ずっと愛してます３
羅衣 作
第１話 開幕


「関西支部」開幕の日が遂にやってきた。

　その日を迎えた岩永健二は、やや緊張の面持ちで来場客を出迎えていた。
　現役世代ではＴＯＰに登り詰めて以来、初めての公式の場でもあるので責任は重大であった。

　唯一の気がかりとすれば、一昨日から前入りして神戸に逗留している「５大老」筆頭であるゼウスの接待役として指名された郁美が帰宅していないことであった。
　もちろん携帯メールは定期的に入るのだが、正直気が気でない。

　ゼウスは健二をこの世界に入るきっかけをくれた恩師であり、イロハの基本を教えてくれた師匠でもあった。
　健二はゼウスの数百人もいる弟子の中では、ずっと中段レベルの地位に甘んじていたのだが、麻輝と美帆を育て上げたことが評価されてゴボウ抜きでＴＯＰクラスにのし上がった異色のタイプであった。

　そんな時に、ゼウス直々に「関西支部」開設を命じられたのだ。
　これはチャンスでもあったが、失敗すれば致命的失策となりうる博打でもあった。
　この任で神戸にやって来た彼の前に、いきなり幸運の女神が微笑んだ。
　ずっと追い求めていた女性、峰 郁美と再会することが出来て、遂に念願の結婚を果たしたのだ。

　健二は郁美という妻を得たことで、あらゆることが思うとおりに展開する幸運も手に入れた。
　郁美は失われた６年間で、あらゆる面で成長して美しくなっていた。
　彼女を軸にして、健二は「関西支部」開設に必要な人脈も獲得していった。

　彼女は絶対的な権力と富を欲しいままにしている「５大老」筆頭ゼウスの寵愛を受けて、前代未聞の大抜擢で「会」最高地位である女性調教師称号を与えられた。

　そのお陰で健二は、ライバル達を一気に突き放して、まだ３０歳代の若さで「会」最高地位の男性調教師称号を得た。
　健二の出世は、郁美、麻輝、美帆という３人のオンナ達に支えられたものであった。

　健二自身も自身のチカラで出世したわけではないという思いがあって、自己嫌悪に陥った時期があった。
　しかし彼女達が健二に対して一途な愛情を示して、どのような苦労も厭わず支えてくれる姿が彼を救った。
　彼女達は彼無しでは存在せず、彼女達は彼が育てた最高傑作であり、欠かせないパートナーであり運命共同体であった。
　そして彼の出世こそが彼女達にとって最大の悦びであったのだ。

　健二は、それ報いるには全身全霊で彼女達を愛し続けることだけであった。

　特に妻、郁美は男好きするフェロモン女王となっており、ゼウスですら夢中になっていて彼女に逢う為だけに頻繁に神戸にやって来るほどであった。
　師匠が愛妻を褒め称えてくれるのは誇らしい気持ちもあるが、明らかに妻を奪おうという願望が見え隠れするので油断ならない状態であった。


　黒い高級車の車列がロータリーに入ってきた。
　いよいよ「５大老」の面々来訪である。
「関東本部」から派遣された応援スタッフが一斉に整列を始める。
　健二の横には、徹・敬子夫妻、麻輝、美帆、真也、紗弥、葵、七海、美羽、優月、絢音がずらりと並び、正面玄関からは凌・亜紀夫妻が出迎える。

　ゾクゾクと「５大老」の面々が降りきて、まず１人目は七海、２人目は美羽、３人目は優月、４人目は絢音が同行して挨拶と自己紹介などを交わしながら、控え室に案内していく。
　最後に白いウェディングドレスかと思うようなドレスを身にまとった郁美を伴って、ゼウスが降りてきた。

　ゼウスは８０歳代とは思えない背筋もキリッとしていて、機敏に歩いて行く。
　未だかつてないほど上機嫌で、花嫁をエスコートするように腕に郁美を掴まらさせていたのだ。
　健二は、一目でやられたと思った。

健二 　 「ゼウス様」
　　　 　 「遠路ご来訪頂きまして」
　　　 　 「ありがとうございます」
ゼウス 「健二 関西支部開設 大義じゃ」
　　　　 「これはお主最大の功績じゃ」
　　　 　「しばし アテナを伴うぞ よかろう」
健二 　「アテナは オープニングに出番が」
ゼウス 「構わん キャンセルじゃ」
　　　　 「オープニングのパーティ終わるまでじゃ」
　　　　 「なんとかせい」
健二 　「かしこまりました」
ゼウス 「では 参るぞ アテナ」

　郁美は健二に目配せしながら、ゼウスに付き従った。
　健二は、その姿を見送りながら、郁美にちゃんと結婚式を挙げてやらなかった甲斐性無しを悔いていた。
　ビックリするぐらい美しくて、その隣に自分がいないということに怒りにも似た嫉妬心が荒れ狂っていた。

　今日のオープニングパーティは、健二、郁美、麻輝、美帆の昇格就任お披露目も兼ねていて、メインイベントで「郁美と黒人竿師との１本勝負セックスショー」が予定されていたのだ。
　予定変更が必要となったので急遽代役が必要であったが、シナリオとして女性の一本勝ちが想定していたので黒人竿師を圧倒する女性が必要であった。

　健二の頭の中では対処可能なキャストは麻輝、美帆、亜紀ぐらいであるが、亜紀は出産直後であり不可能であったし、麻輝と美帆は関東からの移籍組なので主旨から外れてしまうので手詰まりであった。
　葵はまだ快楽に自ら溺れてしまう状態なので無理であろうし、紗弥は帰国以来ずっと体調が優れないとのことでイベントには参加不可能であった。
　悠希、玲奈がいてくれたら助かるが、彼女達は遅れてやって来る予定で不在であった。
　とはいえイベントに穴は開けるわけにいかないので、やむなく美帆に頼もうと判断した時に声が上がった。

敬子 「健二さん」
　　 　「わたしがお姉ちゃんの代わりを勤めます」
健二 「えっ アフロディア（敬子）」
　　 　「このイベントは」
敬子 「大丈夫です 自信あります」
徹 　 「えっえぇぇぇ それは」
敬子 「お願いします 任せて下さい」
　　　 「お姉ちゃんを支えられるのは」
　　　 「わたしだけなんです」
紗弥 「ごめんなさい」
　　　 「わたしが頑張らなくちゃならないのに」
葵 　 「わたし 自信なくて」
敬子 「レアさん（葵） デメテル姉さん（紗弥）」
　　　 「気にしないで下さい わたし 出来ます」
亜紀 「アフロディアちゃん・・・・・」
健二 「うぅぅぅん 徹 どう思う」
徹 　 「個人的には反対だけど」
　　　 「確かにアフロディアしか いないのかも」
　　　 「アグライアさん デメテルさん」
　　　 「今はゆっくり休んで貰わないと」
　　　 「アフロディアが大丈夫というなら」
　　　 「グッと我慢して」
　　　 「ここはアフロディアの判断に任せます」
健二 「おお わかった 二人とも成長したな」
　　　 「田原さん アグライアさん どうですか？」
亜紀 「アテナは反対すると思う でも・・・」
凌 　 「うぅぅぅん 俺も徹君と同意見だ」
　　 　「分かった」
　　　 「辛いが 俺が全ての責めは引き受ける」
　　　 「俺が全責任を持つ」
　　　 「アフロディアちゃんは」
　　　 「俺がなにがなんでも守る」
　　 　「それに 俺は」
　　　 「アフロディアちゃんの言葉を信じるよ」
健二 「わたくしも 徹君と同意見です」
　　　 「田原さんと共に」
　　　 「わたくしも一緒に責任負います」
　　　 「アフロディア お願いします」
　　　 「よろしくお願いします」

　敬子は、遂に出番がきたと積極的に立候補したのだ。

　もちろん見知らぬ人達大勢の前でのセックス経験は皆無であったが、第三者に見られるという恥ずかしさを超越したゾクゾクとする感覚に興味があったのだ。
　何十人何百人もの人に見られる興奮は、どれほどなのか知りたかったのも本心で、初体験の黒人さんも興味津々であった。

　黒人竿師は無数の無修正ＡＶに出演している男優さんで、黒人ならではデカマラに加えて、しなやかな腰使いとパワフルなローリングピストンが魅力であった。
　実は彼が出ている無修正ＡＶをインターネットからダウンロードして、彼女は食い入るように鑑賞して秘部を濡らしていたのだ。
　敬子は郁美に代わってくれるようにおねだりしていたのだが、まだ我慢しなさいと諫められたので、渋々我慢していたのだが不意にチャンスが転がり込んできたのだった。
　もう彼女の脳裏では画面で見たパワフルなローリングピストンが繰り返し浮かび上がり、期待感で高揚していた。

　健二は、心の中で敬子を特別扱いしていた部分があって、意図的に対象から外していたところがあったことは否定出来ない。
　彼女は一生１度出会えるかどうかの逸材であり、大切に育てたいという気持ちが強かった。
　にもかかわらず彼女のテクニックは、もう既に超一流で、健二ですら何度も不覚にも逝かされてしまうものであった。
　テクニックは我流という天賦の才能をみせていて、彼女に足りないのは経験だけなのかもしれない。
　今のところ「５大老」は敬子をノーチェックであり、今回のことで早々に目をつけられてしまう恐れがかなり高くて、本来は先延ばしにしたかったのだ。

「仕方ないか・・・・・・本人がやる気満々だし」
「確かに 黒人経験するのも 悪くはない」


　郁美は、ゼウスの執拗な求愛をあしらうのに苦労していた。
　彼はいまだに本気で彼女を自分だけの女にしようとしていたのだ。
　経済的な誘惑も凄まじかった。
　なんと彼女を後妻に迎えたら、彼の莫大な資産の相続権の全てを彼女に与えるという遺言書まで示されていたのだ。

　先日は今日のドレスを揃えるために、神戸○丸百貨店を営業時間後に数時間に渡って貸し切りにして二人でショッピングを楽しんだ。
　郁美とて地方では有数の資産を持つ良家の出身で、ＶＩＰ室で思うがままブランド品をショッピングできる身分であったが、有数の百貨店を丸ごと借り切ってのショッピングは初体験であった。
　恐らく彼女が望めば、ゼウスはどんなものでもプレゼントしてくれるであろう。
　普通の女性ならば、心が揺らいでもおかしくない状況に晒されていたのだ。

　郁美は、女としては光栄であり嬉しく思っていたが、どんなに愛されても、その愛を受け入れるつもりは全く無かった。
　そのことは正直に何度も彼に伝えていたが、それがますます過剰な反応を引きだしているようであったから始末が悪い。
　そしてゼウスが弟子である健二に対して激しく嫉妬している様子を不思議な心境で見つめていた。

　彼は望めばどんなものでも、どんな女でも、手に入れることが可能な立場にありながら、郁美に固執して自身の半分も生きていない若造の弟子に嫉妬するという滑稽さが理解出来なかった。

　郁美自身は、自己分析では顔も肢体も普通レベルで、身長がないのでスタイルは中程度に過ぎないと考えていて、それも自分に甘めの評価だと思っていたので、ある意味自分自身の価値をかなり過小評価していた。

　いずれにせよ自身のお爺さんより遙かに年上のゼウスに対して、自分を可愛がってくれる愛すべきお爺さんと考えていて、それ相応に可能な限り夜伽のお相手は努めてあげようと考えていたのだ。
　なのでゼウスの一連の行動、求愛は、ただの欲張りさんとしか見ていなかったのだ。

　気がつけば２人の位置関係は、郁美が母親、ゼウスがおねだり盛んな子供ものような様相を呈していて、普段は彼女が遠慮して発言をあまりしないが、２人きりになると会話が母親が子供を宥めるようなものになっていたのだ。
　夜伽となれば８０歳代半ばになろうかという赤ちゃんが、彼女の肢体に縋り付いて離れないようなものであった。

　そして彼は彼女に抱きついたままで寝るのが大好きであった。
　正直、郁美は彼に腹上死されるのではないかと危惧していて、彼の健康管理も気遣うハメになっていた。
　結果、彼の乱れた食生活を正すため、献立などの権限を握って管理する仕事も抱え込んでしまったのだ。

　この状況によって、夫、健二の嫉妬心が刺激されて、激しい夫婦生活が活発化するという郁美にとっては嬉しい効果を生んでいた。
　夫が嫉妬に狂ってギラギラした目線を泳がす様子が堪らなく可愛く思えたのだ。
　ゼウスと出会う前まででも毎日複数回の夫婦生活はあったが、それでも彼女はまだどこか物足りなさを感じていたのだが、今は大満足であった。

　淫欲を満たす意味でもゼウスは素晴らしいテクニックで悦ばすが、彼女の淫欲が常識外れなほど深くなっていて若さに裏打ちされたスタミナとパワーがないと完全に満たすことは困難であった。
　このため老人の精は、毎回ありったけ彼女に吸い取られて、彼は眠りこけてしまうということの繰り返しであった。
　次第にゼウスは郁美に子供扱いされてしまうことになっていく。

ゼウス 「うぅぅぅむ 惚れ惚れする美しさじゃ」
　　　　　「予の地位も権力も財産も 全て やるから」
　　　 　 「わしの 後妻にならんか？」
郁美 　 「もう ゼウス様ったら 諦め悪いのね」
ゼウス 「諦められないのじゃ」
郁美 　 「ホントに 欲張りさんね」
ゼウス 「そちは 自分の価値を分かっておらん」
郁美 　 「ありがとうございます」
　　　　　「いつも褒めて下さって」
　　　　　「でも ご褒美は これ以上出ませんよ」
ゼウス 「わしが せめて あと２０歳若かったら」
郁美 　 「うふふ そしたら危なかったですね」
ゼウス 「わしは そちのようなオナゴを探すために」
　　　　　「「会」を作ったのじゃ ホントじゃ」
郁美 　 「はいはい 分かりました」
　　　 　 「はい こちらにお座り下さい」
　　　 　 「お疲れになったでしょう」
ゼウス 「むむ 小馬鹿にしよって」
　　　 　 「それ 舐めて狂わしてくれる」
郁美 　 「きゃっ もう あまり時間あれませんのに」
　　　 　 「ひぃ あふぅ あん」

　ゼウスは郁美をソファーに押し倒すと、ドレスをまくり倒して潜り込んで、秘部にたどり着こうとまさぐる。
　彼女は彼の指示で下着を着けていないので、たちまち秘部にむしゃぶりつかれてしまう。
　ペロリとクリトリスを舐めあげられると、たちまち身体に底無しの淫欲が渦巻き始めてしまう。
　ゼウスのクリニングスは絶品で、あっと言う間に快楽の泉に落ちて溺れていった。

「もう エッチなお爺ちゃん」
「今朝もあんなにしたのに」





　約１年間もの時間を費やして準備された「会」関西支部開設記念「第１回特別な集い」は、普通の立食パーティのようなお決まりの形でスタートした。

　まず「５大老」代表ゼウスによる関西支部開始宣言が行われて、続いてゾクゾクと幹部クラスの祝辞が行われていた。
　貴賓席に陣取る「５大老」の元には多くの者達が挨拶に訪れるが、女子会メンバーの若さと美しさが際立っていて、周囲からも溜息が漏れるほどであった。
「会」の大半は５０歳代以上が大半を占めていて、スタッフ以外では２０歳代の女性自体が稀な存在であったことに加えて、全員が芸能人で通じるほどの美形揃いであったことが驚きを誘ったのだ。

「５大老」に続いて訪問者が多いのは、やはり「会」で絶大な人気を誇る麻輝と美帆であった。
　彼女達によって夫婦関係が変わったという会員夫妻は多かったのだ。
　その代表格として、徹の両親である山田夫妻、克也と優衣の２人がいて、息子が「会」の一員になったことを困惑しつつ認めざるを得ない状況であった。

　親としての感情と「会」にどっぷり浸かった性生活との狭間で２人とも苦しんでいたのだが、新しく開設される関西支部の事情が見えてくる過程で、もはや手遅れであり後戻りが出来ない事態に陥っていると観念した。
　息子が愛を寄せる二人郁美と敬子が今や「会」で話題の人物となっている事実が決定的であった。

　克也に至っては息子の最愛の女性である郁美に執着し夢中で、優衣だけでなく麻輝にすらジェラシーを抱かせる有様であった。
　優衣は郁美に対して敵対的な感情が渦巻くが、彼女自身が健二の子供を形はどうあれ生んでいるという事実が感情のもつれを複雑にしていた。
　会って話せば郁美が性格的にも素敵な女性であることは同性である優衣には悔しいほど分かるのだ。

　その郁美が今では「会」の指導者であるゼウスに寵愛される初めて女性となっており、それは「会」にとって衝撃ニュースであった。
　そんな彼女をいち早く見つけて愛した息子の女性を見る目の確かさにも驚かされていた。

　息子の徹は、夫である克也の血を受け継いだスケコマシぶりを発揮して、母親の彼女ですら惚れ惚れする若者に成長していた。
　正直、徹をここまで成長させたのは間違いなく郁美の存在であることは疑いようなかった。

　彼女は、優衣がずっと忘れられない、そして今でも愛している男性の妻なのだ。
　優衣は、男の魂を惹きつけて食い尽くす魔性の女が郁美なのだと確信していた。
　そして更に驚かすことが、間もなく幕を上げようとしているとは知るよしもなかった。




　郁美の兄夫妻、峰 達也と恋(れん)も、パーティ会場を訪れていた。
　恋の気持ちは複雑であった。
　達也の望むまま付き従っているうちに、自ら望んではいない世界に深く足を踏み入れてしまったのだ。
　そして神戸にやって来てから、そんな世界に郁美と紗弥が名を連ねていることを知って、更にショックを受けていた。

　同じく郁美達の参加に驚く夫、達也であったが、彼のリアクションが恋を更に失望させるものであった。
　この時、今更ながら自分は、変態、アブノーマルな一族の一員になってしまったのだと思い知らされたのだ。
　夫が実の妹や逃げられた従兄妹の婚約者を未だに抱きたいと願っているという事実は、夫を愛している彼女にとっては悪夢そのものであった。

　達也が密かに抱いている禁断の欲望を察していた彼女は、その封印が解かれてしまうことをなにより恐れていたのだ。
　現実のあまりの過酷さに彼女は耐えかねて体調を崩して、会場の片隅に設置された椅子に身を寄せて座り込んでしまった。

　達也は、久しぶりに再会した美帆（マリア）との会話に夢中であった。
　彼女は、数年前に福岡で開かれた「会」特別イベントに特別ゲストで招かれて、その際に達也と初めて出会ったのだ。
　達也にとって、それまでに出会ったことがないタイプの女性像であり、なんといっても妹と同じ年ということが彼を夢中にさせた。

　以来、何度も彼女にプロポーズしたほどであった。
　その願いは叶えられず、偶然再会した恋に彼は救いを求めた。
　恋は身長が低くて童顔でありながら、その肢体はコンパクトグラマーそのものであって、彼の歪んだ肉欲を十分満たしてくれたのだ。
　実際、彼女は「会」では評判が高くて、ファンが多くいる人気妻であって、彼の自尊心を大いに満足させていた。



　徹は、まもなく始まろうとしているオープニングショーを見たくなかった。

　新婚だというのに妻が目の前でＡＶ黒人男優に抱かれるというシチュエーション自体が耐えがたいものだし、それが大勢の人々の前で行われるショーであることが常識的にあり得ないものだと感じていたからであった。

　もちろん狂おしいほどのジェラシーを感じていたが、想像するだけで自身では理解出来ない興奮が徐々に高まっていて、それを認めるのはまだ若い彼には耐えがたいものがあった。

　敬子が担うことになった役割は、そもそも郁美が行おうとしていたものであり、その段階から彼は困惑を隠せなかった。
　この爆発しそうな激しい肉欲をぶつけて満たしてくれる女性がそばに１人もいない現実が深刻であった。
　女子会メンバーは与えられた役割で手一杯であって、おもてなしする会員の奥様達もまだ夫達と同行している段階であった。

　そんな徹の心境などは女子会メンバーはお見通しで、若い彼をフォローしようと連携していた。
　亜紀と紗弥は体調が万全でないが、徹を心配して常に彼を１人にしないようにして気を遣っていた。
　そんな２人に対して、美帆から女子会同士だけで通じる目配せが送られたのだ。
　すぐに２人は徹を迷うことなく、美帆がキャッチしたシチュエーションを最大限に活用することにした。

亜紀 「徹 恋さんフォローしてあげて」
徹　　「えっ？」
紗弥 「達也さんの奥様」
亜紀 「そう 郁美の義姉 チャンスよ」
徹 　 「・・・・・・・・」
亜紀 「わたしの休憩室」
　　　 「誰も入ってこないから ご案内して」
徹 　 「はい なんか体調悪そうですね」
　 　　「わかりました」
紗弥 「癒してあげてね」

　徹は喧騒の中、恋に忍び寄っていった。

つづく
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あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2020年1月5日掲載
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