レビレート
はちみつ太郎 作
１０

　豊乃の店は、７、８人の新規客と圭輔たちの青年部の集まりの７人がそれぞれの会話を進めていた。２２時前になり、参集していた青年部の中でも帰宅を口にするものもいた。圭輔と同じ年代の蔵野は圭輔の横で夫婦の生活を聞きだそうとしていた。

「山内くん、そろそろ帰らなくてええの？」

「あ、まだ、付き合いますよ。」

「きれいな奥方まってるじゃん。」

「そんないいものじゃないですよ。」

「いいよぉ。女子アナだぜぇぇ。」

「ローカル局ですよ。」

「それがいいんじゃん。」

「そうですか？」

「普通な感じと、少し普通じゃない感じが一緒になってるんだよ、ローカル局ってのが。」

「手に届きそうってことですか？」

「まぁね、でももう届かないじゃない。君のとこの小百合ちゃんは。」

「届きますよ、呼びましょうか？」

「呼んで届くとかぁ、そうじゃなくてぇ。男と女にはなれないでしょぉがっ。」

「あ、まぁそうですねぇ。」

「つかぬこと聞くけど、子供は？」

「答えにくいですね。まだです。」

「してるの？手伝おうか？」

「え、酔ってます？蔵野さんいつもとちがうなぁ。」

「あ、ごめん。ついつい、でもさぁ、あんなきれいな奥さんいてさぁ、子が出来ないなんてさぁ。疑っちゃうじゃん。」

「まぁ、欲しいんですけどねぇ。」

「週一くらい？」

「グイグイきますね。そんなかんじかなぁ。」

「してるんだぁぁぁ。だよねぇぇ、夫婦だもんねぇ。」

「えぇ、そうですね。」

「おれさぁ、奥山小百合時代からのファンなんだよなぁ。局のイベントとか行ってさ、握手してもらったり。」

「結構熱心ですね。妻に代わりお礼をいいますよ、ありがとうございます。」

「身近な男と結婚して、、、色々してるんだもんなぁぁ。」

「絶対酔ってますよね。」

「いいや、酔ってない。」

「そろそろ帰りますか。」

「帰らないっ。俺の夜のお供と結婚したお前を許さん。」
　蔵野は、悪酔いしているのか圭輔に少し絡んでいた。いやみな感じはないがすこししつこさに嫌気がさしている。蔵野を気持ちよく帰らせようと、豊乃は圭輔に提案した。

「圭輔さん、小百合さんに電話してみたら、もう帰ってるでしょ家に、蔵野さんにおうちに帰りましょって言ってもらったら。」

「あ、そうですね。さっきの暴行事件も気になるし。」

「ママぁぁ、いいこと言ってくれる。俺、小百合ちゃんの声聞けたら、すぐおうちに帰るっ。」
　蔵野は、立ち上がり圭輔のスマホを覗き、発信中の文字を凝視し、小百合の声を待っている。豊乃は、テーブル越しに圭輔の様子を見つめ、電話の先の状況を推察していた。

「取らないね、風呂かな？」

「風呂っっ、俺も一緒に入りてぇぇ。」

「あら、まだ帰ってないの、小百合さん。応輔のところにいって帰るはずよねぇ。」

「えぇ、事件の現場の近くだから、局に戻ったのかもしれないですけど。」

「そんなことないんじゃない、男性アナもいるでしょ当直とかの。」

「まぁ、そうですけど。」
　発信中のスマホを切断し、待ち受け画面に切り替えた。応輔の携帯にかけなおすが、こちらも応答する様子がないようだ。豊乃は、二つの状況を推察し、そこで起きていることに確信を得ていた。

「出れないのねぇ、二人とも。」

「え、あ、でません。応輔も寝たのかも。」

「あら、蔵野さんも寝てしまってるし、。」

「代行で僕が送ります。じゃ、清算を。」

　豊乃は、金額の書かれた紙を圭輔に渡すと、代行タクシーの会社に電話を掛けている。機嫌のよい電話の声にいつもの代行業者の電話番は、良いことでもあったのかと尋ねていた。


　二つのスマホには、同じ番号からの着信があった。一つには「圭くん」もう一つには「兄」と表示されている。小百合の方は、マナーモードだったのか、その着信に気がついていない。応輔のほうは、着信音が鳴ったが、そちらに気を取られるほどの余裕はない。

　初めての交わりは、小百合が鳴くほど主導権を握れているわけでもない。女を気持ちよくさせるなんて考える余裕はあるわけがなかった。今の今まで、こうなることは願望ではあれ、準備がふまれているわけでもないからだ。

　恋愛の末の性的関係ではなく、小百合の衝動を介した棚からぼた餅のような状況に周りの音を気にする余裕はない。この状態をいかに長く、永続的に嫌われぬようしていくかが応輔の考えているところだった。

　上で腰を揺らしている小百合は、眼を瞑り、前後に体を揺らしている。乳はＴシャツに隠れ、外されていないブラに覆われ形を崩さずに張りを保っている。ヌチャヌチャと接合部は音を出し始めている。潤滑の粘液は摩擦で熱を感じたのか、粘性は増し、白く粘り二人の腿に付着する。小百合は応輔の表情を何度か確認していた。眉をしかめ、体を仰け反るようにして、堪えるさまが数回続く。小百合は、その都度動きを止め、息継ぎをするように体を持たれかける。接合は維持したまま顔を応輔に近付けると、応輔の本能が顔を出す。

　とどめの昂ぶりを見せんがために繋がったまま小百合を抱きかかえるように座位にすると、抱き合い舌を絡めるのもつかの間。小百合は繋がりを覗かれながら、応輔主導の性体系に体を変えていた。小百合との接合部を目に入れると抜けかけの自分の分身が、白い粘液に纏っているのが見える。小百合の満足度をそこで計ってしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ、小百合さん、外じゃなきゃ、、、。」
　小百合は何も答えず、眼を瞑り、応輔の枕で顔を隠した。応輔は戸惑うが、選択肢は多くなかった。小百合の意図、応輔の声は聞こえている。顔を隠し頷きもしない理由を考えても脳内は快楽に支配され、男の本能のほうが勝っていた。初体験なれど、女性の安全、危険な日は知らないわけもない。小百合が避妊もせず自分を受け入れたということその事実の裏づけだけで、本能を優先させた。

　先端は熱く膨らんでいく。ぎこちなく腰を使い、小百合の鳴き声も薄い。応輔は接合を深く取るために小百合のふとももを割り押し曲げ、尻を少し浮かせた。応輔の亀頭は崩壊するよう熱を帯び、瞬く間に小百合の赤い膣肉の隙間に山内家の遺伝子をぶちまけた。ドクンとその量を感じ取るように亀頭からの放出は続いている。小百合は、枕をきつく抱きしめ、応輔からの視線を遮った。

　遺伝物質を放出され続ける間、小百合はその射出部を抜くこともないし、それを望んでいる様でもない。潤滑と遺伝液が混ざり、ぬるりと亀頭への刺激がぼやけている。応輔は、縮み始める前に肉茎を抜く。先端からは抜き去った後でも、後を追うように敗残した遺伝子たちが我先にと沈む船から踊り出る。

　シーツに垂れる敗残たちをティッシュで拭おうとした時、傍らにあった携帯が再び音を鳴らす。それは、所有物を奪われた者の叫びのようにけたたましかった。


「応輔？」

「もしもし、あ、何？」

「寝てたか？」

「あ、うん、な、なに？」
　小百合は、友達ではない感じの話しぶりと、漏れ聞こえるスマホからの声色に枕を外す。応輔は小百合の方を見ると、指でシーっとしゃべることを制した。ベッドの上から降り、たったままスマホからの声に応答している。肉茎はしぼみ始め生えかけのたけのこのように皮を纏っていった。

　小百合は、自分のスマホも探す。接合部から流れ落ちる淫液と精液の混合液を一拭いだけすると、着信表示のある画面を見つめた。１５分前だろうか、圭輔の名が表示されている。小百合は、応輔の話を聞き、小百合自身は、近くで起きた事件のことを伝えに局に戻ったと、つじつまを合わせるのに必死だった。

　小百合は、拭い去ったティッシュをゴミ箱に入れる。奥から流れ落ちる山内家の遺伝子をとどめるように、脱ぎ去っていたショーツを穿いた。陰唇の周りに少しの不快感を感じるが、流れを止めるように膣間に力を入れショーツの次にデニムを穿きなおすと、再びベッドに横たわるようにした。

　遺伝子のレベルで受精を感じられることはないが、山内家の遺伝子の勢いを止める鯉の滝登りのように重力を加えたくなかった。横になったまま、アリバイ工作のように発信中の圭輔に電話をした小百合。それに気がついた応輔は、その場を離れるように玄関まで移動する。

　アリバイの発信は、すぐさま遮断し、応輔が部屋に戻ると、小百合のスマホはマナーモードのバイブレーションを鳴らしていた。一呼吸おかないまま、圭輔からの着信を取る。

「もしもし、ごめん、電話くれたよね？」

「あぁ、いま、応輔に電話したら、局に戻ったって言うから。事件の取材？」

「あ、うん。取材の手伝い。当直交代みたいな感じかな、杉本さんが警察に取材に行くから、私が変わりに局に戻るようになって。」

「そうか、どうする、着替え届けるか？」

「ううん、衣装あるし、何とかなる。杉本さん帰ってきたら、帰れるかもしれないし。」

「そうか、わかった。じゃ、気をつけてな、俺も今帰るとこだし。」

「お母さんの店？」

「あぁ、もう出て、代行で帰ってる。」

「気をつけてね。」

「あぁ、小百合も気をつけて。おやすみ。、、。」
　圭輔の電話が切れると、小百合の横には前を肌蹴たままの応輔がもじもじとしている。いきさつは聞いていた。アリバイは大きく事実と異なり始め、小百合の体は時間の制限を失くしていた。

「帰らなくても良くなっちゃったね。」

　応輔は、小百合のその言葉と下半身への視線に緊迫を緩和させた。
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2015年10月10日掲載
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