その6：秋江（2）

「待って！娘は…関係ないでしょう！」
　ブラウスの前は左右にはだけられ、シルクのブラジャーが暗闇にぼんやりと浮かぶ状態で秋江は、起き上がろうとさえしながら藤井に食ってかかった。しかしその肩をまた助手席に押し付けると秋江の耳たぶを甘く噛みながら藤井は言った。
「奥さんが…楽しませてくれさえすればいいんですよ…」
「さ…最低…卑怯よ…」
「最低で卑怯ですよ…私は」

　藤井はそう言うと秋江のショーツを脱がそうとしたが、秋江は脚を閉じて抵抗を試みたが、藤井の手が尻のあたりまで潜り込み、上質のシルクのショーツが秋江の太腿を滑りおりた。
「脚を開きなさい…お嬢さんの代わりにね」
　藤井が勝ち誇るように言うと、秋江の気の強そうな顔は憎悪に満ちた。
「勝手にしてよ！」
　秋江が横を向いたまま吐き捨てるように言うと、白い両脚がMの字に開き、藤井はその中央の茂みに見える赤黒い肉弁に舌を這わせた。
「んっ…んんあんっ…」
　ときおりピクンっと秋江の脚が閉じそうになるたび、藤井は両手で太腿を掴みまた大きく広げさせては、研ぎ澄まされたクリトリスを執拗に舐めた。

「はぁぁっ！」
　腰を沈めた藤井の堅くなったものが。ぐいっと一気に秋江の中に入りその先端が子宮にめりこむと、声など出してやるまいと決めていたのに思わず秋江は顔をのけぞらせて声をあげてしまった。
　藤井は秋江とつながったまましばらくじっとしたまま、秋江の顔を覗きこむと、秋江は（早く動いてさっさと終わらせてよ）と言いたげに藤井の目を見返した。

　藤井のものを根元まで飲み込んだ秋江の膣粘膜は次第に愛液で満たされ始め、軽蔑の目で睨みつける秋江の表情とのアンバランスさに藤井は満足そうな顔になるとゆっくりと腰を動かし始めた。

「はっ…あっ…あっ…あっああ」
　若いホストのような激しさとは違い、自分の中を粘着質に動き回る藤井のものに秋江は我慢ができなくなって、あきらめて声を出すのを我慢するのをやめた。

　藤井は腰を動かしながら、秋江のベージュのブラウスのボタンをはずして左右に開き、ブラジャーの上から乳房を揉み、左手を秋江の背中に回して、プチンとホックをはずした。
　あの雨の日、透けたブラジャー越しに予想した通りの形で補正下着の世話になる必要がないくらいに張りのある乳房が藤井が腰を動かすたび波打った。

　膝の後から担ぎ上げた脚が、車内の天井近くまで上がると左足だけ脱がせたストッキングが垂れ下がり、藤井が腰を秋江の尻にぶつけるたびにそれは揺れた。
「あっあっん…あ…ああ…ああああ」
　秋江の喘ぎ声はカン高く、思わず藤井の背中に手を回そうとしてあわてて左手で運転席のシートカバーを、左手は自分の横たわる助手席のヘッドレストのあたりを掴んだ。

「あっ…あっ…あっ…あんあぁ…あああああ」
　大きく両脚を広げられ、藤井の容赦ない突き上げに、秋江はたまらず声をよどみなくしていく。
「どこに出して欲しいんですか？」
「そ…外に…あんっ…決まってるじゃないです…か…」
　藤井は秋江の少し肉の付いた腰を抱きしめ、ねちっこく突き上げながら耳元で言った。
「中に出してください…欲しいんですって言って下さいよ奥さん」
「いやっ…外に出してぇ」
「何でも言うことを聞くんじゃなかったんですか ？」
　藤井が意地悪く言うと、秋江は目を見開き藤井を睨みつけた。
　そう、これなのだ。藤井をもっとも興奮させるのは、女の軽蔑に満ちたこの目つきなのだ。やがて 意を決した秋江が吐き捨てるように言った。
「す…好きなところに出せばいいじゃない！」
「どこに出して欲しいか言いなさい」

　藤井をにらみつけたままの秋江の瞳から涙が溢れた。
「中に…出して…くだ…さい…」
　藤井は腰の動きを早め、秋江の目を見ながら射精した。
「あっあっあっあっ…ああっ！」
「ううっ…」
「あぁ…いやぁ…」
　子宮の中を藤井の精液が満たしていく嫌悪感に、一瞬秋江は
（いっそ警察に自首した方がましだったかもしれない）
　と言う考えが浮かんだが、同時に娘綾乃の顔が浮かび、母親としての自分がそれを否定した。
（これでいいんだ…これで…）

　望まぬ相手との望まぬ行為とはいえ、久々の情事に秋江は助手席の上に横たわり、なんともいえない虚脱感の中にいた。
　藤井はすでにズボンをはき、運転席に座って携帯メールをチェックしていた。

「さて、約束通り奥さんの事故に関しては、私は何も見ていませんので」
　そう言うと、藤井は、すでに興味のない、この中年女を一瞥して車のドアを開けて立ち去った。

　藤井は実際このまま警察に密告するつもりなどはないし、おそらく秋江に再び連絡を取るつもりも今のところはない。
　しかし藤井のお楽しみはもう一つあった。秋恵の娘綾乃であった。