相思相愛


相思相愛　ＹＯＫＯ作
３．　西村良二は人妻である中山真理子のことが好きになっていた。　40になるまで仕事一筋できた西村にとってこれ程の感情は初めてだった。　人付き合いが苦手な良二だったが真理子といるときはなぜか素でいられるのだ。　しかしそれは真理子も同じだった。　真理子は仕事に忙しい旦那に物足りなさを感じていた。　仕事で組む西村に最初は無愛想と思っていたが親友を紹介したりするうちに距離が縮まり、自分には心を開く彼に好意を抱くようになっていた。　真理子もそのことに気づいていた。　西村さんと彼の名前を呼ぶだけでときめいている自分。　もっと彼と一緒にいたいと思っていた。　旦那とはお見合い結婚だった。　特に恋をしたわけでもなく流れで結婚した。　そんな真理子にとって恋愛は久しぶりだった。　美人ではあったが服装が地味であったり本人が恋愛に積極的でないこともあり、彼氏もいなかった。そんな真理子にとって西村への恋は初恋のような感覚だった。　西村といる気持ちが楽なのだ。　真理子はまさか西村と相思相愛だとは思いもしなかった。「真理子さん」西村からそう呼ばれるとドキっとする。　気がつくと西村のことばかり考えてしまう。　西村も真理子の名前を呼ぶときドキドキしながらも喜びを感じていた。　真理子が横にいるだけで嬉しかった。　真理子と西村は２歳違いの誕生日は二週間違いだった。　二人ともその２の差に運命的なものを感じていた。　お互いに一緒にいて落ち着く存在なのだ。　そして、ついに真理子は西村の家を訪れた。　家族には仕事と言ってある。　しかし後ろめたい気持ちはなかった。　仕事でお世話になってるお礼に手料理をご馳走するという名目なのだ。　一種の仕事と言っても過言ではない。　真理子は自分にそう言い聞かせた。　待ち合わせ場所に西村が迎えに来た。　真理子は西村が自分のことをどう思っているか気になる。　鼻がムズムズする。西村の前では極力くしゃみも我慢してきた。　初めて会った時から我慢したいと思えたのはきっと西村が運命の人で恋をすることもきめられていたことだったからとも思った。　油断して買い物先でくしゃみしてしまった際に西村にくしゃみを見られたことはあった。　そのとき素敵なくしゃみと言われたがやっぱり連発していたら西村もドン引きだろうと思って堪える。　しかし「ふぐしゅ」とくしゃみが出てしまう。　だがいつになく控えめなくしゃみだ。　西村は「かわいいくしゃみですね」と言ってくれた。　西村にそう言われると嬉しい。　西村は続けて「でも僕の前では素でいてほしいです。この前のスーパーでみたく普通にくしゃみしていいんですよ」と言う。　真理子は赤面する。　さらに西村は「実は僕、真理子さんのくしゃみ何度も見てるんです。　スーパーのレジで支払いのときくしゃみしてる所や職場のトイレから出てきたり、入っていくときなくしゃみしてるところ見てました」と打ち明けられる。「電話のくしゃみも娘さんじゃなくて真理子さんでしょ」と言われてしまう。　真理子は恥ずかしくなる。　西村にそこまで見られてたとはと思うと恥ずかしい。　真理子は「女性なのに豪快に連発していてドン引きでしょ」と言う。　それに対して西村は「そんなことないですよ。却ってくしゃみぽっくて僕は好きです」と言う。　西村にそう言われ真理子は「私、ひどい鼻炎で過敏症なの」と打ち明ける。　それに対し西村は「知ってました」と言う。　真理子は今まで必死で西村の前でくしゃみを我慢してきたを恥ずかしく思う。　しかし同時に西村なら自分のコンプレックスのくしゃみも受け入れてくれるとも思った。　そんな会話をしているうちにスーパーに着く。　２人で買い物をするのは買い出しに続いて二度目だ。　良二と真理子はお互いに休日の買い物、二人で並んでいることが夫婦みたいと思え、喜びを覚える。周囲は自分たちを夫婦と思っているかと思うとドキドキした。　途中、良二が離れると真理子は我慢していたくしゃみをする。　先ほど素でいてほしいと言われたがくしゃみの多さにドン引きされるのが怖くてやっぱり西村の前でくしゃみするのは躊躇ってしまう。　西村が戻ってくると何事もなかったかのように接する。　しかし西村は真理子のくしゃみを見ていた。　自分が離れた途端に我慢していただろうくしゃみをすることに真理子が自分には心を開いてないのかとネガティブな考えをした。「今日はお礼なので支払いは私がします」と言って真理子はレジに並んだ。　西村はその間、雑誌の立ち読みをすることにした。　するとまた真理子のくしゃみが聞こえた。　支払いをしようとしながらくしゃみをしている真理子がいた。　なぜか西村はその光景を見て勃起した。　美人が支払いを済ませようとしながら迂闊にも豪快にくしゃみが出てしまうというギャップに萌えている自分に西村は気づいた。　真理子は赤面しながら支払いを終えた。　西村は自分と同じように美しい真理子が堪えきれずくしゃみしてしまうという光景に興奮を覚える男が多いのではないかと思うと嫉妬した。　真理子は何事もなかったかのように西村の元へやって来た。　西村がまさかかつて自分を襲った息子の担任のように自分のくしゃみに興奮しているとは知らずに。　再び二人は西村の車に乗り込んだ。　しばしドライブを楽しみ、西村の家にやって来た。　元から綺麗にはしていたが憧れの真理子がやって来るということで更に綺麗にした。　真理子は「西村さんって綺麗好きなんですね」と言う。　できれば西村さんはやめて欲しかった。　西村くんや良二くん、もしくは良二さんと呼んで欲しかった。「では早速」と言って真理子はエプロンを取り出しキッチンへと向かった。　途中、コショウのせいか湯気のせいかわからないが真理子がくしゃみをしていた。　良二は真理子が自分のためにくしゃみをしていると思うと嬉しかった。　間髪入れずくしゃみを連発する真理子の顔は普段は見せない顔であり西村を興奮させた。　そして「できました」と言って真理子が手料理を運んできた。　見るからに豪華で美味しそうだ。　一口食べて「美味しい」と言う良二。　真理子は「良かった」と言う。　そんなときピンポーンとインターフォンが鳴った。
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2015年7月13日掲載
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