【レベル　？】

　胸を唾液まみれにした後、瞳ちゃんに怒張しまくった僕のを、射精させてもらい鎮めて、二人で抱き合うようにして、そのままベットに潜り込んだ。
　どちらともなく自然な感じで、同じベットで一緒に寝る流れになった。壁に備えつけた時計で、二時間以上、瞳さんを楽しんでいたのに気づき、少し驚いた。
「おねーちゃん、クタクタですよ」
　と笑って、僕の腕の中で丸まるようにして眠っている瞳ちゃん。まだ、寝息は聞こえないので、まだ寝ていないみたいだ。
　この機会なら、と僕はここ数日、考えていたことを訊いてみることにした。
「おね〜ちゃん、起きてる？」
「はい、起きてますよ」
　と目をつぶりながら、気持ちよさそうにこたえる瞳ちゃん。
「訊きたいことあるんだけど、いいかな？」
「訊きたいこと・・・？」
　そこで、僕の腕を枕にしていた瞳ちゃんが、ゆっくり目を開けて、僕を見た。そのまま少し考えるように目を瞑ると、
「・・・・・・その前に、おねーちゃんのお話、聞いてくれるかな？」
　と、微笑んで言った。僕はその微笑みの中に、瞳ちゃんが今まで見せたことの無い悲哀の色を感じ、黙って頷く。
　瞳ちゃんが、語り始めたのは、彼女自身の話だった。

「おねーちゃん、男運、めちゃくちゃ悪いんだ・・・・・・」
　そう言って始まった、僕の知らない瞳ちゃんの話。
　大学まで、ずっと女子校に通っていた瞳ちゃん、男性と付き合ったのは社会に出て一年目の二十二歳の時だったそうだ。
　何の会社か知らないけれど、同じ部署にいた十歳年上の男性が、瞳ちゃんにアプローチしてきた。
　男性についてまったく免疫がなく、しかも箱入りのお嬢様だった彼女は、その男に優しくされて、すぐにまいってしまったそうだ。
　初めて身体を重ねて、その身体をあずけることが愛情の確認だと信じて、その男との交際は二年近く続いたそうだ。その時、色々とアブノーマルな体験もしたとか。
　でも、デートもろくにせず、身体だけの関係にようやく疑問をもった瞳ちゃんは、意を決して、彼に訊いた。自分との関係はなんなのかと？
「自分は、結婚している。お前とは、ただの遊びだ、って・・・・・・」
　頭真っ白になってしまい、そのまま会社を辞めて、その男の前から逃げた、と瞳ちゃんは笑った。
「好きだから、えっちなことしてるんだって思ってたんですけど、えっちは、好きじゃなくても、出来るんだって、初めて知りました・・・」
　淡々と語る瞳ちゃん、平静を装ったその声が、かえって僕の胸に刺さる。
　それから一年、心の傷がようやく癒えかかった瞳ちゃんは、親御さんの伝手で、小さな経理会社に勤め始めたそうだ。
　そこで、同じ歳の同僚の男性と、自然な感じで親しくなり、一年後、その男性と交際を始めた瞳ちゃん。
「映画が好きな、大人しい人でした」と、その男性について瞳ちゃんは言った。でも、その男は付き合い始めてから三ヶ月くらいしてから、お金を無心しはじめた。最初は一万、二万。その後、親が病気になった、手術代が払えないと十万、二十万。株の投資に失敗したと百万、二百万と無心の額は大きくなっていく。
　結婚をしよう、と言ってくれたので、その言葉を信じて、瞳ちゃんは何とか努力してお金を工面し続けたらしいけど、それも限界が来た。すると、その男は、会社の金の横領をはじめた。瞳ちゃんも、いつの間にか、その犯罪に加担してしまっていたらしい。
　それも、愚直に男を信じたから。
　そのまま二年が過ぎて、犯罪が露呈した。
　瞳ちゃんも、その男の共犯として捕まってしまったそうだ。警察で、事情を聞かれた時に、男は自分を利用して得た金で、他の女に貢いでいたと知らされた。
　あまりのショックに、瞳ちゃんはその場で昏倒してしまった。
「・・・・・・そのまま、死んじゃえばいい、って思っちゃいました」
　でも、目が覚め、突きつけられた現実。心が耐え切れなかった瞳ちゃんは、精神病院に入院することになった。
　事件は、損害額を瞳ちゃんのお父さんが払い、−瞳ちゃんの家は、けっこうな資産家だったりする−、罪に問われることにはならなかったけど、瞳ちゃんの心の傷は、簡単に治せないほどになっていた。
「一年間、喋れませんでした」
　いまでも、瞳ちゃんの言葉使いがたどたどしいのは、その時の後遺症なのだそうだ。
　二度も男性に裏切られ、自殺も考えたけど、それは怖くてできず、ベットの中で無為に日々を過ごしていた瞳ちゃん。その瞳ちゃんを何度もお見舞いする男がいた。事件を担当した刑事、僕の兄だ。反応してもらえなくても、兄は週一度、足しげく瞳ちゃんのモトに通ったそうだ。
　兄にとって、瞳ちゃんの事件は刑事になって最初に担当した事件だった。その取調べの時、彼女のことを考えず、厳しい取調べをしてしまい、その過程で彼女が入院することになってしまったのを、物凄く悔いていた。
　その兄を見初めたのが、瞳ちゃんのご両親。親御さんに請われ、退院したあとも、瞳ちゃんの家に訪れていたそうだ。それで、あの鬼瓦は、瞳ちゃんをゲットできたのか、納得だ。
　気力が戻らない瞳ちゃんは、よく過去のことを思い出し、夢想の中で暮らすことが多くなっていた。
　彼女が一番好きだった夢想が、子供のころ、自分が弟とか妹の世話をする世界での話。本当なら、瞳ちゃんには弟か妹がいたらしい。早くに流産してしまったので、生を受けることはなかったそうだけど。その子が生まれていたら、どうなっていただろうかと、瞳ちゃんは空想で楽しんでいた。
　ある日、瞳ちゃんの家に懲りずに来た兄が、自分の家族の話を始めた。道楽親父と機関車母について、そして自堕落な弟について。
　初めて、瞳ちゃんは兄に興味を向けた。僕の話についてだった。それから、しつこいくらい、僕の話を兄にせがんだそうだ。知らなかったけど、瞳ちゃん、僕のことを恐ろしいほど知ってるらしい。
　そこで、瞳ちゃんはあることに気づいた。この人と結婚すれば、自分にも弟ができる、と。
「タケゾウさんと結婚したのって、弟が欲しかったからなんです、本当は」
　そして、瞳ちゃんは僕の前に現れた。
「弟がいたら、いっぱい甘えさせようって思ってたんです」
　で、その弟は、いい感じで手のかかるダメ人間で、しかもセクハラまでしてくるようなヤツだった、と。でも、それが瞳ちゃんにはとても嬉しかったそうだ。
　それで、と漸く理解に至る僕。今の話は、僕が訊きたかったことへの答えだ。
　僕は不思議でならなかった。なんで瞳ちゃんは赤の他人の僕に、ここまでしてくれるのだろうかと。
　今の話が、その答えになっていた。
「おね〜ちゃん・・・・・・」
　僕は、言葉が継げずにいた。僕を優しく包んでくれる人にあった、辛く重い過去に。
「おねーちゃん、最初は恥ずかしかったんですよ、こじろ〜にいじめられるの。でも、私をいじめている時、何だか楽しそうだったから、それならいいかなって思っていました」
　でも、親父が入院して、エスカレートした僕の行為に不安がよぎったそうだ。もしかしたら、また身体だけ目当てで捨てられるんじゃないかと。
　でも、思い切って僕を諌めようとしたあの時の、僕の無茶苦茶な説得に、瞳ちゃんは開眼したと言う。
　開眼とは大袈裟と思ったけど、瞳ちゃんにしたら、それぐらい、心が晴れ、何かが生まれたと言っている。
「おねーちゃんだから、さわるんだって言われて、とても嬉しかった。この子は、私の弟なんだ、姉は何でもしてあげるんだって、その時決めたの」
　瞳ちゃんの長い話は終わった。その顔は、どこか澄んでいるように思える。
「・・・・・・ゴメンネ、ダメなおねーちゃんで」
　首に巻きつく腕、かすかに涙に掠れた声。色んなモノを吐き出した僕の姉は、僕の胸の中で震えている。
　そんな彼女に、僕は無性に何かをしてあげたくなった。
「おね〜ちゃん、キスしていい？」
　今までで一番、自然に瞳ちゃんのことをおね〜ちゃんと呼べた。瞳ちゃんは顔をあげて、涙に濡れた顔で笑ってくれる。
「言ったでしょ。眼鏡を外したおねーちゃんは・・・・・・」
「何でも言うこと、きいてくれるんだっけ」
　そして、重ねた唇。瞳ちゃんとの初めてのキスは、少し涙の味がした。

　そのまま貪るような口付けを長いこと続け、お互いの唇が離れたときには、唾液が太い糸を引いていた。
「あ、あの、こじろ〜。おねーちゃん、こじろ〜にお願いがあるんだけど、いいかな？」
　上気した顔で僕を見る瞳ちゃん、彼女からお願いなんて珍しい。
「こ、こじろ〜の初めて、おねーちゃんに、ほ、ほしいんだけど、いいかな？」
　思いもかけない申し出。僕に断る理由なんて、あるはずがない。

「はいる、かな・・・・・・？」
　生まれたままの姿になった瞳ちゃん。一糸纏わぬその肢体は、細いけど肉付きが程よくあって、とても魅力的に僕には見えた。
　余計な前戯はいらないといわれた。下着を脱いだ瞳ちゃんの秘所、濃い目の陰毛に、雫のような愛液が滴っているのがわかるほどに濡れていた。キスだけで、こうなったみたい。
　屹立して反り返った僕のモノを見て、不安そうに股を思いっきり広げる。開いた陰唇、膣口からはトロトロとした液体が滴り落ちている。
　その開いた入り口に、僕は亀頭を押し当てた。その中から伝わる熱さに、それだけで出してしまいそうになる。
　本当は、初めてじゃないけど、僕はこれが初体験ということにしようと、決めていた。その方が、僕自身も嬉しいし。
　それに今、初めての時より緊張しているのがわかる。少し戸惑いながら、何度か失敗しつつ、亀頭を瞳ちゃんの中にいれることが出来た。溶けちゃうんじゃないかって思えるくらい、瞳ちゃんの中は熱い。
　ゆっくり、僕自身を瞳ちゃんの中に進ませる。愛液の潤滑があっても、少しキツく感じる挿入感。
「あ、は、はいる、あぁ・・・・・・」
　僕が進むたび、瞳ちゃんは身体を反らせる。
　全部が入った。瞳ちゃんのアソコは、僕を受け入れ、拡がりきっている。いっぱいなのが、感じられる。
「は、はいったね、何とか・・・・・・」
　僕が入っているのがキツイのか、瞳ちゃんはそれっきり、何かに耐えるように身体を震わせている。
「ツライの？」
　心配になって訊いてみると、瞳ちゃんは首を横にふる。
「こ、こんな大きいの、いれたの初めて、だから、ど、どうにか、なっちゃいそうなの・・・・・・」
「そうなの？」
　と言って、少し腰を動かしてみる。その時、僕を締めていた瞳ちゃん自身に、何か別の生き物でも宿ったのかと思える何かが動き、その快感ですぐに射精感がこみ上げてしまう。
「だ、だめ、動くと、たいへん、かも・・・・・・」
　今のわずかな動きだけで、瞳ちゃんは小刻みに何度も震えている。
　でも、一回動かすと、自然と腰が動き出してしまった。快感が快感を呼び、すぐに昇天しそうになるのを、堪えるだけで必死だ。
　瞳ちゃんは、ダメダメと言いながら、そのクセ中で僕を攻め立てる。もっと動かしてくれと、言われている気になる。
　そして、瞳ちゃんが意味のある単語を口にできなくなったころ、僕にも限界が来てしまった。
　まったく避妊していないことに今更気づいた僕、慌てて抜こうと思ったのだけど・・・
　抜こうとした最後の一回で、僕の中の堰は破れ、遠慮容赦なく、瞳ちゃんの中に注いでしまっていた。
「で、でちゃった！　すすご、すごい、コレ・・・・・・」
　放精の快感に身を震わせている僕。瞳ちゃんは、出された瞬間、悲鳴のような嬌声をあげて身を仰け反らせ、そのまま脱力してしまう。
　瞳ちゃんにそのまま圧し掛かってしまい、僕も脱力してしまう。早く抜きたいんだけど、放出したはずなのに、僕のモノは大して萎縮していない。
「はじめて、もらっちゃいました・・・・・・」
　僕のを受け入れたままの瞳ちゃん。ゆっくりと圧し掛かったままの僕を抱きしめてくれる。
「ごめん、なんか、中にでちゃった・・・・・・」
　とバツが悪く謝ると、気にしないでいいんだよ、と瞳ちゃん。僕が気持ちよければ、それでいいそうだ。
　その言葉を聴いたら、下半身が再び活力を取り戻してしまった。
「また、大きくなってるよ、こじろ〜・・・・・・」
　困ったように笑う、瞳ちゃん。その唇にキスをして、僕は言った。
「二回目も、いい？」
　彼女の返事は、言わなくてもわかってもらえると思う。おね〜ちゃんは、とっても優しいのだ。