいじくりまわしても、アクメに達することが出来ないのです。
　自分の指がクリトリスやヴァギナに触れれば触れるほど、さらに欲望が高まるばかりで、自分でどうすることも出来ない、絶望的な欲情が私を圧し続けました。
　
　そこに義父が立っていました。
　私は、なりふり構わず、お義父さん、きて、きて、めやくちゃにして、と叫んでいました。
　しかし、そこに立っていたのは、義父ではなく夫でした。
　夫は、お前、オヤジと寝たのか、と叫ぶなり、私をたたき、ベッドからけ落としました。
　私はたたかれ、け落とされながらも夫に抱きつき、夫のものを求め、ズボンをおろすとむしゃぶりつくように口の奥深くに迎え入れました。
　夫は苦しいほどに勃起していました。
　その夜は、夫に何度も何度もいかされ続けました。
　私は何度も何度もアクメに達しながら、なお、夫も求め続けたのです。
　
　明け方近くになって、野獣のような私と夫は、人間に戻れたようです。
　あれだけ激しい怒りを見せた夫は、今は泣いているようでした。
　私は、最初は何故夫が泣いているのか、理解できませんでした。
　私は夫に対して許されないことをしたのだ、泣いてわびなければならないのは私だと思っていました。
　しかし、夫の話を聞いて、私は夫をもっと深く愛したいと思うとともに、もうこの家には、私はいてはいけないのだ、という思いを強く持ちました。
　
　今度の義父との一件は、実は夫も了解済み、いえ、夫が義父に依頼したことであったのです。
　夫は、私により深い快楽を味あわせたかったのです。
　義父は、性生活について、夫の師匠でもあったのです。夫は実の父に教えを受け、私に快楽を教えようとしました。
　しかし、夫はついに限界を感じたのでしょう。
　私と夫との性生活に、第３者を入れたいという夫の要求は、夫が望んだことではあったのですが、夫の本当の望みであったかどうか疑問です。
　というのも、もおわかりだと思いますが、夫は実の父に依頼しながら、その実の父に対して嫉妬し、その嫉妬に苦しんだのです。
　その夫の苦悩を知れば知るほど、夫が私をどんなに愛してくれていたかがわかります。その結果、夫は、自分の能力以上の愛を私に注ごうとしましたのです。
　息子と実の父の間に、私という存在がある限り、夫の苦悩が消えることはありません。
　
　２年余りの私の結婚生活は、破局しました。
　それから３年後、兄の薦めもあって、今の夫と再婚したのです。