| ２５ 「一年目から三年目の教諭の指導に関してですが、現場の鎌田教頭からご意見があるようです。」 富田礼一は、会議の終盤で鎌田の発言を促した。 「僭越ながら、意見を述べさせていただきます。昨今の若手教諭に関しましては、指導不足であるとか、社会勉強不足であるとか言われております。」 鎌田は、数人の校長と教育委員会の事務局、市議会の教育審議会などの面々に自らの指導要綱を提出し、その実行を訴える。 １５分ほど、資料を基に熱弁を振るっている。 「よってここに、各大川市立の中学校、小学校の教諭を一名程度選肌場は、完全に逆転していた。 数日後、緑の元に教育委員会発送の封書が届く。内容の確認を恐る恐るする。鎌田へ送った写メールのことではとか、やましいことは幾らでもあった。 封書の中身を見るにあたり、経歴三年までの教諭に対する研修会の案内であった。教育長の名があることから、不審には思わなかった。 日付やら場所などを、手帳に印すと指導教官などの記載には目を通さないでいた。手帳を閉じると、陣野が教官室の外から手招きをしている。 会釈をした緑は、その場を外し、陣野のあとを追った。生徒指導室には、生徒がいたため管理棟の裏にある技術家庭科室に二人は入った。 「まだまだ、熱いね。」 「えぇ、陣野先生、なにか？」 「あぁ、最近、報告が上がってないもんだから、ちょっと状況を確認したくてね。」 「・・・。最近、あのお店に行けてないんです。金額的にもキツイのと、部活動の新人戦なんかもあったので。」 「あぁ、そうなの。」 「いまのところ、不審な点は。」 「点は？」 「客観的に見て、杏子があの店で買い物をしていた形跡は、ありました。ただ、」 「ただ？」 「それだけ、って感じも。」 「他の亡くなられた先生の名前って、出てきました？」 「いえ、そんなタイミングがなくて。」 「そうですか、では、ひきつづき、のんびりでいいので、調査お願いできますか？」 「は、はい、お役に立てていればいいのですが。」 「いやぁ、十二分ですよ吉川先生。ところで、教育委員会から書類は届きました？」 「はい、研修会の案内が来てました。」 「あれは、私が推薦したんですよ。わるかったかなぁ？」 「陣野先生の推薦？」 「えぇ、優秀な若手教員を選抜してくれと、教頭に頼まれましてね。我校は、吉川先生が適任だと。」 「て、適任だなんて。」 「まぁ、私の顔もあるんで、がんばってくださいね。」 「は、はい。」 「冗談冗談、僕のことは気にしないでいいから、じゃぁ。」 「失礼します。」 立ち去った陣野に頭を下げた緑は、研修会の日付を再び手帳で確認した。 「今週の土日？。２日後かぁ。」 大川東中の職員用トイレに二人の男が並んでいた。 「横川先生は、三年目だよね。」 「はい、教頭先生。年は２８ですけど。」 「浪人三年ってとこか。」 「はい、教員採用試験浪人を三年。」 「この地の生まれじゃないって事か。」 「はい、親戚一円に教育関係がいないもんで。」 「じゃぁ、がんばった部類か採用試験は。」 「えぇ、それなりに。」 「そろそろいい年だが、いい人はいるのか？」 「それが、なかなか。」 「そうだろうなぁ。」 「どういうことですか。」 「すまんすまん。」 鎌田は、横川の風体を観察し女性経験の有無を瞬時に確かめれた。風俗嬢相手もまだだと感じた鎌田は、小便器から少し腰を引いている横山の陰茎を凝視した。 「立派なもんだ。宝の持ち腐れか。」 そういうと、大川東中の指導研修の選抜を心の中で横川に決めていた。 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
| 2012.9.15掲載 |
はちみつ太郎さんの作品群→ |