| 若妻・預かります ひら 作 |
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| ◆第１４章 月曜日の昼休み、私は晃さんの研究室を訪ねていた。 もう一度こちらの方から叔父に電話をかけて、私の過去に起きた出来事の内容を、詳しく聞いてみた方がいいのかどうかを相談したかったから‥‥。 彼の研究室の前まで来て、一つ深呼吸をしてからノックをしようとすると、中から楽しげな女性たちの声が聞こえてきた。 いけないとは思いながらも、そっとドアのノブを回して、少しだけ開いた隙間から中の様子を伺ってみる。 そこには晃さんの他に３人の女子学生がいて、楽しそうに会話をしながら、机の上に広げられた手料理の数々をみんなで食べていた。 見知った顔の一人である北村綾さんが、玉子焼きを箸に摘みながら、「あーん」と言って彼に食べさせようとしている。それを眺めながら、前田由香里さんともう一人の女の子がクスクスと笑っていた。 晃さんの真っ赤になった顔を遠目に見つめていると、彼の隣に寄り添って一緒に笑い合っていることのできる女性は、やっぱり私ではないように思えてしまって、心がギュッと締め付けられる‥‥。 私は震える手でドアをそっと閉めると、こぼれ落ちる涙もおかまいなしに、もと来た廊下を引き返していた。 その日の晩の夕食を食べた後に、私は一人にさせて欲しいと告げて、心配そうな顔の彼を残して寝室に引きこもってしまっていた。 私は寝間着に着替えるとすぐにベッドの中へもぐり込んで、白い天井をジッと見つめながら、９年前の出来事を思い出そうと試みる‥‥。 あの日の晩、私は息苦しくなって目を覚ました。 目の前にはベッドサイドのランプに照らし出された叔父の顔があって、彼はニヤニヤと笑いながら私の首筋を絞めていった‥‥。あの時の悪夢ような記憶がまざまざと蘇ってくる。 彼は私の寝間着のボタンを一つ一つゆっくり外していくと、露わになった１４才の未発達な身体を飽きることもなく執拗に撫でまわしていった。 私は寝間着のボタンを外して胸を露わにすると、その時の事を思い出しながら、同じように自分の身体を撫でまわしていく。 乳房を指先で掴んで揉み上げる。パンティーの中に手を入れていやらしいところを擦り上げてみる。 あの時の私には恐怖でしかなかった、セックスという名の一方的な暴力‥‥。 叔父は、私の小さな乳房を絞り上げながら、押し出されてきた乳首をジュブジュブと吸い込んでいき、さらには、恥ずかしい陰部の中を二本の指で掻きまわしていきながら、ガタガタと震える私の耳元で何度も何度も囁いた。 怖れる必要は何もない。この行為の先には二人だけの永遠の世界が待っている。お前はそこで全ての抑圧から解放されて新しい目覚めを迎えるのだと‥‥。 そうして叔父は、自分の醜悪な剛棒をアソコにねじ込んでいくと、苦痛に泣き叫ぶ私のことなど一切お構いなしに、激しい注送運動を開始していった。 それから先のことは霧に包まれたようにボヤけてしまっていて、はっきりと思い出すことができなかった‥‥。 毎週のように叔父が夜中にやって来て、身体を縄で縛られたり、様々な器具を挿入されたりした恐ろしい記憶が断片的には残っていたが、私がどんな気持ちで叔父の行為に身を委ね、それをどのように感じていたのかは、全くと言っていいほど覚えていなかった‥‥。 私は堅く勃起してきた自分の乳首をクニクニとこねまわし、自分のアソコを激しく擦り上げながら、あの時の気持ちを必死に思い出そうとする。 シーンと静まりかえった真っ暗な部屋の中での眠れない毎日。私が暗闇の中でうずくまっていると、漆黒の闇の彼方から叔父の足音が聞こえてくる。 今日はどんな恐怖と悲しみが私の身体を苛むのだろうかと考えるだけで、全身の震えが止まらなくなってくる。私のアソコがジンジンと痺れてきて、心臓の鼓動がどんどんと高鳴っていく。 そして‥‥、私の部屋のドアが、キイーという悲鳴のような音とともに‥‥ゆっくりと開いていく‥‥。 ふいに呼び覚まされた９年前の呪われた記憶の中で、私は自分の乳首を思いっきり引っ張り上げながら絶頂に達していた。 火曜日の放課後、俺は自分の研究室で、とある番号に電話をかけていた。 申し訳ないとは思ったけれど、昨晩、ベッドサイドに置いてあった彼女の携帯をこっそりと開けて、履歴に残っていたその番号を確認させてもらっていた。 憔悴しきった昨日の優美の様子を見て、このままでは彼女を失ってしまうと思ったからだ‥‥。 ５回目のコールで、年配の男の声が聞こえてくる。俺は意を決して電話の向こうの相手に話しかけた。 「あの‥‥、山之辺さんでしょうか？ 私は上条晃と申す者です」 「‥‥ああ、誰かと思えば、優美の恋人とかいう男か‥‥。そろそろ電話が来るんじゃないかと思っていた」 「な、なぜ、私の事を！？」 「ふふっ。ウチの会社の調査力を甘く見ないで欲しいもんだな」 「な、なるほど、そういう事ですか‥‥」 「用件も大体わかっている。優美の過去に何があったのかという事だろう？」 「‥‥はい、その通りです。正直に言って、私はあなたをけっして許す事はできない。しかし、このままでは彼女がおかしくなってしまう‥‥。だから、電話をさせてもらいました」 「上条くん、この際単刀直入に聞くが、君はどんな事があっても優美を愛していると言えるのか？」 「もちろんです‥‥。彼女と一緒なら、地獄へ堕ちてもかまわないと思っています」 「ふふっ、君はなかなかおもしろい事を言うんだな」 「あなたも‥‥、そういう気持ちで、彼女を見続けて来たんじゃないんですか？」 「ほおー、なるほどな‥‥。さすがに、優美が選んだだけの事はある男といったところか‥‥」 「俺は愛するヒトを一度見捨ててしまった最低の男です。だからこそ、優美だけはどんな事をしてでも守り抜きたいんです‥‥。お願いします、彼女の過去に何があったのか教えていただけませんか？」 「君の気持ちはよくわかった‥‥。しかし、優美のもう一つの真実を知った後でも、その気持ちが変わらないものかどうかは保証できないし、君の苦悩がさらに深くなるだけかもしれない‥‥。それでも聞きたいかね？」 「はい。俺は彼女の全てが知りたい。そうして、あなたの手の中から彼女を救い出してやりたい‥‥」 「ふふっ、君は俺の心の内を見透かしたような事をサラリと言ってしまうんだな‥‥。わかった、俺と優美との過去にあった出来事を全て話してやろう。ただし、聞いてしまった事をけっして後悔するなよ」 「はい。お願いします」 私は放課後の大学構内を重たい足取りで歩いて行くと、またもや彼の研究室の前まで来てしまっていた。 昨日のように、綾さんたちが居るかもしれないと思うと、ノックをするのさえ躊躇してしまう‥‥。 しかし、今の私は、どうしても彼に話さなくてはならない事があった。 昨晩から今日にかけて散々悩んだけれど、私は一度実家に帰って、叔父と直接話をしてみようと心に決めていた。 そうしなければ、これから先、晃さんに真っ正面から向き合っていくことができないような気がしていたから‥‥。 そう覚悟を決めて、ドアをノックしようとした時に、研究室の中から彼の激しい怒鳴り声が聞こえてきた。 晃さんがこんなに声を荒げているのを初めて聞いた私は、悪いとは思いながらも、静かにノブを回して少しだけドアを開けていた。 彼は携帯電話で誰かと口論をしている。激しく動揺し、怒りに体を震わせている彼の姿を見つめながら、私は電話の内容に耳を傾けていった。 「ば、馬鹿な‥‥。彼女がそんな事をする訳がない！」 「‥‥‥‥」 「くっ、いい加減にしろ！ 優美の心を解放するためだと‥‥。一体どこまで彼女を貶めたら気が済むんだっ！！」 「‥‥‥‥」 「あ、あなたは‥‥、彼女に対する自分の願望や妄想を話しているだけじゃないのかっ！！」 晃さんの発している言葉の意味を理解した瞬間に、私の中の何かがプツンと弾けた‥‥。 私は研究室のドアをバタンと激しく開け放つと、こちらを驚愕の表情で見つめている彼の前までツカツカと歩いて行き、その頬を平手で思いっきり叩いていた。 衝撃で彼の持っていた携帯が弾け飛んだが、彼は叩かれたままの姿勢で呆然と私を見つめていた。 「わ、私に黙って叔父に電話をするなんて‥‥。あ、あなたは‥‥最低ですっ！」 「‥‥ごめん。許してはもらえないかもしれないが、俺にはこうするしか他に方法がなかったんだ‥‥」 「な、なんで、私に相談してくれなかったんですか！ そんなに私は頼りない存在なんですかっ！！」 「優美、聞いてくれ！」 「嫌い、嫌いっ！ あなたなんて、大嫌いっ！！」 言ってしまった瞬間に、私はハッとなって後悔する‥‥。彼は沈痛な表情で私を見つめていた。 気がつくと、私の頬を涙が止めどもなくこぼれ落ちていく‥‥。 彼はそんな私の肩に手を置こうとするが、その差し出された手を振り払いながら、私は叫んでいた。 「私に構わないでっ！！」 「優美‥‥」 「こんな私に構わないで‥‥。私はあなたにけっして釣り合わない、最低の女なんだからっ！！」 私は泣きながら絶叫すると、研究室の外に向かって走り出していた。 後方から彼の声が何度も何度も聞こえてくる‥‥。けれど、私はこの場所からとにかく逃げ出したかった。感情だけに身を任せて、彼を一方的に責めてしまった自分自身の恥ずかしい行為から、とにかく目を背けたかった‥‥。 私は閑散とした大学の構内を走り抜けると、校門から飛び出して、引き続く街並みを駆け抜けて行った。 気がつくと、私は見知らぬ公園のベンチにただ一人座っていた‥‥。辺りはすでに薄暗くなっていて、子どもたちの遊ぶ姿はどこにも無い。 時間を確認しようと、肩にかけたハンドバッグから携帯を取り出して開いてみると、すでに午後７時を回っている。 あわてて着信の履歴を確認すると、晃さんから驚くほどたくさんの電話が来ていることがわかった。 それをジッと見つめていると、こんな私のことをいつでも真っ先に心配してくれる彼の姿が浮かんできて、心がじんわりと暖かくなってくる‥‥。 私はベンチから立ち上がると、とにかく彼のマンションに帰って、これからのことをじっくり話し合ってみようと心に決めていた。 気持ちが固まってしまうと、今度はここがどの辺りなんだろうかということが気になってしまって、薄暗くなった公園の周辺をぐるりと見回してみる。 公園の出口から少し離れたところに黒いワゴン車がポツンと１台停まっていたが、車内には人影が見えなかった。 その車の右手の方に視線を向けてみると、年配と思われる一人の女性が買い物袋を下げながら、急ぎ足で公園を通り過ぎて行くところだった。辺りが暗いせいではっきりとはわからないが、その女性は見知った顔のように見える。 私は急いで携帯をバッグにしまうと、その女性に道を尋ねるために、公園の出口へ向かって走り出していた。 しかし、公園の門を通りすぎて、歩道を右に曲がったところで、私は大きな人影に勢いよくぶつかっていた。 あわててその人影から体を離し謝ろうとするが、その瞬間、きつい刺激臭のするタオルを顔全体に押し付けられる。 私は激しい危険信号を感じて、咄嗟にそれを顔から引きはがそうとするが、その時後方からもう一つの人影が突然現れて、私の両腕を強引に押さえ付けてくる。 二つの人影に前後から拘束されながらも、それを振り解こうと必死に抵抗を試みるが、私は間もなく、自分の意識が急速に薄れていくのを自覚した。 体に全く力が入らなくなっていき、視界もみるみるうちに暗闇に覆われていく‥‥。 私は、「晃さん、助けて、助けてっ！」と心の中で何度も叫び声を上げながら、深い深い闇の底へと落ちていった‥‥。 |
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| 2010年4月10日掲載 |
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