レビレート
はちみつ太郎 作
１３

　夕方、強盗傷害事件の報道を小百合が伝えている。局の衣装を着て、事件の顛末を端的に感情なく伝えていた。イブニングニュースを応輔は、入学式に知り合った加納泰と部屋で見ていた。加納は近場で起きた事件を応輔と話し合うこともない。話しの内容は、応輔の義姉である小百合の話しに終始していた。

「きれいだよなぁ、お姉さん。」

「そうか？おっちょこちょいだよ。」

「そこがいいんだし、ピシッとしてそうで、緩いとこ。」

「ふーん、そんなもんか。」

「近くにいるからわからないの。」

「かもしれない。」

「絶対そうだって。おれ、多分、近くにいたら、話できんよ。緊張で。」

「加納が？、、、合コンしてるんでしょ？」

「まぁ、してるけど、レベル違うじゃん、山内小百合じゃ。」

「ローカルアナだよ。」

「ローカルでも、違うって。でも、兄さんって、うらやましすぎるわ。」

「兄貴？」

「だって、毎晩してもいいんだろ。」

「何を？」

「何をって、応輔ぇぇ、エッチしてんじゃん、絶対。」

「は、まぁ、どうかな。」

「結婚して、何年。」

「３年半か、４年かな。」

「子供いないんだよな。」

「うん、まだだな。」

「ってことは、あんま、してねぇのかなぁ、俺だったら、すぐだよ。」

「すぐって、、、。」
　加納は手を腹に当て大きな腹のまねをする。応輔は、加納の言わんとすることはわかった。

「あぁ、してぇぇ、小百合ちゃんとぉ。」

「できねぇよ、彼女できたんだろ、彼女としろよ。」

「してるけど、さぁ、少し面倒だよな、１８くらいって、大学デビュー的な感じだからさ、、、リードしなきゃだろ。」

「いいじゃないか、リードすれば。」

「疲れるんだって、たまには、おねえさまの責めも味わいたいじゃないか。」
　応輔は、小百合との昨晩の八回を思い出している。スウェットの先が大きく膨らみ、加納にもそれがわかるくらいだった。

「応輔、俺の話しで興奮すんなって、お前も彼女作って童貞卒業しろよ。」

「あ、あぁ。」
　少しぼやけた返事も加納には気がつかれていなかった。再び加納はテレビに目を移すと、テレビの中の小百合が保育園の交通安全のレポートを始めていた。園児に優しく話し掛けている様子をほほえましく見ながら、小百合の子を想像していた。８回目のあと一時間くらい布団の中で小百合とした会話のなかで、子供が早く欲しいことを告げていた。誰のことも言わず、応輔もそこまで聞き取らなかった。誰の子を宿すのか？聞きたいことだったが、躊躇いを覚えることと始まったばかりの関係を崩したくはない思いで口を閉じたことを思い出した。

「あ、もう１９時か、応輔、ラーメン食いに行こうか？」

「あ、あぁ、行こう。おれ、おごるよ。」

「え、まじ？なんで？」

「あ、昨日、いい事あったし。」

「ごちになりやす。」

　応輔は加納が立ち上がると、小百合が「またあした」と頭を下げたテレビを主電源から消した。テレビの中の小百合はスタッフにお疲れ様でしたと声を掛けている。当直とアリバイを作った小百合は罪悪感からか、着替えをすぐさま終えると、自宅へと向かう。途中、応輔のアパートに向かう交差点で信号待ちをするが、車線に目が行き昨夜から今朝にかけての出来事を思い出す。八回目の交わりを終えたとき、応輔の本音が聞けた。小百合は、今までになかった気持ちで応輔の言葉に返信していた。圭輔の無精子症がなければ？と疑いは心の中でないとはいえない。応輔の気持ちに答えただけなのか、子を残さなければという豊乃の讒言があってのことなのかは、まだ自分でも疑いは拭えていない。

　だが、応輔の言葉、「小百合とこうなりたかった」という小百合への告白は、一度きりで終えようと考えていた小百合を戸惑わせ、右車線への躊躇いを引き出していた。危険な車線変更を止め、小百合は自宅へと直進していく。スマホには豊乃からの着信がある。出るわけにいかず、コンビニに車を止めリダイヤルした。

「あ、小百合さん。運転中だった？」

「あ、はい。でも、止めましたから、どうしました？」

「今日は、帰るのよね、こっちに。」

「あ、はい、昨日は、局に、、、すいません。」

「、、、。どう、応輔は元気にしてた？」

「ええ、元気そうでした。」

「それだけ？」

「あ、ま、あ元気というか、いつも通りというか。喜んでましたよ。」

「小百合さんと逢えて？」

「違いますよ、小西瓜だと。」

「まぁいいわ、今日、帰れないから私、圭輔さんは、２０時ごろ帰るらしいし、、、夫婦水入らずで、、、。」

「あ、はい、ご飯は？」

「作ってあるから心配しないで、、、あ、そうそう、局の杉本さんだったかしら、アナウンサーの先輩って。」

「えぇ、杉本さんが？」

「圭輔さんが言ってたから、当直代わらせるなんてってひでぇ奴だって。」

「圭輔さんが？」

「ま、面識がないような人らしいから、、、問題ないとは思うけど、、、ね、。」
　小百合は豊乃の底を図り損ねていた。全てを見透かされている。圭輔へ伝えることはないのだろうが。小百合は、コンビニで数分息を調えてから自宅への県道を走り始めた。


　時間的に同じタイミングで圭輔も帰宅していた。出来上がりの夕食を用意するよりも早く、小百合は風呂を求めた。圭輔は、昨晩簡易的なシャワールームしか使ってないことを想像した。夕食前に入ると小百合は伝えると圭輔は一緒に入ることをせがむ。豊乃も豪輔も、もちろん応輔もいないからだった。小百合は断りたいが理由が見つからない。応輔と交わった痕。そんなものはあるはずがないと自覚している。が、目に見えぬ応輔の影を圭輔が見つけないとも限らない。が、断る言葉を一切見つけられぬまま、圭輔は先に脱衣で服を脱ぎ去った。

小百合は、仕事中に買いに走った新しいショーツを脱ぎ去り、昨晩汚れたショーツと一緒に洗濯機に入れる。汚れたクロッチの内側を手もみで拭いたかったが、圭輔の招きに仕方なくあきらめていた。

　恥ずかしいはずのない夫婦の風呂場。小百合は、つい昨日のことを思い出し、応輔の時のように繁茂を隠し、胸元を腕で覆う。圭輔は、頭を洗い始めていたため、小百合の動作に気がついていない。簡単に頭を洗い、シャワーを小百合に渡すと、溜め始めの湯船に腰掛ける。小百合は、メイクを落とし、湯を肩口から浴びると圭輔の視線を外すように、後姿でシャワーを浴びている。圭輔はさほど気にしていないのか、久しぶりの二人ではいる風呂をことさら話しかけている。小百合は、生返事とまでは行かない返事を繰り返す。

「ま、応輔がいたら、なかなか二人で入れないよな。」

「う、うん。」

「親父とお母さんくらいなら、気にもせんけど、思春期まっさかりの青年がいれば、気を使うし。」

「そ、そうだね。でも、応くんいないと、少し寂しくない？」

「そうか？ま、親父とのいざこざがないから静かかもな。小百合は応輔がいないとさみしいか？」

「う、うんまぁ、歯車がない感じかな。」

「そんなもんかなぁ。」
　小百合は圭輔の言葉を遮らず、シャワーの湯を止め泡だてたスポンジを体にめぐらせた。首元から降りていき、分泌腺の多い部分を入念に擦る。下腹部に達すると圭輔の視線を感じながら、反対を向き軽くスポンジを挟み込む。少し摩擦でひりひりとした感覚があった。赤くなったわけではないが、昨晩のことを思い出してしまう。再び湯を浴び、泡を落とし、圭輔のつかる湯に足を入れる。少し恥らうように股間に手を宛がいながら湯に沈んだ。

「なんか、小百合、よそよそしいね。」

「そう、、、そんなことないと思う。」

「ふーん、ま、いいけど。」
　圭輔は気にかかることなく、同じ湯船に浸かった小百合と夫婦の会話を続けていた。近しい知人の結婚式の祝儀の件や、来週の日曜の予定などだった。圭輔はゴルフや付き合いがほとんどを占めており、小百合と時間が持てるのは土曜の夕方ぐらいしかないのを伝えている。小百合は不満げな言葉を伝えることなく、しかたがないと諦めているのか、都合がいいという感じか濁したような言葉尻で圭輔に伝えていた。

　小百合は手狭な湯船の中で体を縮め、圭輔の視線を少し気にしている。胸元のある赤い小さなうっ血に気がついていた。圭輔は、それについて問いただすこともない。小百合は誤魔化すようにぽりぽりとうっ血をかき、その範囲を少し誤魔化すように広げていた。

「虫刺され？」

「刺されるところじゃないよ。わかんない、金属かぶれかな。」
　乳房の上部、小百合は否定も肯定も出来ない場所のうっ血を辛うじて誤魔化した。圭輔の言った虫刺され、あながち間違いではなく小百合はクスと笑う。虫と同類にされた応輔のことを小百合は思い出し乳房を吸われた２０時間ほど前のことを思い出した。

　忘れかけていた余韻を思い出させられ水中に隠れている小百合の生殖器は、望みの薄い圭輔との生殖をも望んでいるかのようだった。見透かされたかのように圭輔は今晩の交わりを求めるように言質を取った。小百合は断ることもなく、頷き、少し恥らうように茶化しながら湯から出る。

　体を拭き、各々が寝具までの道のりを進めている。圭輔の準備などほとんどなく、先に部屋で寝転び、準備の多い小百合をスマホを弄りながら待っている。スキンケア、洗濯の段取り、それらを終えた小百合は一呼吸おいていた。冷蔵庫のお茶が少なくなり、それを沸かしたり、流しの片付けなどに気をかける。時間をつぶすように小百合は台所に居続けていると、圭輔の足音が聞こえてきた。まだか？と、声に出すでもないが、視線を送ると小百合はそれに気がつき付き従うように後ろを歩き部屋に入った。

　小百合と圭輔の交わりは、いつもと違い圭輔の主導で始まった。



　圭輔は、敷き布団に寝転んだ小百合に抱きつき、唇を重ねるとすぐさま、寝巻きかわりのＴシャツを剥ぎ取った。ブラホックを簡単に弾くと、肩口からブラ紐を抜き取り、露呈した先端を口に含む。小百合は、少し抑えて声を漏らす。右を吸い、左を指で転がしていく圭輔は、何度か弾いた乳首を後に、小百合の薄手のスウェットのハーフパンツをずり下げる。ナツメ球で照らされている小百合の体。初めてだった応輔と違い、本来のご主人に軽微な違和感を感じていた。

　前戯も少ない圭輔の性衝動。確かに、２週間以上開いている。小百合の準備が整っていないわけでもない。風呂で想像していた応輔と昨夜の交わりで、圭輔が勘違いするほどの潤沢な液漏れは感ずかれてしまう。

　小百合のショーツをすぐに取り去る圭輔。裏地を気にするほどの時間もなく、小百合の太股に顔をうずめ、義弟との交わりにふけってしまった陰唇に舌を這わせた。少し昨夜の摩擦で赤らんでいることは圭輔には見分けられていない。Ｍ字に足を広げさせられ、むしゃぶりつく圭輔の髪の毛を止めるのか止めないのかわからないくらいに押えている。

　いつも通りに陰唇周りを舐め、膣前庭を舌で押さえつけると、割れてきた膣の中身を舌で突く。中に入れるほど長くない舌は、遊び程度に淫豆を舐めると、反応した小百合の甘声に圭輔の肉矛も反応していた。体を起し小百合の足間から膝立ちになると、仰向けのままの小百合を見下ろしながら、シャツ、ジャージ、トランクスを自ら脱ぎ去った。少しゴムに引っかかり先端は半分ほど亀頭を露出させる。

　裸になり、再び小百合の股の隙間に修理工のように潜り込む。甘声は、少し大きくなり始め、何度か圭輔は舐め上げるのをとめ、小百合の顔を潜望鏡のように覗いた。小百合は、首も仰け反り、圭輔の方をみていない。圭輔は、小百合の表情を覗いてみたかった。腿を持ち上げ、圭輔は胡坐をかくと、その上に小百合の尻を持ち上げる。小百合の割れ目は上を向き、暗いナツメ球の明かりを帯びた。圭輔は皿を舐める猫のように小百合の残り蜜を舌で拭い取る。

　顎を上向かせ、眉間にしわをよせた小百合は、程なくして、尻肉をきつく閉じ一度目の軽い絶頂を迎えていた。圭輔は、小百合の顔を見ながら、欲するように声をかける。小百合は頷くことなく圭輔の望みに体勢で承諾の意思を告げる。圭輔はそのまま寝転がると、小百合は圭輔の顔をまたぎ６９の形で各々の生殖器に舌を絡めさせた。

「小百合、びっちょんだよ。どうしたん？」

「、、、。だって。」

「したかったん？３週間だっけ？」

「うん、多分。」
　裏腹な答え。だが、陰唇周りの義弟がつけた赤らみに圭輔は気がつくことはなかった。小百合はナツメ球とはいえ暗闇ではない寝室の明かりに昨夜の印が映し出されるのではと、少しきつめに圭輔の顔に陰部を押し付ける。圭輔にはその理由は図れない。無臭ではない小百合の淫な臭いは圭輔の鼻先からダイレクトに記憶させられる。鉄分と汗、少し残るアンモニアの臭いに圭輔は減っせられ、昨夜の応輔はそれに興されていた。圭輔は少し小百合の陰部から顔を遠ざける。小百合は離れた圭輔に戸惑った。義弟が印た赤らみに気づかれたと悟る。

「きつい？」

「ん？うん、。」

「臭う？」

「いや、そうじゃなくて、押し付けがすごいってか、圧迫で息がしにくい。」

「あ、ごめん。」
　小百合は少し照れて、圭輔の陰茎を扱くのを止めた。圭輔は、小百合の尻を二度軽く合図のように叩く。小百合はいつものように上下を逆転する。下になった小百合は圭輔の陰茎を喉元まで受け入れるしかない。圭輔はこの格好で小百合の口内を蹂躙するのが嗜好だった。小百合も、今まではそれが嫌でなく、支配的でない圭輔の交わりの中で唯一支配的な動きだった。

　喉もとを深く押し当てられるとえづく小百合は、体をくねらせ圭輔に苦しさを伝える。伝わった圭輔は、少し小百合への突きを緩め解放するように先端だけを舐めさせた。小百合は、えづきが落ち着くとぶら下がる亀頭を舌で舐め、愛おしそうに先端だけを口に含み舌で舐めあげていく。

　昨晩の応輔との一夜が少しそれを変えたのか、小百合は圭輔の突き上げにあからさまではないが、拒絶の意思を向けた。喉元に突き刺さるのをえづきでわからせると、いつもは引き上げた亀頭だけをねぶるのだが、それをせず、咳き込むだけで、圭輔のまたがりからすり抜ける。圭輔は、あっけに取られるが、機嫌を伺うこともなく、仰向けに転ぶ。小百合は、何度か咳き込みながら、圭輔の肉茎をまたぎ、宛がうと乗位でことを始めていた。圭輔は、目を閉じ上下する小百合を見ながら、少し不満ながら数分もかからず、射精してしまった。

　再度の交わりは、どちらからも欲することもないまま、夜は簡単に更けていき、二人の愛間はこのときから少しずつ隙間を空けてしまっていた。
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2015年10月19日掲載
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