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夢のような出来事から二日が過ぎた月曜日。
ＡＭ７：２７。俊介はいつもより一時間ほど早く会社に着いた。まだ、カギ当番の社員ですら来ていないので扉は閉ざされたままである。
だが、問題は無い。営業課長である俊介は退社時間が不規則であり、お客の都合で休みの日でさえ、急に会社へ資料を取りにいかなければならないといったことも度々あるので、常に会社のスペアキーの携帯をしていた。
背広のポケットから会社のかぎをとりだし、セキュリティシステムの鍵穴へさしこんでセキュリティ暗証番号をうちこんだ。直ぐにピピッと小さな電子音がし、カギの外れる音がした。
扉を開き、薄暗い社内に入った。休み明けのコンクリートの空間は冷え切っており、思わず身が震える。
そして、いつものように入り口の横にある自動販売機からブラックのコーヒーを買い、冷えた両手を温めるように缶を交互に持ち替えながら、廊下の突き当たりにある営業部へ向かった。
営業部にはいり、電気をつけた。薄暗い部屋がたちまち無機質な蛍光灯の光りに照らされた。
いつもなら、俊介がこの部屋に入ると忙しそうに掃除をしている季子がいる。まだ、始業時間まで一時間半はある。
それにしても寒い。昨年から、経費削減の一環として夏季を除いてはエアコンをつけることはできない。よって、冬期はストーブで寒さを凌いでいる。
業務用の大型ストーブの点火ボタンを押し、入口から最も奥にある自分のデスク向かった。
椅子に座り、ぼんやりと季子の席を眺めた。
日中、彼女は提案書や営業成績表、顧客管理などをパソコンにうちこんでいる。机に置かれた手書きの書類とパソコンの画面と視線を上下に動かしながらしなやかな指さばきでデータベース化してていく。そんな彼女に目を奪われることもしばしばあった。
あと、数時間後には、また同じ視点で季子の姿が見れる。時間が待ち遠しい。
バチバチッと点火音がし、ボッという音と共に炎がついた。
缶コーヒーを一口飲み、タバコに火をつけた。そして、紫煙を漂わせながら、季子と肉体を重ねてから、今日までのことを思い巡らせた。
この二日間は長かった。一日が一週間、いや一ヶ月くらいに感じた。
片時も、季子のことが頭から離れることがなかった。買い物へでかけたときも、食事をしているときも、また、子供たちと遊んでいるときでさえ彼女の残像が頭から離れなかった。季子の声を聞きたい、肌に触れたい、一緒に休日を過ごせればどんなに幸せなんだろうと何度も思い、願った。
また、あの時、携帯電話の番号とメールアドレスを聞いておけばよかったと心の底から後悔した。
メールの交換だけでもよかった。とにかく、季子と繋がっているということを確認したかった。
 家族が寝静まった後、季子との行為を思い出しながらオナニーもした。季子のパッチリとした大きな瞳、官能的な唇、張りのある乳房と硬く尖った乳首、淫らな汁で潤った陰唇、すべてが瞼の裏側に張り付いているように鮮明に浮かんでくる。
亀頭に這いまわった舌の感覚、極上の膣肉に挿入したときの感触もはっきりと脳裏に刻み込まれている。だから、射精が訪れるのも早かった。布団を汚さないために用意したテッシュを突き破るほど勢いよく大量の精液を放った。
一度終え、寝ようと目を閉じるが再びあの日のことが頭を支配する。またもや、陰茎に力が漲ってくる。自然に手が伸び、また扱いた。オナニーを知ったばかりの少年のように、陰茎に疲労が訪れるまで何度も何度も射精した。そうでもしなければ寝れなかった。
そして、待ち焦がれた今日という日がやってきたのだ。やっと、季子に会える。
多分、季子は誰よりも早くこの部屋に入ってくるだろう。季子と顔をあわせた時、どんな、顔をしようか？ 第一声はなんて言おうか？
おはよう、やあ、会いたかった、好きだ、それとも、愛している。そんなことを考えると心が落ち着かない。
あんなに激しく燃え上がったのだ。肉体を重ねる以前と同じように接することができるのだろうか。僅か二日間あえなかっただけで、胃が痛くなり食がすすまなかった。きっと、接し方は変わるだろう。たが、部下たちに二人の関係を知られるわけにはいかない。自分に対して不安があるが、そのうちそんな状況にも慣れてくるだろう。
「ふうっー」
ため息を漏らして軽く目を閉じた。
日頃、妄想していたこの部屋で季子を抱いているシーンが浮かんでくる。
二人しかいないこの部屋で制服を身につけたままの季子とセックスしているものだ。 季子が机に手を置き、俊介に向かって尻を突き出し誘う。季子のスカートを腰まで捲くりあげ背後から激しく貫く。オフィスで働く男の願望。こんなシーンで、幾度、精子を放ったことか。
土曜日に肉体を重ねた今、それも現実になりつつある。これからが楽しみだ。
そんなこと妄想をしていたら、いつのまにかスラックスの下に隠された陰茎は硬く勃気していた。
今、目の前に季子が現れたら、言葉無くいきなり抱きしめこの欲望をぶつけてしまいそうだ。
もちろん、部下たちも出社してくるのでそれは無理なことである。
(いかん！ いかん！)
頭を横に振って、スケベな思いを消そうとした。だが、頭の中は直ぐに季子の淫らな姿に占有される。
(だめだ。もう、彼女のことしか考えられない。早く会いたい)
そんな思いと格闘しているうちに一時間が過ぎ、普段、俊介が出社する時間がきた。後、３０分で業務開始だ。
(遅いな)
まだ、季子はこない。彼女がここに派遣されていらいこんなことは初めてである。
(風邪でもひいたのかな……それとも)
どうしたんだろうと不安が芽生えてくる。
時は一刻、一刻と刻まれていく。落ち着かない。
全神経が扉へと集中している。
ドアノブが回った。
(きた！)
俊介は息を大きく吸い込み吐いて満面の笑顔を扉に向けた。
「おはようございます」
季子ではない。入ってきた人物は部下だ。表情が一転して曇った。
「おはよう」
そして、一人、また、一人と部下たちがやってきた。季子を除き５人いる部下のうち４人が顔をそろえた。季子はまだこない。
俊介と同じく、部下たちも季子がいないことが気になっているようだ。
「あれぇ、季子ちゃん、どうしたんですか？」
「風邪でもひいたのかなあ」
「連絡ありました？」
俊介は質問されるたびに 「何も聞いていない」と答えた。
皆、季子のことを心配している。それだけ、営業部にとって彼女の存在は大きいということだ。
「もしかして、奴にやられちゃったりして」
部下の一人がボソッと言った。
「そんなことはない！」
その言葉に俊介は思わず怒鳴った。普段、感情を剥き出しにすることない俊介に皆唖然とした。
「……すまん……彼女のことなら、心配するな、俺が後で連絡とるから」
彼らも彼らなりに心配しているのである。前の女の子が辞めたことに奴が絡んでいることは明らかだったのでそんな言葉がでるのも仕方がないことだ。
俊介の言葉でこの部屋の空気は重くなっている。皆、無言で机に視線を落としている。静かな部屋の中時を刻む壁掛け時計の音が妙に響く。
そんな中、いつも遅刻ぎりぎりに来る最年少の部下が息を切らせてやってきた。
「はぁ、はぁ、滑り込みセーフ！ あっ、あれぇ！ 僕のアイドル季子ちゃんは」
能天気な奴である。だが、彼によって重い空気が壊れた。
時計の針は始業時間をさしていた。
その時、もう一つの違いに気づいた。
季子だけでなく、部長である奴の姿もない。奴は始業時間と同時にこの部屋にはいってくるだが来ない。土曜日あんなことがあったから奴は顔を出しにくいのでは？ と脳裏をよぎったが今はあれこれ詮索している場合ではない。仕事は始まったのだ。
俊介は口を開いた。
「よし、部長も来ないようだし、朝礼始めるぞ」
「まじですかあ〜」
日頃、俊介は朝礼は必要な時だけすればよいと公言していた。部長が出張などで朝礼に参加しないときは、朝礼を行わないが常になっていた。ところが、俊介が進んでその音頭をとったのだ。部下たちが驚きの顔を浮かべるのも当然のことだった。
そして、儀礼的な朝礼を済ませ、各々が営業に出向く準備をはじめた。あるものはアポ先へ、あるものは新規顧客を求め電話をする。また、ある者は資料や企画書を点検している。俊介も同じだ。たとえ役職についていたとしても、しょせん中小企業であるので営業の最前線が活躍の場である。彼らと違うことといえば責任をおったことと雑務が増えたことだ。
なにはともあれ、今日も一日が始まったのだ。いつもどおりに、まず、部下たちが提出した今日の予定や営業進捗状況の書かれた書類に目を通していく。一枚、二枚と眺めていく。
プルッ、プルッ、プルッ。
内線電話がかかってきた。外線は全て総務へ繋がる。そして、そこから各部署へと電話がまわってくる。
もしかして、季子からの連絡ではと思い素早く受話器をとった。
「はい、営業２課……」
総務部のＯＬの事務的な声が耳に入った。残念、お客さんからの電話だった。
一人また、一人と営業準備を整えたものが部屋から出て行く。すべてを確認し「頑張って来いよ」と喝をいれてから俊介の準備が始まる。いつもなら、季子の『頑張ってね』と言う明るい声があるのだが、今はいない。寂しいものだ。
（いかん、いかん。いつまで彼女のこと考えているんだ。仕事、仕事）
まだ、気持ちの整理はつかないが、今日は季子がいないから、彼女が普段こなしている仕事もせねばならない。
それが終わりしだい営業にでかけることができる。
季子の席に座ってから２時間が過ぎた。
「だめだ、全く、進まん。何をやっているんだ」
俊介は呟いた。
季子ならば既に終えているだろう仕事が半分すら進んでいない。仕事に集中しようとするが、すぐに季子のことで頭が一杯になる。
「まいった。まいった」
ここにいるとずっと季子のことばかり考えていそうだ。外の空気に触れれば自然と仕事モードにはいれるかもしれない。また、時計の針は正午をまわっている。
（丁度いい昼飯だ。データ入力は後でやろう）
俊介はそう思いブリーフケースを抱え部屋を後にした。
季子のことを考えると胸が重く、食欲がわかない。何も食べずにコンビニで缶コーヒーだけ買い、以前から営業をかけている訪問先を目指し車を走らせた。
目的地が見える路上に車を停めた。目を瞑ってこれからやりとりされるであろうあらゆるシーンを考え最良と思う方法を組み立てていく。最も集中し頭脳を使う時間だ。
（だめだっ！組み立てられない。やはり、今日の俺はおかしい。今すぐに会いたい。どうしても、会いたい。会おう。総務に聞けば彼女の自宅の住所に電話番号がわかるはずだ） やはり、季子のことが気になり頭から離れない。会いたいという感情を抑えることができない。とても仕事をする気分ではない。
意を決し総務へ電話をいれた。
「お疲れさまです。田中君お願いできますか」
田中は俊介の同期であり会社で唯一友人と呼べる男である。
「どうした」
「忙しいとこ悪いんだけど、一つ調べて欲しいことがあるんだ」
「なんだよ。また、面倒なことじゃないんだろうなあ」
「いや、簡単なことだよ……実は……今日、うちの事務の女子が無断欠勤したんだ。そんなこと、今まで一度もなかったから、気になってな……まあ、詳しいことは後で話すから、彼女の住所と電話番号教えてくれないか」
「ああっ、あの派遣の女子か…可愛いよなあ……でっ、お前ってそんな部下思いだったっけ」
「まあ、いいだろう。詳しいことは後で話すから、なっ、頼むよ。俺とお前の中だろっ」
「仕方が無いな。その代わり、後で必ず話せよ。おっ、当然酒をつけてな」
「ありがとう」
電話を切り、五分ほど待った時、携帯電話のメール着信音が鳴った。
メールを開くと季子の住所と電話番号が記載されていた。
俊介は、すぐに、携帯電話へその番号をうちこんだ。
ブルプルプルプルと定期的な音が鳴り続く。２０コールくらいしたがでない。いないのか？電話を切った。
でも、住所もわかっている。電話がダメなら自宅に向かえばいい。
地図を開き、場所を確認する現在地から７キロほど離れている。時間にすれば３０分といったところであろう。
およその目的地にたどり着いた。住所からするとこの辺に季子の住いはあるはずだ。ここからは、歩きの方が良い。さっき、通り越したスーパーの駐車場に車をとめ、電柱に記された住所を見ながら歩き探した。
そして、二階建てのアパートの前にたどり着いた。まだ、新しいのだろう壁が綺麗だ。メールを見ると２０３と末尾にある。ここの２階に間違いない。
俊介は階段を昇り、２０３と記載されているプレートの前で立ち止まった。プレートの下にある表札には何も記載されていない。
心臓が漠々と脈打つ。指先に震えが走っている。震える指先をインターホーンのボタンにあて、力強く押し込んだ。
住宅街であるから、あたりは静かだ。扉の向こう側に鳴るチャイムの音がかすかに聞こえた。音が止んだ。なんの反応もない。再び押した。やはり、何もなかった。
（いないのか？仕方が無い。出直すか）
俊介は肩を落として扉に背を向け車へ戻ろうと歩をすすめた。冷たい冬風が頬を冷やす。
その時、スピーカーから声がした。間違いない。季子の声だった。俊介は直ぐに踵を返してマイクに向かって声をだした。
「季子、俺だよ」
「ちょっと、待ってて」
声が途切れて５分ほど待ったときに扉は開かれた。
「やあ、一体どうしたんだい？」
「……」
季子は俯き、何も答えてくれない。
「具合でも悪いのかい」
「ううん。違うの。ここではなんだから、あがって」
季子にいわれるままに部屋へあがった。
一人暮らしの女の部屋、久しぶりだ。落ち着かない。季子の様子を見ると病気ではないことは明らかだ。いろいろと聞きたいが、季子は紅茶をいれるためにお湯が沸くのを待っている。話すのはそれからでも遅くは無い。
「お待たせぇ」
季子は明るい声で紅茶のはいったカップをテーブルへ置いた。
「今日はどうしたんだい？」
「会社、辞めようと思って……」
「えっ！ どっ、どうして……」
言葉が続かない。季子と俊介の間に重い空気が漂った。
「実はね……俊介と別れてここに帰ってきたら、あいつがいたの」
暫くの沈黙の後、季子が口を開いた。
「あいつって」
「……部長」
部長という二文字を聞いて急速に怒りが湧き上がった。
「……でっ、どうしたんだい？」
「あいつ、玄関の前で土下座してわびてきた……ごめん、もう二度とあんなことしないから許して欲しいって」
「馬鹿なやつだ」
「最後まで話を聞いて……ねっ、お願い……」
「……わかったよ」
季子が語り始めた。
奴は季子のことを本気で好きになったらしい。だが、方法を間違った。恋愛経験の少ない奴はああいう方法でしか好きであることを表現できなかったらしい。
そのことについて、奴は季子に謝罪し、改めて交際を申し込んできた。
だが、季子はきっぱりと断った。付き合っている人がいると。
その言葉を聞いた奴は豹変した。恋人でも夫婦でもないのに、誰と付き合っているんだ、どんな男だ、その男の生活滅茶苦茶にしてやるとか、なぜ俺の気持ちがわからない俺こそお前にふさわしい男だなどと怒鳴り喚き散らした。
その時、季子は奴が反省したものと同情して部屋にいれたことに後悔した。目を吊り上げて罵詈雑言を吐く奴に恐怖を感じた季子は体中が凍りついたかのように動けなかったという。声すら発することができなかった。
ここまで話して、季子は硬く唇を噛み締めた。
中途半端だ。一体、その先はどうなったんだ！ 季子は奴の餌食になったのかそれとも無事だったのか気になる。
「……その先は……どう……いや、いいよ。季子が話したくなければ話さなくてもいい」
「……いいよ、話しても……でも、俊介とはこれで終わりになるかもね」
（終わり、まだ、結ばれて間もないのに終わりとは！）
体中から力が抜けていく。
「いいよ！ もう、いい！ その先はいい」
聞くのが怖くなった。終わり、すなわち別れ。ということは、やはり、奴に犯されてしまったのだ。別れたくない。聞きたくない。
「……ううん、聞いて欲しい、俊介だけには真実を知ってほしい」
季子はギュッと唇を噛み締めてつづきを話し出した。
やはり、奴は季子に襲いかかった。季子は小さな身体で必死に抵抗した。だが、奴に敵うはずがない。あっという間に、着衣はボロポロに引き裂かれ肌を露にされた。
『もう、だめだ』と季子は覚悟を決めたらしい。
だが、休日の朝だったことが幸いだった。季子の部屋の真下に住む、住民が普段聞くことのないドスッバタンッという騒音に苦情を述べにやってきたのだ
インターホーンがしつこく鳴らされた。当然ながら信頼できる人物をいれる時以外は施錠しない。季子は助けを求めようと叫ぼうとした。
だが、奴の手のひらが季子の口を塞ぐ方が早かった。奴は季子の唇を右手でふさぎながら玄関に視線を移し、息を殺して様子を伺った。
インターホーンの音が鳴り止み、扉の向こう側から気配が消えていく。その時、奴の気が一瞬緩んだのを季子は見逃さなかった。季子は顔を振り、塞いでいた手から逃れてありったけの声で叫んだ。
『たすけてぇ！』
慌てた奴は季子の頬に平手をうって、喉を締め上げてきた。
殺されるかもと感じた。助けてと心の中で叫んだ。
幸い、助けを求める季子の声に気づいてくれたらしく、再び、チャイムが鳴り響いた
『どうしたんですか！ 大丈夫ですか！』
と男の大きい声が聞こえた。
『ちっ、むかつく女だ。いいか、このことは誰にもいうんじゃいぞ。もし、話したら一生付きまとってやるからな』
奴は首を絞めていた手に力を込めながら陰湿に言った。
そして、季子の身体のから離れ、窓を開き１階へ飛び降りた。
『助けて……』
季子は這いながら玄関にいき、扉を開いた。
男と目が合った。季子の様子を見て瞬時に察した。
『大丈夫』
『……』
とたんに季子の瞳から涙が溢れ出した。
男は肩を震わす季子をそっと抱きしめ
『もう、大丈夫だから、安心して』
と言った。
その後、直ぐアパートの住民のザワメク声が聞こえた。『泥棒か』『上から男が下りてきた』とか興奮する声が聞こえてきた。
そして、どれくらいの時間が過ぎたかは解らないがパトカーのサイレンが鳴り、警官が扉を開いた。
女性警官が声を掛けてきた。
『どうかしましたか』
ずっと、傍にいてくれた男は婦警と入れ替わるように外にでた。婦警は怯え、震えている季子に優しく毛布をかけてくれた。
その後、婦警にいろいろと聞かれたが、季子は『なにもなかったと』とだけ繰り返した。季子が告訴しなければ事件にはならない。頑として話さない季子にとうとう婦警も諦め帰っていったという。
全ての話が終わった。これで、今日会社に季子と奴が来なかった理由がはっきりとした。
そして、奴に犯されていなかったことにホッとすると同時に常に守ってあげられない自分の力の無さに腹立たしさを感じた。季子はこの二日間、誰に頼ることなく怯えながらこの部屋で一人苦しみ耐えていた。
そんなことも知らずに、俊介は、季子の痴態を思い浮かべながらイヤラシイことばかりを妄想していた。恥ずかしさとともに、何もしてあげられなかったことになんともいえない歯がゆさを感じる。
慰めの言葉を捜したが、見つからない。
俊介はそっと立ち上がって季子の傍らに寄り添った。
肩に手をまわし、優しく引き寄せる。
「もう、大丈夫……」
「ねえ……キスして」
季子の囁きにこたえそっと唇を重ねた。激しい性的欲求を助長するためのキスではない、彼女を労わる優しいく触れるだけの口づけ。
そっと、唇を離した。
「抱いて……わたしを滅茶苦茶にして」
季子は激しく言い放ち、俊介の首に両手を絡め積極的に唇を重ねてきた。
俊介は、そんな季子に戸惑いを感じた。だが、激しく絡みあう舌の感触の前では疑問を抱く必要などは無い。萎えていた陰茎に熱い血流が巡りまわる。
唇を重ねたまま、季子は俊介に体重をかけてくる。俊介は押し倒されるように床に背をつけた。季子の積極的な行為は止まらない。寝転んだ俊介のネクタイをするりとはずし、ワイシャツのボタンを乱暴にはずした。そして、スラックスからベルトを抜いて、ジッパーを下げ、ブリーフを脱がすことなく、放尿するための切り込みからそそりたつ陰茎をとりだした。まるで、季子に犯されているような気分だ。
季子の舌が雁の裏をなぞった。
「うっ」
まるで、盛りのついた雌猫のように激しく陰茎にくらいつく。こんなにいやらしく激しい季子に、背筋が震えた。
俊介は季子の尻肉を引き寄せスカートの中に手を入れ女の部分に触れた。まだ、何もしていないのに、そこはビッショリと濡れていた。
クロッチの隙間から指を滑らした。陰唇に触れた指に熱い女の汁が絡みつく。やけどをするのではないか思うほど熱く湿っている。陰唇の狭間に指を滑らせ膣中をこねるようにかき回した。指に動きにあわせクチュクチュと淫らな音がする。
「ああ、ちょうだい！」
愛撫しだしたばかりだというのに、季子は陰茎を求めた。
今すぐ結合を望んでいる。何も考える必要など無い。俊介も季子によって高揚したのか、今は荒々しくやりたかった。
俊介は身体を起こし、季子を四つんばいにさせて丸い尻から一気にショーツを剥がした。そして、腰を持ち上げ、突き出された尻の中央で淫らに濡れ輝く陰唇に照準を合わせて陰茎を一気にねじ込んだ。ズブッ、ズブッ！
ヌルリとしたものが陰茎全体に伝わってくる。肉襞が意思を持っているかのごとく陰茎に絡みつく。こないだ交わった時に感じた肉の感触が再び蘇る。
だが、今日は違う。こないだとは何かが違う。熱い、とにかく熱いんだ。
俊介はピンク色に火照った尻肉をグイッと掴み激しく腰を前後に振りだした
「ああん。もっと、もっと激しく！ 突いてぇ！」
ピチャ、ピチャと淫らな音が季子の喘ぎでかき消される。陰茎の根元には白濁した汁がねっとりと絡みつく。くっきりと見える結合部がより興奮を助長させる。
激しくぶつかり合う肉の鈍い音がする。
「もっと、もっとよ！ もっと深く！ あん、そぉ」
俊介は季子の一旦動きを止め、季子の腰を掴みグイッと引き寄せ、深いところまで陰茎をねじ込んだ。そして、荒々しく乱暴に突いた。
激しく、荒く、労わりの心も無く、ただ、快楽のみを追求するもののごとく突きまくった。
「あん、あたる！ あたる！子宮にあたるっ！ くぅっ、もうダメぇ！ いくう、いっちゃう」
「うっ、ぐっ、おぉっ」
締め付ける膣肉の強度が増した。と同時に射精感が急激に襲ってきた。
「うううっ！」
腰を引き、膣外射精する余裕などなかった。また、そんな冷静な思考は当に失われていた。凄まじい快感が全身に駆け巡り熱い子宮の奥に向かって精子を放った。
つづく
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