ずっと愛してます２　羅衣 作
【前】/【次】
第38話　横恋慕と優衣の苦悩


　山田克也と優衣夫婦は、長く待ち望んでいた「会」関西支部設立が間近と知って喜んでいた。
　そして設立プロデューサーが岩永健二と知って、優衣はワクワクしていた。
　克也は健二が麻輝を連れてきたことを知って驚喜していた。
　今までは数ヶ月に１度しか会えないことも多く、克也は今では本気の愛情を感じていた麻輝への想いを熱くしていた。
　そして山田夫婦を驚かしたのが、あの息子の最愛だった女性であったはずの郁美が健二の妻となっていた事実であった。
　更に山田夫妻を驚かしたのが、息子の徹が健二の弟子となっており、新妻の敬子も「会」関西支部に深く関わっているという事実であった。
　山田夫婦自身が「会」の活動に既に深入りしていただけに、息子夫婦の行動はショックであったが、自分達の不道徳な行動自体に原因があったと思い愕然としていた。
　そんな親としての顔より、自ら想いを寄せる健二や麻輝が身近に移り住んで来たことを喜んでしまうという有様で有り、「会」が山田夫婦の常識人としての部分を侵蝕してしまっていたとも言える。　

　山田夫婦は既に十数組の夫婦と夫婦交換の関係にあり、道徳心が性に関する部分が欠けていたし、自分達に息子の行動を咎める資格が無いと半ば諦めにも似た心境であった。
　ほどなく徹、郁美、敬子、健二の関係、経過を知るにつれて、運命という言葉を実感していた。
　息子の徹は岩永健二の最愛の人、郁美に出会い、そして導かれるように岩永健二に出会って「会」に深く関わっていった。
　自分達を後戻り出来ない世界に導いた岩永健二に、息子もまた導かれたのだ。
　そしてその事実を気がついた時には、愛娘の環も郁美との関係を深くしており、もはや手遅れの様相を呈していた。

　そんな親としての葛藤に隠れて、克也はかねてから抱いていた劣情が抑えられなくなった。
　克也は、初めて徹から郁美を紹介された時に衝撃を受けた。
　既に女を知り尽くしていると自負する領域に達した克也ですら、郁美は妖艶で魅力的で眩しかったのだ。
　まさに一目惚れであった。
　息子の徹が夢中になってしまうのは当然と納得したし、だからこそ親としての立場に葛藤していた。
　それほどの女性が息子の恋人、妻となったら、一生手をつけられない存在でしかない。
　今では女体マニアと化した克也にとっては、まさに最高級のご馳走がお預けとなったと感じたのだ。
　不思議なことに、まだ近親者に対して劣情をぶつけてはいけないという常識は残っていたのだ。

　徹が郁美ではなく敬子と結婚を望んだときに、克也は内心嬉しくて仕方がなかったのだ。
　その日からの克也の行動は早かった。
　郁美へ連絡をとって、デートを申し込んだのだ。
　もともと郁美は克也に対しては男として意識しているサインをちらつかせており、２人で話すときは甘えるようなトーンで話しかけていた。
　そういった意味では、克也と郁美にとっては徹と郁美の関係は重石のようなものであった。
　その重石が無くなった今、２人の間には障害は無くなったことを意味した。
　郁美も喜んでデートを約束したが、いろいろと多忙すぎて、しばらく待って欲しいとお預けしてしまったのだった。
　郁美としても１日でも早く、克也との時間をとりたいと思っていたが、自身の結婚、仕事の退職、それに纏わる諸々が一気に訪れ、全く余裕が無かった。

　そこに麻輝の枕話が追い打ちをかけるように降りかかった。
　息子の徹が麻輝と経験して彼女から一流の男として認められているという話を聞かされたのだ。
　うっとりとした瞳で徹の話を語る麻輝が克也が知らない顔を見せたので、克也は息子に対して激しい嫉妬心を覚えた。
　徹は克也が４年掛けても独占できない麻輝ですら、あっという間に惚れさせたと思ったのだ。
　たがこれは克也の完全な被害妄想、誤解であったのだ。

　麻輝は確かに徹の才能の前で圧倒はされて肢体は魅了されたが、決して健二への愛は揺らいでいなかったし、健二に次いで敬愛する克也への想いもいささかも揺らいでいなかった。
　麻輝にしてみれば、徹が克也の息子と知って納得の思いが強かったのだ。
　克也の息子が麻輝も驚くほどの男だったので、麻輝の中で克也への評価は更に上がっていたのだった。
　それと当時に、麻輝は郁美の男を見る目と育てる、伸ばす手腕に驚きを感じていたのだ。
　徹を見ているだけで、郁美が健二に相応しい女性なんだと納得して敗北を認めたのだ。

　麻輝は男心を読み間違っていて、克也に「息子さん、まさに蛙の子は蛙ね」と伝えて讃えたかっただけなのだが、寝取られ願望男は負けた、寝取られたと考えるとは夢にも思っていなかったのだ。
　親子とはいえ男と男であり、いざとなればライバルになるんだと麻輝が知ったのは、しばらく経ってからであった。

　結果、微妙なブランクと麻輝からの話が克也の欲望を膨れあがらせることになってしまった。
　感覚としては愛人を息子に寝取られたような心境であり、今でも息子が慕い続ける女性を奪うことで男としての自尊心を満たしたかったのだ。
　そして郁美の肢体への渇望はもはや限界に達しつつあり、郁美から時間がとれると連絡がきた途端に行動を起こした。
　郁美を車で迎えに行くと、そのまま御影に出来たばかりのタワーマンションに用意したマンションの１室に連れ込んだ。

郁美　「克也さん　この部屋は」
克也　「ここは　「会」で出会った人達と過ごすために買ったところなんだ」
郁美　「まあ」
克也　「遠隔地の方も多いからね　ここに泊まって貰うことも多いんだよ」
郁美　「確かに　ホテルでは　なかなか人目があるから」
克也　「そういうこと　でもこれからは　郁美ちゃん専用にしても良いかなって」
郁美　「あらぁ」
克也　「関西支部も出来ることだし　他にも部屋あるからね」
　　　　「ここは一番新しいし　郁美ちゃんにピッタリだと思う」
郁美　「人妻なのよ　わたしに　それ言っちゃうんだ」
克也　「不倫カップルになろうよ」
郁美　「素敵な奥さんいるのに　怖い人」
克也　「徹と結婚したら　どうしようって思っていたんだよ」
　　　　「だから　こうして会えるの　ずっと夢見ていたんだ」
郁美　「あらら　克也さんって　ストレートにグイグイくるタイプなのね」
　　　　「それにしても　「会」のメンバーだったなんて　驚いちゃった」
克也　「もう４年になるかな」
郁美　「健二さんから聞いたわ　うふふ」
克也　「それにしても　郁美ちゃんが岩永さんの奥さんになるとは」
　　　　「俺ってラッキーかも」
郁美　「まあ」
克也　「会った日から　ずっと好きだったんだ」
郁美　「それは　気がついてましたよ」
克也　「本気の話　初めて一目惚れしたんだよ」
　　　　「なんで息子の彼女なんだって思ったんだよ」
郁美　「うふふ　だってぇ　徹　とっても素敵な子なんだもん」
克也　「まあ　確かに　徹は　俺が若い頃欲しかったもの　全て持ってるからね」
郁美　「それにしても　初めて一目惚れだなんて　嘘ばっかり」
　　　　「あんなに美人の奥さんいるのに」
克也　「ホントだよ　優衣は　お互い惹かれあっただけだし」
郁美　「じゃあ　麻輝は　随分　口説かれたって聞いてるよ」
克也　「あたた　確かに　麻輝は　うぅぅぅん　バレたか」
郁美　「バレバレです」
克也　「でも　本気だよ　郁美ちゃんのこと　ずっと」
郁美　「あん　もう　急ぎすぎ　うぐっふぅ」

　克也はグイと郁美を引き寄せると唇を奪った。
　その唇はプルプルして、舌を潜入させると、これまた蕩けそうに柔らかい舌が出迎えて絡み合った。
　フッと口内に、ほのかな甘みが広がって、鼻腔にシャンプーの良い匂いが香っていた。
　腕の中には、夢にまでみた弾けそうな若い肢体があった。
　克也は貪るように郁美の口を陵辱した。

　克也の身体を電撃に似た歓喜の感情が駆け巡り、密かに燃やしていた息子の彼女への劣情を解放した。
　郁美は、もはや手を出すのは憚られる息子の彼女や妻ではない。
　克也にとって、岩永健二の妻となった郁美は自由に手を出して良い存在になったことを意味しており、息子が「会」に引き込まれたことより、そちらの変化の方が感心が大きかった。


　克也が郁美にうつつを抜かしていた頃、優衣は岩永健二に呼び出されていた。
　優衣は夫、克也に申し訳ないと思いながら、健二への愛情が膨れあがるのを抑えられなかった。
　優衣ですら、健二は全てにおいて規格外で圧倒的なセックスパートナーであり、それまでの女としての人生観を一変させた存在であった。
　だからこそ初対面で有効な避妊も行わず、妊娠して子供を産んでしまったのだった。
　当時４０歳の優衣にとっては、妊娠出産はリスキーな冒険であったが、健二の子供を産みたいという女のエゴを優先させた。
　もちろん人妻である以上、それは最大の裏切り行為でもあったので、最悪は離婚されても従う覚悟はしていたのだ。

　優衣は克也が自分の我が儘を受け入れてくれて、そのまま自分を妻として守り続けていってくれると分かったときの驚きは小さいものではなかった。
　そこで初めて、克也は自分をそこまで愛してくれているんだということを知ったのだった。
　自分達の夫婦関係は一般常識からすれば逸脱しており、第三者からすれば異常なのかもしれないと感じていたが、男と女の関係は十人十色であり、この形が自分達に適したものなのだとも考え始めていた。

　とはいえ優衣の罪悪感を打ち消したのは、克也の行動そのものであった。
　優衣は「会」の活動・交流の中で多くの男性とセックスを経験したが、心許して恋い慕っている男性は岩永健二ただ１人であった。
　克也は麻輝だけに留まらず、複数の女性を狂わして半ば愛人のような存在にしていた。
　一番驚いたのは、それだけで飽き足らず息子の恋人であった郁美に対して横恋慕していたことだった。
　優衣には夫の行動や目の動きをみれば、夫が相手の女性にどのような感情を抱いているかなどお見通しであった。
　さすがに夫の横恋慕は行き過ぎと感じた優衣は、それを封じるよう克也とのセックス頻度を意図的に増やして引き止めようとしていたのだった。
　もちろん特殊ではあるが克也と優衣の夫婦仲は良好であり、優衣が積極的であることを克也は喜んだし、盛り上がって激しいセックスを繰り返していた。

　そんな中で、克也の携帯電話にたびたび郁美から着信するようになったのだ。
　克也は郁美からの電話に対して明らかに声のトーンが変わり、男として興味津々なのが明らかであった。
　優衣から見ても郁美は色香が漂う女性であり、息子の徹が夢中になってしまうのは致し方ないと思っていたし、結婚もやむなしと諦めていたのだ。
　なのに徹は郁美といつも行動を共にしていた妹分の敬子と結婚を強く望み、そのまま結婚を押し切られてしまった。
　事態を優衣が把握したのは、それから半月ほどしてからであった。

　郁美は岩永健二の妻となった。
　郁美は、もともと彼を６年間もの歳月を経ても恋慕っていて、再会して彼の元に走ったと知った。
　優衣にすれば息子を散々弄んで捨てた女だと思ったし、息子が不憫で悲しかった。
　一時は郁美に対して敵意を感じていたこともあったが、健二から枕話で聞かされる郁美の苦悩を知ると、徹が誰よりも郁美に愛されており、徹が誰よりも愛しているのは今でも郁美だと知ったのだった。
　そうなると今となっては嫁となった敬子の想いに気がつき、喪失の絶望の淵に落とされた息子を救ってくれたのが、他の誰でもない敬子であると悟った。
　その結果、優衣の敬子への評価は、とても好意的なものになって、敬子は優衣からも大切にされるようになっていった。

　郁美と健二の結婚を誰よりも喜んだのが克也であった。
　郁美への欲望をずっと失わずに持ち続けていた克也に対して、優衣は半ば呆れていた。
　優衣は、決して女性に不自由していない克也が、自分の子供達と同年代の郁美に固執する姿に激しい嫉妬を感じていた。
　郁美は健二の愛も、徹の愛も一心に集める存在であり、愛娘である環も姉のように慕う女性で有り、義理の娘となった敬子すら心酔して慕っていた。
　その上、夫の克也の愛すら得ようとしているのだ。
　優衣には郁美は彼女の大切なものを全てを奪おうとする女だと思えていたし、男達の行動に怒りを感じるより郁美に対する敵対心を抱くようになるまで、それほどの時を必要としなかった。

優衣　「健二さん　お久しぶり　全然会ってくれないなんて　ひどいわ」
健二　「そう言うなよ　関西支部設立で　忙しいんだよ」
優衣　「嘘つき　郁美ちゃん　奥さんにして　デレデレしちゃって」
健二　「おやおや　嫉妬してるの？」
優衣　「茶化さないで」
健二　「ふうぅ　まあ　優衣も　母である前に女ってことか」
　　　　「まあ　まさか　徹が　優衣の大切な息子とは知らなかったから」
優衣　「ひどいわ　わたし達だけでなく」
　　　　「それもこれも　郁美のせい」
健二　「それは違うな　俺のせいだよ　郁美は俺のせいで彷徨っただけ」
　　　　「徹は　そんな郁美に惹かれただけ」
　　　　「郁美は　なにも悪いことしてないよ」
優衣　「あなた達　男はみんな　郁美を甘やかしているだけ」
健二　「優衣にも　そのうち分かるさ　さあ　おいで」
優衣　「はぁう　そうやって　いつも騙される　はぁん」
健二　「君は忘れている」
　　　　「こうして今でも　俺と過ごせるのは誰のお陰だと思っているの？」
　　　　「克也さんが　どんなに郁美を恋い慕っていたって」
　　　　「思いを遂げることが出来るなんて　それだけで出来ると思っているの？」
　　　　「そして俺の子を　それまでの生活を壊さずに　いられるのは　誰のお陰だと思っているの？」
優衣　「そっそれは」
健二　「郁美は徹を裏切ったと　誰よりも自分自身を責めているさ」
　　　　「そして　優衣　君に申し訳ないことをしたって　思っているさ」
　　　　「徹のこと　そして　俺の妻になったこと」
優衣　「・・・・・・・・」
健二　「郁美は若いけど　俺が認めた女だ」
　　　　「そして誰より　オンナの業を身をもって知ってる女なんだ」
　　　　「君の立場にも　心痛めているだよ」
　　　　「そして君の俺に対する気持ちも」
優衣　「そんなことが」
健二　「確かに　郁美は　まだ子供を持ったこともない　若い女だけど」
　　　　「それだけ洞察力の優れた女なんだ」
　　　　「郁美が　舞の　本当の父親が俺だと知ったとき　なんて言ったと思う」
優衣　「そんなこと分からないわ」
健二　「郁美は羨ましそうな笑顔を浮かべて」
　　　　「君のこと　ずっと大切にして欲しいって俺に言ったんだよ」
優衣　「郁美ちゃん」
健二　「普通なら　嫉妬したり　怒ったり　俺に嫌味のひとつでも言うのが女だと思う」
　　　　「郁美は違う　そんな女なんだ」
　　　　「俺が現れなければ　郁美は　徹と幸せになった筈だ」
　　　　「そこに俺が割って入った」
　　　　「優衣が恨んだり　悪く思う対象は　俺なんだよ」
　　　　「郁美や克也さん　他の人ではないんだよ」
優衣　「わたしだって　郁美ちゃんのこと　徹　託してもいい人だって　信じていたの」
健二　「まあ　分かってくれればいいさ」
　　　　「そう言えば　ずっと　優衣に言っていなかったことがある」
優衣　「えっ　なによ」
健二　「舞を生んでくれてありがとう」
優衣　「えっそんな　急に　どうして」
健二　「うぅぅぅん　なんだろうね　最近　身近な女性が出産してね」
　　　　「赤ちゃん　見ていて　ああ　良いものだなって」
優衣　「えぇぇぇん　そんなぁ　泣かすなんて卑怯」
健二　「そういう女の涙って綺麗だよね」
　　　　「そう思っても　郁美と俺は　数年は子供作れない立場なんだから」
優衣　「そしたら　わたしがもう１人産んじゃう」
健二　「これこれ」

　健二と優衣はもつれるようにベットに倒れ込んで、愛し合った。
　既に４４歳となった優衣であったが、その肢体は３０代前半並みの美しさを保っており、肌は滑らかで惚れ惚れするものであった。
　「会」では優衣は３０歳代半ばと考えられていて、３人もの子供がいると知って驚く者も多い。
　健二にとっても優衣は使える人材で、優衣目当てで健二に取り入ってくる者も多くて、なにかと有益で重宝していた。
　克也と優衣、山田夫妻を「会」に誘い込んだ、ご隠居も優衣にゾッコンで、なにかと支援してくれて健二は大助かりであった。
　健二による「関西支部」設立がここまで遅れたのを庇って支援してくれたのは他ならぬ、ご隠居がおられたからで、これも優衣の存在あってのことであった。
　健二にとって、優衣は関西での地盤を支える存在であったから、優衣の気持ちは無視できない大切な配慮すべき事項であった。

　ご隠居は山田夫妻に出会った頃は、まだ現役で関西圏有名商社の会長職にあり、関西圏の「会」理事を務める大物の１人であった。
　ご隠居の紹介で、「会」に参加したハイソサエティ (High Society)の人達は数知れない。
　山田夫妻もその中の１組であったが、その人脈の広さは驚くべきものがあり、奥様を亡くされて高齢にも関わらず「会」に留まられたのは納得の人物であった。
　そのご隠居から健二は内々の頼み事を依頼されており、その約束を果たすのは今日だと考えていた。

　お互い汗まみれになるほど激しく愛し合った２人はベットの中で抱き合い、優衣は健二の胸に顔を埋めていて、指でその胸に指を這わせながら女の幸せを満喫していた。
　夫、克也とのセックスも情熱的で不満など無かったし、毎回逝きすぎて満腹感も満載であり、それに比較して「会」の知り合った夫達のセックスは優衣にとって物足りないものであり、その妻達が克也に心惹かれるのは当然との自負すらあったほどであった。
　そんな中にあって岩永健二は別格の存在であり、優衣の中では夫を凌ぐほどの存在となっていた。
　健二とのセックスは肉体的なものだけでなく魂の共鳴とも言うべき、深くて忘れられない素晴らしいひとときなのだ。
　だからこそ優衣はそのひとときのために、健二の命じるままに意に染まぬ男性に身を任せてきたし、その美しい肢体を多くの人々の前に晒してきたのだ。
　もちろん夫、克也への愛情を失ったわけでもないし、むしろ舞を生むことを選択をした自分を守り続けてくれた愛情を感謝していた。

優衣　「ねえ　あなたは　かわいい奥さん　郁美ちゃんを」
　　　　「克也さんに抱かれちゃって悔しくないの？」
健二　「それを俺に聞くの？　嫌に決まっているよ」
　　　　「だけど　俺は　そういうの　他人に推奨してきた男だ」
　　　　「優衣は克也さんの奥さん　郁美は俺の奥さん　ならば克也さんには権利がある」
優衣　「強がっちゃって」
健二　「とはいえ　郁美は克也さんに興味津々」
優衣　「やっばり　そうなんだ　でも　なんで？　オジサン好きなの？」
健二　「というか　徹のお父さんだから」
優衣　「それって」
健二　「そういう素敵な女なんだよ　郁美は」
　　　　「郁美以上に　俺に相応しい女はいない　ってことさ」
優衣　「信じているのね　羨ましい」
健二　「郁美は　ずっと俺を愛していてくれた」
　　　　「だから　俺はこれから　ずっと愛していくだけさ」
優衣　「うぅぅぅん　負けたわ」

　優衣は自分達の環境で、ありきたりの恋愛関係、奪ったり奪われたりなどというものは有り得ないと初めて悟った。
　男と女が肉体的快楽を求めて集まった社会的な集まりの中では、よりセックスが上手い男が、より肉棒が逸物の男が、そして魅惑的な肢体をした女が、より名器を持った女が、頂点を極めて楽しく過ごして生きる弱肉強食そのものの世界があるのだ。
【前】/【次】
あなたの一言が作者の励みになります！感想宜しくお願いします！
羅衣さんの作品群→羅衣さんの他作品
2014年11月8日掲載
Copyright (c) 2013-2015 羅衣 All rights reserved.
▲