【レベル　５】

　気が付いたら、朝になっていた。そんな感じだ、今。
　昨日は、結局、五回ほど、瞳ちゃんに出してしまった。最後の射精のまま、上に乗ってくれた瞳ちゃんに挿れたまま、眠ってしまったみたい。
　今、起きたのも、瞳ちゃんが僕のを抜いた感触でだ。寝ぼけ眼でみる壁の時計は、朝八時を指している。ヨタヨタと瞳ちゃんはベットから抜けようとするけど、力がはいらないみたいだ。
「ごめんなさい、おこしちゃったね？」
　何とか起き上がろうと努力しているみたいだけど、生まれたての小鹿みたく、プルプルと身体を震わせるだけで、立ち上がれないでいる。
「何やってるの、おね〜ちゃん？」
　綺麗な裸身に朝日を受けて、髪もすごいことになっている瞳ちゃん。困った顔で僕を見る。
「ち、力入んないんです！　こじろ〜のせいで！」
「なんで？」
　キョトンと訊くと、顔を赤くしてポカポカと僕を叩く。
「こじろ〜が、おねーちゃんを、いっぱいいじめたから！」
　涙目でいう瞳ちゃんは、反則級の可愛らしさだ。
「なら、ゆっくりしてればいいじゃん、おね〜ちゃん。どうせ親父のとこいくまで、用はないんでしょ？」
　朝食くらいなら、僕が作ってあげてもいいと思ってそういうと、瞳ちゃんは首を横に振る。何が違うんだろう？
　そこで瞳ちゃんが極端な内股になっているのに気づく。モジモジと動く腰、ようやく事情を察した僕。意地悪な虫が起きてきてしまった。
「オマルでも持ってくればいいの？」
　ポン、って顔が羞恥に赤くなる瞳ちゃん。図星だったみたいだ。
「大人用オムツってあったっけ、この家？　あ、洗面器でいい？」
　そう続けると、真っ赤になった瞳ちゃんが、さらにポカポカ僕を叩く。その様子が子供のように愛らしいので、僕は妥協してあげることにした。
「じゃあ、僕が連れてってあげればいい？」
　それも恥ずかしいと抵抗しようとした瞳ちゃんだが、我慢の限界を感じたのか、不承不承、頷いてくれる。
　昨日に続き、お姫様ダッコで寝室を出る。裸なのが少し恥ずかしいけど、気にしないでおこう。
　この家は一階二階両方にトイレがあるので楽だ。二階のトイレのドアを開け、瞳ちゃんを便器に座らせる。
「・・・こじろ〜、閉めてください」
　いささか憮然とした面持ちで瞳ちゃんが言う。
「自分で閉めればいいでしょ？」
　分かっているけど、言ってやる。外開きのドアを僕が抑えていると、瞳ちゃんは立たないと、ドアを閉められない。でも、立つことができない。モジモジと腰を動かしながら、僕を半目で恨みがましく見つめる。
「・・・まさか、ヘンなこと考えてますか、こじろ〜？」
　ジト目で僕に訊く瞳ちゃん。
「うん、おね〜ちゃんが考えているとおり」
　僕はそれを笑顔で肯定する。顔を赤くして、必死に抗議する瞳ちゃんだったが、奮戦むなしく、限界が訪れてしまったようで・・・・・・
「死ぬほど、はずかしいですよ、こじろ〜・・・・・・」
　結局、僕の言う事を聞いてくれたおね〜ちゃん。
　我慢をやめると、物凄い迸りが、便器に卑猥な音を奏でさせる。その原因の瞳ちゃんは、身体まで赤くして、羞恥に身悶えていた。
　し終えたら、開き直ったのか、剥れたまま洗浄器のボタンを押し、水流でアソコを洗っている。最後にトイレットペーパーで拭いて、水で流すところまで、しっかりと見せてくれた。
「こじろ〜は、ヘンタイになっていってます」
　可愛く頬を膨らませたまま、ずいっと手をだす瞳ちゃん。まだ立てないようだ。
「おね〜ちゃんが、おね〜ちゃんだからね」
　と笑って、僕はその手を掴む。こんなに羞恥プレイをさせられても、僕のおね〜ちゃんは僕を全部受け入れてくれている。
　僕たちの距離は、きっとこの地球の誰よりも近いモノになっている、そんな気がした。

　その後、初めて一緒に、お風呂にはいって、身体を洗った。お互い、裸でも羞恥を感じなくなってしまっている。瞳ちゃんの方が、大胆になっている気がした。
　ようやくヨロヨロと歩けるようになった瞳ちゃんが、先に風呂を出て下着とか一式をそろえておいてくれた。それを着て、ダイニングキッチンにいくと、エプロンを着た瞳ちゃんが、朝食の準備を始めている。
　大人しく、テレビを見ながら待っていると十五分ほどで、ご飯の用意ができたと瞳ちゃんの声が。
　トーストとベーコンエッグと、切ったトマトが並んでいる。急いでつくったから、手抜きでごめんなさいと謝る瞳ちゃんだが、僕にはこれで十分だ。
　今日の予定を話ながら、朝食をとる。僕は、例の本棚について、色々と調べて、表でもつくって親父に見せる準備でもするつもり。瞳ちゃんは家事を片付けたら、親父のところに行ったついでに、買い物をしてくるとのこと。
　時間を見ると、もう十時をすぎているので、店に戻って仕事を始めることにする。
　また夕方にくるからと言うと、瞳ちゃんは玄関まで送りに来てくれる。
「いってらっしゃい、こじろ〜」
「うん、いってきます」
　大好きなおね〜ちゃんの声を受け、いい気分で家を出た僕だった。

　事務用品を取り扱っているリサイクルショップにいき、本棚について相談してみる。目当ての大きさで手ごろな値段のがあり、それをメインに、店の配置を考え、親父にわかりやすくまとめたところで、もう夕方になっていた。
　さて、実家にいくか、と腰を上げた僕。ふと、今まで思い出さなかった昨夜の瞳ちゃんとの乱行が浮かんでしまった。
『おね〜ちゃんは、これでも、経験豊富なんだから・・・・・・』
　と僕の大きさになれてきた三回戦目あたりから、瞳ちゃんとの交合は凄いことになっていたと思う。
　上になったり、後ろからついたり、抱えてついたり、色々やったなぁ、とわが事ながら、感心してしまう。お互いを溶かし込むような感じがした。思い出すだけで、なんかまたこみ上げてしまう気が。
　歩きにくい状態になってしまった僕は、ちょっとヘンな歩き方で、実家に向かっていった。

　昨日と同じにインターホンを押す。しばらく待つと、受話器をもったままの瞳ちゃんがドアを開けてくれた。誰と話しているのか、ハイ、と大丈夫ですを繰り返している。
　玄関先で電話が終わるのを待っていることに。一分ほどで電話が終わった瞳ちゃんは、僕に改めて向き直る。
「おかえりなさい、こじろ〜」
　と明るい笑顔で迎えてくる。ここ数日で、瞳ちゃん、すっごく明るくなった気がする。もしかして、これが彼女の地なのかな。
「ただいま。で、誰だったの？」
　と電話の相手を訊くと、「ケンゾウさんです」と、素っ気無い答え。いや、前の瞳ちゃんを感じさせる言い方だった。
「明日の夕方には帰るから、気をつけてくれ、だそうです」
「ふぅ〜ん、そうなんだ」
　この話はこれでおしまい、という感じがしたので、何も言わないでおく。昨日と同じく、夕飯ができるまで、居間でテレビを見ていることに。
　瞳ちゃん、昨日よりもさらに明るくなっている気がする。それで気づかなかったけど、この瞳ちゃんは、ひょっとして僕の前限定なのだろうか？
「ごはんできたよ、ごじろ〜」
　明るい声で呼ばれた。瞳ちゃんが、物凄く張り切ってくれたおかげか、今日の晩御飯はかなり豪華になっている。でも、精力が付きそうなメニューが多いのは、気のせいかな？

　食後、昨日と同じ流れで先にお風呂にはいることに。じゃあ、と腰を浮かせたところで、楽しそうに食後の後片付けをしている瞳ちゃんの後ろ姿をみていたら、ムラッと来るものがあった。
「おね〜ちゃん、またいっしょに風呂入ろうよ」
　朝もいっしょに入ったけど、何もなかったのが今になって惜しく思えてしまった。
　瞳ちゃんの答えは、もう言わないでもわかるでしょう。

「よく見ると、不思議な形だよね、これ？」
　瞳ちゃんは、いま、脚を開いて、湯船に腰をかけている。脚は、限界いっぱいまで開いてもらい、さらに、陰毛の下にある瞳ちゃんの秘所を、彼女自身に広げさせていた。
　今まで、じっくりと、女性器というのを観察したことがなかったので、やってみたくなり、愛すべきおね〜ちゃんに堂々と頼んだ結果がいまの状況。
「これが、陰唇、で、これが陰核、クリトリスだね」
　瞳ちゃんの女性器は、意外と使い込まれているって感じがした。昨日の行為の最中の話だと、瞳ちゃんの最初の男の妻子持ちの野郎は、軽い変態趣味があって、二年弱、さんざんいぢめられていたそうだ。
　さらに聴取をすると、そいつの男性器は、かなり粗末なモノだったので、責めは大体、張り型を使っていたとか何とか。複数プレイ以外は、たぶん全部経験済みと言って胸を張っていた瞳ちゃんだった。
「でも、おね〜ちゃん、そんなに気持ちよくなかったってホント？」
　クリトリスは赤黒く勃起しているし、今、視線に晒されているだけで、瞳ちゃんの膣口からは愛液がこぼれているし。
　瞳ちゃんには、今までされたプレイの数々を語ってもらっていた。なんだか、今の瞳ちゃんから信じられない調教の数々だった。妻子持ち男、この野郎と殴りたいくらい、羨ましい。
「あ、あの頃は、ガマンしてるって感じだったよ。声を出したら喜ぶし、ヘンなこと言ってあげても喜んでくれたから・・・・・・　ねぇ、こじろ〜、もういい？　おね〜ちゃん、恥ずかしすぎなんだけど……」
　もう十五分くらい、色々と瞳ちゃんを観察している。
「まだ、ダメ。なんか、その男にむかついた」
　指を二本、瞳ちゃんの中にいきなり突っ込んだ。妙な嫉妬心が湧き上がって、無性にいじめたくなってしまった。
　瞳ちゃんが腰をガクンと浮かせ、広げていた手を離してしまった。股も閉じてしまい、中で動く僕の指には、熱い液体がこびりつき、掌まで滴っている。
　ふと見ると、瞳ちゃんが、この世の終わりが来た、みたいな顔をしている。何事だ？
「こ、こじろ〜、怒ってるの？　おねーちゃんが汚れてるから、怒ってるの？」
　僕の指を中に入れながら、今にも泣きそうな顔で、瞳ちゃんは僕を求めて手をのばしてくる。さっき『ムカついた』と言ったのが、こんなにも瞳ちゃんを不安に追い込んだみたい。
「おね〜ちゃんには、怒ってないよ。その男に、なんかムカついただけ」
　瞳ちゃんは、僕の首に手を回し、抱きついて来た。泣いているのが、肩口に落ちる涙の粒でわかる。
「僕の、大事なおね〜ちゃんを好き勝手にいぢめてたと思ったら、頭きただけ。おね〜ちゃんは、悪くないよ」
　中に入った指が、痛いほど僕を締め付けてきた。グシュグシュ泣いている瞳ちゃんは、
「お、おね〜ちゃん、こじろ〜以外にイッパイいじめられて、ごめんね。ごめんね」
　意味の無い謝罪を口にする瞳ちゃん。彼女は今、本気で過去のことを僕に謝っている。その必死さは、僕を大事に思ってくれている裏返しだと感じ、少し溜飲が下がる思いがした。
「もう、こじろ〜だけだから。おねーちゃんを好きにしていいの。ね、だから許して、こじろ〜」
　些細な僕の心情の変化に、瞳ちゃんは過敏に反応している。これは、冗談でも「おね〜ちゃんなんかキライだ」とかいえない感じがした。
「好きにしていいの？」
　僕が言うと、瞳ちゃんは過剰なくらい必死に、頷いている。許すも許さないも僕にはなかったんだけど、そこまで言うならって感じだ。
「じゃあさ、おね〜ちゃん、この毛、剃っていい？」
　さっき、瞳ちゃんがされたプレイの中で、羨ましかったモノをさせてくれと言ってみる。
「こじろ〜がしたいなら、なんでもしていいよ・・・・・・」
　うん、返ってきた返答は、思ったとおりです。

「うわぁ、これ新鮮・・・・・・」
　陰毛が無くなった、瞳ちゃんの女性器は、先ほどとは違うモノのように僕には見えた。初めての剃毛体験、けっこう緊張した。された経験のある、瞳ちゃんのアドバイスをもらいつつ、慎重にやらせてもらった。
「こじろ〜、おねーちゃんのいやらしいアソコを、綺麗にしてくれて、ありがとうございます」
　剃られ終わった瞳ちゃんは、そんなことを言ってきた。剃毛された後は、そんな台詞を言わされていたそうで。照れた顔の瞳ちゃんに訊いてみる。
「で、本音は？」
「か、かなり恥ずかしいです。顔から火がでちゃいます」
　そう言って顔を赤らめる瞳ちゃんの方が、僕はやっぱり好きだ。むき出しになった女陰をみていると、不意にそこに入れたいという欲求が湧き上がってきた。忘れていたけど、風呂に入ってから、僕のモノは常時臨戦態勢だったのだ。
　瞳ちゃんのアソコは、剃られただけで、いや剃られる前からいやらしく穴を開いて、僕を待っていた。
　何も言わず、瞳ちゃんを立たせ、後ろを向かせる。バスタブに手をついて、腰をそのまま上げている。僕が何を望んでいるか、察したのだろう。
　僕を待つ秘所に、亀頭の先をあてがった、何も言わず突き入れる。自分自身が、何かをめくり上げた、そんな感じがした。
　瞳ちゃんが、歓喜の声を上げた。
「こ、これ、好き！　これ、これがいいの！」
　このままじゃすぐ出してしまうのが分かった。瞳ちゃんの中に、別の生き物がいて、僕を射精に導こうと蠢いている。ガマンできそうにない。
　出すから、と言おうとしたけど、止める。好きにしていい、と瞳ちゃんは言った、だから好きにさせてもらおう。
　ガマンできるだけ、ガマンした。でもそれは、瞳ちゃんの中にできるだけ勢いよくブチまけようしてるから。でも、入れてから、百数える間も持たず、限界が来た。
「くぅ・・・・・」
　呻き声と共に、瞳ちゃんに精を放った。いきなり、精を受けた瞳ちゃんは、驚いたように身体を強張らせている。精がドクンと放たれる度、それに反応して瞳ちゃんは震えた。
「でてる・・・　いっぱい、いっぱい・・・」
　空ろな声で、瞳ちゃんが呟いている。
「こ、こじろ〜、いっぱい、だしてくれた…　おねーちゃんに、だして、くれた…　いっぱい…」
　ガクっと瞳ちゃんの力が抜け、バスタブしがみついたまま、崩れおちてしまう。その時、入ったままの僕のモノが、瞳ちゃんから抜け、彼女の中から、白い液体が、ポタポタと垂れている。
　淫靡な、瞳ちゃんの嬌体を見ていると、すぐに欲望がもたげてきた。好きにしていい、瞳ちゃんのその言葉が、僕の中の枷を外してしまったみたいだ。
「おね〜ちゃん・・・・・・」
　僕の呼びかけに、振り向いた瞳ちゃん。欲望に蹂躙されているその顔には、幸せそうな表情が浮かんでいた。空ろに開いた目が、僕を見つめ、小さく頷いた。
　ヨタヨタと僕の足元に四つんばいで来る瞳ちゃん。僕の足元に跪き、顔を躊躇いなく近づけ、汚れた僕のを舌で舐め始めた。
　瞳ちゃんの舌で、僕のは再び力を取り戻し、清められていく。もう大丈夫と思ったのか、瞳ちゃんはノロノロと四つんばいのまま動いて、僕にお尻を向けてきた。何も言ってないのに、僕の望んでいることを瞳ちゃんは察してくれている。腰の位置を彼女に合わせ、突き入れた。
　瞳ちゃんは、言葉にならない歓喜を、口から漏らしている。さっきよりは持ちそうだ、と思いながら、僕は腰を動かしていく。
　どこまでやれば、満足できるか、僕自身にもわからなくなっていた。


　瞳ちゃんを貫いたまま、昨日と同じく寝室にいき、濡れた体も拭かずに、ベットに押し倒しす。瞳ちゃんは、貫いても動いても、わずかに反応するだけになっている。ただ、僕の精を受け止め続けた子宮と膣だけが、無意識に僕を締め付けている。
　そのまま、一番奥で精を放った。五回目の射精だった。
「ま、また、出てるの…　ま、また…」
　光が薄れ、何も見えていないような瞳ちゃんの目。出されたことはわかるらしく、小さい声で呟いている。口の端からは涎が垂れている。
　ようやく、満足できた気がした僕は、瞳ちゃんの中から脱力した僕のを抜いた。
　ゴポっと、凄い音がした。見てみると、瞳ちゃんの膣口からは、僕が出しまくった白濁液が、ドロドロと流れていく。シーツに精液の染みが広がっていった。
　抜かれたのを感じた瞳ちゃんが、ノロノロと動こうとしている。また、僕のモノを口で清めようとしてくれているのだ。ただ、身体が言う事を利かないようで、起き上がることさえ、できなくなっている。
「……おね〜ちゃん、もういいよ」
　仰向けに横たわり、脚を開いたままのみっともない姿の瞳ちゃん。限界をとっくに超えているのに、僕を受け止め続けていた彼女の今の姿に、凄い愛おしさを感じていた。
　この人は、本当に僕のことを全て許容し、受け止めてくれようとしてくれているんだと痛いほどわかる。
「こじろ〜…　いいの…？」
　顔だけ横に向けて、空ろな顔で笑顔さえつくって、瞳ちゃんは言う。
「うん、ありがと、気持ちよかったよ」
　顔を撫でてあげると、嬉しそうに目を細めていく瞳ちゃん。
「まだ…　へいき、だよ…」
　そこまで言って、瞳ちゃんは意識を失った。脚を閉じてあげて、シーツをかぶせ、僕もいっしょにベットに入る。シングルで二人は狭いんだけど、身体が触れ合うのが、幸せに感じる。
　腕枕をしてあげると、わかったのか嬉しそうな顔をして、寝息を立て始めた。
　僕より十歳近く上のはずなのに、この人の表情や行動は、時に僕より年下に思えることが多い。今の無防備な顔は、十代の少女のようなあどけなさだ。
　二度、深く傷つけられた心が、今の瞳ちゃんを作ったのはわかった。それと、この人は、僕を求めて、この家に来たのも。
　それを知ってしまった僕の中で、自分でも説明できない混沌としたモノが生まれていた。今日の乱行なんか、前の僕からは信じられない行動だ。
　何より自分でも理解できないのが、兄に対しての罪悪感の無さだ。いまの状態は、傍からみたら、『兄嫁を寝取った』状態のはず。でも、僕には兄に対しての後ろめたさが微塵もわかないのだ。つまり、僕は今の二人の関係が、不倫とかそんなモノではないと頭の中で思っているのだろう。
　瞳ちゃんとの性交は、二人の絆を繋げて強くしていく行為、みたいな感じがしていた。　僕の精を受けるたびに、瞳ちゃんと僕の絆は深まっていく。
　考えているうちに、自分でも訳分からなくなってきた。
「こじろ…」
　満足そうな顔の、瞳ちゃんが寝言で僕の名前を言ってくれた。
　深く考えなくてもいいか。寝顔を見てそんな風に思えた僕。僕らの関係は、僕らだけわかればいいのかもしれない。
「おやすみ、おね〜ちゃん」
　僕も、瞳ちゃんの隣で眠りについた。彼女の温もりに包まれているだけで、よく眠れそうな気がする。


　【レベル　５　エラー】

　僕らは、どうなるんだろうか？
　とめられない欲望を、瞳ちゃんにぶつけながら、心の片隅でそんなことを考えた。
　あれから、二週間がたった。
　僕と瞳ちゃんは、隙をみつけては、身体を重ね合わせていた。朝と昼、時間が少しでも取れたら、僕は瞳ちゃんと交わっていた。
「はむ、大好き、これ…・・・」
　夕方、場所は店の奥の台所。椅子に座った僕の脚の間に傅いて、僕のモノを頬張るように咥えている。
　口には上手く入らないので、舌で亀頭、裏筋、陰嚢と舌を這わせていく。その表情は幸福感に寄酔っていた。
　瞳ちゃんは、変わってしまった。
　僕の前と、僕が居ないところでの彼女は、同じ顔をした別の人間になってしまうのだ。
　僕の前では、明るく優しい、何でもしてくれるおね〜ちゃん。それ以外では、大人しく、引っ込み思案で、ドンくさい若妻。その二人が、僕を基点に入れ替わる。
「おね〜ちゃん…」
　そう言うだけで、僕が何をしたいか察してくれるようになっている瞳ちゃん。スカートを脱いで、パンツも下ろす。
　僕のを自分で導いて、迎え入れる瞳ちゃん。一際高い嬌声を上げ、あごを反らせる。相変わらずの締め付けで、一回目はいまだにすぐに放ってしまう。
　絶頂が来た。
　迸りを受け、瞳ちゃんが震える。顔が恍惚に濡れている。
「あついよ、こじろ〜…」
　自然に重なる唇。僕たちはもう、離れられない。


「じゃあ、こじろ〜さん、また明日です」
　眼鏡をかけた瞳ちゃんが、今までの情事をまったく感じさせない挙措で、頭を下げて出て行った。
　今の瞳ちゃんは、僕が眼鏡を外すと、『おね〜ちゃん』になり、眼鏡をかけると『瞳ちゃん』に戻る。二人の間には、記憶の共有はあるけど、感情の共有はない。お互いが不可侵、そして、おね〜ちゃんが僕と激しく結ばれても、瞳ちゃんにはその記憶は差し替えが行われる。僕が、軽くセクハラした、という具合に。
　これが、今の瞳ちゃん。昔、傷ついた悲しい心が、僕に触れ、交わり、二人の瞳を作ってしまった。
　でも、僕にとって、二人とも大事な、僕のおね〜ちゃん。
　だから……

「あひゅ、ふかいの、はふ……」
　瞳ちゃんはお尻を突き上げた姿勢のまま、荒い息を吐いている。今しがた出した僕の精液が、太ももまで垂れて、濡らしていた。
　今、僕たちは、駅前のラブホテルにいた。半日、時間をとった僕たちは、思う存分身体を重ねようとここを訪れていた。
　いつもなら、間髪いれずに続きはじめるのだが、僕は今日、あることを考えていた。
「ねぇ、おね〜ちゃん」
　寝そべった僕の、愛液まみれのモノを愛しそうに舐めている瞳ちゃん、僕の声にこちらを向く。
「なに、いれたいの。それとも、おね〜ちゃん、いじめたい？」
　瞳ちゃんが言っていることは半分正解。
「あのさ、僕……」
　僕は用意していた手錠で、瞳ちゃんを後ろ手でに拘束する。何をされるかと期待している瞳ちゃんの耳元に、僕は囁くように欲望を言った。
「瞳ちゃんとエッチしたいんだ……」
　僕の隠せなくなっていた欲望。大事な、大好きな二人のおね〜ちゃん。だから、両方とも、僕のものにしたい。
　キョトンとした瞳おね〜ちゃん。でもすぐに言葉の意味を察してくれた。
「こじろ〜、眼鏡かけさせて」
「いいの？」
　同じ体を使っている別の人、それが今の『おね〜ちゃん』と『瞳ちゃん』。おね〜ちゃんがこんなにあっさりと自分以外の人を抱こうとしている僕の行為を、認めてくれるとは思わなかった。
　テーブルに置いていた瞳ちゃんの眼鏡をとってくる。これをかければ、この状態であの『瞳ちゃん』が現れるはず。
「言ったでしょ、こじろ〜。おねーちゃんには、好きなことしていいんだから、ね」
　濡れた瞳が、僕を見上げる。自分じゃない自分が犯されることへの高まりが、瞳ちゃんから感じられる。
　僕は、ゆっくりと、大好きなもう一人の義姉に会うために、彼女の顔に眼鏡をかけた。



　−終わり−