鞭を執れ
はちみつ太郎 作
１５

　ＳＭを楽しむ為か、オブジェ化しただけの部屋か。後者ではなく前者であることは、部屋に現れる雰囲気でわかる。グッズすら売られているその部屋での男女の行為は紛れもなく、責めと受けに分かれたそれだった。

　ビルドは、その雰囲気がないわけではなかった。実際行われている施術は、マッサージのなかでも性感マッサージそのもの。

　入室後、３分も経たない間に上下下着姿にされた小春は、うつ伏せにされ強張った女体をほどよく解されていた。

　反応を極限に抑えた小春に、責め手のビルドが果敢に挑み始めた頃、抑えられない喘ぎが漏れる。

「あぁ・・・シャ、ワー・・・しなきゃ・・・きたなぁぁぃ。」

「嘘だねっ。・・・奥さん、来る前にシャワー、浴びてるっしょ。シャンプーの匂い・・・プンプンだよ。」

「え、でもぉぉ。・・・あぁぁ。」

「時間稼ぎ？・・・興奮してるとこ、見られたくないんだぁ。かわぃぃぃぃ。」
　うつ伏せのまま、布団に顔を埋めると、反論を塞がれた小春の敏感な部分に指先が迫る。

　薄いブルーのショーツは、尻の肉に食込まされ、フンドシのようになっている。が、そこから先への刺激は弱いというより焦らしているようだった。

　尻肉には、執拗に指先を這わせ、太腿の裏からふくらはぎ、リンパの集積された股関節付近を入念に解している。

「よしっ・・・女のサイン、イタダキましたっ。」

「えっ？」

「染みだよ、・・・パンツ、濡れてきたんだよ、奥さん。」

「うそっ、・・・。」

「確かめてみる？」
　ビルドは、小春の手首を握り、ショーツの中に潜りこませる。恐る恐る、小春はその指先を動かすと、いつも以上の濡れ具合に、驚愕を隠せなかった。

「クチュッ・・・クチュッ。」

「え、え、・・・うそ、え、ホント？」

「体は正直って、言うけど、・・・正直すぎるよ。」

　まだ、女の部分には触ってませんよと言いたげに指先の渇きをアピールするビルド。小春は恥ずかしさと驚きに布団に顔を埋めなおす。

　仰向けになるようビルドは言う。反抗という仕草は微塵もなく、マッサージの施術を懇願するように素早く体を変えた。

「ジュクジュクするの気持ち悪くなったら、自分で脱いで。・・・あと、２分、奥さんならそれくらいかな。」

　暗示をかけるように、虚ろな目の小春に話しかける。ブラはしたままで、腋の下のリンパを右手で解し、左手は股関節のリンパを柔らかいタッチで揉んでいる。

　ビルドの指先は決して小春の性器には触れようとしてこない。それどころか、かすかな接触もせぬよう気をつけている。

　揉み込みと同時に体を横たえたビルドは、小春の少し赤らんだ耳たぶに息を吹きかけていく。くすぐったさを堪えると、疎かになった方が負ける。

「あぁ・・・だ、だめぇぇ・・・熱いぃぃよぉぉ。」

「まだまだ、・・・どーれ。」
　ビルドは耳たぶから顔を遠ざけ、小春の意識の集中する部分の湿潤具合を確かめる。鼻先を近づけ、大きく息を吸い込むと、率直にありのままを呟く。

「へぇ、まだ、もってるよ。・・・あ、・・・染み、染み・・・パンティ・・・汚れるよ。」

「え、・・・あぁぁ・・・ぬ、・・・脱いだほうが。」

「奥さん、決めて。汚れてもよければこのまま。大事なパンティーなら、脱いだほうが。」

「は、はずかしぃぃぃ・・・。」
　小春は、指先をショーツのゴムに沿える。リンパのマッサージを止めたビルドは、腕組みをしたまま小春の逸らす視線を追った。

　腰を浮かし、脚を折ると、繁茂が顔を出しそのまま足首までショーツをずらす。ずらしたショーツは、足首に絡まり、片手で脱ぎ取ろうとする。そのからめ手を外したのはビルドだった。

　ショーツを取り去ると、股布を裏返しにし、満面の笑みで小春に見せ付けた。

「恥ずかしいくらいに、ジュクジュク。旦那さんとのエッチ・・・ご無沙汰なの？」

「え、そんなに、みないでぇぇ。・・・ね、ね、返してぇぇ。」

「良くないの？旦那とのセックス？」

「言ったら、返してくれる？」

「あぁ、でも、答えは判ってるから・・・・いやらしい、においぃぃぃ。」
　ビルドは小春の手を振り解くようにして、裏返った股布の匂いを嗅ぎ、湿り気を舌先に運んだ。返還されないでいるショーツは小春の鼻先をかすめると、ビルドは小春の手首に絡めると、簡易的な縛りを施した。

「せっかく、こんな趣の部屋なんだし、このほうが・・・ねぇ。」

「し、しりませんっ。」

「怒った？」

「怒ってませんっ・・・もっと、マッサージ・・・してくださいっ。」

「心得ました。」
　ブラを外されることなく、腋の下を入念に揉み解し始めたビルドは、性生活について質問を浴びせる。
　初体験やら、旦那の寝取られについてとか、ＭＡＤのことも聞かれる。ビルド自体に寝取られの願望はないが、他人の肉棒を旦那によって咥えさせられる女というものに興味は津々なようだった。

　Ｍ性な女でなければありえないとビルドは言い。その事を確かめたいがために、ＳＭホテルを選んだと、打ち明けた。

「この部屋しかないんじゃ？」

「ごめんね、全部、こんな部屋なのこのホテル。旦那さんも、知ってると思うよ。だってホームページあるし、確認する術はいくらでも。」

「あぁ・・・でも、・・・部屋の・・・雰囲気って、怖いですよねぇ。」

「どうして？」

「なんか、この部屋にいるだけで、・・・追い詰められたぁぁ・・・感じにぃぃ。」

「そうだね。あそこ、触ってもないのに、お汁・・・すごいもんね。」

「あぁっ・・・熱いんですぅぅ・・・体が、奥から・・・ジンジン・・・サウナみたいぃぃぃ。」

　リンパを揉み込むビルドの手首を押さえた小春。目つきは、女、人妻から発情を向かえた牝の目に変わっていた。
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2012年12月10日掲載
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