ずっと愛してます２　羅衣 作
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第10話　達也


　福岡の某ホテル最上階ＶＩＰルームで、郁美の実兄、峰 達也が妻、恋を伴い、バスローブ姿でくつろいでいた。
　達也は夜景を見ながら、何故自分がこんな不道徳な事を始めてしまったのか、自問自答していた。
「なぜ妹なんだ・・・・・・」
　達也が、中学生の頃に強く思った妹、郁美への熱い想いが、１０数年経った今でも自身の行動を狂わしていると自覚があった。
　禁断の感情であると自覚があり、人としての道徳心があるからこそ、その気持ちを押さえ行動に移すことは一切無かった。
　郁美が身近にいる頃は、兄としての無償の愛を注ぐことによって、その想いを昇華して押さえ込むことが出来たから良かったのだが、郁美を神戸に匿うと、その押さえが無くなり制御が困難になっていた。

　達也の屈折した感情は違った形で顔を出し、郁美の同級生、同年齢への異常な執着となって現れ、それがそのまま恋愛対象となった。
　その固執は、郁美が中学生になった頃から始まり、援助交際という形で郁美の同年代と関係していった。
　郁美の同級生へ向けられたものは、特に情熱的で、その結果、山口 恋は妻になったのだ。

　郁美が健二と出会い付き合い始めた頃は、冷静ではいられなかったが理解ある兄という立場を演じ続けた。
　それを可能にしたのは、日に日に美しくなる郁美を誰よりも実感し見つめていたからに他ならない。
　そして郁美が健二と悲劇的に別れると、内心喜びながらも優しく理解のある兄を演じきった。
　しかし郁美が短大卒業間際にレイプ被害に遭うと、その愛は過激な反応を誘発して犯人全員の殺害を企てるところまでいったのだ。
　郁美が兄の挙動に気がつき実行に移されなかったが、いつでも暴走する危険性はあったのだ。

　自ら郁美を隠蔽して神戸に移住させてから、しばらくして山口 恋と結婚したが、その行動に変質が生じた。
　妻、恋に対する性的なイジメが始まり、遂には性的な辱めが日常化して、挙げ句の果てには恋の妹、真美まで、その毒牙にかけていった。
　今では、真美は、達也の第２の妻同然であり、日常的にセックスの対象となっていた。
　達也の欲望は、更にエスカレートして１年ほど前より遂にスワッピングにまで発展し、恋や真美を違う男に抱かせるという行為まで行うようになっていた。
　この際、相手方の妻は、必ず郁美、恋と同年代という限定をかけるほどの拘りようであった。

　妻、恋は、高校の時に達也に出会ってから、ずっと憧れて慕い続けていた。
　高校３年生の時、達也から援助交際を申し込まれ、つき合い、そして処女を達也に捧げたのであった。
　しかし１年もしないうちに喧嘩別れしてしまい失意の日々を送るが、数年後に偶然再会して、今度は正式に交際を始めて１年もしないうちに結婚することになった。
　恋は、別れても思い続けていた達也と再び交際し、結婚できて幸せであった。
　結婚すると、すぐに達也の性的な辱めが始まり嫌悪感を感じていたが、彼に身体も心も完全に支配されて逆らえない状態であった。
　そして言われるまま協力し、妹、真美を達也に差し出してしまったのだ。

　山口 真美は、２度に渡って思い出したくもない恋愛の失敗で落ち込んでいたところを、実姉である恋の手引きで達也に犯されてしまった。
　真美は、姉の夫である達也に元々片思いしていたこともあり、あっさりと達也に夢中になってしまい姉と同じ道をたどってしまった。
　彼女は、とても切り替えが早く男女関係については開放的な性格で、細かいことは気にせずに、自らの境遇を逆に楽しんでいるようなところがあった。
　彼からは相当金額のお小遣いが貰えて、なに不自由ない生活が保障されていたので尚更楽観的であった。



　ピンポーーーン♪♪

　ＶＩＰルームの玄関に達也が出迎えると、４人の男と１人の女が入ってきた。

達也　「大田さん　お待ちしておりました　お連れの方も　お疲れ様です」
俊哉　「遅くなりました　峰さんは　全員と　１度有ったことありましたっけ」
達也　「確か　皆さんの奥様と１度　お呼ばれしましたね　その節はご馳走様でした」
俊哉　「峰さん　いや　達也さん　我々は全員年下ですし」
　　　　「提案なんですが、こういう機会ですし、奥様も含めて」
　　　　「お互い名前呼び捨てにしませんか　その方が盛り上がると思うんですが」
達也　「あはは　そうだね　どうしても仕事の癖が　分かった　私も含めて」
　　　　「呼び捨て無礼講にしよう　俊哉　そして　皆さんよろしく」
俊哉　「ありがとうございます　では　奥様いや　恋にメンバー紹介します」
達也　「ああ　ここではなんだから、妻はリビング待ってます　肝心な妻に皆さん紹介しないと」
俊哉　「ですね　でも本当によろしいんですか」
達也　「ああ　激しく可愛がってやってくれ　もちろんビデオはよろしく」
俊哉　「お任せ下さい　ビデオカメラは２台、デジカメも２台用意しました」
　　　　「ＳＤカードはたくさん用意しました」
　　　　「あと康二が編集得意なので、Blu-ray化してプレゼントする予定です」
達也　「さすが俊哉は手回しがよい」
俊哉　「いえいえ　金銭的な負担は、我々これだけですから当然です」
達也　「俊哉　と遊ぶのは、もう７回目だっけ」
俊哉　「だったかと　僕　恋　大好きなんで　凄くうれしいです」
　　　　「ひょっとして　達也は　ありさ　気に入って頂けたんですか」
達也　「もちろん　ありさ　に夢中さ　本当に交換したい」
俊哉　「マジですか　考えときます　あはぁはぁはぁ」

　リビングに入ると、恋は窓際で、心ここにあらずという雰囲気で夜景をボーっと眺めていた。

俊哉　「では改めて紹介します」
　　　　「私が、大田俊哉、そして妻、ありさ、右からテツ、健太、康二です」
　　　　「男性３人は、私の友人で、一応苗字は内緒って事で」
達也　「了解です　では　私が　峰 達也、そして妻、恋です」
テツ 　「初めまして　恋　可愛い方ですね」
健太　「初めまして　楽しみです」
康二　「初めまして　元ビデオ研究会なので、期待に添えるよう頑張ります」
達也　「おっおぉぉぉ　それは期待してしまう」
　　　　「みんな　お酒用意したので、景気づけに自由にして欲しい」
　　　　「部屋は、一応　右手が　恋　　左が　ありさ　で　どうかな」
俊哉　「ばっちりです　ではせっかくだから　お酒頂きます」
　　　　「みんな軽く飲もう」
康二　「賛成　では　僕が作りますよ」
ありさ 「手伝うわ」
恋　　 「あっ　こっちに氷が・・・」
俊哉　「達也　お好きな時に　ありさ　連れて行って下さいね」
達也　「ありがとう　すぐ行くよ　わぁはぁっはぁっ」
俊哉　「では　みなさん　朝まで楽しみましょう　乾杯！！」

　達也は、とうとう恋を輪姦させる行為に踏み出したのだった。
　こうして撮影されたビデオは、日頃恋を辱める目的で使われる筈であった。

　ありさは、俊哉と結婚当初からスワッピングの世界に引きずり込まれ、日常化してしまい、もう自ら楽しんでいる状態になっていた。
　ありさは、夫、俊哉を愛していたし、夫は夫、セックスはセックスと分けて考えていた。
　スワッピングを行う妻としては、当たり前の分別は持っていたのだ。

　そんな中、夫、俊哉があまりに積極的に機会を作るので、その分別に変調をきたし、たびたびセックスする相手である達也に次第に心惹かれつつあった。
　女であれば、当然の心の変化である。
　ありさは、正直そろそろ後戻り出来ない心の動きに戸惑っていた。
　そして今回、その気持ちを俊哉に打ち分けようと覚悟をした途端のイベントであった。
「もうこれ以上は　どうなっても知らない　俊哉のバカ」

　俊哉は、恋の妹の真美にも興味を抱いており、達也の勧めで２人だけで不倫デートを楽しむようになっていた。
　そして先日、達也からありさと真美を交換しないかと驚きの提案を受けたのだった。

　ただ俊哉は、彼なりに美しく妻として理想的なありさへの愛情もあり、話は簡単ではなかった。
　交換とはいえ妻を奪われることには変わりが無く、男としてのプライドが許さなかった。
「恋となら　話は分からないこともないが・・・・・でもやっぱり　ありさ　失いたくない」
「やっとの思いで口説いてプロポーズし結婚したのに」

　しかし俊哉の仕事環境に問題が生じつつあった。
　勤めている会社の業績が悪く、経営が危うい状態が続いていたのだ。
　長男として実家を守らないといけない立場の俊哉としては、地元での職場が必須だった。
　近年の景気では地方では再就職もままならない状態あり、ローンも抱えることもあり、もし会社が倒産すれば生活は崩壊するのは明らかだった。
　俊哉は藁にもすがる気持ちで、懇意にしている達也に相談するのは自然な流れであった。

　達也は若くして実家の企業グループの実質的な経営を任されている、地方でも有数な経済人であった。
　達也は１年ほど東京大学卒業後、東証一部上場の超有名企業に就職していたが、父がガンを発病し不安になった両親に呼び戻された。
　初めは見習い、社長付秘書という立場だったが、経営者としての天賦の才をみせ、あっという間に、会社の業績を伸ばして、僅か２年足らずで専務を任せられる程になった。
　達也の才覚を認めた父は経営を全て息子に任せ、自身は療養に努めるようになった。
　グループ１０００人ほどの社員は、新星のように現れた後継者に既に絶大の信頼と期待を寄せていた。
　企業が成長するに従い社員の年収も右肩上がりで、士気も上がり、今では地元経済を牛耳る企業グループとなりつつあった。

　俊哉は、初めは達也があまりに「ありさ」を気に入っているので、その絆が深まれば今後の人生に役立つと打算で積極的に機会を設けていたのだ。
　しかし、それとなく伝わってくる達也の意図は、スワッピングではルール違反、マナー違反ともいえるもので正直驚きを覚えていた。
　そして先日の提案であった。
　俊哉は知るよしもなかったが、実は、ありさが郁美によく似ていたのだ。
　年齢も一緒で、身長もほほ一緒に加えて、顔が姉妹と言われても疑うものがいないほど似ていた。

　俊哉は、今までの関係継続で十分との思いがあったが、拒否できない状況が迫りつつあった。
「俺は　ありさを失うのか・・・・・そっそんな」
「真美は若くて美しい　俺好みだ　セックス相手としては最高の子だ」
「だが　それと　これは違う　ありさ」
「しかしこのままでは　大田家は金銭的に崩壊する」
「ありさ　どう思っているのだろう」

　真美は達也への思いはあったが、結局は姉の旦那であり、不幸になるのは自分だと自覚があった。
　勧められるまま俊哉とは何回か関係し、好意的な感情は芽生えつつあった。
　そして何より真美の背中を後押ししたのは、真美個人に達也より支度金として５千万円貰えるという話であった。
　更に将来的に離婚など見舞われた時も、特別な妻の妹として遇すると言われたのが決定的であった。
「今の時代を生きている女の　したたかな打算をくすぐる言葉だった」
「達也に恩を着せられる　それって大きいわ」
「それにわたしとの肉体関係は、わたしが望めば断らないって言ってくれたし」
「良い機会かもしれない　このままでは間違いなく女としては不幸だし」

　恋は複雑だった。
　達也を愛すればこそ、夫の暴挙に従ってきたのだ。
　悲しかった、普通に愛して欲しかった、それなのに他人に自分を抱かせる夫。
　もう限界かと思うとベットで優しく抱かれてしまい、また我慢してしまう。
　その繰り返しだった。

　しかし恋はありさに出会って、女の直感で、達也は実の妹、郁美を女として愛しているのだという驚くべき事に気がついたのだ。
　達也は、異常とも思えるほど妹の写真をライブラリしており、表面上は妹を溺愛する兄を演じているが、妹と同年齢の女性とばかり関係を持ちたがる。
　恋自身もしかり、今までスワッピング相手の妻達も、ありさも、そうだった。
　そして、ありさは、妹、郁美によく似た人であり、その執着度は明らかだった。
　それで恋は気がついてしまった。
　恋は愛する人の正体を知ってしまいショックであったが、それでも自分の愛を貫いていた。

　数週間前、郁美が結婚相手岩永健二という男を伴って現れ、結婚することとなった。
　恋は、郁美にその事実を伝えようかと思ったが、夫の隠された素顔を明かすのは最大の裏切りと感じ、結局夫の秘密を守ったのだ。
　その日、達也の性欲は異常であり、恋は一晩中愛されたことで推測は確信に変わった。
　それでも恋は達也の性癖を受け入れ、一緒に生きていく覚悟を決めたのだった。
　妹、真美とありさの交換という異常な行為に対しても、異議を唱えず、今日も従順に従っていた。
　そんな覚悟を決めてから恋の肉体に、大きな変化が現れつつあった。
　抑圧していた淫欲が花開き、オンナとしての悦びが日に日に高まっていたのだ。

達也　「では　ありさ　行こうか」
ありさ 「うふっ　楽しみだわ」
俊哉　「こちらは　もう少し飲んでから楽しみます」
健太　「達也　覗いたりしても良いですか　参加はしませんから」
達也　「それは大歓迎だ　隠し撮りも期待したい」
健太　「あはぁっ　それでは！！」

　達也は、ありさとラブラブで、寝室の１つに入っていった。
　わざとだろうが扉は開けたままであった。
　恋の位置からは、その中の様子が丸見えだった。
「ワザとなのね　どうして　わたしだけじゃ駄目なの　達也！！」
　気がつくと、恋は４人の男達に取り込まれていた。
「あぅう　普通のセックスがいい　達也だけでいいのに」
「また　犯されるのね　めちゃくちゃに　それも４人」
「もう敏感になった わたし　朝までなんて」
「おかしくなってしまうのが怖い」
　既に４人の男達の手が、バスローブ姿の隙間から入り込み身体を這い回り始めていた。
「わたしを　お酒のおつまみ代わりに　あっあぁぁぁぁぁぬっぬれちゃう」
「そんな　わたしって　こういうのが良いの　ちがう　でも・・・・・・・」
　いつの間にか、俊哉にパンティの中をまさぐられていた。

俊哉　「うわぁぁぁぁぁぁ　恋　もう濡れ濡れじゃん」
恋　　 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」
俊哉　「みんな　寝室に移動！！」
健太　「おっおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
テツ 　「よっしゃ！！」
康二　「ビデオ準備します！！」

　恋は、儀式の生け贄のように寝室のベットの上に連れて行かれていった。
「はぁう　もう身体が押さえられない」
「達也　それが望みなの　そうなったら　わたしだけを愛してくれるの」
「わたしも　真美も　ありさも　身代わりなのね」
　もはや小柄な恋は、４人のケモノに囲まれた羊だった。
　無抵抗のまま、バスローブを脱がされ、一応身につけていた上下おそろいの薄ピンク色の下着を脱がされていった。
　ブラのホックを外されると、Ｄカップの乳房が弾けて顔を出した。
　恋の瞳には、その姿を記録しているビデオカメラの赤いランプが映っていた。
「達也　それで満足なのね　汚れていく恋　わたしを見たいのね　いいわ」

　俊哉はありさの事が気になり、実は心中穏やかで無かった。
　しかし自身が始めたことでもあり、達也の機嫌を損ねる訳にもいかなかった。
　それを打ち消すように、ワザとオーバーアクションで、その場の雰囲気を盛り上げようとしていた。
「ありさ　すまない　帰ったらじっくり話し合おう」
　俊哉は、昨日イベントの話をした時と今日出掛ける前の不自然なありさの挙動に違和感を感じていた。
「なんの話しようとしたのかな　まさか離婚の話」
　先ほど、満面の笑みで達也と仲良く寝室に行ったありさの姿が思い浮かぶ。
「もうありさは俺のこと　愛想尽かしているのかもしれない」
「覚悟決めるか　どうあがいても俺の会社は倒産する」
「そうなれば　達也さんの提案を受け入れるしかない」
「病気で入院する母を見捨てることは出来ない」
　ふと真美の顔が浮かぶ。
「決めた　明日にでも離婚届取りに行こう」
「ありさに言われる前に　言いたい」
「ありさに言わせるなんて　男の恥だな」
「ありさ　今までありがとう」
「今日は精一杯楽しもう　それが良いんだ」

　ありさは、達也の申し出を聞いて愕然とした。
　俊哉と別れて達也の愛人になれって言われても、そんな非常識なこと出来るわけがなかった。
　それこそスワッピング最悪の結末ではないかと思った。

　もっと驚いたのが、俊哉の会社が倒産の危機にあるという話であった。
　今、職を失ったら、ローンや病気の義母の治療費が払えなくなるのは必至で、ここで初めて俊哉が達也と懇意にしようと努力した目的だと知ったのだった。
　次の職場確保の見返りが自分という事実に、目の前が真っ暗になった。
「そっそんな　でもわたしが拒否したら　全てが終わるのね」
「俊哉　あなたにとってわたしは　手放してよい存在だったの」
「何も相談してくれないなんて」
　ありさの瞳に、涙が溢れてきた。

達也　「俊哉は、妻の妹　真美と再婚するみたいなことを言っているから」
　　　　「気にしなくて良いと思うが・・・・・」
ありさ 「恋の妹」
達也　「妻によく似た　２２歳の可愛い子だよ」
ありさ 「そっそんな・・・・・」
達也　「僕は　無理強いするつもりはない」
　　　　「ありさが自由に選ぶと良い」
　　　　「まあ　ありさがどう選ぼうと、俊哉の職は用意するつもりだ」
ありさ 「えっ本当ですか！！」
達也　「ああ　まあ多少仕事内容は変わるかもしれないが・・・・・」
ありさ 「どういうことですか」
達也　「まあ希望している分野になるかどうかは　ありさ次第ということさ」
　　　　「僕も人間だから、メリットがあれば投資するし　無ければそれなり　普通だろう」

　ありさは、要するに選択肢が無いことを知った。
　拒否すれば失業はしないが、望まない閑職につかされるということだと察した。
　恋の妹、真美のことは初めて知ったが、あり得ると思った。
　俊哉は年下の女の子に目がなかったのは事実で、結婚以来嫉妬の連続だったからだ。
　恋の妹となれば、それなりの美人であることは疑いようがなかった。
「もうおしまいだわ　でも達也さんが悪いのではない」
「むしろ達也さんは　救いの手を伸ばしてくれた」
「そして代償を求めるのは　当然だと思う」
　もし達也の救いの手が無かったら、ありさがソープ嬢にでもなって稼ぐしかないのは事実であった。
　そう思えば、達也の愛人になる方が幸せかもしれないし、今より金銭的にもかなり裕福な暮らしが出来るのは間違いなかった。

ありさ 「すいません　俊哉と相談して返事させて頂いてよろしいですか」
達也　「もちろんですよ」
　　　　「今日は　夜通しゆっくりお話でもしましょうか」
ありさ 「えっ・・・・・」
達也　「悲しそうな　ありささんに　なにかするほど僕も冷酷じゃないですよ」
　　　　「誤解されると困りますが　どっちにしても俊哉さんは助けてあげます」
　　　　「いろいろお世話になっているし　例の「会」のこともありますから」
ありさ 「でも　それでは・・・・・」
達也　「なにより　ありささんと出会えた」
　　　　「先ほどは意地悪な言い方しましたけど」
　　　　「ありささんが僕のところに来てくれれば」
　　　　「当然彼にはお詫びに　奮発して職を用意する」
　　　　「逆ならば、普通にお世話する程度の差です」
　　　　「だから　そのことは気にすることは無いですよ」
　　　　「だって　ありささん　人妻なんですよ」
　　　　「その奥さん盗ったら　私には負い目になりますし　俊哉さんに申し訳ない」
　　　　「だからこそ　その分プラスアルファして応えるだけなんです」
ありさ 「では　わたしがノーと言っても」
達也　「もちろん俊哉さんの収入は　ちゃんと仕事してくれれば今以上を保証しますよ」
　　　　「ただ用意している職は　今以上忙しくなるのは間違いない」
　　　　「当グループは　今いろいろ事業拡大していますから」
ありさ 「ありがとうございます」
　　　　「あの奥様の妹さんのことですけど」
達也　「あまり何度もいいたくありませんが　事実だと思いますよ」
　　　　「それは俊哉さんに確認されたら　どうですか」
ありさ 「そうですね　分かりました」
　　　　「お話頂いた件は　しばらく考えさせて下さい」
達也　「ああ　今話した俊哉さんの再雇用の件　まだ彼には内緒にしておいて下さいね」
ありさ 「えっ？」
達也　「今　彼が知ると安堵して　現在の会社の状態をかえって悪くする可能性があるんです」
　　　　「まだ倒産するとは限らないし　彼のポストの影響はかなり大きいのです」
　　　　「私としては、九州の企業には　１社でも多く勝ち残って欲しいのです」
ありさ 「そうなんですね・・・・・確かに俊哉は楽観論者ですから　言われるとおりだと思います」
　　　　「分かりました　俊哉にはわたしのことだけ　相談してみます」

　達也は思惑通りに運びそうになり、内心ニヤニヤしていた。
　ありさと俊哉を無理矢理引き裂いても意味がない。
　むしろ、ありさが自分の意志、納得して、自分のところに来るように仕向けるのが得策だった。
　そうすれば、ありさからの愛を独占し本当に我がものに出来る。
　そして俊哉は自分に対する恨みを持たずに、「会」関係の仕事を安心して任せられるようになるだろう。
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2013年4月20日掲載
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