鞭を執れ
はちみつ太郎 作
３０．


「では、これで第１１回法務省矯正局との意見交換会を閉じたいと思います。皆様お疲れ様でした。」

　総務課長風の男が閉会の言葉を告げる。

　各々、立上り、時計を見る者、廻りの者と食事の調整をする者、会議の進行に文句を告げる者もいた。

「小笹次長、お昼どうですか？」

「あ、どこに？」

「ウナギなんかどうです、驕りますよ。」

「高いのでは？」

「いやいや、ボーナスも出ましたし、私みたいな独り者は使う金もそうないからね、、、へっへっ。」

「では、お言葉に甘えます。」

　門を出ると、待たしていた車に乗り込んだ。

「公用車ですか？」

「えぇ、私用ですが。」

　乗り込んだ車の運転手は、公務員の風貌とは違っていた。小笹は、いきさつを察し、言葉を選ぶ。

「長野副所長、目立つと、、、。」

「しぃーー。」

　運転手の顔を見て長野と呼ばれた男は、小笹の言葉をさえぎる。

　うなぎ店まで一言もしゃべらない二人。駐車場に入れたあと運転手に１０００円を渡す長野。

　昼に似合わない店構えの門をくぐり、出てきた女将に挨拶された。

「ようこそ、さ、さ、どうぞ。」

　長野は女将の尻の後についていく。小笹も同じく連れ立った。

　座敷に通され、隔絶された空間に二人で座る。女将は、料理が出る前に一度呼び鈴を鳴らすことを告げた。

「ありがとう、杉山のところによろしく言ってくれ。」

「かしこまりました。」

　女将が消えると、長野はお冷をぐいと飲み干した。

「小笹次長、とんとん拍子ですな。」

「え、あ、まぁ。」

「次は、その若さで局長ですか？」

「いえ、それはありえません。別部局に。」

「いやでも、あなたの功績でしょ、あの件は。」

「あまり、うまくいきすぎると、目を付けられますから。」

「そうは言っても、検察なんかも挙げられなかった、未解決の物を見つけさせたんだから。」

「、、、。それは、そうですが、少しやり方が。強引というか、、、。」

「ばれやしませんよ、こんなことしてるなんて、分かるわけがないですよ。あいつらに、だってすべて未解決で終わらせるんだから。」

「ま、まぁそうですけど。」

　スマホを取り出した長野は、小笹の脇に近寄り、動画を起動させる。

「これ、先日手に入れたんですよ。どうです？」

　小笹は、気にしないようするが、長野の圧力に負け視線を画面に移してしまった。



　0724-2325-1

　バスタオルを巻いた女が、クロゼットの扉を開けた。

　動画は、ベッドの上に置かれているのか、画面は斜めになっている。

　クロゼットを開けた瞬間に映し出されたのは、顔が紫に染まった首つり死体。

　それを見たバスタオルの女は、首つり男の名を小さく呼んだ。

　女の声が大きくなる前に後ろ手に拘束され、声を上げることを忘れている間に、口の周りに銀色のテープで　発する音を塞がれた。

　バスタオルははだけ落ち、後手錠を施された後、一人の男が女をベッドに転がした。何事か、女に問いかけをしている。

　女は、目を見開き、男の問いかけに頷くだけだった。恐怖に支配された女の顔は、小刻みに震え、脅しをかけている男は、女の涙をぬぐい始めた。

　拭い去られてもとめどなくあふれる涙。なにか、問いかけた後に、首を横に振る。

　冷静に、女を立たせ、首つり死体の横まで連れて行く。女の眼前を首つり男の一物に近づけた。女は大きく顔を横に振る。嫌がる女に耳打ちをし、鼻先で一物の臭いを嗅がせた。男は笑いながら女に嘲笑の言葉を浴びせているのだろう。動画は音を拾い切れていない。




　長野は、ここで切れた動画の続きを小笹の顔色を伺い、再生した。



　0724-2330-1


　首つり男の横に膝から崩れた女を後ろ手をつかみ強制的に立ち上がらせた。おぼつかなくなりかけた足取り。支えるように年上の男が女を連れ出した。

　動画は動きを持ち、もう一人の男が撮影していると感じる。

　支えられた女を下から、舐めるように撮影する。繁茂の付近で一度止め、割れ目を指で裂くようにすると、足をきつく閉じ、太ももで割れ目を隠そうとした。

　あきらめた撮影男は、下から乳房を撮り、乳首の色合いを抜け、首筋から女の涙を接写した。

　顔をそむけ画面から消えようとする女。執拗さはなくあきらめた男は、室内を移動させ始めた年上の男のいう事を聞いた。

　張りのある尻肉にピントを合わせ、右へ左へ動く様を実況している。音声は小さめにしているが、明らかに女を蔑む言葉をかけ続けている。

　年上の男に手首を持たれ押し上げるように階段をあがらされる。尻肉の隙間に見え隠れする陰毛と隠し切れない外の襞を男は撮り続けていく。

　女はその先になにがあるのか知っているように、階段を上がる足が重い。

　最後の段を上がりきると、見えてきた光景に、テープで塞がれた口から発する声を音として伝えている。

　んーんーとだけしか聞こえない女の声。最後の段に膝をついた女の、太ももをこじ開け、撮影している男は２階の情景を映し出した。

　階段の吹き抜けにある格子になった飾柱。そこに別の柱のように添えられた男の姿があった。

　全裸で、首をくくられ、格子の柱に縛られている。足首は開かれ別の格子にくくられていた。

　撮影している男が、ピントを合わせたのは、女の外の陰唇から、括られた男の陰茎にピントをズームさせる。

　赤黒く根元を縛られた陰茎は反り立ち、睾丸も締め上げられてる。先端からは滲んだ液体が床に垂れ下がっている。

　何も触れられず屹立を維持しているわけを説明するように格子の後ろへ女を誘導した。

　格子の後ろから括られ男を映すと、睾丸をくくる紐に繋がれたアナルバイブの動く音が聞こえる。大きな振動ではないが、確実に前立腺を刺激し続け男の先端汁を分泌させ続けてることを女に伝えていた。

　女は、男の意識があることを確認するとテープの中で名を呼んでいる事がわかる。

　撮影している男は、あと数分もすると、陰茎の鬱血が進み感覚がなくなるだろうと告げている。

　女が撮影男に懇願している。男は、滲み汁を止めることもできずに女から視線を外している。

　鬱血の進行は、前立腺刺激のせいだと男が告げている。

　紫が濃くなり猶予の無さを素人目にもわかるタイミングになった。

　撮影男は、壊死すれば切り落とすだけだと言い、女は首を振る。男は目も合わせられず、答えることもできていない。

　年上の男は女に耳打ちしている。何度か頷くと、男の進言を承諾したようだ。

　撮影男は、男の首のくくりを緩めると膝を曲げた状態にした。

　承諾した女を男に四つん這いで近づける。

　滲み汁の垂れる先端を宛がおうとしたその時、離れるよう年上の男が指示した。

　年上の男の声は、動画にはっきり残っていた。

「俺たちと同じ、隔たりを設けろよ。」

　撮影男は、ポケットからコンドームを取り出すと、ギンギンに張った男の陰茎に隔たりを作った。

　小さめのコンドームは男の陰茎を窮屈そうに覆う。刺激がきつい男は呻くように腰を沈め、女の陰唇から切っ先を離そうとする。

「最後の面会かもしれねぇぞ。」

　撮影男が言うと、女の肩に年上の男は力を加え、呻く男の先端を女の鞘に差し込んだ。

　抜き差しの始まらない性交だが、収まった鉾と鞘を撮影男が撮り続けると、３０秒と持たず、コンドームの端から白い液体が漏れ始めている。

　女は首を振り続け、年上の男に許しを懇願しているようだった。

「面会時間終了だな。」

　膣道から抜かれたゴム付の陰茎は張り裂ける寸前で女の陰唇から名残惜しそうに引き抜かれた。撮影男はゴムを外さぬまま括りつけられた男を放置しその姿を動画に刻み込んでいる。

　ビクつきながら陰茎を震わせ、とめどなくゴム端から零れる精をアップで映し続け動画は止まる。




　小笹の陰茎のふくらみを長野は見届けると、呼び鈴を押しウナギの出番を待っていた。
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2020年8月28日掲載
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