レビレート
はちみつ太郎 作
２８

　小百合や孫の栞には優しい祖母の顔を見せる豊乃。相反するように圭輔には、事業の不具合を叱責し、改善の策を自らが率先して進行させようとし、圭輔のやる気を阻害し続ける。

　小百合は、残り少なくなった育児休暇のタイミングを圭輔に告げたが、意に介さぬように勝手にしろと突き放していた。小百合も豊乃との関係改善を進言することさえやめてしまい。孤立化する圭輔を見放すタイミングまで考えてしまう。

　豊乃は、小百合の仕事復帰を後押しする。孫の面倒は、自分が見るから、復帰することを望んだ。豊乃のあからさまなその姿勢は、圭輔からの離反を促すように感じ取り、仕事でのアリバイ時間を見計らい、応輔との交わりを促進するよう暗に伝えているように感じた。

　二日に一度から三日に一度、栞の誕生日の頃には一週間に一度の割合でしか帰宅しなくなった圭輔に小百合は、所在を尋ねるのを避けていたが、豊乃に促され、詰問する。

「どこだっていい、って訳にはいかないよな。」

「うん、。」

「アパート借りてる、新宮町の１ＤＫ。」

「新宮町、応輔くんの近く。」

「あぁ、同じ不動産屋で探してもらった。」

「１人で？」

「当たり前だろ、あの人と顔合わせたくないし、、、、小百合。」

「何？」

「ここ、出ないか？」

「え、。」

「手持ちの金が無いわけでもないし、新築してもいいし。」

　小百合は答えを持ち合わせていない。実家を離れることは山内の家を出るのと同じだからだった。小百合には判断できないでいる。

「ここ出たら、、、山内とは、、、。」

「あぁ、絶縁だろうな。あの人のことだ、籍を外しにかかる。」

「そこまで。」

「するさ、あの女なら。親父が死んで、山内を自由に出来るんだ、目の上のこぶだから、でも簡単に籍は抜けやしない。知り合いの弁護士に相談済みだけど。」

「お母さんと、仲直りって訳には？」

「いかない。できっこない。親父が死んで、本性現したんだ、外から戦うよ、俺の取り分だってあるんだし。」

　小百合は返事を待つよう圭輔に言うが、豊乃の味方をするつもりかと言われ、答えようのない質問に口ごもってしまう。すると、いないはずの豊乃は、障子を開け、圭輔を嘲笑する。

「あら、戦うなんて物騒ね。圭輔さんが主では、山内の火は消えてしまう。みんなの総意よ。従わない従業員を抱えて右往左往していたら、隣県の田辺の家がハゲタカのように全部掻っ攫うわよ。」

「、、、、。おれ、、、、ちょっと、。」
　食事に手をつけることなく尻尾を巻いていた圭輔は、豊乃の叱責に耐えられず家をあとにする。行き先は新宮町のアパートであることを豊乃は、嗅ぎつけていた。

「小百合さん、、、、未練って、、、ある？」

「、、、。」
　小百合は首を横に振りながら、涙をこぼしている。立ち直りそうに無い圭輔に、絶望した小百合は豊乃の操り人形のように首を振り続けてしまう。

「もう一つ教えておいて上げる。」

「なんですか。」

「マタニティーヌード。」

「、、、。」

「あれね、あの子が言い出したんじゃないの。」

「え、どういう、、、ことですか。」

「蔵野さんがね、白状したのよ。」

「蔵野さん？」

「そう、あの人が言いだしっぺでね、、、小百合さんのヌード撮影を覗き見しようとしてたの。未遂だったらしいけどね。」

「、、、。」
　小百合は、顔が赤くなる。怒りではなく悔しさと恥ずかしさが入り混じるものだった。豊乃は、蔵野からの聞き取りをそこで終えていた。マタニティーショーツの存在やリハの撮影時に覗き見たことは伝えていない。そんな事実は豊乃にはどうでも良かった。

　小百合を貶める作戦を共謀した圭輔への憎悪を煽るだけそれが豊乃の目論見だった。案の定、小百合は圭輔への憎悪だけが膨らみ、豊乃との仲を取り持つ気が失せていく。

　豊乃は成功を確信した。もう一つのピースを埋めるべく小百合を促すと、期待通りの答えではないが、本心を垣間見せるような言葉を聞いた。

「でも、ほんとに、それで、いいんですか。」

「勿論よ、もう、大きな問題じゃないはずよ、栞ちゃんも出来たんだし。」

「、、、。」
　小百合は再び俯くと、うなだれる様にし、豊乃の筋書きを承諾した。



　圭輔が豊乃との論争に負け尻尾を丸めてから三日。豊乃の実子である応輔は、小百合に相談を持ちかけられ実家に引き寄せられた。内容はなんとなく感ずいていた。圭輔と豊乃のことだろう。だが、応輔には引き寄せられる理由をもう一つ感じていた。


「で、兄さんは、出て行ったままなの？」

「うん、新宮町のアパートにもいないみたい。」

「１人で借りてる？」

「そうみたい。管理人の方に、お母さんから連絡して、聞いたんだけど、いる様子が無いって。」

「子供じゃないんだから、、、。」

「帰ってくるかなぁ、、、。」

「帰ってくるよ。二人とも心配性じゃない？」

　小百合には少しの心配はあるが、豊乃には当てはまらない。小百合も当日までは圭輔への憎悪があったが、時間につれ少し可哀想な感じが生まれていた。

「もしかして、、、。」

「自殺？しないでしょ、、、って、小百合さん、そんな、節でもあるの？兄さん。」

「大丈夫って思いたいけど、四面楚歌な感じがして。」

「え、じゃ、小百合さんも、、、兄さんのこと。」

「うん、色々あって、、、。」

「ＤＶ？」

「ううん、違うけど。」

「何された？」

「うん、恥ずかしいけど、、、マタニティーヌード、の時、、、。」
　小百合は、蔵野の経緯を豊乃から聞いたままを応輔に告げる。応輔は、少し腕組みをすると、あきれたように圭輔への言葉を荒げた。

「バカじゃないか、兄さん。小百合さんを餌にするってさぁ、、、。」
　応輔は、自分にもある隠すべき事柄を感じ、最後まで言うことを留めた。小百合も、そこまで言って欲しくないのか、戸惑うように応輔への視線を外す。

「ごめん、いいすぎたかも。だけど、、、。」

「うん、そんなことがあるから、、、うん。」
　小百合は最後まで自分の気持ちを押し出せずにいる。応輔は、小百合を抱きしめることも出来ず、手持ち無沙汰で話を聞くことに終始する。テーブル越しに会話を続けると、眠ったはずの栞が布団の中で泣いている。

「あ、ミルク、足りなかったかな。」

「栞ちゃん、起きちゃった？」

「うん、寝る前にミルク残したから、お腹がすいたかも。」
　小百合は寝室に行き栞を抱いてリビングに下りて来る。泣き止まない栞は応輔の顔をみて少し泣き止んだ。小百合はソファーに腰掛けると、Ｔシャツを捲くり、ブラのカップから赤子の吸い口を覗かせる。栞は、いつもの吸い口を目にすると本能で探りよせ、口に宛がうと口をむぎゅむぎゅと動かし、小百合の母乳を吸い始める。

　応輔は、最初こそ視線をそらす。が、程なくして栞が眠りに落ちそうな顔をすると、小百合に促され栞を乳首から離す。ポロリと自分も転がした乳首が目に入り、応輔は栞を抱えると、小百合に寝室まで移動するか聞いた。

「うん、多分、６時間は起きないから、朝までぐっすりだよ、栞は。」

　応輔は小百合の真意を問いただす。

「それって、、、。」

　小百合は、何も言わず応輔より先に寝室に向かった。応輔は、小百合の後を進み寝顔の栞に声を掛ける。

「栞ちゃん、、、起きたらダメだよ。」

　子供用の布団に寝かしつけ、布団を掛ける。栞は半開きの口を開け、乳首を吸い続けるように口をもぐもぐと動かしていた。応輔は、栞に心の声で告げる。「次はおじさんが吸う番だからね。」

「ん、なにか、言った、応くん。」

「あ、なにも、栞ちゃんかわいいね。」

「かわいいよぉぉ、だって、、、。」

「だって？」

「なんでもない。」
　小百合は、栞の寝顔を見た後、応輔の首もとに抱きついた。応輔も栞に目をやった後、小百合の唇を吸った。胸元に手を宛がい、先ほどまで栞のものだった乳房を揉み、ブラのカップから外れそうな緩い胸元から乳首を責める。小百合は、応輔の唇を吸いながら、問いかける。

「応くんも、吸ってみる？」

「うん、出る？」

「多分。」
　小百合はＴシャツを脱ぎ、フロントホックを外し、両の乳首をさらけ出す。応輔は、感想を告げた。色づきを戻しかけている乳首を妊娠時のものと対比させる。

　小百合は色づきの戻りを問いかける。初めての５月ごろを思い出す応輔は、その頃に戻りかけているが、色素の沈着は免れていないと言った。小百合は、胸元を寄せ、谷間を作り乳首を吸わせるようにした。応輔は、差し出された乳首を吸い、右の乳首をひとなめふたなめ転がしたあと、力強く吸い上げた。

「チュゥゥ。」

　小百合は、首を仰け反らせ、喘ぎを殺し、応輔の頭を抱いた。押し付けられた応輔の顔は小百合の乳房をへしゃげ、吸い込みを終わらせた。

「甘いかな？なんか、無味な感じがする。」

「私も、舐めたけど、おんなじ感じかな。」

　再び応輔は小百合の乳首を吸う。右ではなく左も同じように二度三度転がしたあと、力強く吸った。出が悪いのか、母乳の勢いは薄く、口の中には入ってきていない。

「もうそろそろ、出なくなるのかな？」

「そうかも、、、、生理も始まってるし、、、離乳食も始まったし。」

「、、、出来ちゃうかも、ってこと？」

「あ、うん。生理は、、、、始まったから、、、この前。」
　応輔は生理終わりの日付を聞くことなく、再び小百合の乳首を転がしている。小百合も生理周期のことを言えず、子宮収縮を促されるように乳首を吸い上げられていく。一つの疑念を問いただすことなく、小百合の乳首は転がされていた。
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2015年11月25日掲載
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