【レベル　４　】

　今日は、久しぶりに目覚まし時計の音で目を覚ました。
　実家に帰った瞳ちゃんから、夜に珍しく電話が入り、今日は母親の代わりに親父の病院にいかないといけなくなったので、起こせないからごめんなさいとのことだった。ご飯も、昨日のうちに、サンドイッチをつくって置いていってくれて、それを食べてくれとのこと。
　瞳ちゃんがいない朝に違和感を覚えながら、ノタノタと階段を降りる。
　店復旧作業は、案外順調で、今日は新しい棚をどうしようか、考えるつもりだった。
　前の棚は親父の手作りだったらしい。よく三十年もったモンです。
　サンドイッチをつまみながら、薄暗い店を覗いていて、あることに気づいた。
　この店の本棚、全部親父の手作りじゃないか・・・・・・

　昼過ぎ、これは相談した方がいいと、親父の入院している病院に向かうことにする。
　一つ崩れたのだから、他のもいつ崩れるかわからない。もしかしたら、今回の事故も棚が寿命だったからかもしれないのだ。
　親父が仕事用に買った軽ワゴンに乗っていざ、病院に。
　四人部屋の病室に入ると、首にコルセット巻いた親父と、瞳ちゃんがいた。二人とも、顔に似合わず難しい話をしてるっぽい。
「やっほ、どうしたの、二人とも」
　と入ったのに気づかれなかったので、声をかける。
「あ、こじろ〜、さん。どうしたんですか？」
　思わずさん付けを忘れそうになった瞳ちゃんが、僕の登場に驚いている。親父は顔が動かないので、目だけ動かし、手をあげて挨拶してきた。
「店のことで親父に相談があったんだけど、そっちもなんかあったの？」
　さっきの二人の顔は、世間話って感じじゃなかった。
「えっと、お義母さんが、応援で青森にいっちゃったんですよ」
　それだけなら、別に驚くことじゃないと思う。デザイン事務所に勤めているお袋は、その関係でよく出張しているし。お帰りは未定とのこと。
「で、タケのヤツも、事件の関係で今日の朝、出張しちまったんだって」
　警察官で刑事な兄、犯人護送と証拠の引渡しとかで、福岡に出張したらしい。こっちは明後日には帰ってくるそうだ。
「何が問題なの？　瞳さんが親父の世話が嫌だっていうなら別だけど」
　まぁ、お袋は、会社に行く前に、親父のところに顔を出して、洗濯物とかを持っていっていたようで、それを瞳ちゃんがやることになるくらいしか、問題点がわからない。
「ちがうよ、バカ。今日、瞳さんがあの家に一人になるんだよ。それが心配でなぁ」
　バカ呼ばわりは不本意だけど、そのことに気づかなかったのは、たしかにバカだ、僕。
「で、でも大丈夫です。私だって、大人なんですから」
　と似合わないガッツポーズをしてみせる瞳ちゃん。でも、親父の顔は曇っている。親父、心配性なところがあるからなぁ。
「じゃあ、今日は僕が実家に顔だすよ、それでいいんじゃない？」
　と僕が言うと、親父は、その手があったかと言って、瞳ちゃんにそれでいいかと同意を求める。
　瞳ちゃんも、それなら安心ですと喜んでくれた。
　その後は、僕は自分の用件、本棚について親父に相談をする。親父も同意してくれて、棚を全部変えてみるかと言ってきた。その際、どのくらいの金がかかるか調べることになり、また後日報告にくるということで、僕の相談は終わり。
　じゃあ、と瞳ちゃんと一緒に、親父の病室を後にする。
　横を歩く瞳ちゃんは、僕がマジメに古本屋再建に向けて頑張っているのが嬉しいらしく、自慢の弟です、と言ってくれた。
　ついでだからと、瞳ちゃんを送ろうと思ったんだけど、帰りにデパートで買い物していくからと断られた。
　夕方に、家に行くと約束し、瞳ちゃんとはその場で別れ、僕は自分の家に戻った。
　その後、ネットで本棚の値段について調べたりしているうちに、あっさり夕方になった。
　三日ぶりの実家、こんなに短いスパンで来たの、久しぶりだ。自立して、三年ちょっと、近いし親の方からよく来るので、どうも脚がこっちに向かないのだ。
　インターホンを押すと、僕の来訪を察したのか、瞳ちゃんがドアを開けて迎えてくれた。かわいいエプロンを着たその姿は、いかにも若妻って感じだ。
「お帰りなさいです、こじろ〜」
「うん、ただいま」
　こっちの家は、兄が建てたようなモンで、僕はあんまり実家って印象がない。でも、笑顔で迎えてくれる瞳ちゃんを前にすると、自然にただいまと言えた。
　二階が兄と瞳ちゃんの家、一階が親父お袋の家って感じの二世帯住宅。一階にあるダイニングキッチンに、連れていかれると、もう夕食の準備が出来ていた。
「こじろ〜も、もっとこっちに来たらいいですよ」
「なんか、メンドくさいんだもん。来る用もないし」
　親と一緒の時には見せない明るさで、僕をもてなしてくれる瞳ちゃん。初めて使う、僕用の茶碗に、ご飯をよそって渡してくれる。瞳ちゃんが用意していてくれたモノだそうだ。
　二人だけで、この家で向き合ってご飯を食べるのは、初めてで不思議な感覚だ。
　いつもより張り切ったという夕食をたくさんいただいた後、居間でやることなくテレビを見ている僕。瞳ちゃんは、食器の後片付けやら、お風呂の準備やらでセカセカと動きまわっていた。家事をする瞳ちゃん、楽しそうだなぁ。
　その後、店にあるのより、倍以上広い風呂に入って、用意してくれたパジャマに着替えて、同じく湯上りの瞳ちゃんと一緒に、居間でコーラを飲む。二人とも、信じられないくらいの下戸だったりする。
　テレビをいっしょに見ていると、たまたま映ったのが、心霊特集的な番組。
　僕はこの手の番組好きなので、そっちに神経を集中させていると、いつの間にか、瞳ちゃんがピッタリ隣に寄り添っていた。
「怖いとか？」
　訊いてみると、泣きそうな顔で何度も頷く瞳ちゃん。顔を背け、テレビを見てないのに、音だけでキャーキャー騒いでいる。
　そんな瞳ちゃんが可愛いので、抱きついてきた瞳ちゃんをヨシヨシと慰めていると、湯上りの香りが、ふと鼻腔をついた。
　初めて感じる、瞳ちゃんの匂いに、欲情が鎌首をもたげる。
「ねえ、おね〜ちゃん」
　テレビを消して、顔を上げてもらう。そして、ずれていた眼鏡を、瞳ちゃんから外した。
　その行為を意味を察したのか、瞳ちゃんは途端に頬を上気させる。いつもと違うシチュエーションに戸惑っているみたいだ。
　でも、無言で、僕の股の間に座りなおす。見上げた瞳が、あの台詞『眼鏡を外したおね〜ちゃんは、何でも言うこと、きいてあげますよ』と言ってくれている。
　今日はＴシャツじゃなくて、大人しい色のパジャマを着ている。
　なので、パジャマのボタンを一つ一つ、ゆっくり外していく。驚くほど白い肌が、光の下に晒されていった。
「おね〜ちゃん、オッパイ見ていい？」
　散々さわっておいて今更って気もするけど、一応訊いておく。この瞳ちゃんを抱えるような格好で、彼女はどうやら僕に背中からもたれかかるのが好きらしく、身体を預けて、
「おねーちゃんには、好きなことして、いいんだよ・・・・・・」
　と恥じらいに頬を染めながらも、小声で言ってくれる。
　許可ももらったので、ボタンを全部外し終えたパジャマの上を、ゆっくり開いていく。昨日、手で実際に味わっていた瞳ちゃんの乳房を、じっさいに目の当たりにできた。
　小ぶりだけど、形がいい乳房、そして予想通りに大きかった乳首を、予想以上に大きかった乳輪がそこにはあった。それがアンバランスであり、妙なエロっぽさをかもし出しているように見える。
「やっぱり、大きかったんだ、乳首」
「は、恥ずかしいから、言わないの・・・・・・」
　まださわっていないのに、瞳ちゃんの胸は軽く隆起を繰り返していて、乳首は見ているだけで硬さを増しているのが分かる。
　遠慮なく、胸を愛撫させてもらうことに。
　昨日よりもさらに可愛い反応で、瞳ちゃんは僕の愛撫に応えていく。軽い絶頂を胸だけで何度も迎えていそうだ。
　瞳ちゃんのトロンとした眼差し、脱力した身体を見ていると、欲望がさらに加熱していくのがわかる。耳たぶを軽く噛む。耳の裏に舌を這わせる。
「おね〜ちゃん、いい匂い」
　首筋に唇を持っていき、うなじに鼻をうずめる。洗い立ての髪の匂い、かいでいると酔いそうな気がする。
「はぁ・・・　甘えんぼすぎです、こじろ〜は・・・・・・」
　胸を揉むのをいったん止めて、瞳ちゃんを後ろから軽く抱きしめるようにする。落ち着いてきたのか、瞳ちゃんはまどろんだように、僕に寄りかかって気持ちよさそうだ。
「ねぇ、おね〜ちゃん」
　ここ数日の瞳ちゃんとの行為の中で、わかったこと。他人に聞かれたら悶死するくらいの甘えた声を出した方が、瞳ちゃんは嬉しいみたい。
「ん、なんです？」
　今の二人の状態は、絡まったように抱き合っているって感じ。思いのほか、近い顔、淡く微笑んだ瞳ちゃんの唇が目の前だ。
「もっと、おね〜ちゃんとベタベタしたいんだけど」
　言い方も子供っぽくして頼んでみる。すると瞳ちゃんは、少し考えるように、視線を巡らせると、
「じゃあ・・・・・・」
　と口を開いた彼女が提案したのは・・・・・・

「こんな感じだったんだ」
　瞳ちゃんをお姫様ダッコした状態で、二階にあがり、導かれたのは兄と瞳ちゃんの夫婦の寝室。
　初めて入る部屋には、ベットが二つ、並んでいた。ダブルじゃないんだ、って聞いたら、兄が寝相が悪すぎるので一緒に寝るのは不可能だとのこと。そういえば、アレの寝相は凄かったっけ。
　ベットのほかには、枕元に小さなスタンド置きがあるくらで、物があまりない部屋だ。本当に寝るだけって感じだ。
　不思議なんだけど、こういう夫婦の性行為を連想させる部屋に連れてこられても、感心こそすれ、嫉妬とかその辺りの感情が湧いてこない。
「右が、おねーちゃんのベットですから」
　と言われ、そのまま瞳ちゃんを運んで一緒に座る。グリーン基調のシーツ、これは瞳ちゃんの趣味かな。
　そのまま、えいっと瞳ちゃんを押し倒す。この体勢は初めてだ。改めて、パジャマの前を開いて、あらわになった乳房を、改めて見直させてもらう。
「ジロジロみると、恥ずかしい、ですよ・・・」
　さっきも確認したけど、瞳ちゃんのオッパイは、形は小ぶりで乳輪はその乳房の三分の一くらいの大きさ。乳首も身体に似合わず、大きめで色も黒ずんでいる。綺麗とは言えないけど、妙な色っぽさがやっぱりある。
　僕はそのまま、乳房に顔を埋める。ムニュっとした感触が頬にあたる。そして、目の前に形が見えないくらいに間近にある乳首に、唇をつけた。軽く吸い付く。
「あ、あん・・・・・・　こじろ〜、赤ちゃんみたいですよ」
　大きい乳首を、舌先で突っつき、唇で挟み、舌で舐める。その度に、瞳ちゃんは、身をよじり、いつもは我慢する声を上げ、反応してくれる。
　瞳ちゃん、今日は、いつもより大胆になってる気がする。汗の味が、舌先に感じられ始めた。
　唇に含んだ、乳首の感触。これ以上ないってくらい、硬く尖っているそれを、強く吸う。
「お、オッパイ、吸わないの・・・・・・　こじろ〜は、弟で、赤ちゃんじゃないんだよ」
　あえぐ声の中、切れ切れにそう言って笑う瞳ちゃん。
　その彼女の嬉しそうな顔を見て、今の僕らの状態が、普通の性行為じゃないんだなぁ、と改めて感じさせられる。
　多分、瞳ちゃんにとって、今の行為は、性行為の範疇に入っていない。だから、夫婦の寝室に躊躇いなく僕を招きよせられるのだろう。
　僕は、傍からみたら、性行為にしかみえない僕の愛撫も、彼女にとっては「Ｈなことをして、甘えている」と感じているのだろう。
　その彼女の考えも、あながち間違っていない。今、貪るように胸にしゃぶりついて、唾液を乳房に塗っている僕も、こうやっていることに興奮と同等の、幼い楽しさを味わっている。
　僕らの間には、人から見たら歪んでみえる、不可思議な感情が生じている。多分、愛情とも友情とも違う、僕らにしかわからない、それ以上の強い感情。
　僕は飽きることなく、瞳ちゃんの乳房を愛撫し続けていた。