『自慢の妻』続編です

１．

「止めてくれ。頼む。」
　たけしは泣きそうな顔をしながら、久仁子にそう頼んだ。
「そう・・わかったわ。」
　久仁子は不満そうな素振りは見せずに、素直にペニスから口を離した。
　久仁子の手を離れたたけしのペニスは、力無くグニャと下を向く。
　今は日曜日の朝８時。
　いままで久仁子は、昨日の晩、一度射精をしたペニスを、もう一度使える状態にしようと努力していた。
　久仁子はそのまま何事もなかったかのように、着替えを済ませ、朝食を作るためにキッチンに向かった。

　久仁子たち夫婦が、３人の青年に会ってから暫くは、夫婦共に幸せな時期が続いた。
　久仁子は、３人に抱かれた目眩く快感を思い出しながら、たけしの方は、あの時の久仁子の歓びに震える肢体を思い浮かべながら、お互いに今までになかったほど興奮し、相手を激しく求めた。
　だがそれも、長くは続かなかった。だんだんと、たけしの方の精力が続かなくなってきたのだ。
　毎日、二度三度と性交を続けるうちに、たけしの精液のストックが無くなり、射精をしてもほとんど何も出せなくなった。
　そればかりか最近では、射精後に下腹部の鈍い痛みを感じるようになっていた。
　つまり、性的に興奮して久仁子を抱きたい気持ちはあるのだが、身体がついてこないのだ。
　昨日の晩も、久仁子の腹に飛んだ自分の精液の量を見て、たけしは我が目を疑った。
　それはほんの数滴が、先端から雫のように滴っただけだった。昔は何度射精をしても、久仁子の身体から溢れ落ちるほどの精液が迸ったのに。
　久仁子はその事については、一言も不満を漏らさなかった。
　たけしの事を全て知りつくしている久仁子は、彼の年齢からして、それが無理な事はよくわかっているのだ。
　だがどうしても我慢が出来ない、あの気絶するほどの陶酔をもう一度味わいたい。それが実態だった。

　朝食を済ませた後久仁子は、友達の家に行ってくると言って刺激の強そうな服に着替え、家を出た。
　たけしには、これから久仁子がどこに行ってなにをするのか、手に取るようにわかっていた。
　だがたけしには、久仁子を引き止める事も、彼女に縋り付くこともできない。
　もし今、久仁子を無理矢理引き止めようとすれば、久仁子はたけしと別れてでも３人の青年の元へ向かうだろう。
　そうなれば、たけしは何もかも失ってしまう。

　たけしは頭に浮かぶ映像をかき消すために、頭を左右に激しく振った。
　それは、何度かき消してもすぐに浮かんでくる。
　頭を振るたけしの脳裏には、男の子たちに抱かれて、狂ったように達し続ける久仁子の淫らな姿が、鮮明な画像となって浮かんでいた。

２．

　この日も４人は、ホテルで密会を楽しんでいた。

　素っ裸になった３人の青年が自分のペニスを扱きながら、熱く久仁子を見つめる。
　３人の輪の中心には、視線を一身に浴びて久仁子が立ち、彼らのそそり勃つペニスを眺めていた。
（「ああ、嬉しいわ。ありがとう、私の身体でこんなに興奮してくれて。本当に、ありがとう。」）
　この日久仁子は、身体にぴったりと密着したノースリーブの短いドレスを着ていた。
　その黒のドレスを通して、熟れた久仁子の肉体が浮き彫りになり、３人の燃えたつような性欲をさらに煽りたててゆく。
　前から見た久仁子は、大きくＵの字型に開いた胸元から豊満な胸の谷間が大胆に覗き、はち切れそうな胸の頂には、わざわざ選んだ薄い下着越しに、二つの乳首の突起がくっきりと飛び出している。
　後ろから見たその姿は、大きな尻に久仁子が狙った通りの魅惑的なパンティラインが浮かび、尻の部分に入った深いスリットから、白くむっちりとした彼女の太ももや、透け透けのパンティの一部が覗いていた。

　久仁子は３人に見せつけるように、ゆっくりとドレスの肩に掛かる部分を腕から外した。
　そして手を後ろに回して、ドレスのファスナーを腰のあたりまで引き下げる。
　下にずり落ちたドレスは、細いウェストを通過して、大きく張り出した腰の部分に引っかかって止まった。
　薄く透け透けのブラジャー越しに、丸見えになった久仁子の真っ白で豊かな乳房と、色の濃い乳輪を見つめながら、３人の青年はじりじりと久仁子に近づく。
（「凄いよ、久仁子さん。その身体。あぁ、あの大きな胸に顔を埋めて甘えたい。ううっ、あそこが痛い。もう溢れそうだ。」）
　３人は、既に触れないほど、ぎんぎんに勃起したペニスを跳ね上げながら、久仁子を取り囲む。
　やがて久仁子の元に集まった３人は、其々、彼女の唇、首筋、背中に優しく自分の唇を押し当てた。
「あんっ・・はあぁーーっ・・」
　久仁子が堪らずに深いため息を漏らすなか、３人は、久仁子のブラジャーのホックを外し、肩に掛かったストラップを下に落とす。
　そして、６本の手で久仁子の乳房を下から大きく揉み上げながら、彼女の首筋を舐め上げ、口の中に舌を差し込んだ。
　顔を桜色に染めた久仁子は、両手で竜也と徹平のペニスをゆっくりと撫で回しながら、二人の指と舌の愛撫をその乳房で受け止める。
　その間に秀明は、久仁子の足元にしゃがみ込み、彼女のストッキングを脱がそうとしていた。
　足を這う指の感触に、久仁子は片足を軽く持ち上げて、秀明の作業を助けた。
　太股までのストッキングを脱がすために秀明がドレスの裾を捲ると、中から熟れた女の匂いが、むんむんと漂ってくる。
（「ふぅーーっ、堪らない。なんて女らしい香り・・まるで、お母さんみたいだ。あぁ・・久仁子さん・・」）
　この匂いにどうしても我慢が出来なくなった秀明は、ドレスの前の部分を素早く捲り上げて、薄いパンティ越しに久仁子の股間を大きく舐め上げた。
　突然、感じやすい部分に柔らかい舌の感触を感じた久仁子は、「はあうっ！」と声をあげ、反射的に腰を後ろに引く。
　だが、すぐに笑顔を取り戻すと「だめよ。悪戯しちゃ。」と言いながら、秀明の頭を優しく撫でた。
　ストッキングを脱いだ久仁子は、その場で腰を何回か大きく振り、ドレスを下に落す。
　それからパンティ一枚の姿で、３人に見せつけるようにその魅力的な尻を左右に振りながら、ゆっくりとベッドに向かった。
　ベッドの端に座った久仁子は、ゆっくりとレースのパンティを脱ぎ、そのまま上体を後ろに倒す。
（「見て・・」）
　誘うような視線を３人に投げ掛けながら、仰向けに横たわった久仁子は、次に、自慢の両脚を揃えたまま高く上に持ち上げ、自分の身体を二つ折りにするような姿勢をとる。
　さらに、両腕を膝の後ろの部分へ回してそこに抱きつき、自分の胸に両脚を引きつけるような恰好で自らの身体を固定した。
　久仁子の真っ白な太ももの付け根に黒々とした陰毛が逆立ち、その下の、透明な液体が溢れるぷっくりとした陰唇が、ホテルのライトにきらきらと輝いて見える。
　そのまま静かに瞳を閉じた久仁子は、「すきにして・・」と小さな声で囁いた。

　濡れる秘部をさらし、奴隷のように自らの身体を差し出した久仁子のこの姿に、ギラギラと眼を輝かせた３人は、ゆっくりとベッドに近寄る。
　この時、３人のペニスは垂直に近い角度で勃起し、そこから更に先端部を上下に揺らして、それぞれの持ち主の引き締まった腹を勢いよく叩いていた。
　３人は手を伸ばして、久仁子の美しい生足を優しく撫でた。
　６本の手の感触に思わず頭を後ろへ反らし、「はあぁぁ・・」と深い吐息を漏らした久仁子は、そのままうっとりとした表情で微笑む。
（「さあ、どうぞ・・なにをしてもいいのよ。めちゃくちゃにして・・」）
　これを見た秀明と竜也の２人は、久仁子の足に唇を押し付け、足首からふとももに向かって、２本の舌をゆっくりと這わせ始める。
目をつむったままの久仁子は、これからやってくる目眩く快感を期待して、声もなく震える唇を大きく開いた。
（「ああ・・はやく・・お願い、はやくして・・」）
　この時もう一人の徹平は、静かにベッドの上にあがって、歓びに震える久仁子の顔にそっと唇を近づけていた。
　やがて、久仁子の足を滑り下りていた２人の口は、彼女の股間に到達し、其々、久仁子の感じる場所に吸いついた。
　秀明はベッドの脇に座り込み、下から舌で久仁子の尻の穴を擽る。
　竜也は、屈み込んで久仁子の陰唇を左右一杯に押し開き、その中に長い舌を差し込んだ。
「はっ！・・ああぁんっ・・」
　徹平は、恍惚とした顔で口を大きく開けている久仁子の唇を自分の唇で覆い、口から飛び出している久仁子の舌に、自分の舌を絡めてゆく。
「んっ！・・んむうぅっ」久仁子は３人の口から与えられる予想通りの幸福に、塞がれた口でくぐもった歓声をあげた。

　竜也は久仁子の身体により深く舌を差し込むために、顔を横に傾けて唇を股間に密着させ、先を尖らせた舌を一杯に長く伸ばす。
　それから、自分の頭を激しく上下させ始める。
「あんっ・・ああぁ・・いゃあんっ、それッ凄ッ・・あーーっ・・んんっーーっ！」
　久仁子の股間に竜也の唇がパンパンと激しく打ちつけられ、豊満な彼女の下腹部をプルプルと震わせている。
　竜也のこの精一杯の奉仕に、自分の脚を抱いている久仁子の両腕に思わず力が入り、指が白くなるくらい自分自身を更に強くぎゅうっと抱きしめた。
　そして、ブリッジをするように、ビクンッと頭を大きく後ろへ仰け反らせる。
　そのまま、首が疲れて動けなくなるまで舌の抜き差しを続けた竜也に代って、今度は秀明が久仁子の股間に顔を埋める。
　秀明は、脚を抱いていた久仁子の腕を解くと、彼女の股を大きく押し拡げ、その間に自分の頭を割り込ませた。
　久仁子が徹平と熱いキスをしながら、秀明の頭を優しく撫でていると、秀明の頭が激しく前後に動き始める。
「あうっ！・・アッアッ・・あっぐうぅーーっ！」
　たちまち久仁子の身体が反り返り、口から絶叫が飛び出す。
　秀明は指で久仁子の膨れた陰核を剥き出しにして、そこに舌の腹を押しつけ、そのまま凄い速度で頭を前後させていた。
　久仁子があまりの快感に身体を震わせながら悶絶する。それでも秀明は、疲れて動けなくなるまで執拗にこの運動を続けた。
「あぁ・・もう駄目・・お願い・・助けて。」
　秀明に代って徹平が久仁子の片足を持ち上げ、その股間に顔を潜り込ませた時、久仁子は横寝の恰好で身体をくの字に丸めながら、思わずこう弱音を吐いた。
「だめ、まだ許してあげない。もっと感じて。・・んっ・・んん。」徹平は女の子のような可愛い声で無情にもそう告げると、その舌を大きく躍らせ始める。
「あぁ・・あぁーーんっ・・くうぅーーっ！」
　久仁子は痺れるような快感に更に身体を丸めながら、徹平の頭をきつく抱きしめ、震える唇から尖った舌を突き出した。
　秀明と竜也の二人は、久仁子の悶え悦ぶこの姿を見て、嬉しそうに微笑みながらベッドに上がり、徹平の愛撫に加わった。

３．

　愛液でシーツをびしょびしょに濡らした久仁子が、ハァハァと大きく息を切らしながらベッドに寝転がっている。
　秀明が久仁子の足首を掴んで、上に持ち上げながら「今日はこの恰好で、気絶するまで突いてあげますね。」と言った。
　秀明は片手で久仁子の両足首を掴んで、両脚を伸ばしたまま高く持ち上げる。
　そして久仁子が最初にしたように、足首を彼女の頭の方に持っていって、久仁子の身体を二つ折りにした。
　それから、片手で自分のペニスを扱きながら、久仁子の尻を跨ぎ、その腰を下に沈めてゆく。
　秀明は、そのまま久仁子の股間に自分の太いペニスをゆっくりと挿入すると、足を下に伸ばし体重を久仁子に預けながら、腰を上下させ始めた。
　秀明の引き締まったバネのような全身が、激しく曲げ伸ばしを繰り返しながら、久仁子の濡れる陰部に太い肉棒を突き入れる。
「ハッ、ハッ、あんっ！、ハアッ、ハッ、あっぐぅっ！」
　秀明がその腰を下向きに突き入れる度に、久仁子の身体がベッドに深く沈みこみ、その口からかん高い悲鳴が漏れた。
　秀明は凄い勢いで久仁子の身体を突き続け、短い時間で絶頂に昇りつめる。
　直前で久仁子の股間からペニスを抜きとった秀明は、急いで久仁子の頭の側にまわり、彼女の口に自分の太いペニスを押し込んだ。
「うっ・・おおぉ・・うんっ！うんっ！・・んんーーっ！」
　そのまま、大量の精液を久仁子の口の中に噴上げる。口から溢れ出した精液は、彼女の首まで零れ落ちた。
　久仁子が必死で秀明のペニスを咥え、その精液を飲んでいる間に、代って竜也が久仁子の足を持ち上げ、彼女の中に入ってくる。
　竜也も先程と同じ姿勢で久仁子を押えつけると、その腰を上下させ始めた。
　そして同じように、激しく動き、短い時間で久仁子の口に射精する。
　続いて徹平も、やはり同じように久仁子の口の中に、凄い量の精液を迸らせた。
　触れただけで爆ぜてしまいそうに興奮していた３人は、取り敢えず一度、その溢れそうな精液を放出して、今度はやや落ち着いた状態で彼女の身体を使い始める。
「ハァハァ・・久仁子さん、どうですか？」
「あぁ・・もう蕩けそう・・あっ！・・そこ・・お願い・・もっと深く・・あんっ！・・ああぁ」
　３人は久仁子の上に覆い被さり、その両脚を肩に担いだまま、味わうように、大きくゆっくりと下半身をくねらす。
　そして、硬くバネのように弾力のある、そのペニスで、久仁子の内部を刳るように擦り上げた。
　彼らは、久仁子の相手をしている一人の性感が高まってくるとそのペニスを抜き、代って次の一人が彼女の身体にペニスを挿入した。
　そうやって射精間近になったペニスを交代でクールダウンさせながら、休みなく、順番に久仁子の身体にペニスを挿入し続ける。
　この無限に続く攻めに、久仁子の股間からは大量の愛液が滴り落ち、みるみるうちに彼女の尻の下を、びしょびしょに濡らしていった。
（「あっあぁーーっ！、凄いッ、もう駄目・・気が狂いそう・・このまま死ぬまで続けて・・お願い・・あっ・・おおぉ」）
　３人は我慢できずに、夕方までにもう２回づつ射精をしたが、若さゆえ射精後は、他の２人が久仁子に挿入している間に自分のペニスを復活させ、一時も彼女に休みを与えなかった。
　最初は、「アッアッ、気持ちいぃ、いいッ、あっあぁーーんっ！」と、かん高い歓声をあげていた久仁子だったが、そのうちに、「はうっ！、ぐうぅっ・・おっ、おっ・・おうぅーーんっ！」と、押し殺したような淫声を発し始め、遂には声もなく震える唇を大きく開いたまま、完全にイッたままの状態になった。

「そろそろかな。最後はいつものように、みんな一緒に入れさせて下さい。」
　自分の身体の下でビクッビクッと痙攣しながら、口から涎を流している久仁子を見て秀明がそう言った。
　久仁子の身体から一旦離れた３人は、今度は３本のペニスを同時に彼女に挿入しようとする。
　まず竜也が仰向けに横たわり、その上にやはり仰向けに久仁子を寝かせる。
　久仁子の股を拡げ、下からペニスを挿入した竜也は、さらに万歳をさせるような姿勢で下から久仁子の肩に腕を回し、彼女の身体を自分の上で弓形に反らせた。
　特に長いペニスを持つ竜也は、この姿勢でも、余裕を持って久仁子の身体にペニスを入れ続けることができた。
　次に、顎を突き上げ、頭を後ろに仰け反らせている久仁子の口に、秀明がそそり勃つ自分のペニスを差し込む。
　そして最後に、上向きに反り返っている久仁子の上から徹平が覆い被さり、既に竜也のペニスが刺さっている久仁子の膣口を押し拡げて、そこに自分のペニスを強引に押し込んだ。
「むっぐうぅっ」３人を同時に受け入れると、久仁子は苦しそうに呻き声を漏らした。
　すぐに、徹平と秀明がその腰を振り始める。

　同じ穴の中に差し込まれた竜也と徹平の二本のペニスは、キツキツの膣の中で、お互いに敏感な裏側をぐちゅぐちゅと擦り合わせる。
　久仁子の口に深く差し込まれた秀明のペニスは、彼女の喉奥のでこぼこした部分に、感じやすい亀頭部を擦りつけていた。
「ハァハァ、久仁子さん、すぐに熱い精液を中に流し込んであげる。」「ううっ、もう我慢できない。いい、久仁子さん、思いっきり出すよ。」
　３人は久仁子の身体を使い、最後の絶頂に向かって昇りつめてゆく。
　やがて、久仁子の上に乗る徹平が彼女の身体にしがみつき、その腰をぴくぴくと震わせた。
　同時に、久仁子の下の竜也が腰を大きく跳ね上げる。
「おおぉ・・うんっ！、うっ！、んーーーっ」「あうっ！・・ううぅーーっ！」
　３人の結合部では、２本のペニスがビクンッ、ビクンッと激しく脈打ち、差し込まれた膣の隙間から、ぼこぼこと大量の精液が溢れ出していた。
　やや遅れて、秀明が久仁子の頭を抱きかかえながら、その身体をくの字に折り曲げた。
「おうっ！、あっ！、あんっ！、あっあぁーーっ！」絶叫を吐きながら、久仁子の喉に熱い精液を噴上げる。
　秀明は、絞り出すようにその身体を何度か上に跳ねあげながら、残りの精液を久仁子の喉奥に迸らせた。

４．

　久仁子がよろよろとした足取りで自宅に戻ったのは、午後９時すぎだった。
　昼前から始まった４人の狂乱の交尾は、延々と８時間以上続いた計算になる。
　久仁子は玄関を入ると、尻餅をつくようにそこに崩れ落ちた。
　腰が抜けたようになっている久仁子は、身体に力が入らず、一度座ってしまうとすぐには立ち上がれない。
　後ろを振り向き、家の奥を覗き込んだ久仁子が、ギクッとその身体を強張らせた。
　開け放たれた居間の奥、真っ暗な室内から、じっとこちらを睨んでいる瞳がある。
　昼から身じろぎ一つせず、ずっとそこで久仁子の帰りを待っていた、たけしの瞳だった。
「あ、あなた・・」
　たけしはゆっくりと立ち上がると、玄関の方に歩いてくる。
　久仁子は結婚して初めて、たけしに恐さを感じていた。
　殴られる。いや、殺されるかもしれない。久仁子は直感的に、そう感じていた。
　いつも久仁子に優しいたけしは、彼女に暴力をふるった事など一度もない。
　だからこそ、今のたけしは一層恐かった。
　久仁子に近づき、手を伸ばしたたけしに、久仁子はびくっと飛び上がった。

「大丈夫か？」たけしは静かにそう言うと、久仁子に手を差し伸べる。
　久仁子が、おずおずとたけしの手を握ると、たけしは「疲れただろう。」と言いながら、彼女のウェストに腕を回し、久仁子をゆっくりと立ち上がらせた。
　そして、久仁子から視線を外したまま「明日も会うのか？」と、ゾクッとするような穏やかな声で、久仁子に問いかけた。
「・・・・」久仁子はどう答えたらいいのか、わからなくなり、言葉を失っていた。
　たけしが独り言のように勝手に話し始める。
「最初は俺も嬉しかったんだ。お前の悦ぶ姿を見て。でもそのうちに、取り残されてゆくような気持ちになった。お前が３人に夢中になって、俺の事を忘れていくような気がして・・」
（「この人は何もかもわかっている。その上で我慢して・・」）
「ごめんなさい、あなた。嘘をついて。二度と・・二度と会わないから、許して下さい。」久仁子は必死で謝った。
「お前が悪いんじゃない。元はといえば俺が始めた事だ。」たけしは自分に対して怒るようにそう言った。
「うっうっ・・ごめんなさい・・あなた・・うぅっ・・ごめんなさ・・い・・」
　いつしか久仁子は床の上に座り込み、声を上げて泣き出していた。
「わかった。もういいよ。お互い、今日の事は忘れよう。」
　たけしは、小さな声でそれだけ言うと、一人で寝室に上がっていった。

　それからの久仁子は、表だって家を空けたり、長い時間外出したりすることは無くなった。
　だが、久仁子の感情をよく知るたけしは、まだ久仁子の事を疑っていた。
（「あの歳になって、自分を喜んで抱いてくれる美しい青年にめぐり逢えたんだ。きっと諦めきれないだろう。」）
　ある日たけしは、買い物に出かける久仁子の跡をつけることにした。
　たけしが久仁子に気づかれないように、距離をあけながらその後について行くと、久仁子は商店街から団地のある方角に向かって歩いてゆく。
　久仁子はそのまま、団地の真ん中にある大きな公園のトイレに入った。
　今の夕方の時間帯は、公園には人影も無く、ひっそりとしている。
　１０分ほど待っても久仁子が出てこないので、たけしはそっとトイレの裏側に回り、壁に耳を近づけた。

「・・・お願い・・もう一度、勃てて・・」中から微かに久仁子の声が聞こえてくる。
「あぁ・・久仁子さん・・」若い男の声も・・。
　しばらくすると中から、一際大きな久仁子の絶叫が響いた。
「あっ！・・そのまま奥まで・・おおぉ・・あっうっぐうぅーーっ！」
　それから３０分にわたって、公園のトイレからは、押し殺した男女の喘ぎ声が聞こえていた。
　やがて静かになったトイレから、何食わぬ顔で久仁子が出てくる。
　そのままたけしがそこで見張っていると、５分後に秀明もトイレから出てきた。
（「こんな事をしてまで、やりたいのか・・」）
　たけしは、あまりのショックに、その場に座り込んでいた。
（「あの久仁子が・・」）
　きれい好きで、シャワーを浴びてからでないと性交渉を許してくれなかった、昔の清楚な久仁子を思い出し、たけしは眼から涙を流していた。

　それからたけしは、こんな事はもう止めてくれ、と久仁子に何度も言おうと思ったが、どうしても話し出せずにいた。
　何日かして、久仁子がまた買い物に出かけた。やはり今回も、表面上は平静を装い、いつも通り買い物に出かける素振りだ。
　たけしは、もう調べたりしないほうがいいと思いつつ、やはり久仁子の行動を確認したい気持ちを押さえきれず、彼女の跡をつけてしまった。
　買い物を終えた久仁子は、家とは反対方向の商店街のはずれに向かって歩いて行く。
　やがて久仁子は、一階の店が閉店となり、今は建物全体が使われていない雑居ビルの非常口に向かった。
　たけしが隠れて覗いていると、久仁子は入り口を入り、エレベータ横の非常階段を登ってゆく。
　たけしがしばらく間をおいてから、非常階段のある扉を開けると、２階と３階の間の踊り場の辺りから、久仁子の声が聞こえてきた。
「あぁ・・あんっ！・・きて、お願いッ！・・あっうぅ・・そのまま中に出して・・溢れるまで流し込んで欲しいの。」
　下からそっと声のする場所を見上げると、久仁子が壁に手をつき、尻を後ろに突き出して、その身体を男に捧げている。
　久仁子の背後に立った男は、久仁子のパンティを下にずらし、スカートを大きく捲り上げて、彼女の白く豊かな尻を抱きかかえている。
　腰を前後させながら、夢中で濡れ光る長いペニスを久仁子の身体から出し入れさせているその男は、あの竜也だった。
（「やっぱり・・」）
　予想していたとはいえ、二人の獣のような情交の場面を目の当たりにして、たけしの胸の内は、やりきれない気持ちで一杯になっていた。
「うっうぅ・・久仁子さん、凄い。まるで・・吸い付くみたいだ。うんっ・・うおおぉ」
　竜也は我慢できなくなってきたのか、久仁子の背中に上体を預け、ウェストに回した両腕で彼女にきつく抱きついたまま、凄い速度でその腰を波打たせ始めた。
　久仁子は「きゃあぁ・・あっぐうぅーーっ！」と鋭い嬌声をあげながら、頭をビクンッビクンッと後ろへ仰け反らす。
　やがて、竜也はその身体を二度三度、小さく跳ね上げながら、久仁子の内部に精を放った。
　二人は果てた時の姿勢のまま、しばらくハァハァと荒い息を整えていたが、そのうちに、久仁子が首を後ろに捩り、竜也が前に屈み込んで、お互いの唇を合わせ、熱い口づけを始める。
　長く情熱的な口づけの後、竜也が上体を起こし、久仁子の腰を掴んで、再び自分の腰を振り始めた。
（「まだなのか・・いったい何度やれば気がすむんだ。」）
　竜也は額に汗を光らせながら、若く疲れを知らない身体で、その腰を機械のように速く規則正しく、動かし続ける。
　竜也のペニスが久仁子の股間に突き入れられる度に、彼女の膣から先程放たれたばかりの精液が溢れ出し、久仁子のふとももを伝って足首にまで流れ落ちた。
「あんんっ・・お願い・・おっおぉ・・もっと・・もっと頂戴・・」
　久仁子は身体を揺すられながら、虚ろな顔で譫言のように、ただそう繰り返していた。
　たけしはこの耐え切れない光景に、思わず目を閉じ、顔を背ける。
　そして、悲しみに沈んだ顔で階段を下り始めた。