レビレート
はちみつ太郎 作
２５

　予定日まで３０日足らずのこの日。小百合と圭輔は、ＭＩＲＵＫＯの借りているスタジオに来ていた。先客の対応中のＭＩＲＵＫＯに代わり、エステティシャンのミキが小百合の傍らで話しこむ。圭輔は少し面食らったようで、申し出た人間が一人蚊帳の外だった。

　先にエステをし、メイクを終える手はずで圭輔は蚊帳の外からもう一つ外に追いやられる感じがした。前室で雑誌を読むしかない圭輔は落ち着くことが出来ない。それは、約束事とはいえ妻の着替えやヌード撮影を覗き見することを蔵野に許可してしまったことだった。圭輔は蔵野からの連絡とＭＩＲＵＫＯの手筈を聞くことを恐れているようだ。

　そう思うや否や、

『圭輔、悪い、どうも、抜けられないよ。、、、残念。またの機会だ。』

　一つの懸念が消え去った。ほっとする反面、それの代案を押し付けられることを考えてしまう。スマホから了解したことだけを圭輔は送る。

『写真は買うからな、俺の分も、作ってもらえよ。』

　同じように了解した旨を伝える。小百合の消えたエステルームの方からは女の声が聞こえていた。会話の中に、「えぇ、」「いやだぁ」とか、行ったことはないが女子高の教室のような感じがしている。圭輔は少し扉側に近づき中の声を聞いていた。

「そうですかぁぁ、この前の時、、、、実は、、、なんですよぉぉ。」

「えぇ、やっぱりなんだぁぁ、いいんだよぉぉ、妊婦さんもエロくなってもぉぉぉ。」

　圭輔は小百合の発した言葉の単語は聞き取れない。だが、ミキの返答でその趣旨はあきらかにわかっていた。前回のリハのときのエステに関して何らかの出来事があり、それを見透かしたミキの返答だった。

「で、で？」

「あ、してないんです。でもねぇ、、帰るまで、すっごい、、、です。」

「でしょぉぉ、だってね、ＭＩＲＵＫＯさんも言ってて、すっごい小百合さんがエッチな感じで写せたって、今日も、、いい？」

「、、、」
　小百合の返事は聞こえない。が、ミキの残念がる声もない。小百合は何かを承諾したのだろう。させられたのではなくしたのだ。

　圭輔が、扉側に近づくと男のような女の声がそれを制した。

「あらぁ、旦那様でも覗きはだめよぉぉ。」

「あ、すいません。なんか声が聞こえたんで、つい。」

「蔵野さん来れないのね。」

「えぇ。連絡ありました？」

「うん、さっき。よかったはね、あんな下種な男に、きれいな奥さんの裸、見られなくて済んで。」

「あ、いや、まぁ。」

「あら、満更嫌でもない？」

「そんなことは。」

「そうだわよねぇぇ。」
　圭輔はＭＩＲＵＫＯの素性を見つめる。男か女、わからない部分は多いが、性別では縛れない何かを感じている。

「旦那さん、私、心配しないで、付いてるけど、そういう気、おこらないから。」
　ＭＩＲＵＫＯは皮パンツの股間部分を掴み、圭輔に自分の性を伝えた。

「え、あ、そうなんですね。」

「そうよ、どちらかというと、、、、旦那さんみたいな男性、、、惹かれるわ。」
　ＭＩＲＵＫＯが近づくとさっとかわすように体を入れ替えた。拒否されるように遠ざけられるが、ＭＩＲＵＫＯは慣れたものと、圭輔の二の腕を摩る。

「え、困りますよぉ。」

「小百合ちゃんも同性に触られてるかもしれないのに、、、。」
　エステルームで行われている施術を遠まわしに圭輔に感じさせた。なんとなく、どんなことをしているのか気がついている。ミキという女性が小百合の体を解し、そして女の壺まで。

「じゃ、私は小百合ちゃんのセッティングをしますので、、、。」

「あ、お願いします。」
　ＭＩＲＵＫＯは圭輔からはなれ、スタジオのほうに向いた。尻をくいくいと揺らしながら消えていく。圭輔は姿が消えるのを待って再びエステルームのひそひそを聞いた。施術は進んでいるのか、ミキの声は聞こえない。少し息の上がる声は小百合のものだろうか、喘ぐというまでもいかず、沈黙でもない。がさがさとタオルなどが重なる音の中、聞き覚えのある小百合の声があった。

「あぁあぁ、、、、ミ、ミキさんっっっ。」
　ミキを呼ぶ声は紛れもなく小百合で、止めて欲しいのか、続けて欲しいのかわからぬ声だった。

「良くなっちゃう？、、、うん、、、すごい、かわいい小百合さん、、、、オイル、補充しなくてもいいね。」

「あぁ、ううんん、、、こ、声が出ちゃいますからぁぁぁ。」

「旦那さんに聞かせちゃおうよ、、、愛する妻がこんなにエロで、して欲しいのにって。」

「あぁぁぁぁ、あんっっっ、こらえきれないぃぃぃ。あんっ、、、、ジョビッィ。」
　汁気の飛ぶ音までは扉の外には聞こえないが、小百合が施術で喘ぎを漏らしていることは圭輔には感じ取れた。自分との性接触であげたことの少ないその声に圭輔の下腹部は反応し蔵野のいないことに安堵をしていた。

　その後、小百合の喘ぐ声は扉の向こうに届かなくなった。ミキは、小百合の口元にタオルを近づけ、自発的にタオルをかみ締めている。小百合がタオルを噛み、ミキの視線を見続けると、足はＭ字に開脚し、しなやかに動く指先が小百合に陰裂をおっぴろげ、ピンク色の膣肉と淫豆を潤滑に染めていた。

　小百合はお産の練習のように喘ぐ声をタオルにかき消させ、体をくねくねと揺らしミキの指先からの施術に抵抗を試みる。が、逃げることをやめ、施術の悦を受け入れるだけの体になるのはすぐの間だった。

　ミキの目を見てうんうんとなんども頷き、快楽の頂点を欲している。ミキは、何度かはぐらかし、指先を休めるように陰唇を揉み淫肉への刺激をとめた。小百合は切なそうな目をし、扉の向こうを見つめた。ミキは声を掛ける、圭輔に聞こえるようにタオルを外しなさいと、宛がったのは自分だが、小百合に解放を促した。

　小百合がタオルを手元から離し、施術ベッドに置く。ミキはそれを遠ざけ、指先に力を入れ、かぎ状の指先を小百合の産道に侵入させる。小百合は膣前庭の上側を刺激され、瞬く間に声を上げてしまう。

「あひぃぃぃ、、、、あぁぁぁああぁあぁぁっ、、、だ、だめぇぇ。ジョビィィ。」
　二度目も汁気の飛ぶ音は圭輔には聞こえないが、喘ぎ、漏れるでもない悦の女声は圭輔にも聞き取れた。圭輔は扉に耳をつけ、中の音を聞き逃さぬよう息を殺す。

　小百合へのミキの言葉は少し大きく、蔑みでもなく賞賛の声を聞いた。

「よかったよねぇぇ、心配しないで、おしっこじゃないから。、、、ね、ほら、」
　ミキの指先を嗅がされた小百合は、アロマの臭いの中にアンモニアの尿臭を感じることはなかった。

「潮？」

「良くご存知ね、潮吹き、、、くじらさんみたいよ。」

　この部分は圭輔の耳に入る。小百合はミキに指先だけで気をさせられ、潮を吹かされた。そして、吹いたのだった。ドアノブに指先をあてるが圭輔にはその壁を越えられることはなかった。

　声の質が変わる。着替えやメイク、衣装の話が主になった。２０分ほどたったころか、ミキが圭輔を呼ぶ。扉を開けてもいいとミキが言うと圭輔は、開け切れなかった扉を開ける。

「え、小百合、、、そんなので？」

　ベッドから降りた小百合は薄めのメイクを施し、白のガウンを羽織っている。紐は縛られず、開け拡げなタオル地のガウンは小百合の腹を際立たせるようにしている。黒のレースを纏ったブラのカップは小百合の母乳を溜め込んだ乳を支えている。乳首は見えてはいないが、少し動けば見える位置にしか布地はなかった。

　細いストラップが、溜め込んだ乳を際立たせるように張り詰めている感じを醸し出す。圭輔は下腹部に目をやる。お腹に隠れているがハイレグというよう三角の小さな布地が小百合の繁茂を隠していた。が、目を凝らせば陰毛は見えてしまうのではと思うほどのレースが圭輔を動揺させる。ミキが小百合を後ろ向きにさせると、ガウンを肌蹴させ、二つに割れた桃尻を曝け出した。

　割れ目にはブラと同程度のストラップ上の紐がＴの字を作り小百合の白い肌を二分している。境界線は一部が尻の中に食い込み、国境紛争のように境をわからなくしていた。

「恥ずかしいですよぉ、ミキさん。」

「え、なんで、のりのりで着替えたじゃん。」

　圭輔は、ニヤつくことも忘れ口を開けたままだった。冷えてもダメだしと、ミキはガウンの紐を閉じる。圭輔の目には見たこともない小百合がそこにいた。しかも腹を大きくし、子を宿した妻が、いつも以上のエロを纏い、羽をはばたかせているようだった。

「小百合、まじで、それで、撮るの？カメラマンの人の趣味？」

「ううん、この前、リハのときにこんな感じでしましょうって、、、。」

「旦那さんのご希望ですよね、今回の撮影？」

　圭輔は返す言葉を失い、頭をかきながら小百合のガウンの内側を思い出していた。ＭＩＲＵＫＯが準備の終了を告げに来た時、連れ去られるようにスタジオに小百合は羽を広げながら歩んでいく。

　ひときわ明るいステージのような照明の下に小百合はみずからガウンを脱ぎ去り、一皮向いていた。

「さなぎが蝶になったわぁぁぁ。」

　ＭＩＲＵＫＯの声は小百合をその気にさせ、黒の上下のランジェリーのままポーズを重ねていた。四つんばいになり、尻がこちらを向いたとき、圭輔は覗きこむようにし、布地の少なさに驚きを声にする。

「見えちゃうんじゃ、、、。」

「大丈夫でしょ、小百合さんのビラビラ、内側に重なるから、、、はみ出さないと、、、、。」

　圭輔はミキの言葉を聞き流す。その通りだと言葉を返そうとしたが、それはやめる。ミキも臆することなく圭輔に小百合の女の部分を伝えた。

「したくてしょうがないみたいですよ、小百合さん。」

　圭輔は再び言葉に困る。ミキはあきれるようにまた圭輔を煽る。

「誰かに取られちゃいますよ、、、このままだと、、、間違いないです。旦那さん、、、蝶になって飛んでいってもいいの？」

　スタジオの中央には、お腹を腕で抱きかかえるポーズの小百合が、圭輔ではなくＭＩＲＵＫＯの構えるファインダーだけを覗き込んでいた。ファインダーの向こうにいる目は誰のものか、圭輔は不安だけで背筋が凍ってしまう。
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2015年11月18日掲載
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