鞭を執れ
はちみつ太郎 作
３４


「長野さん、先日の供述の通り、骨が上がりました。」

「そうですか、それは、それは。」

「身元不明として、、、ではありますが。」

「ま、みつかっても、土にかえるのは、同じですがね。」

「はい、、、。」

　盃を上にかかげ、長野は小さな声で弔いの声を吐く。

「献杯、、。」

　小笹も、併せて盃を掲げ喉の奥に酒を注いだ。

　おもむろに、小笹は、長野に問いただす。

「今、二人ですよね。」

「何がですか？ここにいるのは我々だけですが。」

「いえ、そうじゃ無くて、、、旧霊安にいる。」

「あぁ、弔い女ですか。」

「え、あ、はい。」

「あれがどうしました？」

「また、、、その。」

　小笹が言いにくそうに、長野に言葉を求めた。

「京極さやか、、戒名は、公雌大姉、公家のような名前の奥さんの処分のことですか？」

「しょ、処分とは、、、で、なくて、、、。」

「ほぉ、小笹さんは、あの奥さんがお気に入りで？」

「い、いえ、、、そうじゃ。」

「では？」

「、、その、、、大山　祐の、、、。」

「はいはい、大山への供述用にということでしたね。」

「そろそろ最終段階と、、、考えて、、、この前の女を拾ったものだと。」

「ですね。大山の件は、協力しますが、、、、もう少し待ってもらえたら。」

「なぜです？」

「えぇ、、、今、拘置中の金蔓、、、杉山の、、、お気に入りでね。」

「強盛会の、、、杉山ですか。」

「えぇ、この前のウナギも、、、。」

「杉山に、、、何を。」

「施しをね、、、公雌大姉を一時間、１５万でね。」

「、、、長野さん、、、あまり、、、やりすぎると。」

「問題は、ありませんよ。」


　長野は、小笹に酌をし、飲み干したのを確認するとスマホ動画を起動する。


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　スマホの画像は、テレビモニターの動画を直撮りしている。

　風呂場のいすに、首から下の皮膚に般若や、明王が彫られた男が座っている。

　薄暗くされてはいるが、後手に手錠を掛けられた男は、これから行われることを期待し、屹立が天井へ向かい始めていた。

　痩せ細った男が、首輪の縄を持ち、カメラの前を横切った。１ｍほど離れ、支給品の簡素なショーツだけを履いた女が続く。

　首輪の縄を床の固定ボルトにつなぐと、男は支給品であろう石鹸と洗面器を置いた。置いた後、女に一瞥し名残惜しそうに、カメラから消える。

　椅子に固定された男は、頬を緩め、屹立をすこし揺らしながら、石鹸と洗面器の前に膝ついた女に声を掛ける。

「２４２２番、、、お願いしますっ。」

　男が声を上げると、女は連れてきた男の方を向き、始めてよいかどうかを目で聞いた。

「し、失礼します。」

　女は、目を合わせぬよう、洗面器の水と石鹸で泡を作る。安い支給品の石鹸は泡立ちが悪く、指先のぬめりのみで極端な泡は発生していない。

　女の指は恐る恐る、男の足に触れる。泡立ち悪い石鹸で刺青の男のふくらはぎなどを洗う。

　太ももを超えたあたりで、指が止まる。躊躇した女に周囲に聞こえない程度の声を男がかけた。

「この前みたいにしてくれ、、、。」

「私語をつつしめ、２４２２番。」

　背筋を再度伸ばした男が、大きな声で詫びる。

「申し訳ありませんでしたぁぁ。」

　女は、睾丸の部分に指を触れさせ、男の敏感な部分を洗浄する。剥きあがって赤黒く染まった、亀頭の先からは、石鹸の汁とは思えない汁が滲み出している。

　女が、目をそらし、触れる手を逃がし、太ももの付け根へ指を逃がす。

　男はその指先に反応し、太ももで手を挟んでしまう。女は、指を抜き、お腹の部分を泡付け、胸板まで手を這わす。

　身体を重ねるように首筋に指を添えたとき、女の耳元に男が蔑む声を掛ける。

「寝取られ趣味なんだよな、あの旦那。」

「、、。」

　反論なく、指の触れを止め、伏せ目で言い逃れの出来ぬ自分たちの性を隠そうとする。

　丸坊主の男の頭を石鹸で洗い、女は男の背後に回る。首輪の縄のストロークはそこまでで、尻の部分に指を添わせると、男の背筋が伸びたのがわかる。

「２４２２番、、、どうだ。」

「はい、、、気持ちがいいですっ。」

「よし、公雌大姉っ、、、水で流せ。」

　頷いただけの女は、男がくんできた洗面器の水を椅子に座る男に肩から掛ける。最後に頭も洗い流し終える。

「番い男、出番だ。」

　最初に首輪の手綱を持っていた男は、刺青男の背後に廻り、屹立した一物に手を添えた。

　刺青男を洗い終えた戒名で呼ばれた女は、刺青男の前で、濡れたショーツを取り去り、泡立ちの悪い石鹸で自らを清め始める。

　女が胸元、首筋、脇、横腹、尻の間と指で清め続けている。

　背後の男はそれを見ぬように、刺青男の陰茎をしごいている。刺青男は、清め続けている女に前のめりで視線を注いでいる。女の指先が、股間に差し入れられ、泡立ち悪い指先が割れ目に沈んだ時だった。女が細かくビクつき、腹筋に力が入ったのを刺青男は逃さなかった。

「うぅ、、、、いっ。」

　背後の番い男は、刺青男の陰茎が極度に膨らみ、射精の瞬間を感じた。先端から発射された射精液は、女の手前で落ち、目的物を捉えることは出来なかった。

「２４２２番。何日目だ。」

「三日我慢しましたっ。」

「よし、、、番い男、、、洗浄っ。」

　スピーカーからの指示に従い、男は刺青男の前に膝ついた。迸りを十分に終えたあとの亀頭の先端を男が口に含む。

　亀頭のみを拭い取、床へこぼれた精液は、洗面の水で洗い流している。

「番い男、、、まだ、２４２２番が床を汚しているぞっ。」

　番い男と呼ばれた男が、カメラの方をにらんだ。

「なんだその眼は、抗弁っ。３８０９、懲罰を。」

　風呂場の扉が開いた音がし、３８０９と呼ばれた男が、警棒を振りおろし、首筋を殴る。崩れ落ちた番い男は、物言わず床にひれ伏し、番であろう女が、慈悲の声を上げた。

「わ、たしが、、、なんでもします、、、も、もう、、、ゆるしてぇぇぇ。」

「抗弁っ。公雌大姉、、、３２０１、懲罰を。」

　３２０１と呼ばれた男は女の首縄を持ち、男から引き離し、首輪と床のつなぎを外した。

　番い男は、その外した床の留め具に首輪ごと繋がれ、３８０９が四つんばいにさせると、尻の穴にめがけて自らの屹立をぶち込んだ。

　石鹸のぬかるみを利用しピストン運動を始める３８０９は、女に蔑みの言葉を与える。

「おくさんの番いの尻の穴は絶品だぁぁ、、、、お前の尻穴や、ま○こよりもよーーく絞まりやがる。食いちぎられそうだぜぇぇ。」

　尻穴を犯されながら、歯を食いしばりながら、自分の屹立を律しようとするが、尻を犯しながら指を這わせ、番い男の屹立をしごく３８０９の指先は、男のすべてを知っている刺激だった。

「ぃぃぃいいいいっ。」

　３８０９が尻の中に放出すると、扱いていた指先も動きを速め、仰け反るようにさせる。

　３２０１は公雌大姉の本名を呼び、首縄を引き番い男の陰茎の先に顔を近づけた。

「さやか、、番い男の精汁の臭い、、、これが最後かもしれんな。」

「ぉぉぉぉぉっ、、、びゅびゅ。」

　さやかと戸籍の名で呼ばれた女の顔には、熱く迸った精汁が名残惜しそうに飛び掛かっていた。

　３８０９は、戸籍の名で女を呼び、番い男の行く末を告げた。

「旦那の最後の射精だ、受け止めてやれてよかったな、明日は、、、、今の抗弁懲罰、累積１０回で、、、去勢日となる。」



　動画を閉じた長野は、小笹に声を掛ける。

「抗弁懲罰累積１０回の、、、懲罰動画ご覧になりますか？」

　小笹は、長野の顔を見ながら、スラックスの股間の納まりを直している。

　長野は、返事のない小笹の意思とは関係なく、別の動画を再生した。




　再生された動画は、何度か早送りされた。

　動画の最後、摘出された睾丸がステンレスバットに載せられている。

　霊安所のベッドの上に摘出睾丸を載せたＳＵＳバットを置き、一人弔いをさせられている。泣き崩れる京極さやかの顔をアップにし動画は止まる。
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2020年9月12日掲載
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