鞭を執れ
はちみつ太郎 作
６０

　ビニール袋を渡された小春は、排泄にまみれ小川の勢いでは流れ切れていないティッシュの束を集めさせられている。

　下半身を覆うこともできずにいるが、伊藤の視線は賢へと向き、事の成り行きを聞き取っていた。

　賢が説明をさせられている間、視線を遮るように背を向かせてはいるが、何度か振り返る伊藤。

　小春は最後の一枚を取り除くと、倒木の際に下半身だけを隠している。

　ティッシュの処理が終わったと伊藤に賢が告げると、小川の方を伊藤が向き小春の上半身のみ見える方へライトを向けた。

「ま、いいでしょ、、、奥さん、、、野糞はだめっしょ、、、もみじ公園まで降りれば、トイレはあるんだから。」

「、、、すみません、、、。」

　ライトから顔を背けるようにし、形ばかりの謝罪の言葉ですました。

「旦那さんも、、、。じゃ、車両とテント、、、移動してください。」

「すみません、、、移動します。、、、ちょっと、、、離れておいてもらえますか。」

「なんで、、、。」

「あ、、、、彼女、下を着てないもんで、、、。」

　小春の方を向いた伊藤は、半笑いで答えた。彼女といった賢の言葉の意味に感ずいた。

「着てないのは、そっちの問題でしょ、、、ま、おたくさんらは、着てないのがデフォルトなのかもしらんがね。」

「あんた、移動したら、彼女さんの衣服を持って降りてきなさいよ、、、。不法侵入と公然わいせつでもう一度警察、呼び戻してもいい？」

　賢は承諾の言葉を伊藤へ言うと、ランタンを持って堰堤の階段を上り始めた。

　伊藤は上り始めた賢の背を一度だけ見ると、サーチライトを足元に向け、排泄場の小川へもう一度移動する。

「おい、まだあるよ、、、、処理してよ、、、彼女さん。」

　伊藤は、先ほどまでの奥さんという言葉を変え、小春と賢の関係性を未婚の異性として見定めた。

　小春は、Ｔシャツの裾を精一杯伸ばそうとするが、へそ下の部分すら隠れそうにない。伊藤に視線を逸らすよう伝えても無駄と考えた。

　双尻を向けながら、カニ歩きの様に排泄場に近寄り、伊藤の指示するティッシュの残りをしゃがみ込んでつまんでいた。

　伊藤は小春の横に立ち、飼い主の様にティッシュを収納したビニールを手に取った。小春は、屈辱に満ちた顔を上げられず丸まっていると、伊藤も同じくしゃがみ込む。

「旦那じゃないよね、、、あいつ。」

「、、、。」

「返事しないってことは、〇だね。」

「でも、あんたは指輪してる、、、、。」

　小春は薬指を隠しても無駄だったが、伊藤の言葉を飲み込むように頷いた。

「不倫とか？、、、。」

「違い、、、ます。」

「？旦那公認のやつ？」

「、、、。」

　小春は頷かず時間だけで答えを悟らせた。

　しゃがみ込んでいた伊藤は、小春の顔を覗き込むようにして言った。

「じゃ、警察に知らせても、、、大きな問題はないね。」

「困ります。」

「なんで、困るの、、、。」

「、、、今日は、、、内緒で来てるから。」

「へぇ、、、ほんとの旦那に内緒って、、、完全に不倫じゃない。」

「だから、、、警察には、、、通報しないでください、お願いします。」

「で、あいつは、にせだけど、、、こんなかわいい奥さんに、野糞をさせられる、ご主人様ってことだ。」

「、、、。」

　伊藤は丸みを帯びた小春の背骨に沿ってさすりながら、小春を落とし込むように欲求の半分ぐらいを伝えた。

「大事にするかしないかは、俺次第、、、ってことは、流石にわかるよね。」

　小春は頷くことなく伊藤の方を向いた。

「何をすれば、、、。」

「大体わかるじゃん、、、こういう、シチュエーションは。レンタル品の再レンタル、、、あんたからあいつに言ってよ。」

「、、、彼に？」

「あぁ、移動したりで、戻ってくるのに15分はかかるよ、、、。そうすれば、ここが、どういうことになってるか、ご主人様も想像済みさ。」

　倒木のしっかりした部分に腰を据えた伊藤は、サーチを堰堤上部の階段に当てる。小春の足元は暗くなり、伊藤の要望のまま近づいた。

　賢の動きは全く見えず、戻る気配もない。ハイエースのエンジン音が聞こえはじめるまえにと、伊藤は小春にライトを戻し開いた足の間を灯す。

「時間ないよ、どうすんの。」

　ライトの当たる足の間に膝をついた小春は、躊躇いがちではあるが、伊藤の股間の屹立を確認した。

「じゃ、、、始めてよ。戻ってくるのに、あと１０分かな。」

　ファスナーだけを下げると、トランクスに収納されている陰茎を引っ張り出すようにした。サーチライトを消し暗闇に戻すと小春の舌先を感じ取れた。

　脳髄を刺激が上り、背をのけ反ると小春の側頭部を太ももで挟み、動きを鈍らせる。

「チュチュっ、、、ちゅるちゅる、、、。」

「あぁぁ、、、ピンサロ勤めか？」

「、、、じゅるじゅるるる。」

　暗闇で見えぬ小春の顔を振る否定の合図を見るためにサーチを照らす。

　まぶしさで顔をよけようにも、固定された太ももの内側での可動域は少ない。しかたなく、咥えたまま否定の声を出した。

「ち、、、ぐぁい、、、まふふぅぅ。」

　ライトを消すと、小春の後頭部に手を当て、短めの陰茎を喉の奥に触れさそうとした。

「ぐぅぅううう、、、、ぐうう、、、ぐほぐほ。」

「だめだめ、、、早くしなきゃ、、、一回抜いときたいんだよ。」

　伊藤は小春に射精の回数を複数回希望していることを遠回しに告げた。

　喉の扁桃腺を圧迫され嗚咽が始まると、唾液がだらだらと膝にこぼれるのがわかる。ストロークは短いが、扁桃腺を揺さぶるように亀頭が当たると耐え切れず太ももをタップした。

「ギブ？、、、な訳ないよ、、、ご主人様戻ってくるよ、、、。」

「はぁ、、、はぁ、、、、手を、、、手を使いたいです。」

「おぉ、、、いいねぇ、、、。」

　太ももを緩められるとフリーになった手で、睾丸をさすり、亀頭の裏を舌先で刺激する。クリームを舐めるように亀頭についた垢を舐めとると、一気に硬直した伊藤のそれは暴発寸前だった。

「あぁあぁ、、、やば、、、、で、、、でるぅ、、、、ビュビュッ。」

　小春は顔を汚さぬようにと、寸前で押さえるようにした亀頭を両の掌で隠した。ほとばしった精液は小春の指に纏わりついている。

「あぁ、、、出ちまったよ、、、よし、じゃ、ご主人様もうすぐ戻ってくるぞ、キレイにしろよ、、、な、飲み込めよ。」

　小春は頷くと、びくびくして収まらない性衝動のままの亀頭に舌を絡ませ咥えこんだ。苦みをこらえながら、吸い取るようにびくつく亀頭を頬張り、指示通り先端を舐めとった。

　指先の精液は、伊藤がポケットから取り出したティッシュで拭いとる。

「これに入れておけよ、、、おめぇさんの、う〇こティッシュに混ぜとけよ。」

　頷き、唾液で洗浄するように喉を鳴らしながら、指先を拭っている。

　伊藤は、自分の陰茎をトランクス、ズボンの中に隠すと小春にこのあとの始末を厳命した。

「え、、、それは、、、。」

「できねぇとは言わせないね、、、。」

　伊藤がスマホ画面を見せた、「唐鎌駐在所」と記された番号を小春に読ませたあと、しゃがみ込んだ小春の髪の毛を撫でさすりながら、言質を取った。

「わかりました、、、、でも、、、彼が、、、、うんっていうか。」

「言うさ、、、、あんたも、そう思うだろ、、、、寝取られの旦那と一緒よ。」

　スマホ画面をスリープモードにすると、小春を誘うように倒木に腰かける伊藤の横に座らせた。閉じて座った小春の太ももに手を這わせると、指示が飛び、従順に太ももを開いた。

　賢が戻るまでの間だろうが、小春はたばこ臭い伊藤の指先が股間のリンパ節をもみ、次第に大陰唇に近づいてくると、かすかな怯えを超えた声を漏らしてしまう。

「へへへ、、、気分出てきたな、、、。」

　指先がクリ包皮に触れると小春は、伊藤の腕を制止するようにしがみ付く。包皮をつまむようにし、中身をコリコリともてあそんでいると、耐えられず制止していた手を口に当て漏れを嫌った。

「獣しか聞いてねぇよ、、、声出してもいいぜ、、、なぁ、気分出せよ。」

「あぁ、、、、、、あんっ。いやっ、、、、あぁぁ。」

　暗闇に鳴き声が木霊すると、それに呼び寄せられるように死霊の声が響いたのか、伊藤が身震いし、昔話を始めた。

　数か月前に浮かんだダム湖の夫婦の遺体発見の話だった。事件でもなければ事故扱いにもなっていない案件を伊藤が話し始めた。

　小春は、１１０７号事件のことと察知するが、証言を取るわけにもいかず、包皮をいじられ我慢した声と対峙している。

「怖いだろ、、、な、おれさ、疑われたくねぇし、だれも信じてくれねえし、、、黙ってんだけどよ、、、見てんだよ、、、捨てた奴ら。」

「あぁぁ、、、、んっ、、、、も、、、ぁぁぁ、、、いっ。」

「遠慮せず、往っちまえよ、怖さを消してくれって。」

「でよ、、、仏さん、運んできたのはよ、、、カバー覆ってたけど、、、パトライト付きの護送車、ハイエースよ。」

　小春は伊藤の証言を聞いたあと、Gスポットを抉る指先に耐え切れず、伊藤の腕にしがみついた。

　声を殺してしがみついていると、堰堤の上から光が差し、賢の作業が終わったことを告げていた。

　賢は小春の所在の確認をしたいが、名前を呼ぶことを躊躇い、一歩ずつ階段を下りていく。

　倒木の付近を照らしている賢は、想像の通りの雰囲気に感づくと、気づかれぬように笑みを浮かべ、真顔に戻しながら寄り添う二人に近づいていった。
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2023年11月11日掲載
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