新米教師の悪夢 『新・ＳＭ小説書庫２』二次元世界の調教師 作
４．柴乃の告白で禁断の恋仲に 　あんな事があっただけに心配だったのだが、小池さんは次の日ちゃんと登校してくれた。国語の授業でも、いつもながらの優等生ぶりを発揮して、僕は一安心だった。 　そして迎えた放課後。一寸用事があって遅れ気味に部室に顔を出すと、小池さん一人だった。１年生２人はバイトがあるからと断って帰ってしまったらしい。部の存続を考えると由々しき事態だったけど、僕にとっては小池さんと２人切りになれたのは僥倖であった。 　昨日の事はなかなか話し辛く、しばらく沈黙が続いたが、その沈黙を破ってくれたのは小池さんの方だった。全く僕は情けない男である。 「先生、私の事守って下さってありがとうございます」 「いや、僕は何もしてないから」 「だって、真っ先に来てくれたじゃないですか。私、すごく嬉しかったです」 「ともかく、小池さんが無事で良かったよ」 　こんな話をしていても埒が開かない。話題を変えてくれたのは又しても小池さんの方だった。 「ところでせんせえ」 　急に舌足らずな甘えん坊口調になった小池さんに、僕はドキッとしてしまう。更に彼女はまるで悪戯っ子みたいな表情を作ると、言ったのだ。 「２人だけの時は、受験勉強教えてくれませんか。先生は私専用です、なーんちゃって、エヘ」 「……承知致しました」 　思わず「お嬢様」と続けそうになったが自制する。綺麗な紫乃お嬢様に仕える専属の家庭教師と言う妄想が浮かんだのは、もちろん秘密である。悪代官板東に狙われたお嬢様を、僕がお守り差し上げるのだーそんな妄想が浮かぶくらい、彼女はお淑やかで聡明な美少女なのだった。僕はもうどうしようもなく興奮して、股間がカチカチになって来るのを、どうにも抑え切れなくなって来た。 「でも心配しないで下さい。私、百人一首の研究をしようと思うんです。これなら部活ですから、先生を独り占めしても構いませんよね」 　良く話を聞いてみると、彼女は僕の母校のAO入試にチャレンジするらしく、僕の出身でもある国文科では古典研究のプレゼンが課されるらしいのだ。「先生を独り占め」なんて過激なセリフに舞い上がりそうになっていた僕は、股間の昂ぶりを鎮めるつもりで席を立つ。部活動でそんな指導をしても良いものか、分校長にお伺いを立てるためだ。結果は大成功。是非小池さんが合格出来るよう、付きっきりで指導してあげなさいと、個人指導のお墨付きまでもらってしまった。 　僕は小池さんに嬉しい報告を届ける前に、トイレに寄って個室にこもる。一発抜いて少しでも平常心を保つつもりだった。ヤリたい盛りの高校生じゃあるまいし、と苦笑しながらもシコシコとせんずって手早く用をすませる。まさか本当に抜いておく必要がある日が来るなんて思いもしていなかった。 　こうして部室での、小池さんへの個人受験指導が始まった。ただし、下校時刻が過ぎてから、と言うのが決まりで、あまり熱心でないとは言え、他に２人部員がいるからである。他の生徒が帰り、２人切りになってから始まる個人指導。目を輝かせて、僕の話に熱心に耳を傾ける小池さんに、僕はどんどん惹かれてしまうのを、どうしようもなかった。 ーー仮にも生徒だぞ。変な気を起こしたら、絶対駄目だ。それに小池さんだって･･･ 　それは個人指導が始まって間もない頃だった。小池さんがこんな言葉を口にする。 「先生。聞いてもらいたい歌があるんですけど･･･こいすてふ〜　わがなはまだき〜　たちにけり〜　ひとしれずこそ〜　おもいそめしか〜」 　詠み手としては自信のある僕を真似たような、思い入れタップリの詠みっぷりだった。 「まだ、ありまーす。しのぶれど〜　いろにいでにけり〜　わがこいは〜　ものやおもうと〜　ひとのとうまで〜」 「え、それって・・・」 「はい！　私、先生にコクっちゃいまーす・・・ダメ、ですか？」 　あえて明るく屈託のない告白をして来た小池さん。僕は全くマヌケな返答をしてしまう。 「うまい返歌を思いつかないんだけど・・・僕で良ければ、よろしくお願いします」 「せんせえ・・・嬉しいです・・・」 　シクシク泣き出してしまった小池さんを、守ってあげるんだと、僕が強く心に誓ったのは言うまでもない。まるで襲われた日の回想みたいに、僕にしがみついて泣きじゃくっている小池さんの背中を、ヨシヨシと撫でてやりながら、ヘタレな僕も一線を踏み越える決意を固めた。 　こうして新米教師の僕と教え子との許されない禁断の恋は始まってしまったのだった。
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新・ＳＭ小説書庫２
2020年11月4日掲載
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