調教師集団　七
ＳＭ嬢に堕ちたＩＴコンサルタントの女
『ＳａｄｏのＳＭ小説姦女真紅』鬼蔵（Ｓａｄｏ） 作
　この物語はフィクションであり、実在の人物機関とはなんら係わりがありません。



　二〇一八年小暑上元
（これは平気法による二十四節気です）
　これまで類を見ない豪雨が西日本一帯を襲った。
　いつまで天候に泣かされるのだろうか。多少自然を破壊しても雨や台風に耐えうる環境であるべきである。
　これだけ被害者を常に出してまだ自然が大切か。一軒家が一番危険である。
　四十数年前田中角栄先生のお膝元である。
　奥羽山脈を全部削って海を埋め立てて新潟に雪が降らない様にしよう。こんな案が持ち上がった。
　だが此処は埼玉県の田舎ながら自然災害に強い街が九年前に出現した。
　五十階建ての高層建物が二列十四棟並ぶ。合計二十八棟の大型シティである。
　二列並ぶ中央を新都市交通が十階の高さに走る。三階まではアーケードとコンコースが繋がっている。
　右側が本宿ミッドタウンその先頭が一号棟である。その正面にモノレールの駅がある。
　左側が本宿スカイタウン一号棟から十四号棟まで連なっている。
　モノレールは本宿からもう一つのシティ伊佐沼タウンまで行く。
　途中武州鉄道の武州駅、ＪＲ武州駅、多面沢、元本宿を通って歴史の町の上空を抜ける。
　このモノレールが歴史の町の経済を完全に変えた。
　伊佐沼タウンは五十階建て六棟。こちらは家族の町である。三階までが大型ショッピングセンター、学校、病院を内包する。
　仕事は一部伊佐沼で働く人を除いてモノレールで本宿に向かう。
　本宿はオフィス、工場、独身者の街である。大きく歓楽街を内包している。
　学校、病院は伊佐沼に行かないと無い。
　この二つの街の経営母体はシカゴに配給会社を持つ無修正ＡＶ業界大手。本社はＲ国にある。
　この街の実質のオーナーは保木間貴明と言う。Ｒ国に居る名目上のオーナーから全権を依頼されてこの街のコンサルタントを勤める建前である。
　ＡＶの監督も行うが最近は若い世代に任せてマネジメントに徹している。
　スカイタウン一号棟の五十階。此処にＡＶの撮影スタジオが在る。
　行われているのはハードＳＭ系ＡＶの撮影である。
　女は天井のフックから手首を縛って吊るされている。だが脚は床に着いている。
　美人でスタイルも良い。だが躰中に鞭の痕が奔って色白の美肌が悲惨な姿に成っている。それが究極に加虐心をそそらせる。
　女は松尾円香という。三十手前である。美人かつ知的で気丈に見える。
　松尾円香から出る悲鳴と涙はＳ男性と一部のＳ女性をとことん満足させる。
　緊縛師の様な男が小銃の様な物を構えている。本物ではない。モデルガンを改造した物である。
　撃ち出すのは蝋燭の弾丸である。だが皮膚に当たればそれなりに痕には成る。
　乳房を狙って撃つ。
　ズーーーーーーーー。
「ああーーーーーーーーーーーーーーー」
　松尾円香は躰をくねらせ縄にぶら下がったまま痛みに暴れる。
「あはあーー。ああーー。ああ。ああ。ああ」
　乳房は鞭の痕の蚯蚓腫れが赤くなり滲んでいる。その上に蝋燭の弾丸が当たった個所が小さな蚯蚓腫れに成りやがて赤くなる。
　蝋燭の弾丸と雖もまともに撃てば皮膚を破る。蚯蚓腫れ程度に微妙に強さは調整されている。
　調整されているとはいえ蚯蚓腫れに成るには相当に痛い。苦しみ泣き叫ぶ姿を視聴者に充分に堪能して貰える。
　緊縛師の様な黒ずくめの男はまだ乳房を狙っている。
　ズーーーーーーーーーーーーーーーン。
「ああーーーーーーー。あはあーーーーーーー。ああーーーー」
　掠れた様な泣き悲鳴に涙が溢れる。
　何発も狙い打ちされた。松尾円香は避けようと躰をくねらす。それでも躰のフロント面は前を向けている。
　背中を向けることはできるがＮＧになる。
　緊縛師は撃ち尽くした弾倉を取り換えて股間を狙う。
　ズーーーーーーーーーーーーーーーン。
「ああーーーーーーーーーーーーーーー。あはあーーーーーーーー。あーーーーーーーー」
　太腿の付け根に当たる。
　緊縛師が狙っている形の良い土手に黒い塊はない。今の撮影で剃毛されたばかりである。
　陰毛が無くてもとことん男を欲情させる。その女の腰が痛みに揺れる。
　やや赤みが掛かった女の部分。その周りの皮膚が綺麗に剥き出している。
　股は閉じても開いても太腿を重ねない限り股間に隙間はできる。
　スリムで綺麗な躰である。
「はあ。はあ。はあ。はあ」
　松尾円香は荒い息遣いで震えている。
　股間の隙間に覗く女の部分の割れ目と閉じ合せたびらびら。そこから一滴雫が垂れる。
　松尾円香は慌てて膝を密着させて股間に力を入れる。
『まどかさん。開いて下さい』
　カメラの横のスタッフからカンペで指示が飛ぶ。綾瀬まどかが松尾円香のＡＶでの源氏名である。
　慌てて膝を下げて脚を少し開く。
　緊縛師は股間部に連射する。
　ズーーーーーーーーーーーーン。
　ズーーーーーーーーーーーーン。
　ズーーーーーーーーーーーーン。
「ああーーーーーーーーーーー。ああーーーーーーーーーーーーーーーーー。あーーーーーーーーーー。あはああーーーーーーーー・・・・・・・・・・・・・・・」
　股間から小水が流れ出る。遂に松尾円香は失禁して漏らしてしまった。制作側は大歓迎である。
　ズーーーーーーーーーーーーン。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。あはあーーーーーーーーーーーーーー」
　縄にぶら下がって脚をばたつかせ号泣する。
　そこでストップになる。
「まどかさん。いいですよーー」
　監督らしきが絶賛している。
　スタッフが手首の縄を解く。松尾円香は床に膝を着き前に手を突き倒れる。
　男性スタッフと女性スタッフに抱えられ浴室に運ばれる。取り敢えず躰の痛みをバスに浸かって癒す。
　この後は緊縛師との対談になる。
　
　松尾円香はＩＴコンサルであった。言い換えればシステムの開発要件定義をする業務ＳＥ（システムエンジニア）である。
　この街の実質管理者調教師集団の手で今の境遇に堕とされた。
　ここで調教師集団について解説する。
　現代は女性知識層の言い分のままに女性を圧倒的に保護し過ぎる法律下である。
　迷惑防止条例、ストーカー禁止法は江戸時代の切り捨て御免、生類哀れみの令と変わらない。
　疑わしきは罰せずの精神から著しく外れている。冤罪を大量生産する史上の悪法と言える。
　それを悪用する現代の身勝手な女性を制裁してお仕置き、かつ風俗、ＡＶの仕事に就かせる。そして経済効果に貢献する。そういう集団である。
　法律が女性の言い成りに従ってしまっている現代において女性は会社の中で些細な事で痴漢、セクハラ、パワハラと文句をつける。
　杓子定規に女性の言い分通りでは男性は恐ろしくて会社に居られない。調教師集団はそういう男性の依頼を実行する。
　標的として依頼を受けるのは女性だけである。
　風俗関係者や本当に弱い女性は対象にしない。法律的女性有利を利用して男性、企業を抑圧するインテリ女性だけである。
　調教師集団の団員は保木間の他十一名。弁護士、外科医、精神科医、印刷屋、警察官、組関係者もいる。
　
　松尾円香の依頼者は同業のＳＥである。
　松尾円香は女の理想で仕事を進める。ユーザーの要求より重い開発と成ってしまう。
　基本設計段階で上流工程のＳＥに細かく注文を付けダメ出しをする。
　その内容でユーザーレヴューして開発内容を確定する。
　詳細設計以下には関わらない。だが開発工数は膨れ上がっている。過労死を何人も出した。
　依頼者は無駄な工程を食った過労死で仲間を失った。それを調教師集団の一人館山弁護士に相談した。これが報復のきっかけである。
　
　調教師集団は架空の発注を行った。
　本宿ニューシティ内に本社を持つＩＴ企業から人事給与システムの下請け発注を行った。要件定義から丸受けの案件である。
　ユーザーも本宿ニューシティ内に本社を持つ企業である。架空と称してもその後に実際の開発は行う。
　これを少し前倒しして松尾円香に依頼した。
　松尾円香はこれまで幾つかの受託会社から仕事を取って業務委託契約でやってきた。一月の単金は五十万から七十万である。
　要件定義は松尾円香が行う。だが議事録やセッション用のドキュメント作成のため何回か一緒に働いた同じフリーの女性をお願いした。
　二次受け業者の段階で一億円の開発である。それが九千万で松尾円香に丸投げされた。
　五千万を前金で支払ってもらった。
　松尾円香はこれまでの様に要件定義で女の理想を無理やり提案した。
　ユーザーの担当者は要らない機能だと思った。だが女性社員もいる中で否定できなかったので松尾円香の要件定義のまま承認した。
　調教師集団は本宿ニューシティ内の営業を使って松尾円香にブランド品の売込みを掛ける。
　多額の開発費の半分くらいで開発できると見積もっていた。
　松尾円香はブランド品に手を出してしまう。
　自分の地位が一介のフリーから社長に向上したと思い違いしてしまう。
　もともとの案件に内包する要件が松尾円香の分析を上回って内容が深かった。
　それで開発が遅れて納期までに立ち上げが不能となる。
　基本設計のユーザーレヴューが遅れる。内容に不備の指摘箇所が何か所か出た。
　指摘された機能の設計を修正すると内容は格段に重くなる。そのまま詳細設計に入る。
　技術者には毎月派遣会社を通して支払う。既に開発の遅れも伴って予算はオーバーしていた。
　発注会社に追加の支払いをお願いする。
　基本設計レヴューが遅れてはいるがユーザーのＯＫは取れている。設計書も社内審査で問題はない。
　三千万の追加支払いをして貰った。
　詳細設計から先がなかなか進まない。
　基本設計の修正から開発工数は増えてさらに遅れも挽回しなければならない。ＳＥの数を増やした。
　松尾円香に開発言語の全てが解る訳ではない。詳細設計から先は現在の開発言語の解るＳＥにある程度管理して貰わねばならない。
　松尾円香のアサインしたＳＥ、ＰＧ（プログラマー）は全てフリーの技術者である。業務委託契約で派遣会社間に案件を流して集める。
　詳細設計を依頼したメインのＳＥと口論になった。
　要件定義内容から開発工数の見方が違い過ぎる。要らない機能を付け過ぎている。それが開発工数を大きく圧迫していると言うのである。
　膠着状態となりメインのＳＥに付いて大方のＳＥがボイコットしてしまった。
　派遣会社はそこまでの支払いを要求する。当然設計書も見ている。無理な内容を押し付けるからだと言う。
　さらに絶対に出来ない事はないが標準的に不可能に近い内容だと抗議する。一社だけではない。
　これだけの内容をこの期間に開発するにはもっと何段階もスキルの高い技術者を入れて貰うしかないと言うのである。
　行き詰まってしまう。
　ユーザーと発注元のＩＴ企業は松尾円香が利益に回してきちんとしたスタッフ体制を組まなかったと指摘する。
　派遣のみでの開発が逃げられた失敗要因と決め付けられた。
　案件は没収され発注元のＩＴ企業は弁護士を立て弁済を要求してくる。
　松尾円香も弁護士を探した。だが弁護士費用すら捻出する事が出来ない。
　相手側の館山弁護士は金が無かったら法テラスにでも相談すれば良いと嘲る。
　松尾円香はインターネットで法テラスを調べる。有効な手段と知る。
　とにかく無料相談に駆け込む。現状所得がないので受け付けて貰えた。
　調教師集団の館山弁護士と野村未来也弁護士はそこに罠を張った。法テラスの相談担当の弁護士を両名の関連弁護士で埋めてしまった。
　島本舞弁護士が担当した。
　一応の問診が行われた。
「このプロジェクトの間に幾つもブランド品を買ったとかはありませんね」
「それが営業の人達が次々に来て、この案件で収入が増えたと思ったものですからつい買い物を」
「それは現金ですか」
「いいえクレジットカードで買いました。ですからプロジェクトの費用には手を付けていません」
「それはまずいですね。破産も出来ません。と言いますか破産宣告は出来ますが免責は取れません。それでは負債は消えません」
　島本舞弁護士は学生が試験問題の模範解答を暗証する様に言う。
「私より適任者が居ます」
「実は法テラスでないといま費用がありません」
「大丈夫です。ここでご相談を受けた私でなくてもその弁護士がＯＫなら法テラスを通せます」
　島本舞弁護士は松尾円香に野村未来也弁護士を紹介する。
　だがそこでも島本舞弁護士と同じ回答が返って来た。
「破産宣告して免責が取れないなら何時までも請求されるのですか」
　松尾円香はややヒステリックにそんな救済のない話は無いと言いたい。
「まあ。相手が諦めればですが。それまでは何回でも執行が掛かります」
　野村未来也弁護士は打つ手は無いという構えである。
「まあ。島本先生はどうやっても感謝されることなく解決もないこの件から逃れたかったのですよ」
　野村未来也弁護士は自分のところに来ても迷惑と言いたい表情である。
　「でもその会社と交渉して先の案件で少しずつ返済とか話し付かないの」
野村未来也弁護士は出来ないと解りながら態と月並みな常識論を言う。
「それが今回の失敗で私に不合格の烙印が押されてしまったようなものなのです。また一から派遣の仕事でやるしかありません」
「お子さんもいらっしゃるのですよね」
「はい」
「この先給与も差し押さえられますよ」
「そんな全額ですか」
「いいえ。給与なら限度はあります。ですが振り込まれる口座だと全額押えられます」
「ああ」
「まあ。人や同業者を悪く言ったりするつもりはまったくないのですが、館山先生なかなか手強いです。あなたの場合は風俗で返す以外納得しないでしょう」
「え、ええ」
　松尾円香は驚愕の表情になる。
「何とか次の仕事を取って五回くらいの分割返済に持ち込む事ですよ。それなら話のしようもあります」
　何処からもオファーなどある筈もない。
「無理です」
　今回のプロジェクトが成功していれば営業もできる。だがあの有様では営業どころではない。
「館山先生とはご自身で交渉するしかありませんね。お引き受けしても法テラスの分割としても無駄に弁護士費用を請求するだけです」
　野村未来也弁護士は完全に引いている。
　相談だけなら三十分五千円と知って他の弁護士を訪ねた。
「館山先生。それじゃお引き受けはできません。やりようのない状況で館山先生と争うのは」
　そこでは相談料も要らないと帰された。
　松尾円香は単身子持ちである。給料を口座から押えられたら子供の保育園も払えない。
　亭主は稼ぎが悪いと強引に縁を切った。松尾円香から棄てたのである。
　松尾円香は館山弁護士にアポを取った。
　返ってきた答はにべもない。
「返済手段がないのに何を話し合っても無駄でしょう。こっちは依頼者の建前僅かでも執行をかけ続けるしかありませんよ」
　館山弁護士は最初から取り合わない。
　いくらか手元に金は有る。だが直ぐに底を付く。働かなければ成らない。
　本来の仕事である開発要件定義は幾ら派遣会社に就業を頼んでも何処からも来ない。
　そんな中で館山弁護士によって口座の差し押さえが行われた。
　預金は全て失われた。手持ちの僅かな現金だけである。
　働いても給与を差し押さえられる。これではどうにも成らない。
　館山弁護士に再度抗議の電話を掛けた。
　杉本金融を紹介された。
「まあ。館山先生の口からは仰らないでしょうけど。うちはレディース金融ですから非常に高額なアルバイトをされていればご融資可能です」
「高額とはソープランドとかですか」
「いいえ。そんな程度では」
「えーー」
「利息を含めて一億を超えない範囲で返済が出来ませんと。長期になりますと法定金利内でも利息が高くて。まあ。住宅ローンで考えてください」
　子供を抱えた松尾円香にはどこまで堕ちても解決しなければ成らない。
「何処で相談すればよろしいのですか」
「いや。私共からは。女性向けの求人誌とかで探されてはどうでしょう。そういうところでも貸してくれますよ」
　松尾円香は言われた通り求人誌を探す覚悟で杉本金融を出た。
　やや崩れた感じの男に呼び止められた。
　松尾円香は警戒して去ろうとする。
「借りられた」
「いいえ」
「良かったら働いて貸してくれるところ紹介するけど」
「私、八千万必要なのです」
　警戒していたのを押し切って追い詰められた状況からその様な言葉を吐いてしまった。
【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
小説提供サイト
ＳａｄｏのＳＭ小説姦女真紅
2020年8月22日掲載
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