レビレート
はちみつ太郎 作
２０


　冷蔵庫になにもないのを知っている応輔は暗闇の中、１５ｃｍほど積もった雪を踏みしめながらコンビニで朝食を買った。なじみのコンビニの店長は、二人分だろう朝食を見つける。

「彼女できた？」

「え、なんで？」

「だって、二人分だし、いつも一人分なのに、、、それと、女子向けだろ、野菜ジュースとか。」

「あ、プライバシーの侵害ですよ。」

「ごめん、でも図星だ。、、、６点で６８９円になります。」
　千円札を手渡した応輔は、店長の半笑いの顔と同じように半笑いでおつりを受け取った。財布に入れ、自動ドアをくぐると、眠たげな足場職人らの一行とすれ違う。

「大学生はいいよなぁ。くそ寒い、こんな日、足場なんか組めるかよ。」

　応輔は、振り返ることなく半笑いですれ違った連中を見下した。昨晩、それと今朝。俺の家には、山内小百合が寝てるんだぜと言いたげな顔だった。尻の穴も舐めあい、少し染み出る母乳までいただいたと、口の中でなんども職人らに吐いて捨てる。昨夜の交わりの後、抱き合いながら眠りに付いた小百合の匂いが染み付いているようだった。ダウンジャケットのポケットに手を突っ込み、足元を気にしながらアパートへと向かう。スウェットの前は少しテントを張っていた。ポジションを直すように陰茎の位置を直しながら歩いていると、友人である山田に声を掛けられた。

「山内、早いな、コンビニ？」

「あ、あぁ、朝ごはん。山田は？」

「朝帰り。」

「は？飲み？」

「いや、、、、。」

　指の動きで何をしていたか伝える。人差し指と中指の間に親指を出し入れさせる。山田はもてる部類の男だった。何人かの３回生と付き合い、女には不自由をしない男だと応輔も知っている。

「だれ？由果さん？」

「内緒、１回生。地域科学部。」

「はぁ。合コン？」

「いや、バイトのシフトが同じで、帰りに一緒に帰ったら、、、。」

　また同じ指の動きを応輔に見せた。山田は、応輔の体を上から下に見る。股間の部分に視線を止めると応輔の目に視線をあて、昨夜の事実と今朝の流れを読み取った。

「女、出来たろ山内。、、、しかも、今、家で寝てる。」

「え、あ、。」

「顔に出るな、女にばれちまう。朝ごはん食って、もう一回しようって感じか？」

「あ、いや、。」

「へぇ、女は仕事を持ってる。だから、こんなに早い朝飯って感じだな。」
　山田はことごとく応輔のこころを読み取った。応輔は聞かれてもいないことを話し始める。

「雪で家に帰れないから、泊めたんだよ。」

「山のほうのＯＬさんか、気をつけろよ、別れられなくなったら、、、。」
　山田は薬指に指輪を嵌めるような仕草で応輔に近寄った。朝立ちしたようなスウェットのテントを軽く叩くと触った感覚に半笑いし自分のアパートに向かう。

「山内、ピンポンしねぇから、朝の一発してもいいぜそれと、年上が面倒になったら、俺に言えよ、俺が幸せにするから。」
　山田は、手だけを上げ振り返りもせず路地を曲がる。応輔は、ようやく山田に近付けていることを実感した。最初の頃入り浸っていた友人らとは、話が幼くなってきていた。小百合との交わりから、女に対する態度も変わっていた。変化は如実で、好意を持ってくれている同級生からの誘いも無いわけではない。

　付き合うまではいかない女の子の顔が何度か浮かび、部屋にたどり着いた頃には足元が濡れている。鍵を開けようとシリンダーに合わせるがかじかんだ手が上手くことを運ばせない。

「おかえり、コンビニ？」

「あ、うん、こんなんでよかった？」
　ビニールの中を見せると、小百合はありがとうと伝え、部屋に入るよう促した。メークの途中というわけでもなく、起き掛けの小百合は、眼を擦りながらベッドに腰掛ける。

「まだ、寝ててもいいけど？」

「ありがと、でも、準備もあるし。」

「顔？」

「うん顔も、雪、多い？」

「あ、ま、１５ｃｍくらい。道には無いけど。タクシー拾う？」

「呼びつけるわけにいかないから。」

「弟の家だっていっても、、、。」

「ま、世間はそんなにきにしてないかもだけど、念をいれておいてもいいかな。」
　応輔は野菜ジュースを小百合に手渡し、サンドイッチを選ばせていた。ツナサンドを取り、封をあけ口に運ぶ。あっという間に消えてなくなると、応輔は食欲に目を丸くした。小百合は二人分だからと言い、残りの一切れも食してしまう。余を小百合に渡し、腹がへったらコンビニに買いに行くと言った。応輔は立ち上がり、裾のぬれたスウェットを脱いだ。小百合の前で脱ぎ、ボクサーショーツのまま洗濯籠に入れる。小百合は野菜ジュースをごくりと飲み込むと、飲みかけを置き、応輔が戻るの見つめていた。視線は一点にいく。応輔はその視線に気がついた。恥ずかしそうに、大きくなっていくそれを目に付かぬよう直すが、小百合は眉を上げ下げし応輔を問い詰める。

「朝立ち？」

「あ、うん。かも、」
　小百合はソファーから立ち上がり応輔の背後に回る。大きめなお腹を背に当て応輔に密着する。

「密着密着っ。」

「なんか、そんなフレーズの番組あった。」
　誤魔化すように小百合も応輔も朝の時間であることをぼやけさせる。小百合は手をまわし、ボクサーショーツの柔らかい肌触りの上から陰茎の先端を探り、うなぎを捕まえるように首元を掴んだ。

「捕まえた、悪さをするうなぎめぇぇ。」

　小百合はそういうと、応輔は返しの言葉が思いつかず、直接的な衝動を言葉にしていた。

「あっ、小百合さんっ。おいしいですか？うなぎ？」

「うん、、、、。」
　小百合はボクサーショーツをずらし足元まで落とすと応輔は足から抜き、小百合の方を向いた。うなぎになぞらえた陰茎はヌルヌルとはせず、死後硬直のように固くなり、泡のような滲み汁を吐いている。膝立ちになった小百合が応輔の亀頭をねぶり、朝の滲み汁を飲み込む。昨日とは違う味に舌を這わせ、じゅぼじゅぼと音を立てながら硬直のうなぎを呑み込んでいた。

　小百合の頭は、小刻みに動き、応輔の視線からは自分の分身の姿は見えない。小百合は何度か応輔を仰ぎ見るが、視線は合わず大きく天を向いた応輔の昂ぶりを視界で感じ取った。

「さ、小百合さんっ、、、あぁぁすげぇぇ、いい。」

　じゅるじゅると唾液をすすり、小百合の口内で硬直したうなぎは右左に動くことなく死後硬直のままだった。眉をしかめ、なんども目をつぶり、射精をこらえるが、背筋を寒気でもない信号が伝わると全身に震えるような衝動を起させる。

「あぁぁぁ。」
　応輔は、絶頂の感覚を声に表すことが出来ず、射精のタイミングを確かめるように応輔を仰ぎ見た小百合が少し口を話しかけたとき、死んだはずのうなぎは生け人に自らの魂のような白濁を吐き出した。

「ビュビュッ、、、ビュ。」
　小百合は驚き目を瞑り、吐き出される精の行方を見損ねた。鼻先、顎、目頭に薄めの精はかかり、目をあけるのを躊躇っていた。

「うぅぅぅぅぅ、、、。」

「ご、ごめんっ、、、ごめん、小百合さん、テッシュ、、、、ごめん。」

　目元を先に拭い、渋い顔で目を開ける。鼻先や顎にたれる精液を拭う前に、前髪などへの付着を気にした。応輔は、そこまで飛んでないといいながら、化粧ポーチの鏡を手渡した。小百合は鼻や顎の精を拭いながら、前髪を気にし、頭頂部まで鏡をあてた。

「びっくりしたぁぁぁ、もぉぉぉぉ。」

「ごめんって、顔に飛ぶとは、って、ごめん。」

「髪につかなくてよかったかも、シャワー浴びてたら時間かかるし、、、応くん。狙ったでしょ。」

「えぇ、狙ってないし。」

「お掃除なしだよっ。」
　垂れ下がる尿道からの精液は、テッシュだけで拭い去られ、指先で弾くように小百合に玩ばれ、床に零れた数滴の精も自分で拭かされた。応輔は、拭い終えた陰茎をボクサーパンツの中にしまう。小百合は応輔にシャワー浴びないのと尋ねる。

「あ、このままがいい。小百合さんのフェラの感覚を残しておきたいし。」

「えぇぇ、恥ずいし、、、、じゃ、お掃除する。」
　小百合は、メークをしに洗面に向かいかけたが、再び応輔の前にしゃがみ、膝立ちでボクサーパンツを下げようとし、先端に出来た染みに笑いをこらえながら、先端だけをむき出させると口内に含み唾液と舌で愛玩した。

「はい、おしまい。これ以上したら、また、、、、。」

「出ません、打ち止めです。」

　小百合は、ボクサーショーツで陰茎を覆い隠す。硬直したままのうなぎはついの住処を欲するようにその頭を常に小百合に向けていた。覆いの上から軽くキスをし、滲んだ汁気を少しだけ吸った。

「汚くない？」

「ん、応くんの、、、お汁の味を、残しておきたいし。」
　小百合は応輔の言葉を真似るようにし、自分の行動を誤魔化した。反射的にしてしまった、汚れパンツへの性的嗜好を誤魔化しきれたとは思っていない。一足飛びに進んでしまった、二人の関係をあの頃のショーツを盗み嗅ぐだけの関係に戻すのは、無理だろうと小百合は感じていた。
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2015年11月7日掲載
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