２．

　俺は学校へ行く用意をして、キッチンに入っていくと、ユミさんが朝食を作って、申し訳なさそうな顔をして座っていた。
「少しは反省してるのかなぁ？」
「はい…。反省してます。ごめんなさい。」
　ユミさんは、自分が悪いときは、反論もせず俺にでも素直に謝ってくる。僕はこんなユミさんが大好きだし尊敬だってしている。でも…。普段、俺が悪いんだけど、殴られまくっているから、つい仕返ししたくなる。こんな機会はめったにないし。
「近所迷惑になるから、玄関で騒ぐのはやめろよな。ユミ！！」
　ユミって呼び捨てにしてみた。
「はい…。すいません…。」
　体を小さくさせ、素直に謝ってくる。「誰がユミだって」と怒ってこない。
「少しは憶えてるの？昨日のこと。ユミ！！」
「憶えてません…。」
「憶えてないのに、反省してるっておかしいだろ。ユミ！！」
「すいません…。」
　ああ、気分がいい…。
「ねぇ…、俊？」
「誰が、俊だって？」
　俺も調子にのっている。ユミさん、かなり悔しそうだ。
「俊…君…。」
　鳥肌が立つくらいの快感だ。ユミさんに君付けで呼ばすなんて。
「なに？」
「今日、起きたら何も着けてなかったんだけど…。裸にしたの俊…君？」
「そうだよ。でも、勘違いしないでよ。脱がせろって命令したのユミだからね。」
「えっ？私が？」
「憶えてないの？浴室でのこと。」
「浴室？う〜〜ん。憶えてない…。」
　俺は、事細かに浴室でのことを話してあげた。
「う、嘘でしょ。」
「本当だよ。」
「私の体…、全部触ったの？」
「触ったよ。全部。」
「アソコも？」
「だから、全部！！」
　ユミさんもさすがに落ち込んでいる。
「なんで我慢しないのよ。」
「できるわけないじゃん。挑発してきたのはユミだし。」
「落ち込んじゃう…。それで…？私…、俊…君…、とはやっちゃったの？」
　自分のオチンチンが小さくなって出来なかったことを思い出す。
「やってない。」
「本当？本当にやってないの？」
　ユミさんは信じられないという顔をしている。表情が瞬時に明るくなる。
「うん。」
　それに比べ、据え膳食わぬは男の恥じとばかりに、俺の表情は暗くなる。
「でも、なんで？」
　俺のチンチンが立たなかったなんて言えない。やらなかったのは、ユミさんのゲロのせいにして、その後の後始末がどれだけ大変だったか訴えようと思った。
「でも、良かった。やってなければ理由なんかどうでもいいわ。起きたとき裸だったでしょ。俊とＨしちゃったかと思って、それだけが心配だったのよ。」
　悩みが解決して安心したのか、自分から尋ねておいて、人の話しなんか聞こうとしない。少し腹が立ってくる。
「だけどさぁ、俊。悪いのは私だけど、さっきから下手に出てれば調子にのってユミ、ユミって。ちょっとぉ、何様のつもり！！」
「何様のつもりかなぁ？　まぁ、オッパイ揉んであげてユミを気持ちよくさせる人。乳首舐めてあげてコリコリにさせる人。中指でオマ○コ触って、グショグショにしちゃう人。それから…。」
　コップが飛んできて俺の顔の横をかすめた。かなりやばい。鬼のような顔して立っている。マジで怒らせた。
「上等じゃない、俊。死にたいのぉ？」
「が、学校に行かなくちゃ。い、行ってきま〜〜す。」
　速攻で玄関に走った。スニーカなんか履いている暇なんかない。スニーカとヘルメットを持って裸足で玄関を飛び出そうとしたが、鍵が掛かっている。鍵なんか開ければいいのに、パニックってるからドアをガチャガチャやっているだけ。
「俊、待って。」
「う、うわぁぁ〜〜。ごめんなさい。ごめんなさい。」
　怖くて後ろを見ることもできない。もしかしたら、包丁を持って後ろに立っているかもしれない。
「なに、怯えてるの。何もしないから落ち着きなさい。」
「だ、だってぇ〜〜。」
「俊が怒らすようなこというから。怪我はない？大丈夫？」
「えっ？」
　振り返るとユミさんは優しい表情をして立っている。
「ちゃんと謝らなくちゃね。悪いのは私なんだから。」
「はあ？」
　目が点になった。
「俊、ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました。」
「いえ、どういたしまして…。」
　俺は力が抜けた。
「そんなびっくりしたような顔して見ないでよ。恥ずかしいじゃない。」
「…。」言葉もでない。
「今度、私が同じことしたら犯しちゃっていいからね。」

『フォン、フォン。フォ〜〜〜〜ン。』
　カワサキＺ１もいい音をさせている。「犯しちゃっていいからね！！」かぁ。この先、ユミさんが酔って帰ってこないわけないから絶対にやれるよ。
「でもなぁ…。」
　あの時、立たなかったのはなんでだろう。もしかしてインポってことないよなぁ。高校生がインポなんてなるのかなぁ？なんか、心配になってきた…。
「はぁ…。もし、インポになったら自殺しよ…。」
　落胆しながら赤信号で止まっていると、先のバス停のベンチに女子高生が座っているのが目に入った。茶髪で、制服のミニスカートから出ている足がいい感じだ。
「後は、顔かぁ…。」
『フォン、フォン、フォン』
　アクセルをあおって集合管から、いかしたサウンドを鳴らした。その音に気が付いて彼女がこっちを見ている。
「顔の確認ＯＫ！！。めちゃくちゃ、かわいいじゃん。」
　信号が青だ。よし、俺のチンポがインポかどうか試してみますか。俺は、単車をゆっくり走らせ、彼女の前に横付けした。
「ねぇ！！　駅まで乗せてくよ。バスなんかまだ来ないよ。」
　彼女はベンチで足をブラブラさせながら笑っているだけ。近くで見ると、本当に可愛い。少年マンガのグラビアに出てきそうな子だ。
「早く乗れよ。学校遅れんぞ。」
　俺は、自分のヘルメットを脱いで、彼女に放り投げた。彼女も自分のカバンから手を離して上手にヘルメットを受け取る。なぜか彼女は周りを気にしながら俺のほうに近づいてくる。
「もう、いきなり声かけないでよ。恥ずかしいじゃない。」
　そう言いながらも彼女はヘルメットをして後ろにまたがってきた。
「ナンパなんてこんなもんでしょ。俺、俊。お前は？」
「美沙。」
　背中に感じる胸の感触からＤカップはあると見た。俺の腰を締め付ける太腿の感触もすばらしい。俺は、とりあえず駅に向かって単車を走らせた。
「さっき、エンジンの音を聞いたとき、ナンパしてくると思ったんだ。」
「バレバレだった？」
「うん。」
　俺は駅に向かうバス通りから小道へと入った。
「どこ行くの？」
「涼しいところ。」
　左のウインカーを出すとラブホの駐車場に単車を滑り込ませエンジンを止めた。学校に行くと約束したユミさんの顔が頭に浮かんでくる。「ばれない、大丈夫。」俺は心で念じて、ユミさんの顔を頭から追い払った。
「いきなり？」
　ヘルメットを脱ぐなり美沙が騒ぎ出した。
「しょうがないじゃん。俺、夕方からバイトだし。」
「なにそれ？関係ないじゃん。」
「こんな所で騒いでいるとカッコウ悪いし、警察にだって補導されるぞ。」
「補導なんてあり得ない。絶対やだ。」
「だろう、だったら部屋に行くしかないじゃん。」
　彼女の手をとって部屋に向かうが、さほど嫌がる素振りも見せない。部屋のパネルの前で、３，９００円のサービス部屋のボタンを押そうとした瞬間、美沙が６，５００円の部屋のボタンを押した。
「おい！！」
「当然でしょ、これくらい。」

（続く）