１．

『フォン、ガウ〜〜、フォン、フォン…。ドッドッドッドッ。カチ。』
　フルコンチのカワサキＺ１にアオリを入れてエンジンを止めた。
「あぁ〜〜、やばいよ。やばいよ。朝帰りを通り越して夕方だよ。」
　静かに玄関の扉を開けて、泥棒のような足取りで自分の部屋に向かう。
「俊、下りてらっしゃい！！」
　階段の下に美顔パックで顔を真っ白にさせた黒い下着姿の女が腕組みをして立っている。やばい！！で俺を笑っているように見えた。
「まったく、親父も、俺の愛人が東京にいるから、そこで人生やり直せなんて、冗談じゃねーよ。だいたい、親父だってヤクザの組長じゃねーかよ。ああ、地元に帰りてぇなぁ…。」
　サンドイッチをほおばり、キッチンの椅子にふんぞり返り天井を見上げながら、俺は嘆いた。
「単車に女に喧嘩。これ位で地元の高校は俺を受け入れないなんて、日本の教育もおかしいよなぁ。」
　二つ目のサンドイッチをほおばり、嘆きから悪態に変わる。
「それにしても、オヤジの愛人のユミだよ。可愛い顔して二回もひっ叩きやがって。いつか、押し倒して、俺の下でヒーヒー言わせてやる。」
　ん？背後から、白いヒンヤリした腕が俺の首に絡まってくる。肩越しからシャンプーのいい香りがする。そして背中には柔らかいお肉を押し付けられたような感触が…。
「ねぇ、俊…。俊が呼び捨てにしてるユミって、いったい誰なのかな？」
「い、居たんですか…、ユ、ユミさん。」
「それに、俊が私を気持ちよくさせてくれるなんって、嬉しいなぁ…。」
「そ、そんな生意気なこと誰が言ったんでしょう…。」
　俺はこの場で死ぬな。絶対に死ぬ。
『ドタン！！』
　いきなりグーで殴られた俺は、椅子ごと後ろへひっくり返り、後頭部を床にしこたま叩きつけた。
「俊、私のことはユミさんでしょ。誰が学校へ行かせて、食べさせてあげてると思ってるの。」
「はい。わかりました。」
　俺はもう泣きそうだ。
「でもねぇ、俊。もし、私を満足させられる自信があれば、いつでも襲ってきてＯＫだからね。自信があればね…。」
「とんでもありません。生意気言って、すみませんでした。」
「じゃぁ、仕事に行ってくるけど、明日は学校に行くのよ。わかった？」
「はい。気をつけて行ってらっしゃいませ。」
　こんな姿、地元のダチに見られたら、速攻でパシリに格下げになるな。後頭部を触ると大きなコブが出来ている。殴られて口の中も切れて血が出ている。
「コブかぁ…、痛いと思ったよ。でも、殴ることないよなぁ…。」
　俺は、ユミさんが出かけたあと、椅子を元に戻して使った食器を綺麗に洗った。そのままにしておくと殴られるからだ。こうやって、俺がユミさんに逆らわないのは、ユミさんが、ものすごい美人っていうのもあるけど、父親と腹違いの兄しかいない俺にとって、母親と姉さんができたような気がするからだ。それが、一番嬉しい。背中に「トラ」の刺青があっても、口よりさきに手が飛んできても、はっきり言って、俺はユミさんが大好きだ。
「昨日、寝てないから眠くなってきた。ちょっと寝るか。」
　自分の部屋に戻るとうだるような暑さで服なんか着ていられない。エアコンをつけ、パンツ一枚になってベットに倒れこんだ。
　脱いだ洋服、洗濯機に入れておかないと、また怒られるなぁ…。そんなことを考えながら、俺は直ぐに寝てしまった。

「俊！！、俊、居るでしょ。お〜〜い、俊〜〜ん！！」
　直ぐにベッドから飛び起きた。
「えっ？何だよ。なに？」
「俊〜〜ん。私の可愛い俊〜〜ん！！下りてこ〜〜い！！。」
　また飲みすぎて玄関で騒いでいる。時計を見ると午前３時を過ぎている。こんな時間、近所迷惑なら俺の単車のエンジンといい勝負だろう。
「はい、はい。すぐに行きます。」
「あっ、俊。助けて〜〜。立てないの。早く、抱っこして。」
　玄関でひっくり返って騒いでいる。
「はい、はい。直ぐにベッドに連れて行くから俺につかまって。」
「ベッドじゃなくて、シャワー。汗で気持ち悪い。」
「シャワーなんて無理だろう。こんなに酔ってて。明日にすれば？」
「大丈夫、大丈夫。全然、酔ってなんかないよぉ。早くぅ、お姫様抱っこして。」
　ユミさんは、両手を俺の首に回してくるが全然力がはいっていない。
「暴れないでよ。静かにしててよ。危ないから。」
　背中と膝の裏に手を入れて、俺はなんとかユミさんの体を持ち上げた。
「嬉しい…。もしかして、俊と私ってラブラブ？」
「ちょ、ちょっと止めてよ。危ないから、じっとしててよ。」
　ユミさんが、調子にのって俺の顔中にキスをしてきて腕の中ではしゃいでいる。浴室に入り、鏡に映った俺の顔は口紅で大変なことになっている。ユミさんが酔って俺にキスするのはいつものことだ。最初のときは本当にあせったけど…。
「後はひとりでやってよ。」
　足をゆっくりと床に下ろしても独りで立っていられず、俺にしがみついて離れない。
「冷たいなぁ、俊。服くらい脱がせてよぉ〜〜。」
「服くらいって…。しょうがないなぁ。」
　上着を脱がせ、背中のジッパーを下げて足元に落ちたワンピースを拾い上げて、シワがつかないように折りたたんで片手に引っ掛けた。
「下着は自分で脱いでよ。洋服は部屋のハンガーに掛けておくからね。」
　ユミさんは、下着姿で平気で家の中を歩き回るから、見慣れてはいるけど…。やっぱりドキドキする。
「うん。あとは大丈夫だから。ありがとうね。俊、おやすみぃ。」
　親父は組の資金源として、東京に風俗店や飲み屋を数店舗経営している。ユミさんはその内のクラブ一店舗を任せられてママをやっている。たまに、常連客と飲んだとき、こんなになって帰ってくる。
「まったく、おやすみぃ〜〜じゃないよぉ。」
『ドタン』
　自分の部屋に戻ろうとしたとき浴室から大きな音がした。
「ユミさん、大丈夫？開けるよ。」
　脱衣所にはいない。浴室からシャワーの音と呻き声のような音が聞こえる。
「ユミさん、大丈夫？ねぇ、返事してよ。大丈夫？」
「俊〜〜ん。」
　俺を呼んでる。
「ドア開けるよ。前とか隠してよ。」
　浴室のドアを開けて俺は驚いた。
「えっ？」
　床の上に仰向けにひっくり返って、両足の膝あたりに引っ掛かったパンツとストッキングを脱ごうと足をバタバタさせている。下半身が丸出しだ…。おまけに、ブラも首まで捲くれ上がってグレープフルーツのようなオッパイも丸見えになっている。シャワーは出っ放しになっているから、全身ずぶ濡れだ。
「何やってるんだよ。」
　まったく。酔っ払いのやることは理解できない。
「俊、早くパンツ脱がせてよ。」
　俺はシャワーを止め、首に巻きついているブラを外して、そのあと、アソコを見ないようにしながら、濡れて両足に絡まっているパンツとストッキングを両足から剥がし取った。でも、目はやっぱりアソコにいってしまう。
「どこ見てるんだよ、俊〜〜ん。」
「えっ？」
　床に寝ているユミさんは、俺を見上げて、あせり具合を楽しんでいる。
「オマ○コなんて珍しくないでしょ。童貞じゃあるまいし。」
「ちょ、ちょっと」
　いきなりＭ字型に足を広げ、更にアソコを自分で広げてくる。俺を挑発してるのか？
「ほら、サービスだよ。俊。」
　だめだ。もう、我慢できない。いくら親父の愛人で、ユミさんが酔っ払ってたとしても、このまま引き下がれない。俺は速攻でトランクスを脱ぎ去って、床に寝てるユミさんにかぶさり、オッパイにむしゃぶりついた。
「ああん…、俊…。だめ、気持ちよくなっちゃうよぉ…。」
　やった、ユミさんもその気みたいだ。俺の頭を抱きしめてくるし…。
「俊…、俊…。あぁぁぁ…、久しぶり…。」
　ユミさんのオッパイ、最高！！　オマ○コは？　クリちゃん、ここか？
「うっ」
　おっ、ユミさんの体、ビクって…。俺の愛撫って上手なのかな？
「そこ、そこ…、気持ちいい…。」
「ここ？　ユミさんここ？」
　あっ、濡れてるよ。やった、ユミさんのオマ○コ濡れてるよ。指なんか簡単に入っちゃう。
「はぁぁぁ…、俊、俊…。あぁぁぁ、いい、それいい。」
　すげぇ〜〜。俺がユミさんを感じさせてるよ。やったぁ！！
「俊、入れて。俊のオチンチン入れてぇ…。」
　やったぁ！！って、おい、俺のオチンチン、いつのまにちっちゃくなっちゃってんだよ。びびってるのか？おい、嘘だろうこんなときに…。
「うぅぅぅ…、しゅ、俊…。」
　ん？
「しゅ、俊…。気持ち悪い…。吐きそう、だめ、吐く…。」
「えっ？　吐く？　ちょ、ちょっとまって。これ、この洗面器に吐いて！！」
　手渡した洗面器にゲーゲー吐いている。それからが大変だった。気持ち悪がるユミさんを、ベッドまで運んで寝かしつけ、そのあと、ゲロを始末して…。俺が寝たのは、午前４時を過ぎていた。しかし、俺のオチンチン…、情けない…。

（続く）