新米教師の悪夢


新米教師の悪夢『新・ＳＭ小説書庫２』二次元世界の調教師作
６．盗撮と脅迫　小池さんとファーストキスばかりか、初めてのセックスまでやってしまった僕は、翌日の土曜日は朝から家でゴロゴロしていた。特に何の用もなく、週末の連休は完全に休む予定だったのだ。新任で働き始めて３カ月。正直疲れがたまって来た頃でもある。「少しは遊んで来たっていいんだよ。お金がないんなら、あまり家に入れてくれなくても」「今日明日は家にいるよ」「早くいい人が出来ればいいんだけどね」　　母は農協のスーパーで働いており土日は出勤なのだ。ずっと家にこもってる非社交的な僕の事を心配して、少しは遊びに行って来るよう、勧めて来る。彼女がいない事を心配するのもいつも通りだ。　ーー小池さんの事はまだ何も言えないな。やっぱり彼女が大学に合格してからか。　こうして一日中家にこもって土曜は過ぎていく。疲れていたのは本当で、昼過ぎまで眠ってしまった。出来れば小池さんと話がしたかったけど、それは我慢する約束だ。でも彼女の事を考えただけで心が浮き立ち、会えない時間は次に会える喜びを増幅させるスパイスと思えば、いくらでも我慢が出来た。　昼にカップラーメンを食べて、缶ビールを１本飲んだ。昼間からアルコールは自堕落かなと思ったが、１日中家にこもってる自分へのご褒美のつもりだ。僕は女手一つで育ててくれた母への恩返しとして、給料はほとんどこの実家に入れている。今はまだ言えないけれど、小池さんが大学に入ってから、晴れて彼女として母に紹介したら、どんなに喜んでくれる事だろう。　食後、ついつい股間に手をやり、シコシコと自慰行為に耽る。持って帰ったエロ本は最早用なしで、小池さんの手入れの行き届いたロングヘアや、柔らかい胸の膨らみ、そしてまだ固く出血してしまった女性器を思い浮かべながら励むと、驚く程沢山射精し満足感を覚える事が出来る。僕は本当に幸せだった。　だが、翌日曜日こんな束の間の幸せは暗転する。朝食をすませた頃電話が掛かり、母が出たのだが、又ばんどうって人から電話だと言うのだ。赴任した当初に掛かって来た、僕の同級生だと言う坂東兄に違いない。不穏な胸騒ぎを覚えながら電話に出ると、やはりあの柄の悪い無遠慮な坂東だった。弟を引き取りに学校に現れ、礼儀正しくなって皆を驚かせたのは、やはり仮の姿だったのだ。坂東はいきなり本性を表し凄んで見せる。「よう、俺だ。弟が世話になったな。だけどよ、テメエ、自分だってヤッテんじゃねえか！　一体どう落とし前付けてくれるんだよお」「ちょ、ちょっと待ってください。もう少し後で」　大声でまくし立てる板東兄。僕はその内容よりもまず、出勤の支度をしている母に聞かれる事を恐れてパニックに陥った。案の定、母が不審そうに口を挟んで来る。「どうかしたのかい？」「な、何でもないよ･･･３０分後に掛け直しますんで」　それが通用しない相手かも知れなかったが、ともかく時間稼ぎでそう言うと、ガチャ切りしてしまった。が、意外にも板東兄はすぐに掛け直して来る事はなかったのである。幸い板東兄の怒声が聞こえた訳ではなかったらしく、母が出かけて行った後で、僕は今の言葉の真意を探ってみる。　ーー小池さんとセックスしてしまった事がバレたのか？　あの部屋は誰も入れないよう鍵を掛けてたのに･･･個人指導してるのは公然だから、カマを掛けてるんじゃないか？　それは僕の願望に過ぎなかったんだろう。これは板東兄のハッタリだぞと自分に言い聞かせた僕は、３０分後自分のスマホで板東兄に連絡を取る。すると意外にも冷静で落ち着いた話しぶりの板東兄の言葉は、しかし極めて衝撃的だった。「よし、これはお前のケイタイだな。俺の言った事が信じられないってんなら、証拠の画像を送ってやるから、よく見てみるんだな」　送られて来た画像を見た僕は、余りの衝撃で一気に打ちのめされていた。見まがいようもない畳敷きの部室で全裸で絡み合う男女が僕と小池さんであるのは一目瞭然。あまりピントは合っていないが、顔の判別は十分に可能だった。　ーー盗撮されてたんだ…… 　あまりにもショッキングで、頭がうまく回らない。血の気がサーッと引き、顔面蒼白となって行くのがよくわかる。僕はその場にしゃがみ込んでいたが、ブルブル震える手に持ったスマホに送られて来た、決定的な画像から血走ってるであろう目を逸らす事は出来ずにいた。よく見れば、全裸で絡み合うどころか、性器が挿入されてる部分まで確認出来るではないか。　僕がそこまで確認するのを待っていたかのように、板東兄が話し掛けて来る。「弟がバカやった事で親父がよう、極秘であの部屋に監視カメラを付けさせたんだ。で、時々チェックするのが俺の役割でな」「理事長は……もう知ってるんですか」「安心しな。まだ親父には報告を上げてねえよ」　それはとんだペテンで、人の弱みに付け込む詐欺師の手管だったのだが、天国から地獄に落とされたような気分の僕に、冷静な判断など望むべくもなかったのだ。「動画は弟と鑑賞させてもらった。傑作だぜ。テメエ、性教育の指導でもやってたのか？　てんで、なっちゃなかったけどよ、ははは」　あの不器用な初体験の様子を板東兄弟に見られたのかと思うと、屈辱で胸が潰れそうだったが、さらにのっぴきならない事態に追い込まれることになる。「あの柴乃って女、テメエにはもったいない、いい女だな。さすが弟が惚れ込んだだけの事はあるぜ。テメエが煮え切らないから、あの子に画像を送ってやったら、すぐ行きますってよ」「どこへ、ですか」「俺の店だ。商店街の裏通りで、『メイドインヘブン』て看板出してるから、探せばすぐわかる」「あ、あのう、僕も行きますんで」「当たり前だ！　当事者がいなきゃ、示談出来ねえだろ」「示談、ですか」「親父に知られる前に、もみ消してやろうってんだ。もちろん、タダってわけには行かねえよ」　僕はここまで聞いて考え込む。この事が坂東理事長に知られたら、恐らく解雇処分は免れないだろう。教員免許しか取り柄のない僕にとっては、お先真っ暗だ。すると僕が黙り込んだのに焦れたような板東が、助け船を出して来る。「オイ、心配すんな。貧乏人に払えねえような金を要求する気なんかねえよ。悪いようにはしねえから、とにかく顔出せよ。彼女も来るんだぜ」「･･･わかりました。すぐ行きます」　昔から優柔不断が僕の悪いところだ。だからもっと良く考える時間が欲しかったし、恥を承知で、気心の知れた友人や母に相談すれば良かったのだ。しかし、板東兄の甘言はともかく、小池さんが先に事態を収拾しに動いてる事が、僕に決断を促した。僕には小池さんを守ってあげる義務があるんだから。　ーー何があっても、小池さんを危険に晒すわけにはいかないんだ。僕が行くしかない。　こうして僕は愚かにも、板東兄の思い描いた策略にはまり、この世の地獄を味わわされる羽目となるのだった。
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新・ＳＭ小説書庫２
2020年11月14日掲載
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