若妻・預かります
ひら 作
◆第１９章

　どれぐらいの時間が経ったのだろうか‥‥。
　獣のような男たちに前後から辱めを受けた後も、果てしのないセックスが続いていた。

　一人が私の乳房をギリギリと絞り込みながら、ピンと飛び出して来た乳首をジュバッ、ジュバッと吸い上げていく。
　一人が私の股を目一杯に広げながら、愛液にまみれた陰部の中で勃起するクリトリスをベロベロと舐め回していく。
　一人が私の髪を千切れんばかりに掴み上げながら、大きく開いた口の中へジュボッ、ジュボッと肉棒を突き刺していく。

　私は全身をわななかせながら、こみ上げて来る絶頂感の中に我が身を委ねる‥‥。

　しかし、男たちのどす黒く燃え上がる欲望は止まることを知らず、入れ代わり立ち代わるようにして、私の二つの穴を犯していった。
　膣内に挿入されたグロテスクな肉棒が子宮口を突き上げる度に、身体の奥底がジンジンと痺れてきて、私は無意識のうちに淫らな嬌声を張り上げる。

「いいのっ！ いいのおおおっ！ 私の子宮をもっと突いてえええっ！ あふうううっ、あふぁあああんっ！」
「けっ、なんて女だ‥‥。先ほどまでの清純そうな姿がウソのようだぜ！」

　男は悪態をつきながらも私の膣内をぐちゃぐちゃに掻き回しつつ、凄まじい速度でペニスを上下させていく。
　激しく擦れる剛棒の刺激に、膣内の襞という襞が歓喜の雄叫びを上げる。

「あふうううっ！ 来るっ、来るううううっ！ また来ちゃうのおおおおおっっ！」
「くっくっ。それじゃ、お前の期待に応えて、その淫売な子宮口にドロドロの子種をたっぷりとぶっ掛けてやるぜ！ ぐぬううっ！ ぐっはああああっ！」
「はわああんっ！ に、妊娠しちゃうっ！ 妊娠しちゃううううっ！ あふうっ！ あっくうううっ！ イッくうううううううううっっ！」
「それっ！ それっ！ それいいいっ！」
「すごいっ！ すごいのおおっ！ すごいのが来るうううっ！ ひゃふぁあああああああっっ！」

　エビ反りになりながらビクンッ、ビクンッと痙攣を繰り返す私の身体に、間髪を入れずに別の剛棒がねじ込まれる。

「はふぁああんんっ！ イ、イッたばかりなのにいいいっ！ 壊れちゃうっ！ 壊れちゃうううううっ！」
「おら、おらっ！ ケツを振っておねだりするんだ！ この淫乱な牝豚めが！」
「はぐうううっ！ ア、アヌスが裂けちゃううううっ！ あぐっ、あぐううっ！ いいのっ！ いいのおおおおっ！ もっと滅茶苦茶にしてえええええっっ！」
「この淫売女が！ ご主人さまに対する口のきき方に気をつけやがれっ！」
「ふわあああっ！ ご主人さまっ、ご主人さまあああっ！ 私のいやらしいアヌスを思いっきり虐めてください！ お願いしますうううっ！ はうううっ、はわぁあああああああああっっ！」

　私はザーメンにまみれた自分の乳房をこねくり回しながら、極限の絶頂へと上りつめていく。

“これでいいんだ‥‥。私は‥‥もう、この男たちのセックス奴隷として生きていくしかないんだ‥‥”

　晃さんの悲しそうな顔が脳裏に浮かぶが、それも一瞬で消えていき‥‥、私は逆に、彼を裏切って見知らぬ男たちとのセックスに溺れまくる自分自身の姿に、これ以上ないほどの背徳的なエクスタシーを感じていた。
　獣のような男たちの毒々しいペニスが私の大切な場所に突き刺さる度に、官能の渦がどんどんと大きくなっていき、二つの穴から随喜の涎がこぼれ出して来る。

　こんな浅ましい姿を見たら、彼はその裏切り行為に激怒し、私の身体という身体に唾を吐きつけることだろう。
　そして、一時の間とはいえ、こんな女を愛してしまったことを心の底から後悔するはずだ‥‥。

　それでいいと思った。こんな淫売女を早く忘れてしまった方が、彼にとっての幸せだと確信することができた。
　そして私は、ここにいる男たちの肉便器として朝から晩までペニスを挿入され、いずれは望みもしない赤ちゃんを産み落とすことになるのだろう‥‥。
　そんな生き地獄のような未来を思い描くだけで、私のアソコはヒクヒクと震え、いやらしい愛液がとめどもなく溢れ出してくる。

「くふうううんっ！ 晃さん、ごめんなさい‥‥はうううっ！ 私は‥‥陵辱されてイキまくる‥‥はふううんっ！ 淫売な牝豚に堕ちてしまいました‥‥ひゃあああっ！ あひっ、あひいいいいいいいっっ！」

　凄まじい官能の渦の中でヨガりまくる淫靡な肉体を前にして、男たちの興奮は極限まで上りつめていき、狂ったようなピストン運動とともに大量のスペルマが放出される。
　美しかった真っ白な裸身がドロドロの精液で汚されていき、彼女はこの世のものとは思えないような激しい痙攣を何度も繰り返しながら、小水をジョロジョロと垂れ流していった。

「まったく‥‥。美の化身とさえ思えた女が‥‥すげえ変わりようだぜ」
「ああ。あんなに気品に満ちていた女が、ここまでセックスの虜になるとはな‥‥」
「ふっふっ、これで当分の間は女の身体に飢えることもないだろう‥‥」
「違いない。こんな極上の女の肉体をこれから毎日味わえるのかと思うと、それだけで下半身がゾクゾクしてくるぜ」
「よしっ。それじゃあそろそろ、最後の仕上げといくか」
「くっくっ、一生逆らう気が起きなくなるように、この女の身体を徹底的に痛めつけてやるぜ！」
「おいおい、深い傷が残るようなことだけは避けてくれよ」
「ああ、その辺は任せておけ。こんな極上の肉体は二度と手に入らないだろうしな。ぐふふ」

　男たちは未だ放心状態にある優美の身体を抱き起しながら、その手首にしっかりとロープを巻き付けると、倉庫の壁際に設置された巻き上げ式のクランクを回転させて上方へと引っ張り上げていく。
　徐々に上がっていく白い裸身をニタニタと眺めながら、猫背の男が傍にあった段ボール箱の中から長い黒皮の鞭を取り上げ、もう一人の陰気そうな男が長い糸のついた金具のようなものを手にとって状態の確認を開始する。
　リーダー格の男は優美の吊り上げた現在位置を固定すると、その身体の正面に立って彼女が目覚めるのをジッと待っている。

　数分の後、意識を取り戻した優美は、その身体をロープで吊り上げられ、爪先立ちという不安定な姿勢で立たされている自分の姿に気づき、深い絶望の表情を浮かべた。

　吊り上げられた手首の痛さに歪む女の苦しげな表情と、振り上げられた両腕に引っ張られるようにして上方に突き出してくる豊潤な二つの乳房‥‥。
　お臍から恥丘にかけての妖しい起伏に満ちた曲線と、白桃のような唇から覗いている濃厚なピンクの花びら‥‥。
　爪先立ちの状態でプルプルと震えるなまめかしい太腿のラインと、オスの欲情を際限なく掻き立てる細くくびれたウエストに、ツンと引き締まった美尻の形状‥‥。

　三人の男たちはその完璧な造形美を堪能しながら、またもや股間のイチモツを屹立させていく。

「くうううっ！ まったく見事としか言いようのない身体だぜ」
「ああ。こんなにそそられる女は見たことがない‥‥。こんな極上の女を肉奴隷にできるのかと思うと、今まで生きてきた甲斐があったというもんだ。くくっ」
「よし、それじゃあ最後の儀式を始めるぞ」

　正面に立って優美の不安げな表情を見つめていたリーダー格の男が鋭い口調で話し始める。

「これから言う俺の質問に正直に答えるんだ。‥‥もし答えなかった場合には、お前の身体に聞くことになる。どちらを選ぶかはお前次第だ。わかったか？」
「は、はい‥‥」
「それではまず、お前の肉体を調教したのは誰だ？ 正直に答えろ！」
「っ‥‥そ、それは‥‥」

　男は答えられない優美の様子をしっかりと確認してから、猫背の男に無言の合図を送る。
　吊り上げられた白い肉体の右側で待ち構えていた男が、その合図に残忍な笑みを浮かべると、黒皮で出来た長い鞭を振りかぶり、真っ白な背中に容赦なく打ち付けた。

　ビシイイイイィィィッッッ！という柔肌を引き裂くような痛々しい音とともに、内臓が破裂してしまうのではないかと思えるほどの衝撃が優美の全身を駆け巡る。

「ぐぎゃああああああああっっ！ ぐぼおおっ、ぐぶぉおおおおおおっっ！」
「ふっふっ、これ以上打たれたくなかったら正直に答えろ！ お前の身体は誰に調教されたんだ？」

　美しかった背中の中央部に赤黒くて痛々しい傷跡が刻み込まれるとともに、優美の全身からドッとあぶら汗が噴き出してくる。
　鞭で打たれた背中の激痛は治まらず、胃の辺りから激しい嘔吐感がこみ上げて来る。

「ぐ、ぐふうっ‥‥お、叔父に‥‥調教されました‥‥」
「くっくっ、なるほどな。肉親に調教を受けた真性のマゾ奴隷というわけか‥‥。そして、俺たちにケツの穴を犯されて、今まで封印してきた自分の本性を思い出した。そういうことだな？」
「は、はい‥‥。そうです‥‥」
「お前の本性は、男に凌辱されることだけを生き甲斐とする淫乱な牝豚だというんだな？」
「‥‥くっ」

　再び、激しい暴打の音が二回鳴り響き、優美のキュッと締まった美尻に、二本の交錯する赤黒い鞭の跡が刻まれる。
　彼女は白い裸体をのたうちながら、全身を駆け巡る激痛にあらんかぎりの叫び声を上げる。
　全身からびっしょりと汗をしたたらせながら、ブルブルと身体を震わせる女の姿に、男たちの興奮がヒートアップしていく。

「はい‥‥。私は‥‥卑しくて淫乱な‥‥牝豚です‥‥。うっ、うううっ‥‥」
「人間以下のマゾ奴隷であるお前にとって、今までの生活は全て偽りのものであり、苦痛でしかなかった。そうだな？」
「はい‥‥そ、そうです‥‥」
「恋人だった男も、お前の偽りの姿に騙されただけのどうでもいい存在であり、お前を満足させる事もできない最低のクズだった。そうだな？」
「そ、それは‥‥」
「おいおい、見知らぬ男たちのチンポを咥えまくって、ヒイヒイとよがり声を上げ続けた牝豚が、まさか違うとでも言うんじゃないだろうな？」
「‥‥た、確かに私は‥‥最低の女だけど‥‥、彼を愛していたという気持ちだけは‥‥けっして偽りのものじゃありません‥‥。私は‥‥彼のことを‥‥心の底から愛していました‥‥」

　優美のスラッと伸びた美しい太腿に、毒々しい鞭が連続で振り下ろされる。
　肉を引き裂くような激しい暴打の音ともに、彼女の身体が何度も跳ね上がり、狂ったような咆哮が愛らしい唇から吐き出されていく。

「ぐぼおおおっ！ ぐぶっ、ぐぼほっ、ぐぶぉおおおおおおおおおっっ！」
「きれいごとでごまかすな！ お前はその男を愛していた思い込むことで、自分自身の嗜虐性に酔いしれているだけだ！」
「よ、酔い‥‥しれて‥‥？」
「そうだ！ お前は激しい絶頂感を得るために、かつての恋人の名前を何度も叫びながらイキまくっていた。違うか？」
「わ、私は‥‥こんな身体に堕ちてしまったことを謝罪するために‥‥彼の名前を呼んでいただけです‥‥ぐふっ！」
「おいおい、今さら何の未練があるというんだ？ まさか、ここまでセックスに溺れておきながら、寄りを戻そうとでも思っているんじゃないだろうな？」
「そ、そんなことは‥‥考えてもいません‥‥。私は愛する彼を裏切った‥‥最低の女です」
「だったら、その男を完全に否定しろ！ そうして初めて、お前は真の肉奴隷に生まれ変わることができる」
「‥‥っ」
「否定しろ！ 自分をイカせることもできない最低のクズだったと否定するんだ！」
「ううっ‥‥」
「そうか。どうやらお前の身体に徹底的に聞いてみるしかないようだな」

　リーダー格の男がそう言いながら左側に目配せをすると、頬の痩せこけた陰気そうな男が優美の正面に回り込んで来て、固く勃起したピンク色の乳首にアルコール臭のする液体を丹念に擦り込んでいく。
　そして床に置かれてあった長い糸のついた二本の釣り針状の金具を手に取ると、同じようにその液体を擦り込んでいく。

「‥‥な、何をするんですかっ！？ 止めてっ、止めてくださいっ！ いやっ、いやあああっ！ 止めてえええええええっっ！」

　猫背の男が激しく暴れ回る優美の身体を背後からがっしりと抑え付ける中で、陰気そうな男はその鋭く尖った針の先端を乳首の中ほどに当て、ズブブッと一気に突き刺していった。
　乳首の反対側から針の切っ先が飛び出してくるのと同時に、身の毛のよだつような絶叫が倉庫内に響き渡る。
　男はそんな彼女の叫びを嬉しそうに聞きながら、もう一方の乳首にも釣り針の先端をグイッと貫き通す。

「あぎゃあああああああっっ！ ぐぎっ、ぶぎゃあああっっ！ ぐぎゃあああああああああああっっ！」

　男は優美の絶叫が鳴り響く中で、乳首からの出血具合を冷静に確認した上で、釣り針から伸びている二本の糸をたぐり寄せて、天井からぶら下がっている滑車の一つにそれらを通していった。

「どうだ？ 過去の男を否定する気になったか？」
「‥‥ぐぼぉおおおっ！ い、痛いいいっ！ 痛いいいいいいいいっっ！」

　陰気な男が滑車に通した二本の糸を少しずつ引いていくと、愛らしい乳首を無残に貫いている釣り針がグイッ、グイッと引っ張り上げられていく。

「あぶぁああっっ！ぶぐぅおおおおっっ！ ぶばぁおおおおおおおおっっ！」

　ピンと張りつめた糸によって、これ以上はないという限界まで二つの乳首が引っ張り上げられる。
　優美は最も敏感な部分を突き刺された激痛と、千切れてしまいそうなほどに伸び切った乳首の無残な姿に半狂乱となりながらも、激しい快感の渦が子宮の奥底から突き上がってくるのを実感した。
　そしてこの邪悪でいて、心をドロドロに蕩けさせるような極限の快楽の前には、全てのものが色褪せていくのを痛感した。

「くっくっ、陵辱されればされるほどに、お前の肉体は随喜の雄叫びを上げる。そして、終わることのない永遠の快楽の中で、お前はずっと生き続けていくんだ」

　男の言葉が、陵辱を繰り返しながら私の耳元で何度も囁いていた叔父の言葉と重なっていく。
　私は何の迷いもなく、過去と決別する最期の言葉を吐き出していた。

「私の‥‥過去に起きたことは全て‥‥偽りのものでした」
「はっきりと答えろ！ お前の恋人だった男も偽りのものだったというんだな？」
「はい。私を満足にイカすこともできない‥‥ちっぽけで‥‥くだらない存在でした」
「そうだ。そんなクズのことは全て忘れて、俺たちの奴隷として一生服従していくことがお前にとっての最上の喜びになるんだ」
「はい。ご主人さま」
「よし、ここで絶対の神に誓え！ 一生俺たちのマゾ奴隷として、快楽のためだけに生きていく事を！」
「‥‥‥‥」

　誓いの言葉をわずかに躊躇した優美の腹部から陰部にかけての美しい柔肌に、毒々しい鞭による暴打が二回、三回と襲い掛かる。
　脳天を突き刺すような激痛に上半身を大きく仰け反らせた瞬間、引っ張り上げられていた乳首に限界を超える力が加わり、優美はまさしく牝豚のような激しい咆哮を上げながら、白目をむいてのたうち回る。
　そしてそれでも痛々しい傷跡が刻まれた陰部からは、大量の愛液がしたたり落ちていく。

「誓え！ ここまで堕ちてしまったお前には、それが最もふさわしい生き方だ」
「ぶふうっ‥‥ち、誓います！」
「何を誓うのか、はっきりと答えろ！」
「わ、私はご主人さまたちのマゾ奴隷として‥‥この卑しい身体を一生捧げます。そ、それが‥‥私にとっての最高の幸せです」
「よしっ、よく言った。それでは誓いの証として、俺たち三人の小水を全て飲み干すんだ。ふふっ、嬉しいだろう？」
「は、はい。優美はとっても幸せな肉便器です」

　股間から愛液を垂れ流しながら、うっとりとした表情で答える優美の姿には、すでに拉致される以前の清楚な面影は全く残されていなかった。
　そこには嗜虐を快感に変えるためだけに生きている、まさしく人間以下の牝豚に過ぎない生き物が存在するだけだった。


　時間は夜中の３時を回っていた。

　国道から狭い脇道に入った先の、寂れた漁港にある荷揚げ倉庫の窓から微かな明かりが漏れていた。
　俺はその倉庫から大分離れた手前の道路脇で車のライトを消し、エンジンを停止する。
　音を立てないように車のドアをそっと開け、依然として冷たい雨が降りしきる車外に出ると、埠頭の隅にポツンと建っているその倉庫に向かって慎重に歩みを進めていく。

　倉庫に到達すると壁に耳を当てて中の様子を伺ってみるが、雨音と厚いブロック造りの壁のせいで、人の気配は全く確認できない‥‥。
　窓にも内側から暗幕が貼られているようで、わずかな隙間から光が漏れて来るだけだった。
　そうして不安な心を抱えたままで、壁に沿って倉庫の裏手に廻ってみると、そこには一台の黒いワゴン車が闇夜の中に溶け込むようにしてひっそりと停まっていた。
　それを発見した瞬間、もやもやとしていた俺の疑念はすぐさま確信へと変わっていった。

“つ、ついに見つけた！ 優美っ、今助けに行くからな！”

　俺はすぐにでも倉庫の中へ押し入ろうと身構えるが、寸前で思い止まって、まずは優美の叔父に連絡を入れることにする。
　俺は囁くような声で、黒いワゴン車の停まっている不審な倉庫の件とその大まかな位置を伝え、地元警察への出動を要請するように頼んでいた。

「相手が複数犯だとした場合、お前一人で乗り込むのは余りにも危険すぎる‥‥。今から３０分程度で警察が到着するはずだから、それを待ってから突入するんだ。わかったか？」
「まあ、普通は誰でも‥‥そうするだろうな‥‥」
「おいっ！ わかっているのか！？ お前一人だけで飛び込むということは、優美の身にも危険が及ぶ可能性が高くなるんだぞ！」
「わかっている‥‥。わかってはいるけど‥‥、もう俺の‥‥この狂いそうな心を一刻の間でも抑えることができないんだ‥‥」

　その時、目の前の倉庫の中から、女のかん高い叫び声が聞こえたような気がした。

　俺は受話口から聞こえて来る男の怒鳴り声を無視して直ちに通話を切ると、倉庫の裏手にあるアルミ製のドアに耳を寄せて中の様子を再度確認してみる。
　微かではあるが、その扉を通して女のかん高い声のようなものが聞こえて来る。

　俺は辺りを見回して、倉庫の壁際にある小さな花壇に突き刺さっていた１．５メートルぐらいの竹の棒を抜き取ると、その場で何度か素振りをしてみる。
　そして深呼吸を一つすると、アルミ製のドアの少し手前に立ちながら覚悟を決める。

　次の瞬間、俺はそのドアに突進して、全体重をかけた体当たりを喰らわせていた。
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2010年9月4日掲載
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