ユリは、家に帰された。
　今日の出来事はかなりショッキングなものであった。
　そして数日間は、気力がなく途方に暮れていた。

　そんな中、警察の作戦会議でエステの潜入が決まった。
　ユリの潜入捜査が思いのほか、功を奏さなかったからであった。
　ユリは戸惑った。証拠は十分すぎるほどある。しかしその証拠を出せば皆にわかってしまう、奴隷となった自分を。
　更に悪いことに支配人から連絡が来た。
「な、なんですって」ユリは驚いた。
　その日は潜入の日だった。

　ユリはどうしても体調が良くないといって仕事を休んだ。
　それはパーティーに行くためだった。
　いつものように迎えの車に乗るユリであった。
「どうしましたユリ様、顔色が悪いですが。」支配人が聞いた。
「いいえ、だいじょうぶ。」潜入捜査があるとは言えなかった。
　今回のパーティーは仮面舞踏会のようなものだ。
　皆が仮面をつけ、楽しむ。そして次第にスワッピングパーティーとなっていくのだった。
　ユリはもちろん嫌であったが弱味を握られているのではむかえない。
　すると向こうから客がやってきた。どうやらユリが目当てらしい。
　支配人はユリを紹介した。どうやら初めて参加したらしい。
　ユリは飲物を作りながら話をしていると、どうも聞いたことがある声だった。
「あっ」ユリは二人の仕草を見て確信した、その客が上司と恋人の良だということを。
　ユリは焦って飲物をこぼしてしまった。
「大丈夫ですか？」良が気遣う。
「どこかで聞いた覚えがあるんだけど思い出せないな。」上司が言った。
「他人のそら似じゃないですか。」ユリははぐらかす。
「世の中には似ている人がいるもんだ、ははは。」
　上司の言葉にユリも合わせた。
　すると会場は暗くなった。
「おっ何だ。」上司は不思議に思った。
　ただでさえ暗かったのに、これでは相手の顔さえもよくわからない。
　ユリが話をはぐらかしていると隣のテーブルから妖しい声がしてきた。
「はぁぁぁ、いやぁぁぁ。」
　暗がりの中ではあったが二人の驚いた表情が目に浮かんだ。
「君、いつもこのパーティーはこんな感じなのかい？」上司が尋ねる。
「すみません、私は今日が初めてなのでわかりません。」ユリは答えた。
「なるほど、これがエステの実体か。」
「どうします、さっ引きますか？」
「まあ待て。」
　やがて会場には女達の喘ぎ声で充満した。
「おい、支配人。」上司が支配人を呼び何やら話をしている。
　すると話を終えた上司が戻ってきた。
　妖しい雰囲気の中、三人で飲んでいると上司がユリの隣に座った。そして肩に手をやった。
　生理的に好きになれなかった上司に触られてユリは鳥肌が立った。
　更に上司はユリの胸を触った。
　ついユリはその手を払いのけてしまった。
「おい、俺は客だぞ。」上司は怒った。
「これは仕事じゃないんですか？」良は言った。
「まぁ堅いこと言うな、これも相手を欺くためだ。」上司は答える。
「おまえも最近忙しかったから、いいストレス解消だ。それに相手は売春婦だ。」ユリに聞こえないように耳打ちした。
　良は少し考えたが、すぐにもう一方の隣に座った。
　上司はユリの胸を触り、揉み始めた。
「や、やめて下さい。」ユリは嫌がった。
「何言ってるんだよ、この位慣れっこだろ。」上司はそう言って続けた。
「おい、おまえもやれよ。」
「はぁ。」良が答える。
　良は、ユリの胸を鷲掴みにした。
「痛い。」ユリが叫んだ。
「こんな位で何言ってるんだ。」良は豹変した。
　上司は良の態度に驚いた。普段は温厚なのに。
　良は、ユリを自分に引き寄せ、服の隙間から手を入れた。
「はぉ、なかなかいい胸をしてるじゃないか。」そう言って良は揉んだ。
　ユリは痛みに顔を歪めた。
　さすがに上司が止めに入った。
「大丈夫ですよ、この位。」そしてユリの胸ぐらをつかみ服を引きちぎった。
　暗闇の中であまり良くは見えないが、うっすらと体の輪郭がわかる。
　ユリは胸を隠しながら、悲しくて涙が出た。恋人に娼婦呼ばわりされ、乱暴に扱われている、いくらわからないにしても良の態度には悲しかった。
　恋人を乱暴してるとも知らずに、今度はブラジャーを取ろうとした。
　逃れようとするが、動けない。なんと上司がユリを押さえ込んだ。
　良はニヤリとして、一気に剥ぎ取った。
「なかなか、いいもの持ってるじゃないか。」そう言って良は乳房を掴んだ。
「やめて、いやよ。」声を押し殺し精一杯懇願した。
　しばらく良は揉んだ。
「そろそろ交代しろよ。」上司が言う。
「あっすみません、つい夢中になって。」良は交代する。
「いや、いやです。」恋人の前で他人に触られるなんて。
　そんなユリの思いも伝わることなく、上司は触り始めた。
　ユリは、上司のねっとりとした愛撫に鳥肌が立った。
「お願いです、もうやめて下さい。」ユリは言った。
「何言ってるんだ、これからがお前も楽しくなるんだろうが。」上司は張り切っていた。
　はだけた胸元をゆっくりとなぞる、そんな風にされているうちにユリの意志とは反比例して乳首が勃つ。
「ほら、体は正直だ。」
　ユリは何も言えなかった。
　上司は更に続ける、良の見ている前で。
　上司は指先で勃起している乳首を撫でる。
「うぅぅぅ。」必死にユリは堪えた。
　上司は指先で撫でながら、もう一方ではつまむ。
「はっぁぁぁ。」ユリは上司の手から逃れようとするが、良に押さえ込まれたままだった。
「そろそろ、下の方もいいんじゃないか。」上司はニヤニヤしながら言う。
　上司はユリのスカートに手をのばす。
　ユリは股をぐっと締める。
　上司はスカートをまくった。ユリが股を閉じているので、はっきりとは下着は見えない。
「おいおい、ここまできて強情はるな。」なんと良の言葉だった。
　ユリは、いっそのことマスクを取りたかった。
「そうそう、意地をはらずに。」上司は閉じられている股の隙間から指を入れる。
「ほら、すっかり出来上がってるじゃないか。」上司は上機嫌だ。
「やっぱり嫌がっているなんて嘘か、売女め。」良が毒づく。
　良の言葉にユリは泣き出した。
「おいおい、嘘泣きはよせよ。」更に続ける。
　良の言葉に消沈したユリは、油断して気を抜いてしまった。
　いくらダメでも警官だ、その隙を逃さなかった。上司の指はユリの股間に入り込んだ。
　上司は一瞬いやらしい笑みを浮かべた。
　そして次の瞬間、ユリに電気が走った。
「ほら、しっかり準備ができているじゃないか。」上司は満足気だ。
　確かにユリの股間は、充分に濡れていた。
　恋人の前で嫌な上司の愛撫で濡れる、そんな自分が嫌になった。
　そしてユリは更に惨めな思いをすることになる。

「潜入捜査ご苦労様」上司の言葉にユリは呆然とした。

END