鞭を執れ
はちみつ太郎 作
５６

　ダム湖に吹く風はゆらりとし、テントの中は風と同じような時間が包んでいる。

　一回戦目の動物的なスタイルの性交から、文明的な顔と顔、唇と唇で認識しながらの性交に変わった二人。

　小春の背には、一晩中の交わりでも耐えれるようにとエアクッションを当てている。

　唇が交わる二人の頭上には、一つ目のゴムが口を閉じられ無造作に放置されている。

　二回戦目は夜通し続く交わりを意識し、スローなリズム。

　獣のような突き上げはなく、賢のゆっくりとした交わりは、牝の性感に与えられる物足りなさより充足感を増している。

　小春は、賢の眼を見る余裕があり、訴えるように視線を送った。

　視線を理解した賢は、小春の口淫道具を吸いに顔を近づけ始めると、舌を伸ばし賢の唾液を絡めとる。

　舌の裏まで舐めとられていくと、のどを鳴らすように賢の唾液が流れ込んでくる。

　一回戦終わりに潤したスポーツドリンクの残った味と、賢の放った残りを舐めとった残り味が混ざる。

　苦い方が勝ち、甘い方は負けていた。

　いつの間にか味覚まで支配されるように、味は消え粘性だけを感じ取るようになると味覚は消え去っている。

「はぁぁ、、、、ちく、、びもぉぉ、、、さわって、、。」

　舌で唾液を絡めとりながら、賢におねだりした。賢は、小春の眼を見るだけで行動してくれない。

「け、、けんさんっっ、、、ね、ねぇぇ。」

　賢の手を取り、自ら乳首へ誘導してとがりかけの乳頭にあてがう。

　にやりとした後、小春の乳首の先を親指の腹で擦ると、口を真一文字にしてこらえたあと、吐き出すように喘ぐ。

「うぅぅ、、、はぁぁぁ、、、、、あんっ、、、、ああっんっ。」

　びくびくと小刻みに震えながらも賢の手は離さず、求めるように目と口で合図する。

「も、、もっと、、、さわってほしい、、よぉぉ、、、あ、、あ、あ、、そ、そうですぅぅ、、、それ、、、。」

　背中を持ち上げるようにビクビクとした反応を一通り楽しんだ後、大きく跳ね上げるために乳首を指腹で転がした。

「うん、、はぁぁ、、、あんっ、、ああんっ。」

　乳頭の刺激が脳に伝わり脊髄反射のようにのけ反ったあと、賢の眼にねだるように視線を送る。

　眼の訴えを無視するように乳頭のみに刺激を与えている賢が小春へ向けた視線は冷たい。

「あぁ、あ、、あ、、あ、あ、っ、、、はぁぁぁぁ。」

　腹筋に力を入れ吐き出すように堪えきれなくなった息を漏らす。

「やっぱ、赤ちゃんが吸いやすそうな、乳首してるよ、小春、、どうだい、、、？」

　賢は小春のへそ下の部分を押さえつけ刺激を与え、子宮を包むように撫でさする。

　圧迫された下腹部に力が入らず、喘ぐ声だけで精一杯のところ、柔らかく拒絶する。

「ああぁぁ、、、だめっ、、あかちゃんは、、、け、、けい、くんのぉぉぉ。」

「ん？けん、、くんの？」

「あぁあ、、、ち、、ちがいますぅ、、、、あぁぁあぁあ、、けいくんっ、、、ああかちゃ、、んはだめっ。」

　小春が首を振り賢の言った言葉を遮ると、賢は小笑いしたあと奥に届けるよう突き上げを再開する。

　我慢していた小春は、口を掌で覆うが漏れた喘ぎは止まることはなく、賢のストロークにシンクロしている。

「あ、、あ、、、あ、、、あ、、あぁぁあっぁ、、、、あぁぁっうぅぅ、、、あん、、、いや、、、あん。」

「いつか、、、、。」

　と、言うと小春の下がり気味の子宮口を感じながらゴム内に二発目の白濁を放った。

　賢は心の声を最後まで言わず、計への嫉妬も含め飲み込んだ。

　計では届かないポルチオ付近を初めて責められた小春は、体だけMADへ陥落寸前だった。

　ドッキングを解除し、賢がゴムを取り払う。白濁のまとわりついた亀頭付近を小春に差し出すと、息を整えるまで待つことなく、舌先で鈴口付近を舐めとる。

　賢は射精後の敏感さで少し腰を引く。

　息も整い小春は大きく息を吸ったあと、茎の半分まで頬張った。吸い出すように頬を細め、舌先で転がすように亀頭を舐めまわす。

　30秒ほどで口から亀頭を離すと、賢の顔を見上げ言った。

「にがいぃぃ、、、。」

「旦那さんのは？」

「んーー、同じだよぉ。」

「若い方が苦いらしいよ。」

「え、そうかなぁ、、。」

「年寄りのザーメン飲んだことあるんだなっ。」

「、、、ないよぉぉ。、、計くんと比べてってことっ。」

「うそ、、、教えてよ、、、俺より年上の爺と、、、した？他人棒で、、、。」

「ない、ないよぉ。、、、ないですっ、賢さんが一番上。」

「ほかに旦那に頼まれて、若いのと、、、した？他人棒。」

「、、、、。した、よぉ、、、年下、、、大学生かな。」

「まじか、、、、浮気された感。ショック、、、今晩、色々聞きたい。いい？」

「えぇぇ、、、はずいよぉ。」

「じゃ、、朝まで、、、いい？」

「うん、、、、そっちがいい、、、かな。」

　賢は、小春の返事をかき消すように唇を重ね、ショートで離れると、時間を確認した。

「3回戦？」

「んーー、お化粧を、、落としたいかな、、、いい？」

「すっぴん、、、いいね、、、夫婦感出てくる。」

「ですよね、、、水って、、、？」

「ある、車に置いてる、、、、タンクで。」

　賢は立ち上がると、ボクサーショーツのみ履くとテントのファスナーを開く。小春は隅に隠れるようにし、賢にショーツとレギンスを求めた。

　OKと指でサインをした賢が、あっ、とだけ声を上げる。

　小春が、どうしたの、とだけ中から声を出すと賢は隙間から顔を覗き入れ言った。

「小春ちゃん、パンティ、、、盗まれてるわ。レギンスだけ、、、あった。それと、、、これ。」

　賢がワイパーに挟まれていた1000円札を2枚だけぶら下げて、同じく挟まれていたメモ書きを小春に渡した。事態の理解ができない小春は文面を呼んだ。

『おしっこの匂いが薄い、エロい滲みのないクロッチ、キャンプなのにほぼ新品　よって65点、2000円を置いておく。　キャンパーショーツハンター』
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2023年10月26日掲載
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