６．

　医療から完全に脱線した結城女医の行為は、朦朧とする健治に微弱な衝撃と動揺を与えていた。
「せ、先生．．．何を？．．．」
　体は金縛りに遭遇した感じになり、自由が利かない。
　だが本能で何をされているのか直感した途端、肉分身は勝手な一人歩きを始めた。
　期待していたとはいえ、自分の股間に繰り広げられる破廉恥な治療は、この上ない心地良さを与えてくる。
　ＥＤという枷が無ければ、とっくに射精ってしまっているだろう。
　足元の方から聞こえてくるのは、脳細胞が蕩けてしまいそうな口淫治療の音。
　結城は医師という職務を完全に忘れ、発展途上の肉棒を口一杯に頬張る。
　時折、ローズピンクの唇から真紅の舌が差し出され、ベロベロと肉先を弾いていく。
　完成形だと思われていた健治の肉分身は、さらなる急成長を遂げて、女医の前に対峙した。
「すごいっ！まだ大きくなるの〜．．．」
　両手に余るほどのサイズに隆起したそれは、妻の奈津子さえも知らなかった巨棒になっていた。
　まさに”暴君”といった例えが相応しい。
　その暴れん棒の勢いが、見えない力で健治を操り、腰を浮き上がらせた。
　女医の口腔を圧迫する肉棒の反撃。
　しかし、彼女の口淫治療は止む気配がない。
　寧ろ結城から発せられる淫音は、大きくなっていた。
　躍動を続ける肉分身を口いっぱいに収めながら、頭を上下に振り出した。
　アップに纏められていた黒髪が解け、結城を痴女医に変えていく。
　頬を窄ませ巧みに舌を使って肉先を弄っていく。
　じゅる、じゅると奏でられる淫音と共に悦楽の涎を垂らす。
　艶やかだった唇のルージュが剥がれ、最初の清楚なイメージはどこかへ消えていた。
　女医は頭を固定したまま、スカートをたくし上げた。
　綺麗にネイルアップされた爪をストッキングに引っ掛けると下着ごとズリ下げていった。
　パンプスを脱ぐ手間も惜しんで、ベッドに這い上がった。
　下着に篭っていた淫フェロモンを嗅がせる様に健治の顔に跨った。
　上から降り注ぐ生温い陰部臭が、女医の興奮度を示していた。
（．．．あ〜感じる。これが先生の匂いなのか．．．）
　案の定、アメーバ状のヌメリが、更に女性器を際立たせている。
　しかし、軽度のレム睡眠状態の健治は、その匂いだけを頼り舌を這わせていく。
　忽ち蒸しあがった生貝を発見した舌先は、すぐにその役目を果たし始めた。
「あう〜ん、いい．．．」
　女医はたまらず声を上げた。
（久しぶりの女の味だ．．．）
　次々と溢れ出す淫汁が、乾いた健治の口を癒してくれる。
「いいー！もっと吸い上げて〜」
「先生のオ××コ汁、たまんないです．．．」
「クリも舐めまくって、舌でベロベロしてぇー！」
　普段の診療中には決して聞く事の出来ない淫語が飛び交う。　
　健治の舌が、要求通りに淫核を転がしていく。
　レロレロと複雑にそして激しく嬲ってやると、包皮に隠れた淫豆が正体を現し、まだ目を開ける事の出来ない健治の舌に転がり込んで来た。
「．．．んっんっ！そこっー、そこをもっと弄ってー！」
　思わず叫んでしまった自分を恥ずかしく思い、取り残されていた肉分身にしゃぶりついた。
「んっ〜んぐ、んぐ．．．うぐ〜」
　咥えたまま官能の声を漏らしている。
　再び、蘇った女医の舌戯を股間に受けながら、健治は負けまいと淫核のみを集中口撃してやる。
　顔を動かす度鼻先が肉びらに当たり、女芯の粘液がローションとなって塗りたくられていった。
　結城の美貌からは想像し得ない音を立て、精一杯の口戯で肉分身を吸い上げる。
　そのあまりの激しさに、健治の腰は痙攣し出した。
　何の前触れもなく突如やってきた射精感。
「あー！．．．先生、出る！出ちゃう．．．ううっ！」
　肉の暴君が、文字通り暴れ出し肉先が開いた。
　溜めに溜めていたここ１ヶ月分の精液が、白濁のマグマとなって噴出された。
　その量たるは、凄まじかった。
　みるみる女医の口を満たしていき、熱く粘った白マグマが粘膜を破壊するが如く口中を覆っていった。
　治療の成果として射精の勢いを間近で観察したかった女医も、突然の噴出に肉分身を吐き出す余裕もなく、口で受ける結果となった。
　結城女医にとっても久々の飲精なのか、やや嘔吐きながらもその粘りと味を調べる為に飲み込んでいった。
（．．．ああっ〜ん。とっても濃厚で、すごい量．．．）
　肉分身の萎縮を感じると、赤く火照った唇を離していった。
　健治も口戯の攻防戦に敗北し、淫豆弄りを諦めるしかなかった。　
　顔半分を愛液まみれにしながら、新鮮な酸素を求めて呼吸を整えていった。
　結城女医は中途半端な体の疼きを持て余す反面、医者としてすでに頭を切り替えていた。
「今日の治療はこれで終わり．．．すばらしい勃起力でしたわ。」
「．．．は、はぁ、はぁ．．．ありがとうございました。」
　媚薬の効能が切れてきたのか、上半身をゆっくりと起して健治は答えた。
「次回の治療は、来週の月曜日です。」
　結城も曝け出した痴性をすぐに仕舞い込み、医師の口調に戻る。
「そんなに先ですか．．．」
　土、日を挟んだほんの二日間である。
　だが、健治にはとてつもなく長い期間に感じられた。
「この治療は少し間を置かないとだめですよ。」
　結城女医も本心ではなかった。
（来週が楽しみだわ．．．うふふ）
　健治は渋った表情になり、うな垂れた分身をズボンに収めた。
　クリニックの外はすっかり日が落ち、周囲は静まり返っていた。
　やがて夜の顔を魅せるであろう繁華街に車を走らせる健治は、妻以外の女性にされたという背徳の念に駆られていた。
　それも相手は女医であったという事。
（あああ、あんな事になるなんて．．．でも．．．）

　奈津子は普段と変わりなく夫を出迎えた。
「今日は遅かったのね．．．ご苦労様。」
「うん、明日出社しなきゃならないんだ．．．その準備で残業してたんだよ。」
「そう、大変ね。所で中西さんは元気？あれから心配で。」
「ああ、今日はちゃんと来てたぞ。何だ、アイツの事、気に入っちゃったのか？」
「ば、馬鹿な事言わないで！．．．．．．彼、一人暮らしって言ってたでしょ、だからよ。」
「じょ、冗談だよ。向きになるなよ。」
　からかう夫に対し、奈津子は動揺していた。
　脳裏に焼きついていた中西の残像が蘇る。
「まあ、俺もアイツの事は嫌いじゃないし、また呼んでやるか。」
「そ、そうね。たまにはいいかも．．．」
　奈津子の動揺は、気持ちの高揚に変わっていた。
　二人は気付いていなかった、既に夫婦の間に亀裂が生じているのを．．．