ずっと愛してます２
羅衣 作
第48話 新たな男


　新神戸駅、もう人影がまばらとなった夜、東京発下り最終の新幹線が到着した。
　１０数人いる下車客の中に、一般人とは違う輝きを放つ男が１人だけ混じっていた。
　男の名前は、三宅真也（28歳）といい、「会」関東本部が関西支部に送り込んできた男であった。
　彼は若手のファッションデザイナーで、パリで有名デザイナーに認められて自信をつけて帰国したばかりで、そして起業の地を神戸にするべく現れたのだ。
　彼の選択には１人の女性との運命的出会いが関係していた。

　真也にはファッションデザイナーとは全く別の顔があって、幼少から「会」関東本部のスタッフ１人であった。
　彼の父親は有名なホストであり、「会」の活動に深く関わってきた人物であった。
　その父の英才教育の一環で、真也は中学生時代から「会」に深く関わってきた経歴の持ち主であった。
　まさに生まれながらの色事師とは彼のことであった。
　パリジェンヌにも愛された男は、帰国直後から日本のハイソサエティ社会の女性を魅了した。
　歴然とした格差がある「会」において、ハイソサエティへの成り上がりは父の悲願でもあった。
　父の息子に託す熱い思いは強く、真也への英才教育とバックアップは手厚いものであった。

　真也は高校２年生の時ファッションデザイナーになることを志して、父の理解と支援を受けて、迷うことなく高校を中退してパリに留学した。
　彼の家庭は幼少の時から母はおらず父子家庭で父１人息子１人であった。
　真也は、身体ひとつで頑張って、色々ありながらも愛情タップリに自分を育てくれた父を誰より尊敬していた。
　父の思いに応えて、満を持してハイソサエティ社会への一歩を踏み出す地として神戸を選んだのだった。

　父親の英才教育は何事も徹底していた。
　真也は、もともと何事も意欲的で他の子供とは異彩を放つ天才肌の性格と相まって、なにをやっても飛び抜けた才能を発揮していた。
　学業しかり、書道しかり、空手しかり、画才、陶芸しかり、教える者全ての人達に感銘を与えるほどであった。
　小学生時代からずっとダントツの首席であり、彼の高校中退に関しては学校サイドと父親の間で相当揉めたほどであった。
　まさに神童とは彼のことを言うのかもしれない。

　英才教育は色事に関しても徹底して、真也の初体験は１０歳の夏という早さであった。
　以来、父親から徹底して女性の喜ばせ方などを学んでいた。
　肉体的な強化も小学生の高学年から施されていて、陰茎成長サプリ投与と吸引法による増大トレーニングが毎日行われた。
　成長期の少年には効果絶大であり、遺伝学を打ち破る逸物を彼に与えた。
　中学１年生の時には、既に父親を凌ぐ１５㎝級肉棒を誇り、「会」の女性達を魅了し続けていたのだ。
　中学高学年になると１８㎝を越える肉棒となり、林間学校、修学旅行を通して、真也はデカマラ王者の名を欲しいままにした。
　ただの巨根ではなく、女のエキスをタップリ吸い込んだ淫水焼けした鍛え上げられた神棒であった。

　デカマラの噂は同級生女子の間にも広がると、セックスに興味津々な年頃の女の子達は真也に近寄ってくるようになる。
　もともとイケメンで、モテモテであった真也は無敵となった。
　既に女性の扱いに長けた彼は、いささか年上女性に食傷気味だったことも手伝い、同年代の女の子達を片っ端から抱いていった。
　まだまだ耳年増で未熟な女の子達にとって、真也のなにもかもが凄すぎた。
　ほとんどの女の子が真也の信者となり、真也は若く迸る肉欲を満喫していくことになる。
　肉棒育成は初めは違和感を覚えた行為であったが、このハーレムを経て父親の意図を理解して、逆に深く感謝するようになった。

　肉棒育成は父親自身のトラウマとも言うべきコンプレックスから行われた行為であった。
　父親自身の肉棒はいたって平凡で普通サイズであり、決して短小だった訳ではない。
　まだ駆け出しのホストであった頃に父親は、１人の美しい顧客に恋をしてしまった。
　顧客に恋をするなどホストとしては未熟と言わざるを得ないが、若い男に一度芽生えた気持ちはそう簡単に消せるものではなかった。
　その顧客は年上で、２５歳の一流商社のＯＬであった。
　アフターでお供をするうちに、２人は一線を越えて愛し合うようになるまでさほどの年月は必要としなかった。

　結果、彼女は妊娠してしまう。
　結婚と出産を望む彼の意向を受けて、彼女は妊娠の事実を会社に隠蔽するために会社を１年間休職した。
　彼女は結婚に応じず、子供を出産すると子育てもせずに家を飛び出して、会社に復帰すると再びホスト遊びに明け暮れる始末であった。
　挙げ句の果てには、彼の先輩ホストでデカマラで有名な男と深い関係になり、結婚してしまうのだった。
　もともとホスト遊びに明け暮れるヤリマンの女だったとはいえ、デカマラの男に奪われる屈辱は耐えがたいものであった。

　逃げられても愛している女との間に出来た息子、真也だけが彼の生き甲斐となった。
　ひょんなことから「会」に関わるようになると、オンナ達の業の深さに驚きが加わるようになる。
　その結論が、オンナ達にはテクニックに裏打ちされたデカマラが全てに優るというものであった。
　息子、真也を勝ち組にすることが彼の悲願となり、英才教育の一環として肉棒育成は欠かせないものとなったのだった。
　成長期の真也に対して、陰茎成長サプリ投与と吸引法による増大トレーニングは驚くべき効果を発揮して、広告通りの嘘のような成果をもたらした。
　気がつけば、黒人並みのデカさに加えて、日本人ならではの鋼鉄のような硬さを誇る神棒が誕生した。
　真也は高校１年生の時には、既に「会」随一のデカマラ竿師として勇名を馳せたのだ。

　真也がパリから帰国すると待ちかねた女達が群がってきたが、彼は全く相手にしなかった。
　女遊びを極め尽くした彼には、過去の女達は思い出に過ぎず興味をそそられなかったのだ。
　彼の胸の内は、既に１人の美しい女性が住み着いていて、彼女と人生を歩みたいと願っていたのだ。
　父子家庭、特殊な性体験を経て育った真也は、女性の扱い、喜ばせ方は超一流であったが、こと愛情となると欠落した部分があったのは否定できない。
　思えば普通の恋愛経験はなく、即濃厚なセックスが当たり前であった。
　そんな歪んだ真也に男と女のときめくような恋を教えたのが、パリで出会った達木紗弥であった。

　紗弥は真也のそれまでのやり方が全く通じない女であった。
　真也にすれば、初めは久々に出会った若くて美しい日本人女性にすぎなかった。
　ファッション関係でパリに修行に来ている日本人は多いが、彼女のように美形の女性は稀だ。
　彼女はなにか強いコネ、パイプがあるのか、複数の名だたる有名デザイナーの元で学んでいた。
　しかしその仕事ぶりは有名デザイナーの評価も高く、真也自身もうなるものであった。
　次第に真也は紗弥に興味を抱き、自分がいるデザイン事務所を訪れた際にいつも通りにアプローチした。
　パリジェンヌですら、次々と毒牙にかけ、多くのファンを獲得していた真也は、もはや自信満々であった。

　真也の企ては紗弥には全く相手にされず、真也のプライドはズタズタにされてしまう。
　まさに出来る女である紗弥は、年下女性でありながら、真也の未熟な部分を見抜いていたのだ。
　真也にとって初めての挫折を味わった。
　そんな姿は師事していた有名デザイナーにも笑われ、まさにそこが真也のデザインに足りない部分なのだろうとアドバイスされたのだ。
　その時から紗弥を落とすことが真也の目標になっていた。
　そして日に日に紗弥への思いを募らせていく。
　紗弥を見かけると目で追ってしまい、切ない想いが強くなっていく。
　遅すぎた真也の初恋が訪れたのだ。

　紗弥は決して真也に冷たくしたわけではない。
　どちらかというと、パリで成功を掴む可能性の大きい、将来性抜群の若手デザイナーだと好印象を持っていたのだ。
　若く美しい日本人女性である紗弥は、フランスに来てから、ずっと魅力的なフランス人男性から求愛されるのが日常茶飯事で、いささか食傷気味であった。
　紗弥の心の中では凌と徹への想いが生きていて、色事は二の次で、学びがなによりも優先していたのだ。
　それでも真也は魅力的であったが、女は誘えばついてきて自分のものになるという傲慢なニュアンスが彼女の琴線に触れただけだ。
　以来、心許したように見せながら、不意に離れてしまう態度をとり続けたのだった。

　紗弥が最後にセックスしたのは出国前に凌に抱かれた時以来であり、もう１年ほど前の出来事だった。
　もちろん身体の疼きは抑えがたいものはあったが、凌が送ってくれた特製バイブで毎夜慰めつつ、ここまで頑張ってきたのだ。
　正直、そろそろ本物が欲しくなってきたのも事実であり、事情で半年ほど留学期間を延長したこともあり、彼女は彼女でお悩み中だったのだ。
　メールなどで日本での亜紀、郁美達に起きた変化は詳細渡って知っていたので、早く戻って手助けしたいととも考えていた。

　２人の攻防は数ヶ月にわたって続く。
　２人の関係に変化が起きたのは、真也のデザインが認められて賞を彼が受賞した時であった。
　真也は独立してデザイン事務所を立ち上げるチャンスを遂に掴んだのだ。
　受賞のお祝いの席で、紗弥はしたたかにも自身に心引かれている真也の弱みを利用して、自身の野心のために真也に近づいたのだ。
　紗弥は帰国後のビジネスパートナーとして、真也に白羽の矢を当てたのだ。
　恋愛経験が無い真也は、あっさり紗弥の誘いに落ちた。
　一緒に食事できるだけで、天にも登る気持ちで、すっかり紗弥の魅力に夢中になってしまう。
　キスしただけで、満足するようになっていたのだ。

　デートを重ねるにつれて、紗弥の中でも変化が生じる。
　知れば知るほど真也が極上の男だと気がつき、オンナの嗅覚が反応していく。
　一緒に映画を見たり、仕事の合間にお茶する日々が楽しく、真也のことが気になって仕方なくなっていく。
　噂で真也が黒人級のデカマラの持ち主だと知った時から、彼女の貞操は崩壊した。
　真也の帰国が迫る中で、遂に２人は一夜を過ごしてしまう。
　経験豊富の２人は、お互いに最高のセックスを経験して、結婚の約束をしてしまうのだ。
　２人の身体の相性は抜群で、２人とも天にも登る快楽に溺れていった。

　一足先に帰国した真也は、紗弥の誘いに乗って神戸を起業の地に選んだ。
　紗弥は、真也が郁美から話を聞いていた「会」に属している男だとは夢にも思っていなかった。
　「会」関東本部としても、せっかく帰国した有望株が関西支部に移籍するのは当初難色を示したが、やや女性陣に肩入れしすぎる岩永健二への牽制とお目付役として、真也を送り出したのだった。
　帰国して直ぐに紗弥の従姉妹である郁美の存在を知ることになる。
　偶然とはいえ、真也は郁美に興味津々であった。
　今や最愛の人となった紗弥の従姉妹、そしてあの岩永健二の妻であり、「会」関西支部の鍵になる女性だ。
　そしていろいろと難航して遅れていた関西支部設立に纏わる話を聞くと、郁美がキーパーソンであると見抜いたのだ。
　既に真也は勝手に、紗弥が帰国するまでの間のセックスパートナーは彼女しかいないと決めていたのだ。

　真也は待ち合わせている出迎えの車を求め、新神戸駅のロータリーへ歩いて行く。
　ハザードランプを点滅させ停車している日産エルグランドの横に立つ、見覚え男を直ぐに見つけた。
　真也は会釈しつつ、歩み寄る。

真也 「岩永先輩 ご無沙汰しております 真也です」
健二 「おお～元気そうだな それにしても立派になったものだ 見違えたよ」
　　　 「いつ帰国したのかな？ 全く知らなかったから驚いたよ」
真也 「先月末です」
健二 「まだ３週間も経ってないのか それでこっちとはお疲れ様」
真也 「まあ 個人的に志願して来ましたから」
健二 「志願？ それはまた」
郁美 「あなた そんなところで立ち話ばかりして 早くご案内して」
　　　 「祐司さん 待ちくたびれているわ」
健二 「おおそうだった どうぞ」
真也 「ありがとうございます」

　健二はハンドルを握り、車を走らせます。
　なぜか後部座席の最後尾に、郁美と真也は座ってしまいます。
　些細なことだが健二は嫉妬心をかき立てられ、チラチラとバックミラー見てしまう。
　郁美は我妻ながら男好きする女で、容姿も美しくモテすぎるのが心配の種であった。
　健二ほどの男でも、こと妻のことになると心配なのは滑稽であるが、女の業の怖さを知れば知るほど男は不安になるものなのだ。
　ある意味、男女関係は男の方が単純で分かり易い。
　それ比べて女は複雑怪奇な面があり、最愛の人を快楽のために捨ててしまったり、身籠もった子供への愛情で平気で残酷な選択が出来る生き物なのだ。
　健二の場合、もはや妻、郁美の存在なくして成り立たない人生となっており、もはや分身というべきパートナーだ。
　だからこそ、郁美と一緒に過ごすときは最大限の愛情表現を怠らない。
　機会があれば人前でも関係無く、そのたびに「愛してる」と言いながら強く抱きしめる。

真也 「初めまして 貴女が郁美さんですね」
郁美 「うふっ 初めまして 岩永の妻の郁美です よろしくお願いします」
真也 「こちらこそ よろしくお願いします」
　　　 「想像していたとおりの 美しい方ですね」
郁美 「まあ お上手ね」
真也 「紗弥から色々聞いてますよ」
郁美 「あらぁ 困ったわ」
健二 「紗弥？ うん 郁美の従姉妹でパリに行ってる紗弥？」
郁美 「そうよ」
健二 「真也なんで紗弥さんを知っているんだ？ あっ！！」
真也 「はい パリで知り合いました」
健二 「なるほど」
郁美 「ごめんなさい 男性陣には まだ言ってなかったことがあるの」
健二 「なんだ？」
郁美 「彼 真也さん 紗弥と婚約したの」
健二 「へっ？ なにいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ！！」
真也 「えっえぇぇぇ ご存じなかったんですか？」
郁美 「許して あなた」
　　　 「だって 徹と凌が泣くから ギリギリまで隠してたの」
健二 「そんなぁ せめて俺には話して欲しかったよ」
郁美 「だってぇ あなた 悠希口説くのに必死だった癖に」
健二 「・・・・・・・・・・・」
郁美 「もうしないから 許してぇ」
健二 「まあ おめでたい話だからな それにしても真也が」
　　　 「それで 達木さんと会うわけだ」
郁美 「鈍すぎ」
　　　 「真也さん ちょっと緊張されているのね」
真也 「はあ これでも初体験ですから」
健二 「がはぁはぁ 避けては通れない関門ってやつだ」
　　　 「まあ心配することないぞ」
　　　 「達木さんは 若くて美しい新妻貰ってデレデレしているから」
郁美 「その新妻と遊んでいる張本人が！！」
健二 「やばっ もう黙ります」
真也 「あらら 先輩 もう手出してしまったんですか？」
　　　 「相変わらずですね」
健二 「こらっ 真也 余計なこと言うなよ」
真也 「こんなに綺麗な奥さん貰って そろそろ落ち着いたら良いのに」
郁美 「そうよねぇ 真也さん いいこと言うわ」
真也 「今度 郁美さん お食事にも行きませんか」
郁美 「うふっ 紗弥から聞いた通りの人ね」
健二 「おいおい 旦那の前でいきなり誘うか？」
真也 「あれ？ 駄目ですか？」
健二 「駄目じゃないが・・・・・」
真也 「じゃあ良いですよね 郁美さん 今度 手頃な洋食屋さん 連れて行って下さい」
郁美 「分かりましたわ うふっ 紗弥からもいろいろ面倒見てって頼まれていますから」
真也 「理解のある婚約者って良いですよね」
郁美 「そうよね うふふ」
健二 「いやはや こういうことだったのか とほほ」

　健二は、郁美が真也を試食する気満々なのを理解した。
　健二は紗弥が帰国したら２人の時間を作って貰う約束を郁美としており、郁美を止める立場にいなかったからだ。
　ただ真也が予想以上に成長遂げているので、一抹の不安があっただけだった。
　彼の逸物は英才教育で作り上げられた伝説のデカマラであり、オンナを狂わす魔物である。
　健二には愛する郁美を信じることしか出来なかったのだ。

　達木夫妻が新居を構えた東灘区住吉タワーマンション前の国道２号線に車が止まった。
　真也の緊張はピークに達していた。
　いきなり初対面で「娘さんをください」と言わなければならない立場のプレッシャーは大きい。
　見かねた郁美が助け船を出した。

郁美 「真也さん わたしもご一緒するわ 彩佳とも話したいことあるし」
真也 「ありがとうございます 助かります」
　　 　「ところで彩佳さんって ひょっと私の義母になる方ですか？」
郁美 「あっはぁ そうね 随分若い義母ね うふふ」
　　　 「彩佳は わたしの元職場の 同期で同じ歳の子なの」
真也 「えっ？ では紗弥と同じ歳？」
郁美 「そうよ よくご存じで」
真也 「それはそれは羨ましい もっと年上の方だと思い込んでいました」
郁美 「わたしも負けそうな美人だから 目移りしちゃ駄目よ」
真也 「まさかぁ」
郁美 「うちの人は目移りしてるからね うふふ」
真也 「マジですか？」
健二 「逢えば分かる がはぁはぁ」

　真也は郁美に付き沿われて車から降り立ち、深呼吸をしながら高層マンションを見上げた。
　東京ではなかなか見ることが出来ない星が輝く空、そこに向かってそびえる摩天楼が魔物のように感じた。
　真也の人生始まって以来の節目となる儀式の時であった。

つづく
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あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2017年11月18日掲載
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