若妻・預かります ひら 作
◆第１１章 　金曜日の昼休み。優美が２人の女子学生と一緒に俺の研究室を訪ねて来た。 　今日の優美は、ノースリーブのサマーセーターにミニのプリーツスカートという可憐な少女のような装いで、俺の視線に少し恥ずかしそうにしながらも、開口一番、トンデモない事をお願いしてきた。 「上条先生、私たちとお昼をご一緒してくれませんか？」 「え？ お昼を一緒に‥‥？」 「はい。彼女たちが進路のことで少しご相談に乗ってもらいたいことがあるそうで‥‥。ぜひお願いします」 「わ、わかった‥‥。そういう事なら付き合うよ」 「よかった、ありがとうございます」 　そうして俺は、構内の芝生に敷かれた花柄のシートの上で、３人の女性に囲まれて、手作りのお弁当を食べさせられるハメとなっていた。 　優美と一緒にやって来た女子学生は、俺の講義も受けている前田と北村で、どちらも学内では可愛いと評判の高い生徒だった。 　傍らを通り過ぎて行く男子学生たちに羨望のまなざしで見られる中、３人が少しずつ選り分けてくれた手料理の数々を緊張しながら口に運んでゆく。 　正直言って、３人の女性陣のミニスカートから覗く剥き出しの太腿の方に意識がいってしまい、料理の味どころではない状況だったが、なんとか平静を保ちながら食事を進めていると、前田がいきなり突拍子もないことを尋ねてきた。 「先生は胸の大きい女性の方が好きですか？」 「はあ‥‥？」 「付き合っている彼氏が、周りの女子の胸の大きさばかりを気にするもんだから‥‥、彼の気持ちがよくわからなくなってしまって‥‥」 　前田由香里は少し背が低くて、中学生みたいなスレンダーな容姿がとっても可愛い女の子だった。彼女は小ぶりなバストの両側に手を当てながら真剣な表情で聞いてくる。 「あ、あのなぁ‥‥、相談したい事って進路の話じゃなかったのか？」 「先生、これは女の子にとって非常に大切な進路の話なんですよ。わかってます？」 「あ、いや‥‥、そうか‥‥」 「で、どうなんですか？ 男のヒトにとっては、胸の大きさだけで決まってしまうものなんですか？」 「ま、まいったなぁ‥‥。まあ、確かに大きさに固執する男もいるけど‥‥。俺は、好きになったヒトの胸なら、それが一番になってしまうと思う‥‥」 「そ、それじゃあ、私みたいな小さな胸でも？」 「ああ、一番好きになると思う。それに前田の胸は、俺から見ても、とっても魅力的だと思うけどな‥‥」 「きゃー！ 上条先生にそう言ってもらえると、何だか自信が出てきちゃう。ありがとうございます！」 「いや、どういたしまして‥‥。それよりも、何でそんな相談を俺みたいなヤツに？」 「だって、学内の男性の中では一番尊敬できるヒトだし、先生はとっても優しそうだから‥‥」 「そ、それは買いかぶり過ぎだよ‥‥」 「今までは、先生に声をかける勇気が出なかったんだけど‥‥、最近の上条先生、とっても明るくて話しやすそうな雰囲気だったから‥‥」 「そうそう、それで、先生と前から知り合いだという優美さんに相談してみたら、それじゃあお昼に誘ってみようかという事になって‥‥」 　そんな前田と北村のおしゃべりを聞きながら、優美は俺の隣でニコニコと微笑んでいた。 　またもや彼女にハメられたと気付き、心の中でガックリ肩を落としていると、今度は北村の方がトンデモないことを聞いてきた。 「上条先生は付き合っている彼女とかいるんですか？」 「うっ‥‥。いや、まあ、いないというか‥‥」 　いきなりのストレートな質問にしどろもどろになってしまう。北村綾は前田とは正反対にセクシーなスタイルがとっても魅力的な女の子で、昨年はミスキャンパスにも選ばれていた。 「え、そうなんですか！ うれしい！ 私、実はずっと前から先生のことが気になっていて‥‥」 「ああっ！ 綾ちゃんずるーい！ 私だって、ずっと前から先生と仲良くなりたかったんだよ」 「あ、あのねー、前田には彼氏がいるじゃない。何言ってんのよ」 「ふん、あんなのどーでもいいんだもん！」 　俺は２人の会話に正直言って面食らっていた。自分がこんなに可愛い女の子たちから感心を持たれているなんて、今まで思いも寄らなかったから‥‥。 　そうして２人のやり取りを満更でもない気分で眺めていると、いきなり尻のところをグイッとツネられた。 　ギクリとしながら隣に座っている優美の方を窺ってみると、顔は相変わらず微笑をたたえていたが、大きな瞳が突き刺すように冷たいものだった‥‥。思わず背筋がブルッと震えてくる。 「ところで、優美さんは高校の時からの知り合いだったんでしょ？ 先生の事をどう思っているのか、興味があるなぁ」 「え？ 私ですか？ 高校の時は‥‥あこがれの先生でしたね」 「わー、やっぱりそーだったんだぁー。それでそれで、久しぶりに再会した感想は？」 「うーん、ちょっと微妙ですね‥‥。可愛い女の子だったら誰でもイイというような‥‥ちょっと軟派な感じがするし」 「うっわぁー、優美さん、キッツー！ けど、言われてみると誰にでも優しそうな感じがするねー、上条先生は」 「そーだよねぇ。好きなヒトには自分だけを見ていて欲しいもんねー。うふふ」 　俺はびっしょりと冷や汗をかきながら、昼休みが終わるまで、３人の女子学生による男性観を黙って拝聴し続けることにした‥‥。 　その晩のベッドの中で、優美が俺のガウンの袖を引っ張りながらスネた口調でポツリと呟いた。 「晃さんって、女の子だったら誰でもイイんですね‥‥」 　俺はギクッとしながら昼間の一件を思い出していた。家に帰って来てから何となく機嫌が悪いように見えたのは、やはりこのせいだったのか‥‥。 「そ、そんなわけないだろう？ 俺は彼女たちに相談されたから、親身に対応させてもらっただけだ」 「本当にそれだけですか？ 私には晃さんがとってもうれしそうに見えました。そうですよね‥‥人妻なんかより、独身の可愛い女の子たちの方が魅力的ですよね‥‥」 「あ、あのなー、優美。ちょっとは落ち着いてくれよ」 「それに、恋人はまだいないと言っていたし‥‥」 「ぐっ。それは、君の返事をまだ聞いたわけじゃないから‥‥」 「‥‥晃さんは、はっきり口にしないと“わからないヒト”なんですか？」 「あ、いや‥‥それは‥‥」 「それにそれに、晃さんは前田さんの胸が一番魅力的だって‥‥言ってたし！」 「おいおい、誤解するなって」 「私の胸なんて‥‥、どうせ魅力がないのはわかっています！」 「ああ、もう‥‥。わかったよ！」 　俺はそう叫ぶなりピンクのネグリジェの上から優美の乳房をわし掴みにした。 「はううっっ！」 「優美の胸が‥‥、俺にとっての一番に決まっているだろ」 「ホ、ホントに‥‥？」 「ああ。この世で一番魅力的な胸だ‥‥」 「けど‥‥、晃さんは、今まで一度も触ってくれなかった‥‥」 「あ、あのなぁ‥‥それは‥‥、言わなきゃ‥‥ダメか？」 「ダメです‥‥」 「‥‥この胸を一度でも触ってしまったら、もう一生手放せなくなってしまうと思ったから‥‥」 「え‥‥？」 「初めて見た時から、ずっと欲しいと思ってきた。狂おしいほどに‥‥。だからもう、後戻りはできない！」 　俺はそう答えると美しい双丘に顔をグリグリとうずめていきながら、その匂い立つ甘美な香りを胸一杯に吸い込んでいく。 「あくうぅっ、晃さん‥‥、晃さんっ！」 「ああ、優美の胸はなんて美味そうなんだ。全てを‥‥食べてしまいたい！」 「あうっ、た、食べてください。私のオッパイを食べて‥‥、くふうぅっ！」
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2010年2月20日掲載
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