後ろの正面　だれ？


後ろの正面　だれ？風天（かぜ　あまみ）作
第４話入浴母の章　夕食が終わり、シャワーを浴びることになった。「母さん、先に入りなよ」　そう言われて再確認したのだが、やはり脱衣場的な場所がない。　そう言えば、契約した時にも感じたことだった。　身体を隠す物陰も無く、少々困った。「なに? あ、後ろ向いてテレビ見てるから大丈夫だよ、覗きはしないから」　あきれ顔で話す慶介に「あら、見せてあげてもいいわよ、母さんだってまだまだイケてるんだから」「ハイハイ、解ったから早く入れよ」　この会話で、やはり私たちは普通の親子なのだと安堵した。　変に意識する必要も無いので、背を向けている慶介を眺めながら、着替えを準備し、服を脱いだ。　慶介はマネキンの手で自分の肩をトントンとたたいてみたり、踵らしきところを叩いてみたり、　普段もこんな感じでリラックスしながらテレビを見ているのだろう。　そんなことを考えながら浴室に入った。　几帳面な慶介の風呂場は、やはり綺麗だった。　シャンプー類のコスメも、自宅と同じものだった。　風呂場を出るとき、わざと音を立てて扉のノブをまわす。　それは、物言わぬ合図だった。　パンティを穿くときに少し悩んだ。　これからの時間、また、何かの拍子で欲情してしまっては、寝間着兼用で持ってきたスエットのパンツだと、染み出してしまう危険があるからだ。　念のため、生理用品のナプキンをパンティの股の部分に敷く。　慶介は先ほどと変わらず、背中を向けてテレビを見ていた。　不思議な視線を感じつつも、テレビ画面に集中している慶介を見ると、今日の自分は少し変なのだと思った。　スエットの上下を着こんで、慶介のもとに歩み寄った。「はい、交代よ」「うん、わかった」　慶介は持っていたマネキンの手を床に置き、背中を向けて立ち上がって浴室へと向かった。　テレビの前に置いてあった座布団に腰を下ろした。　今しがたまで慶介が座っていたそれは、生暖かく少し不快だった。　何気にテレビを見始めた。　光沢のあるテレビ画面は瑞々しく美しい。　が、次の瞬間、驚くべき被写体が目に飛び込んできた。　光沢のある画面の反射で、脱衣している慶介が見えるのだ。　これって、私も映っていたのだろうか？　そんな想像を掻き消すようにテレビ画面越しに映る慶介の裸体を凝視してしまう。　トランクスを下げた慶介の下腹部から、怒張して伸びるペニスが姿を現したからだ。　反射して映る画面は鮮明ではなかったが、はっきりと見て取れる。　風呂場に入る姿には、猛々しく怒張したペニスが、天をも突き刺すような・・・　先ほど、おしりに当たっていた突起物の実際の大きさに驚きを隠せない。　その生々しいペニスと、自分のお尻が擦れ合っていた光景が目に浮かんでしまう。　再度湧き出た股間の潤いに罪悪感を感じつつも、目に焼き付いたペニスの虚像は離れない。　指を入れたくなる衝動に耐えて、意識をテレビ画面へ集中する。　そこには、既に浴室に入ってしまった慶介の姿はなく、くだらないバラエティ番組が流れている。　しかし、股間をいじりたい衝動は収まらない。　ここでスエットに手を入れてしまっては、自分自身を抑えることが出来なくなってしまうだろう。　何気に床を見ると、マネキンの手が転んでいる。　緩やかに伸びた指先が、自分の股間を指しており、あの時の光景を思い出してしまう。　片足を伸ばし、もう片方の足の踵でマネキンの手の付け根を引き寄せ、マネキンの指先を股間へとあてがう。　今頃、浴室で慶介は何をしているのだろう? 　ソープをつけた手で、しごいているのかもしれない。　そんなことを考えながら、スネの前で手を組んで引き寄せる力に強弱をつける。　マネキンの指先が、ツンツンと股間に刺激を与えるが、下着に敷いたナプキンが刺激を和らげた。　ガチャガチャという音を立てて、風呂場から慶介が出てきた。　モニター越しに全身を見るも、やはり視線は下腹部へと移行する。　怒張は収まっておらず、無造作にバスタオルで全身を拭いている。　一通り拭き終えたのかバスタオルを首にひっかけ、あろうことか怒張をゆっくりとしごきだした。　その驚きの行動に股間は熱くなるも、背筋に寒気を感じてしまった。　官能よりも、恐らくはこの映像のトリックを知る慶介が、淫らに怒張を鼓舞している。　私を誘ってる? 　その行動に快楽よりも一線を越えてしまう危機感が、私の心にブレーキをかけた。　リモコンを手に取り、おもむろにチャンネルをシャッフルした。　モニター越しに慌てて衣服を身に着ける慶介の姿に、何とも可愛らしさを覚えた。入浴母の章終
【前】/【次】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
2015年11月28日掲載
Copyright (c) 2015 風天（かぜ　あまみ） All rights reserved.

▲