鞭を執れ
はちみつ太郎 作
５０

「チオペンタールにとある変化をもたらさせた、大脳新皮質により浸潤しやすくなるが、中毒性は？？」

　静脈注射を小春に施しながら、独り言で小春に問いかけている。

「ロールパンで腹の中に入ったものは、探りだからね、、、脈は粗いが、まぁ、いいでしょう、、、、よし、おぉぉ、、、効果かねぇ、、。」

　塩田は、横たわる小春の乳房が鳥肌立ち、乳首の硬直を見ながら感想を述べる。指先は硬直した乳首ではなく、少し緩んだ股の間、割れ目に沿って指を這わす。

「その効果もあるやなしや、、、ありかっ。夢を見ているのかな、、、、旦那との、、、初夜、、、もしくは、、、、寝取れら初夜、、、どちらでも。」

　人差し指を陰唇に割れ沿わせながら、指先に光るものに実況をした。

　指先をもう一つのベッドに仰向けに縛られている計の方に指先を見せた。

「、、、む、、む。」

　体を何度か揺らす計。塩田は近づき、濡れた指先を鼻先近くへ当てる。

「匂いでわかるか、、、排卵の準備か否か。」

　計は、指先から鼻をそらそうとし、顔を背けた。

「番いだろうが、、、俺にはわかる、、、まだ、その時ではない、、、かな。」

「乳房の張りもない、、、なにより、、、まん汁が透明すぎている。、、、だろ。」

「これだけの恵体で、、、なぜ子を宿せん、、、おまえの遺伝子は旺盛なオスであったよ、ここの、安物顕微鏡レベルでも。」

　塩田は再び小春のベッドに近寄り、仰向けの小春の体を一転させ、うつぶせにし、双尻の隙間を大きく広げた。

　小春のすぼまった肛門を指先でほぐすと、中指で直に直腸診を施した。

「こっちかぁ、、、、なるほど、、、アナルフリーク。」

「ほどよいゆるみに、入口、、、いや、生体的には出口の閉じ具合が、膣とは違う役割を担っているね。」

「こっちばかりを使っておれば、、、そりゃ、、、孕むこともないなぁ。」

　計は、ガムテープで粗末な轡をされているため、塩田の言葉を耳にするが否定する言葉を吐くこともできない。

　それだけではなく、偽装夫婦として小春の性嗜好も、仕事としての性へのアクションも知らない自分が否定も肯定もできる立場でないことを悔いる。

「いままで、排泄口を性の道具として使い倒されて来た嫁と、同じ排泄口をところてんで精汁をだらだらと垂れ流す馬鹿な旦那。」

　力強く指先を小春の直腸に突き刺し、かき回すようにした後、隣の性道への刺激も繰り返す。

　抜き去った後、少量の糞便が指先にこびりついたのを計のそばに行き、アルコールペーパーで拭いそのペーパーを計の鼻の上に置いた。

「愛おしいだろ、、この匂いが。」

　置いたペーパーを丸め計の鼻の穴に詰めた。

「ん、、、んーーっ。」

　小春に動きがあり、塩田は計のそばを離れ、うつぶせの小春の横に立つ。耳元へ口を近づけると、ささやくように声をかける。

「やぁ、、、、お目覚めだね。」

「、、、頭が少し、、、重い。ここは、、、？」

　うつぶせから顔だけを横向け塩田の方に向ける。

「ここかい、ここはねぇ、、、新しい職場だよ。」

「お、お仕事を、、、するのですか？」

「そうだ、、これから看護助手として私の研究の仕事を手伝ってくれるんだよ。」

「、、、。」

　全裸であることに気が付くはずだがそこに意識は移らない。うつ伏せから起き上がりベッド尻をつけ足をぶらりとする。

「じゃ、このお水を飲んだらいい、、、ゆっくり飲みなさい。」

　渡された紙コップの水を飲み干すと、空のコップを塩田が受け取った。

　診察のように塩田が小春の横へ座ると、恐怖心と猜疑心の欠片も見せず小春は塩田の方を向いた。

「落ち着いたね、二、三、質問いいかな。」

「はい、、、。」

　従順な目をした小春が、一つ頷くと塩田の眼以外は見ていない。

「名前は、、何だったかな、教えてくれる」

「はい、、、瀧井、、、小春です。」

「ほ、瀧井小春、よい名前だね。」

　塩田は問診票に氏名から記入を始めた。

「お子さんはいるの？」

「いません、、、。」

「結婚は？」

「、、していません、、、独身です。」

　躊躇うことなく小春は塩田の質問に答えていた。それを耳で聞く計は、首を小春の方に向けるが何もできないでいる。

　塩田は計の方をみつめ、確信したことを告げるように降格を上げ笑う。

「じゃあ、研究に必要なことを聞くよ、隠さず話してください。」

「、、はい。」

　小春は塩田の眼だけを見て、瞬きも少なめに頷いている。

「初潮の時期と、初めて性交をした時期、自慰を覚えたのは三つ端的に答えて。」

「生理は、、小学校６年生のときで、、、、、性交？、エッチは、、、中学２年、、、、お、オナニーは、その少し前です。」

「じゃ、オナニーを始めたきっかけは？」

「、、、好きな先輩ができて、、、先輩にしてほしくて、、、お風呂で、、、触ってたら気持ちよくなって、、、それから、、。」

「毎晩？」

「はい、、、毎晩、、、部活の着替えの時とかも、、、抑えていられなくて、、、。」

　計に聞こえるように問いただす。

「じゃ、いまでも、、、自慰は頻繁なのかな？」

「、、、、、ここ、、最近のことが思い出せない、、、でも、男の人に、、、してもらう方が、、、。」

「中二で、エッチした相手は、、、その好きな先輩？」

「、、、いいえ、、、その先輩のお兄さんで、、、専門学校生でした。」

　計は耳を閉じたいが、塩田の質問は続く。

「先輩のお兄さんねぇ、、、長く続いたの？」

「はい、、、高校に入るまで、、、１年半くらい。」

「どれくらいの頻度？」

「、、、週に２回くらい、、、です。」

「相性よかったんだね。」

「、、、、。はい、、、。」

「今でも、、思い出す？」

「、、、、、、はい。」

「どんなところがよかった、ほかの男とどこが違うの？」

「、、、当たる、、角度が、、、よくて、、、ゆっくりしてても、、。」

　計を見ながら塩田は聞いた。

「今のパートナーよりも、今までのパートナーよりも？」

「うん、、、あ、はい、、、。」

　小春は答えを戸惑うが、その男のことを思い出し、軽く恥ずかしがり答えてしまう。

「複数の男性との経験があるようだね、、、高校時代とかって、どうしてた？」

「高校には、、、行っていないんです、、、。」

「へぇ、中卒で、、、就職かい、、、いったいどこに？まさか、風俗？」

　答えにくそうに小春は、しゃべり始める。

「、、、宗教団体の運営する、自己啓発セミナーで、、、。」

「そうなんだ、、、それは、、、どういう仕事で？」

「、、、、優良顧客である企業の担当者への、、、、、接待。」

「性的な？」

「、、、そうです、、、。」

「大変なお仕事だね、、、どうして抜け出せた、始末されてもおかしくないよね。」

「、、、あずささんに、、、、助けてもらいました、、、、。」

「あずささん？」

　計はあずさの名が出たとたん、振り向きその答えを制するように口枷から声を漏らしている。

「はい、、、、警察庁、、、密命本部所属の、、、先輩です。」

「おや、、おや、、、、先輩、、、ってことは？」

「自己啓発セミナーから助けていただいた、、、１年後、、、、特例で就職し、警察庁密命本部という部署へ配属されました。」

　計は力の限り声を振り絞るが、塩田の耳元近くで吐き出した小春の言葉はかき消すことができないでいる。

　塩田は、小春の過去を引き出したことで、展開の違う後始末の方法を模索し始める。
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2023年9月26日掲載
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