レビレート


レビレートはちみつ太郎作
４　圭輔の実家暮らしにも慣れ、山内家のルーティーンに組み込まれた小百合。風呂の順番も、流動的になっている。秋の夜長を楽しめる時期。　豊乃と豪輔のいない山内家は、小百合夫婦と応輔だけがいた。夫婦で風呂に入りたい小百合だが、応輔の手前、承諾しないいつもの圭輔。しかたなしに、別々で入ろうとするが、圭輔は少し酔いがまわっているせいか、居間で転寝をしていた。　小百合は応輔に、風呂の順番を譲る。応輔は、いつもしている小百合の下着チェックがばれたのかと気を病むが、ごまかすように咳払いをしながら、風呂場に向かった。　応輔は、いつもの餌にありつけず、時間をかけずにと湯を浴びていく。餌はないが、脳裏に染み付いた餌の匂いと、幻影でいつものように陰茎は勃起してしまう。　ボディーソープで、小百合の指を想像するように、あわ立てた利き手と違う左手で陰茎を軽く扱く。応輔の頭の中では小百合が声をかけていた。どう、これぐらいがいい？と繰り返し聞いている。　カリ首辺りをくりくりと刺激すると、たまらず射精してしまう。餌のない状況のほうがあっさりと余韻なく射精してしまった応輔は、むなしさと同居しながら湯で体を流し終えた。　脱ぎ去られたトランクスなどを洗濯機に放り込む。空のドラムに、投げ入れるといつものチェックをしないまま後ろ髪惹かれるように脱衣を後にする。　居間に向かい、圭輔の寝姿を見た。小百合は少しふてくされるように、テレビを見ている。自分の局とは違う、公共放送のローカルニュースだった。　応輔は声をかける。小百合は応輔の問いに少し笑顔で答えた。勉強してるよ、と言った会話は圭輔の転寝を促進させている。　眠る圭輔を煽るように小百合は応輔に言う。圭輔が入らないなら、応輔と入ろうか？と、その言動を応輔は、真に受けるように顔を赤らめる。圭輔は、小百合の馬鹿げた戯言と意に介すことはなく、少し目を開けると、再び目を瞑ってしまう。　応輔は、洗濯機に自分の汚れ物も入れてあると、小百合に告げると、離れに向かった。小百合は、圭輔の寝姿に舌を出すと、応輔の後をついて、脱衣に向かった。　脱衣の付近で応輔に洗濯はしておく旨のことを告げると、振り返ることなく返事だけをし、姿を消した。心の中で、小百合と入浴を共にしているような気持ちで、離れへ入っていく。　小百合は、着替えを部屋から持ち出し、もう一度、圭輔の姿を見つめるが、寝返りすらうたず、大き目のいびきは、狸寝入りでもないことを判らせていた。　諦めるでもなく、小百合は脱衣場に向かう。鍵をかけようとするが、圭輔が目覚め入ってくるかもと思い、かけるのをやめた。応輔も離れにいき、舞い戻ることはないと決め付けている。　小百合は、いつものように着ているものを脱衣かごに入れる。白いブラには黒いバラの刺繍が施されている。お気に入りのブラを外し、袋の中に入れる。同じ柄のショーツも、脚から抜き取り、裏返しで少し汚れを確認すると、丸め、ブラと同様に袋の中に入れた。　小百合は、全裸のまま脱衣所の扉を再度振り返る。圭輔が入ってくる様子はない、少し開けてみると、居間からのいびきは大きくなっている。　あきらめた小百合は、脱衣かごを持ち上げ、洗濯機の中の先客を見つめている。応輔の脱ぎ去った抜け殻が、乱雑に押し込められている。　圭輔と入りたかった理由、女の芯が本能のように牡の臭いを求めていた。排卵の始まりを感じていた小百合は、逃すことなく機会を告げたかった。　だが、裸の小百合に牡の臭いを発していたのは圭輔でなく、応輔の抜け殻だった。小百合は、下腹部に熱い下り来る熱を感じ取る。　応輔の抜け殻、部屋着は再度着ているためか、抜け殻は臭いの染み付いたボクサーパンツとＴシャツ、靴下程度だった。その臭いに自らの洗濯物を入れるのを躊躇ったわけではなく、その中の発する牡の臭気に興味を持ってしまっていた。　中から取り出したのは、柔らかい肌触りの黒のボクサーパンツ。ゴムの部分には、メーカーのロゴが入り、そこだけ色が違っている。　小百合は、汚れたものを摘むのではなく、ゴムの部分を持ち睾丸が収まる部分の表側の臭いを嗅いだ。アンモニア臭と香ばしい汗の塊のようなチーズ臭を嗅ぐと、もう一度、脱衣の扉を確認した。いびきの音は聞こえている。小百合は、誰も来ないことを確かめると、応輔のボクサーショーツを裏返し、一日中触れていた陰茎の先の部分に鼻を宛てた。　牡の精に触れるように、臭いを吸い込む。左手でショーツを持ち顔の近くにあてたまま、少し腰を引くようにして、閉じている腿の隙間に指を差し込んでいる。　自分の女の部分をを確かめるように、指先は薄い繊毛に触れ、その根元で芽吹く陰核を触らぬように、唇の割れ目を指先に感じさせる。　触れぬでもわかりきっていた。小百合は、人差し指で陰唇を割る。いつもより多く潤滑しているのは、子を欲する適齢期の女の本能だった。若く、多くの精を生産する牡の臭いに牝の本能を小百合は認識させられてしまう。　居間で言った、応輔との入浴は戯言でもなかったのかと問いかけるように、小百合は指先を少し深く侵入させ、渇きのない潤々の膣身を解すようにし始めてしまう。　小百合の我は失っていない。常時、視線は脱衣の扉を向いている。もう少し開かないままでいて欲しいと望み、もう一度、それを鼻に近付けた小百合は、指先を陰唇の割れ目から離し、脱衣から湯船の縁に移動し、尻をつける。　カモフラージュか、シャワーの湯を流し、体には触れさせぬまま、縁につけた尻を具合のよい場所まで動かし、少し広めに腿を開く。脱衣でとおなじく、左手に持ったままのボクサーパンツ。小百合の右手は、再び陰唇を割り、ヌメヌメとし、喜びを待ちわびる膣の赤身に指先を走らせた。　二本の指、中指と人差し指はシャワー音に消されるが、小百合の体内にクチュクチュと木霊している。指先を少し折り加減にすると、縁ついた尻肉はキュッと強張りをみせ、腹に入る力が、吸い込む空気を増加させる。　応輔のパンツは、小百合の鼻先をすでに覆っていた。大きく吸い込むうちに、唇も触れている。呼吸器に繋がる三つの穴は、黒いマスクに閉ざされ、外気を遮断するように応輔の男を感じ取らせていった。　小百合は、眼を閉じる。股間に伸びていた指を抜き、小さめの乳房を下から支えるように揉み、転がすように尖り始めた乳首を人差し指でなでている。　声は押し殺す。天井を向いたり、湯の量を見たり、落ち着かぬ感じで指先で弾いていく。小百合は自分の女の具合を知っていた。乳首を転がすと、淫肉の奥から、とうとう湧き出る泉があることを。　覆われたマスクに阻まれた空気をなんども吸い、泉の湧き出しを促進させる。乳首をなんども転がし終えると、小さい胸の谷に雫が沸き、汗ばむように体も湿潤している。　乳首への刺激は、交互にし、左右の乳首は赤子の吸いやすい程度にまで赤らみ凝縮し、勃起しきる。ボクサーパンツの臭気は、風呂場の湿潤に耐えれないのか、質が変わりだいぶ臭気が消えていた。小百合は、名残惜しむように、睾丸を押えていたであろう部分を一舐めしてしまう。　舌に触れる感触は、布地のざらつきだけを伝えるが、してはならぬ淫らな発想が、小百合の背徳を支配する。襲われた背徳に、抗う術もなく、臭気の消えかけた応輔の抜け殻を惜しむように、自らの繊毛を纏った生殖器に宛がい、排卵日の短い自慰を終える。　空気の乱れを切り替える時間は少しかかるが、髪を洗い体を洗い終える頃には、湯の温かさに紛れるように女の火照りを落ち着かせていた。湯船の縁に残した応輔のボクサーショーツは、シャワーの湯と小百合の唾液を少し含んだまま置かれている。　縁から取り上げられたパンツは、造作もなく濡れて湿り気を帯びたまま、洗濯機に収められた。まだ回らぬ洗濯機は、二人の抜け殻を絡めるようにさせ、擬似的な交わりを待ちわびている。　居間で寝転んだはずの圭輔は、小百合に促される前に移動し、部屋で完全に寝入っていた。小百合は、一人寝を決め込む腹をくくる。着替え終えていないだろう圭輔に一言いうため寝室に向かった。　寝息ではなくいびきをかき続ける圭輔に一言も発せぬまま、風呂上りのスキンケアのため時間をつかう。乳液などを顔に仕込み、いびきにイラつきながら照明に痛めつけられた肌をいたわった。　応輔は、喉の渇きと洗濯物の残りを理由に誰もいない居間を抜ける。小百合も圭輔も消えた居間には、音の消えた空間がある。脱衣から聞こえるはずの洗濯機のまわる音がそこにはなかった。　入れ忘れた洗濯物を握り、脱衣のほうへ向かう応輔。小百合のいないのはわかっていた。扉を開け、中に入るとまだそこには、小百合のシャンプーと石鹸の残り香がある。毎日のルーティーンのように、まだ回っていない洗濯物をのぞき込む。見えたのはいつものように袋にとじられた小百合の下着や、シャツなどがある。男物には圭輔のものはなく、まだ風呂にはいっていないことがわかる。　男物の黒のボクサーパンツは応輔のもので、下着同士とはいえ、小百合と交わりをもった錯覚を覚える。昨日も今日も明日も々ことを繰り返す。応輔は、脱衣の扉を見つめ人気を感じないまで、聴覚を研ぎ澄ます。　袋のファスナーを引き、隠された小百合の抜け殻に対面する。白地に黒のバラの刺繍。応輔はお気に入りの一つだった。着けた状態をいつも想像している。分離された小百合の画像と下着の画像が自分の中で重なり合い、着せ替え人形のようにシンクロしている。　シンクロした想像の一部を脱ぎ去らせるように、応輔は白のショーツを裏返す。いつもより汚れていない裏地は、白の地を気にしてるのだろと感じ取り、小百合の抜け殻を鼻に近付ける。　深く吸い込むと、いつもより少し濃厚なチーズ臭が鼻に抜ける。舌で味覚を味わうように舐めまわすと、いつもと違う行動をしてみせる。擬似的な交わり、出来もしない想像を物質的に近づけ、交わりの擬似行為を思いついた。小百合のショーツの裏地と、自らのショーツの裏地。重ねるようにし、それを擦り、生地が擦り切れないかと思うほどに摩擦しようとボクサーパンツを手に取った。　自分のパンツ、濡れているはずはない。汚したわけでも、水を含ませたわけでもない。部分的な濡れは、股間の覆いの部分に見られていた。　まさかと思う応輔だが、聞ける内容でもない。風呂場の利用状況だけで、自分と小百合、この二人しか知りえぬ事実だった。小百合の行動を知ったわけではない。　応輔はまだ女の本質を知りはしない。それを知るきっかけは、まだ先の話。遠くないその時まで、このことは忘れようと、頭の細胞に鍵をかけ、元の状態にした洗濯機を見ながら、脱衣を後にする。　小百合の本当の姿、見たこともない女の姿。鍵をかけたはずの細胞だが、再び居間に現れた小百合に鍵を外される。　応輔は、何も聞かれていないのに脱衣所に言ったことを口走る。忘れた残りの洗濯物を入れにいったこと、圭輔がまだ入っていないだろうこと。洗濯機の中を見たとは言わないが、そうしてしまったような感じに受け取られてしまうことを言ってしまい焦るだけだった。　小百合も同じようだった。見られてしまったかもしれない応輔のぬれたパンツ。事実の全てを消し去るように、洗濯機を回しに脱衣場へ向かうことを応輔に宣言する。圭輔のパンツと応輔のパンツの違いを尋ね、洗濯機の中の事実を確かめるように応輔に聞いた。触れたことは言わぬが、触れたかもしれないことだけを臭わし自己弁護のように言葉を多くした。　答えを重ね、圭輔とは違いボクサータイプが多いことを小百合に告げる。小百合も応輔も焦りを隠すように、言葉をさえぎり、話題を変えたがっていた。応輔は小百合が自分の汚れ物を見ていたことをなんとなく理解し、顔が熱くなるのを感じた。　恥ずかしさか、汚れたものを見られた恥ずかしさか。そうではなく、生殖の適齢を迎えた女の性を知ったような気がして、興奮を覚えただけだった。小百合は、脱衣に消えていく。恥ずかしさを隠すように、応輔に洗濯機を回すことを宣言し、その場から消えていった。
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2015年9月26日掲載
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