新米教師の悪夢


新米教師の悪夢『新・ＳＭ小説書庫２』二次元世界の調教師作
７．メイド喫茶の裏バイト　もう既に事態収集のため、板東兄がやってるメイド喫茶へ向かったと言う小池さんを守る決意をした僕は、休日なのにスーツを着て支度した。正直上着まで着るのは暑くて億劫だったが、示談交渉すると言う板東兄に、普段着では示しが付かないと思ったのだ。そうして歩いて１５分くらいの商店街へと向かう。教えてもらった通り裏通りに回ると、端の方にケバケバしい原色文字で「メイドインヘブン」の看板が出てる店はすぐにわかった。電飾の飾りが付いており、夜になるとピカピカのネオンサインに変わるのだろう。　ーー島田にもこんな店があったのか。まるで風俗じゃないか…… 　僕は小池さんに言った通り、メイド喫茶と言うものに行った事はない。もちろん性風俗店も未経験なんだけど、飲み屋街の外れにそうした店が存在してる事は知っている。そして僕が知ってる限り。メイド喫茶と言うのは性風俗店ではない筈だが。　ーーそう言えば、かるた部の１年生がいかがわしい店でバイトしてるって噂があるんだったな。まさかとは思うけど…… 　「メイドインヘブン」の隣は「直輸入！」と言う看板の掛かった店で、途中でのぞくと高級そうな内装だったが、どうやらこの春から板東兄が店長として経営を任されてる雑貨屋らしい。メイド喫茶も彼が店長だとすれば、全く大したものである。とても僕の同級生とは思えない。「貧乏人に払えないような高額のお金を要求する気はない」と言った彼の言葉が現実味を帯びて感じられ、この示談交渉を甘く見る気持ちが生じたのは、全くの不覚だった。板東兄はそもそもお金で解決しょうなんて思っちゃいなかったんである。　僕が緊張しながら「メイドインヘブン」の店内に入ると、すぐにメイド服の若い女性がやって来た。「いらっしゃいませ！　先生でいらっしゃいますね。この奥のVIPルームにお越し下さい」　見ると薄暗い店内の奥の方に「VIPルーム」とピカピカの電飾文字が見えている。板東兄らしい悪趣味だ。僕は奥へと向かいながら、店内の様子をうかがった。普通の喫茶店と違い、照明を落として席が個室のようになっており、この時間ではまだほとんど客の気配はない。僕は学生時代よく利用したネットカフェみたいな印象を受けた。キョロキョロしながらゆっくり歩いていると、さっきの女性に声を掛けられた。「分校の先生なんですよね。私、卒業生なんです」　振り向いて改めて見ると、かなり際どいデザインでついまじまじと観察してしまう。緩めの胸元からは大きな乳房がこぼれんばかりで、短いフリフリのスカートから下着が見えてしまいそうだ。「高校の頃からバイトしてました。内緒ですよ」　せっかく話し掛けてくれた彼女から少しは情報を収集すれば良かったのに、無遠慮で好色な視線を送っただけの僕は、無言でVIPルームに入って行く。すると中は意外にもまるで別店舗みたいに雑多な品物が所狭しと陳列されており、すぐ入り口のレジカウンターみたいな所に板東兄が座っていた。「よう遅かったじゃねえか」「すみません」「上着は脱いで、ここに置いてってくれ」　板東兄は何とアロハシャツにジーパンと言う軽装で、僕は仕方なく上着を彼に預けそばに吊されたハンガーに掛けてもらった。その間中の様子を観察した僕は、陳列されているのがいかがわしい本だの、ビデオだのであると気付き、ギョッとした。「ここはアダルトコーナーなんだ。VIPルームに知らない客が勝手に入りゃしないだろ。スケベそうな客だけ、個別に案内してやる事になっている」「小池さんは？」「まあ、慌てるな。すぐに会わせてやるからよ。それよりここの案内してやるから、付いて來な」　半ば強引に連れられて、陳列されている商品を見せられて行く。まずエロ本やアダルトビデオが所狭しと山盛り状態になっており、僕は大学の近所の中古書店に、こういう１８禁コーナーがあったのを思い出していた。中古品が格安で売られてたので、僕のような貧乏学生はよくお世話になったものだった。「これは中古じゃねえぜ。だけど業者から安く仕入れて、格安でセールしてっから、掘り出し物があるかも知らねえぜ。慌てるこたあねえから、見てけよ」　まるで僕の気持ちを見透かしたような板東兄の言葉を、僕はもちろん断った。学生時代なら、宝の山を見つけた気分になってたかも知れないけれど、今の状況じゃ無理である。だが板東兄はゆっくりと見学ツアーを続ける。「ここからは、アダルトグッズのコーナーな。大人の玩具とか媚薬とか、後SMプレイ道具が充実してるのが自慢だ。島田はあんま娯楽がねえから、好きな奴が結構いるんだぜ」　僕は決してそういう趣味はないんだけど、いつの間にか興味深く見てしまっていた。首輪だの、手錠だの、大きな注射器だの。そして奥に行くほど、外国製の品物が増えて來た。「外国からの直輸入品も置いてるぜ。メチャクチャ効き目のある媚薬とか、絶対外せねえ貞操帯とか、ヤバイのがあるからな。ちと、値は張るけどお得意さんは喜んで買ってく」　彼が店長を任されてる輸入雑貨の店を思い出して、その商才には舌をまかざるを得ない。売れ筋商品を直輸入するなんて、僕には絶対無理だ。そしてさらに奥へ進むと、とんでもない物が売られていた。板東兄が低い声で言う。「ここは、いわゆるブルセラコーナーだ。ホントは学校の先生に見られちゃまずいんだが………まそあ、テメエがチクりゃしねえよな。校内で教え子を犯っちまうエロ教師だもんな」　女子中高生の制服が壁に掛けられ、パンツやブラジャーが沢山パックされた商品となって並び、個人撮影と思われる猥褻写真やビデオも山のように広げられていたのだ。分校の女子の制服もあり、写真も目をマジックで消していたが、分校の生徒と疑われるのが沢山あるではないか。僕がギョッとして立ち竦んでいると、板東兄は静かな口調だがハッキリ脅迫して来たのである。「オイ、絶対バラすんじゃねえぞ。変なマネしやがったら、テメエの首が飛ぶんだからな」　あの盗撮映像をネタに、板東兄は「示談」でなく、もっとヤバい要求を考えていたのだ。だが、それに気付いた時にはもう手遅れだった。彼は持っていた玩具みたいな銃を、僕の足下に撃ってみせる。バチバチと派手な火花が散り、恐怖で口も利けなくなって来た。「アメリカ製のスタンガンはハンパねえからな。いい事教えてやるから、大人しく黙って聞きな」　僕は情けないがスタンガンの一撃ですっかり怯えてしまい、言われなくても板東兄に従ってしまう。「実は分校の女子をバイトで雇っている。パンツを売らせたり、エロ写真を撮影して商品にしてるんだ。かるた部はお得意さんでな……両手を背中に回せ」　かるた部と聞かされた衝撃で混乱した僕がためらっていると、再びバチバチッとスタンガンの火花が散り、回してしまった両手首を掴まれて手錠が嵌められた。その上、あろう事か首輪まで嵌められ、革製の拘束具がキリキリと肉に食い込む感触は、僕を打ちのめし気持ちを萎えさせるに十分だった。そして板東兄に鎖のリードをグッと引かれると、悪い夢でも見てるんじゃないかと言う気分に陥ったが、喉に食い込む首輪を引っ張る鎖の冷たさはこれが現実なのだと言う証拠であった。「写真付きの使用済み下着セットてのがあるだろ。テメエのかわいい部員が出てっから、よく見てみな」　首輪で引っ張って行かれた場所に、沢山おいてある中にそれは２つ仲良く並べられていた。地元民なら誰でもわかる夏服セーラーの制服を着た女子が、自分でスカートの両側をペロンとめくり、白パンツをモロに見せているエロ写真に、学年・出席番号まで書かれた下着セットで、目をマジックで塗り潰していても、すぐにわかる。ぽっちゃりした子が三浦さんで、小柄で子供っぽい子が田中さんではないか。偽名であったが、知り合いにバレたらどうするつもりなんだろう。「裏バイトって奴で、金ははずんでるぜ。人気商品だから、よく売れるんだ。特にこっちの子は、パンツを渡したら、ちゃんと染みを作って来る、いい子だ。男心がわかってるな」　三浦さんもそんな事でホメられたって、浮かばれまい。でも、僕は小池さんの事だけが心配だった。「あ。あのう、まさか小池は」「ああ、テメエには知らさない、って条件で、裏バイトに同意したぜ。まあ、来ちまったもんは仕方ねえ。会わせてやるぜ」　こうして僕は板東兄に首輪を引かれ、商品陳列棚のさらに向こうにある、撮影室と書かれたドアの前に立つ。板東兄が強くノックして「入るぞ」と言うと、ドアの向こうから聞き覚えのある声が返って来た。「はい、ご主人さま」　こうして僕は、本当にこの世の地獄に足を踏み入れてしまったのだった。
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新・ＳＭ小説書庫２
2020年11月16日掲載
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