レビレート
はちみつ太郎 作
３６

　保険会社の回答は、保留だった。週明けの晩、勇は豊乃の店を訪れ、連れ去った。若い衆の運転で、後部座席には豊乃の体を弄りながら恐怖を植えつけていた。拘束まではされていないが、言葉での締め付けが豊乃を縛り上げる。

「ママ、あかんがな。返事は、今日までや。」

「で、でも、保険会社が。」

「立替えたらすむがな、２０００万。」

「明日には回答があるから、、、、。」

「明日の何時や？」

「わからない、でも遅くはないと。」

「ママ、悪いけど、、、この女体、、、回答まで、担保にさせてもらうでぇ。」

「担保？」

「逃げられても困る。２０００万でチンコロするとも思わんがな、、、。」

　豊乃は、勇の弄る手を振りほどくことが出来ない。運転手役の若い男は、ミラー越しにちらちらと豊乃の弄られる体を見ていた。勇はそれに気がついても咎めることなく、見せ付けるように豊乃を弄った。４０過ぎには見えぬ顔つきの豊乃。若い男は、スカートがはだけ、黒のショーツが座席の上に露になると、信号の黄色を無視してしまう。

「おい、ママのちっさいパンティ見たいのはええけど、信号無視はあかんぞぉ、ポリさんに職質かけられたら、やっかいやろがぁぁ。」

「すんませんっ。」

「あとでな、わしとのお○こみせたるから、、、しこしこしとれ、あと何分や、、、天ダムまで。」

「１０分ぐらいで。」

「８分で行け。」

「はいっ。」
　勇は運転手に行き先までの時間を詰めるように言う。山道に入り、車の行き来は無くなった。シートヒーターのおかげか寒さは感じず、豊乃の尻はそれのせいではなく、火照りを始めている。

　勇は、豊乃にブラウスをはだけるよう命令する。従うように脱ぎ去ると、スカートも視線だけで促された。ファスナーを下ろし、運転席側を見つめる。視線はミラー越しに合うが一瞬だった。窮屈なりに脱ぎ去ると、生足に黒のショーツがお目見えした。

「ママ、やる気満々か？、、、この前のお○こ、よかったんか？」

「、、、。」
　豊乃は何も言わず、ショーツ姿で勇の弄りを受け入れる。ブラを外さず隙間から指をいれ乳首を転がす。片方の乳首だけを零させ、千切れんばかりに吸い付いた。

「これも、切りおとすらしいで、、、議員先生。」

「え、、、、。」

「酢漬けにしてな、、、喰らうらしいがな、、、気持ち悪い。ちちくびは転がして、ハァハァいわすんが肝やのに。」
　勇は吸い付き、舌で転がしながら豊乃の怯えを見ていた。
　
「おやっさん、着きました。先着も、、、居られます。」

「若かぁ？」

「えぇ。」
　ワンボックスから男が降りてきた。勇より若い男は、スモーク越しに後部座席を覗く。運転席から男は降り、挨拶を響かせる。ドアを男が開け、胸元を隠す豊乃の顔を覗きこんだ。

「勇、これか？」

「若、えぇ、山内の未亡人、、、少しいってますけど。」

「なんぼって？」

「４０過ぎ、、、やな、ママ。」

「、、、。」

「何ぼやってきいてんねん。」
　すごんだ男は、豊乃の手首を掴むと後部座席からずり落とす。寒さと恐怖に震える豊乃は男の目をみずに答えた。

「４５です。」

「見えんなぁ、、、勇、、、お○こ、、、したんか？」

「今日はしてまへん。」

「今日のこときいてへん。」

「あ、金曜の夜にしました。、、、な、ママ、３回やな。ごっくんしてくれたん。」

「薬、使ったんか？」

「いいえ、プラトニックですから、、、そんなん、使わんでも、、、ヒィヒィですよ。」

「そうか、それならいい。」

「薬つこたら、あきまへんの？」

「先方がな、、嫌がる。先生は、、、しらふの女やないと、、、あかんねん。」

「ま、痛みもわからん薬中やったら、面白無いですわな。」

「そういうことや。」
　勇は豊乃を連れて行く男の後を追う。豊乃のハンドバッグなどを持ち、ワンボックスの後部に乗り込んだ。豊乃は寒さに震え、恐怖におびえている。

「ママさん、２０００万、、、どうなってん？」

「保険屋。が、、、保留して、、、、明日に回答を。」

「朝か、昼か？」

「わかりません。」

「若、もう少し待ってやりましょ。」

「あかん、朝まで待たれへん。うちの上納すこしたらんねん。」

「ママで、宛がうんですか？」

「あぁ、手っ取り早い。顔上げろ。」
　若頭は、スマホを手に取り豊乃の顔を撮影する。目を見開くよう脅し、取り直すように何度か撮った。持ち物の撮影もする。免許証はアップで撮影される。生年月日など、諸々の個人情報はそのまま送信した。

「あ、久御山です。ご苦労様です、、、どうです？届きました？」
　相手方の答えを久御山が耳を立て待っている。数秒の間、沈黙が車内を支配する。豊乃は、勇に首を羽交い絞めにされ身動きの取れない体を震わせていた。

「そうですか。６００。仕方ありませんね。足らずは何とかします。、、、今日でも、渡せます。はい、、、事務所で？」
　久御山は丁寧に受け答えし上部組織の怖さを豊乃に知らせているようだった。スマホのライトが消え、すごむように豊乃に問いかける。

「６００万、、、もう少し若かったら、、、ってさ。」

「えぇ、ママのお○こ、、、ジュクジュクでっせぇ、若ぁ、、、６００は安すぎるんと。」

「ソープに出しても、、、１００いかんで、４５じゃ。勇、時間長引いてるってこと、、、意味わかるな。」

「察ですか？」

「そうや、おそらく、、、内偵中。」

「そんなこと、、、。」

「山内の財産から、、、なんぼか、引き取る時間もない。時間食って、、、察にあげられてみ、６００もつかめん。ママさんよ、悪いがここまでや。」

　急に勇の手を振りほどこうと豊乃がもがく。

「明日、なんとか、、、しますから。」

「あかん、山内の店、、、傾いてんのしってるんや。、、、後釜を田辺の本家が銀行と狙ってる。」

　豊乃は、次の言葉を失った。久御山の言うことは間違いではない。抵当の処分を銀行に持ちかけられて、圭輔の保険金でまかなう腹積もりまで見透かさされているようだった。

「若、、、、一回だけ、、、最後の一回だけ、、、。」

「勇、、、ま、ええやろ、、、議員先生は、気持ちいいことしてくれへんし、痛いことしかしてくれん。山内のママさん、最後の気持ちええことしてもらえ。」

　豊乃はもがく手を必死に動かすが、勇の馬鹿力には歯向かう事も出来なかった。恐怖に体が縮んだのか半分以下の力で放心していた。勇は、豊乃のショーツを脱ぎ去り、久御山に言われたように最後の行為に臨む。久御山は、勇に言い聞かせる。体はもちろん、服や下着類にも傷をつけるなと。久御山が監視のように後部座席に移動する。真ん中の座席はステージのように明かりを照らし、４５の豊乃と、６０前の勇の交わりが始まっていた。豊乃は、生気を失い、体を大の字にすると、前戯なく勇の挿入を受け入れている。久御山は、スマホをいじり、豊乃の受け取り場所を確認している。

　勇が、突き立てるピストンは車を大きく揺らしている。その揺れを沈めるように引き戸が開いた。

「こんばんは。」
　勇は腰を振るのをやめない。豊乃は挿入部分を訪問した男らに見られるが、恥ずかしさを感じる感覚を失っていた。久御山は、まずいという顔をし、ハッチを開け外に飛び出る。飛びだし、勇の乗ってきた車を目指すが、そこにも男らは囲みを始めている。

　こんばんはと覗いた男は、勇を制する言葉を吐く。勇は、渾身にピストンを続け豊乃の奥を突きたてる。刺青の背に手がかかり、勇は男らの言葉を聞いた。

「警察や。」

「察？、、、お○この最中や、邪魔する権利が、、、国家権力にあるんか？」

　凄みを後ろに投げかけ、肩口を押さえにかかる手を振りほどく。ピストンは止まず、突き立てる勇は背筋を少し伸ばすと、豊乃の中で往き果てた。交わりの陰裂から抜き出した後、流れ落ちる精液を捜査員は見つめる以外に術は無かった。


　勇は問うた。強姦罪か？。捜査員の答えは、ノーだった。逮捕状を見せ付けられ、現行犯ではない罪状を告げられる。

「殺人教唆、保険金詐欺、恐喝。」
　逮捕状を読み上げた捜査員は、勇にテッシュで拭うよう伝える。股を広げたまま放心の豊乃にも、逮捕状を見せ罪状を告げた。豊乃は捜査員に涙ながらに言葉を伝えた。

「あ、ありがとう、、、た、たすかった。」
　捜査員は、唖然とした顔で女性捜査員にその場を預ける。豊乃の服や下着を女性捜査員は手渡し、拭った陰部の汚れを尋ねた。

「経口避妊ピルを処方してもらいますか？」

「、、、あ、はい。生きていられるなら、、、。」
　女性捜査員は、上司にそれを伝えると、救急車を手配するよう指示した。女性捜査員は、着替え終わった豊乃にもう一度、罪状を伝える。

「あなたにも、殺人教唆、保険金詐欺、の逮捕状が出ていますので、病院に行ってから執行しますから。」
　手錠はかけられず、勇との行為を問いただされ、次第に自分の罪を理解し始め、寒さ以外の恐怖から解放されたあと、再び訪れる後悔の念が震えを覚えさせていた。
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2015年12月19日掲載
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