鞭を執れ
はちみつ太郎 作
２

　鍵のない建具のノブに手をかける。カチャっと軽い引き手が、その部屋への侵入を容易にさせる。声を掛けようと小春は、声帯を震わせかけると暗闇の中から声がした。

「こ、小春さん？」

「寝てました？」

「いえ、明日は日勤なので・・・うとうとはしてたんですけど、なんか、寝れなくて。」

「私もです。・・・横に行って、いいですか？」

「え？・・・あぁ、どうぞ。」

　座って、小春を迎えようとした黒田は、小春の動きに軽く動揺する。布団の中に一緒に入り込むと、肩を寄せ、三角座りで小刻みに震える。

「朝晩、冷えてきますねぇ。」

「あ、あぁ・・・女の子は冷え性が多いもんね。」

「計さん、そのまま、機動隊に出勤するよう言われてるんですか？」

「あぁ、小春さんは？」

「いえ、私は・・・専業主婦を装うように。」

「そうなんだ、・・・昼間は、暇になるんだね。」

「そうでもないかも・・・色々、あるんでね。」
　小春の顔を覗き込むようにしながら、捜査の疑問と自分に何が出来るかを問いかける。

「密命本部って、聞いたことなかったけど、・・・今回の潜入捜査って？」

「なにも、聞かされてないんです。私も、その都度、指令があるのでそれに従うようにって。」

「え？じゃぁ、これも指令？」

「うぅん。これは、・・・・チュッ。だって、私達、新婚夫婦ですよっ・・・チュッ。」
　小春は黒田の首に手を回すと、綺麗に剃られた顎の回りにキスをする。２人の会話は、小春の唇が黒田の唇に触れた時、停止した。

　しかし、男と女の会話は始まっていた。

　小春はＴシャツ越しに黒田の胸板を触りながら、押し倒すようにベッドに倒れこむ。反応を始めた黒田の身体は、乳首を硬くさせ、小春の指先に蹂躙された。

　上にのっかかる小春の体重は軽く、多くの面積が触れ合っていても黒田には苦痛でない。小春の越しまわりに手をあてがった黒田は、その華奢なウエストに女を感じていた。

　いつも、機動隊の体育館で訓練をしている同僚の骨格とは違う物をそこに感じている。小春の唇の隙間から、甘い吐息が聞こえると、舌先を絡め始め、黒田の顎周りには小春の唾液が湿潤を与えるほどだった。

　黒田のＴシャツをあっという間に脱がせた小春は、唇を黒田と交わせたまま男と女の会話をしている。

　グローブのような手をした黒田は、小春の長袖Ｔシャツを脱がそうとしない。

　まだ、腰骨辺りからあばらの周りをスライドしているだけだった。唇を外した小春は、黒田の乳首を舐め始める。

「うぉぉっ・・・。」

「良い身体っ。・・・チュッ・・チュッ。」
　二つある乳首を交互に舐めあげ、その都度黒田に視線を合わせる小春。臍の回りに指先を虫のように這わせると、反射した腹筋が強張った。

　上に乗った状態から、小春自らシャツを脱ぐ。安めの白いブラは、暗い部屋の中でも明るく映えていた。
　黒田の動きを理解した小春は、シャツを脱ぎ捨てたと同時に背中のホックをパチッと軽やかに外すと、腋を閉め、肩口からブラ紐を取り去ると、黒田の目に二つの乳房が飛び込んだ。

「・・・。」
　乳首を隠すように腕をあてがった小春は、黒田に寄り添うように寝転がる。寒さか恥ずかしさか布団を肩までかぶると、再び黒田の唇に吸い付いた。

　寄り添うようにして唇の重なりを楽しみ始めた黒田は、布団の中の小春の乳房をもみだした。乳首を指先に挟み、柔らかな乳房を押し上げるように揉む。

「あぁっ・・んっ。」
　小さく反応する小春の息は、少し上がり、唇を外すと黒田は小春の咽喉元を軽く咬んだ。乳房をまさぐっていない左手は、小春の背筋を、虫のように這い、小春の仰け反りを楽しんでいる。

　スウェット生地のパンツのゴムに指を押し込むと、小春の指先は、黒田の尖りきった先端を指先だけで刺激する。

「うぅぅ・・・。」
　手のひらと指先で、黒田の突起物を布団の中でまさぐっていく小春。自らは、尻の割れ目にまでたどり着いた黒田の指先を今や遅しと待ち構える。

　男と女の会話は、無言のまま進み、女の会話が男の会話より先に出ていた。指先は突起物から機動隊支給のジャージの腰にあてがわれる。

　女の会話を理解した黒田は、腰を浮かし膝を曲げ、小春の会話をアシストした。脱ぎ去ったジャージとトランクスは布団のはじに丸まって、ベッドの隅に押しやられる。

　小春は、自らスウェットのゴムに手をやり、布団の中で脱ぎ去るが、ショーツは穿いたままだった。ショーツの隙間に黒田の指が潜り込みかけていたため、脱ぎ去るのをやめたのだ。

　男の会話は理解でき、途中やめにした女の会話も理解が進んでいた。唇の触れ合いから舌の根までの触れ合いに変わった会話。

　ショーツのゴムの隙間から指先が潜り込み、柔らかな小春の陰毛を虫が這った。窮屈な脇の閉まりで、動きは緩慢な黒田の手淫。

　押さえつけるものがなくなった黒田の突起は、小春に根っこを掴まれると、血流は最大限まで流入を許可した。

　シゴキはじめた陰茎の先からは、無臭の液体が現れ、ごまかそうと腰を引く。小春は、黒田の指先をショーツから抜くと、布団に潜り込み、表情を消した。

「おぉっ・・・。」

「ゴソゴソッ・・・ハムッ。」

　咥えられた感触は、男からの会話を遮断させられた。小春の柔らかな舌は、ねっとりと黒田の皮の少し余った亀頭に纏わりつく。

「ニュルリッ」
　いとも容易く、亀頭を露出させた小春は、丁寧にかり首に舌を添わせた。石鹸の匂いがするその先端に、小春は黒田の心を察した。

「きもちいぃぃ。」

「大きくなってるよぉ。」

「うぅぅぅぅ・・・。」

「カチカチ、だね。・・・ベロォォォ。」
　布団の中から聞こえる小春の声はくぐもりながらも、暗闇の中ではっきり聞こえた。それ以上にはっきり声を聞きたいのと、小春の咥える姿が視界にも捉えたい衝動に駆られ、黒田は布団を跳ね上げた。

「いやぁんっ・・・さむいぃ。」

「暑くなってきた・・・顔、見せてよっ。」

「咥えてるとこ？」

「うんっ。」

「じゃぁ・・・立って、そうしたほうが、・・・小春、好き。」
　黒田は、ベッドの上に立ち上がる。短めの陰茎は、同僚からも揶揄されるが、太さだけは自信があった。小春は、その陰茎の大きさには、気にせず、自らの昂ぶり方を黒田に示したかった。

「うぅぅっ・・・いいぃぃ。」

「クポックポッ・・・クチュ・・・ジュルゥゥゥ。」

　小春の顎から、黒田の足の先に涎が滴ると、首を少し曲げ、小春の頬を両手で虫が這うように触る。上目遣いで見上げた小春は、視線だけで会話した。
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2012年11月3日掲載
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