| ずっと愛してます３ 羅衣 作 |
|---|
| 第10話 亜紀の覚醒 亜紀は産後間もなく１ヶ月経とうとしていたが、体調が思わしくなく自重する日々が続いてた。 先週まで寝たり起きたりを繰り返す有り様であった。 幸いなことに精力旺盛な夫、凌のケアは麻輝が務めてくれて、更に子育ての面でも専属ベテラン保育士を３名も雇って貰って、とても楽をさせて貰っているという自覚はあった。 なんとか今週あたりから日常生活に復帰できた感じであったので、関西支部開幕にホストの妻として出席を果たせたのだ。 やはり郁美達に全て丸投げは避けたいと、多少無理しての参加であった。 もちろん郁美達、凌からは、参加を見送るように強く勧められたが、もともとは自分の決断が発端であるとの思いがあり彼女にも意地があった。 初産で双子の出産は、彼女が思っていた以上に身体への負担が大きかった。 それまでは月経など女性特有の体調では全く苦労知らずであったので、改めて出産という女だけに可能な大事業の重さを思い知った。 佐紀子と涼子がいつもそばに居てくれて、あらゆることを配慮してくれるので、気にしていた体形はだいぶ元通りになりつつあった。 ただスレンダーな肢体ということもあるのだろうが、経産婦の証ともいうべき妊娠線はしっかりと残ってしまった。 もともと肢体の美しさに自信があった亜紀なので、それはそれでショックな出来事であった。 反面、期間限定であろうが、亜紀にとっては初体験の豊かなバストを手に入れた。 ＢカップとＣカップを行ったり来たりする、やや淋しいバストまわりが、今人生初のＥカップ乳と化けていたのだ。 亜紀にとってはコンプレックスであったので、母乳を頑張って授乳に勤しんでいたが、この機会にささやかなバストアップを計画していて専属の医師を３人もつけて貰った程であった。 言葉に出したことはなかったが、郁美達の天然の豊かなバストに憧れる気持ちは強かった。 ソープ嬢時代には、周囲の女の子達が多く豊胸手術でバストアップしていったが、やっぱり天然のマシュマロのような柔らかさは再現出来ないのだ。 レズビアンであるが故に、見かけだけのものでは満足出来なかった。 そんな亜紀にとって授乳時期の期間限定豊胸は一大事であり、期間限定で終わらせるわけにはいかなかった。 栄養学、運動工学、産婦人科医のプロジェクトチームが結成されて、数億円を投じた一大プロジェクトであった。 １年近く我慢していた徹とのひとときを過ごすチャンスであり、亜紀は徹と２人きりとなった時から積極的に誘惑していた。 徹に豊かになったバストを見て欲しかったし、吸って欲しかったのだ。 亜紀がこれほど女丸出しになるのは徹が相手の時だけで、彼の腕の中では子猫ちゃんになってしまうのだ。 夫である凌、健二の時には何処かに意識が残って亜紀としての自我を守ろうとするのだが、徹だけは無防備に純粋に女としての官能に溺れてしまう。 結果、ベットでは亜紀は徹のものであった。 完全に亜紀は徹を信頼しきっており、自身の全てを委ねてしまっていた。 この姿を他の男達が目撃したら、徹に嫉妬したことだろう。 もちろん亜紀は自覚しており、徹とのセックスを他の男達には決して見せることはなかった。 徹も亜紀が自身に寄せている女としての素の部分は特別なものだと理解しており、彼女が秘密にしたいと思っていることなど肌を通して知っていた。 自分だけに託された鍵で、亜紀の心の扉を解錠する特権を独占するつもりであった。 それは健二が得意とする女を我がものにする刻印を上書きし、一新して完全に奪い取ってしまう破壊力を秘めていたのだ。 徹自身には自覚が無く天性の資質であったが、強度レズビアンであった亜紀ですら溶かしてしまう魔法でもあった。 徹の隠れた資質を引きだし純粋に培養して、究極の女殺しに育て上げた郁美の手腕は見事なものであった。 その魅力は女子会全員を惹きつけるだけでなく、張本人の郁美ですら夢中になってしまう超新星となりつつあった。 もっとも影響されたのが、亜紀であった。 亜紀は若くしてお金のために裏社会の住人になったので、普通の女性が経験する甘酸っぱい青春の思い出がなかった。 そもそも男性を好きになることもなくて、身近の美しい同性だけが欲望の捌け口であった。 当然、王子様願望もなく、男性に対しては極めてドライな性格であった。 その亜紀ですら、徹は王子様だと感じていた。 だからこそ、亜紀は夫がいる身でありながら、出産後の初めての男性として徹を選んでしまった。 徹は、ずっと手が出せない存在となっていた亜紀を抱き寄せた瞬間、スイッチが入った。 彼女の背中に沿わしている指先１本１本まで計算された動きで、愛撫していて彼女の淫欲を高めようと画策していた。 亜紀がどういうタッチが好みなのか、どのようにされると乱れてしまうのか、その全てをレコーダーのように記録していて五感を総動員して責めていくのだ。 その繊細さはレズビアン同士のそれを遙かに凌ぐもので、あの杉本玲奈ですら脱帽の女体扱いのテクニック百貨店であった。 体調を考えて控え気味にしていた亜紀の貞操感はたちまち崩壊してしまった。 亜紀は、文字通りあっという間に着ていたものを脱がされてしまい、その手際と素早さに感心してしまう。 そして、なんといっても徹の武器は、真っ白に感じる爽やかな笑顔であった。 なにがあっても、その笑顔で女の警戒心は氷解し信用してしまうのだ。 笑顔のバックボーンには彼の女性に対する敬愛と優しさがあり、陰日向なく女性への賛美者として生き方が滲み出た副産物であった。 察しの良い女達にとっては、それが本物の笑顔と映ってしまうのだ。 まだ大学生にすぎない若者でありながら、神戸では有数の美女である敬子を妻とし、郁美、亜紀達女子会のオンナ達も夢中にさせ、自ら処女を奪って成長させた女子高生達も独り占めして、更に女修行時代に関係を持った女性達も自分のスタッフとして「会」に招き入れる手腕は、岩永健二も脱帽の色事師ぶりであった。 彼のまわりには常に美女の姿が絶えることはなく、若さもあるが、その絶倫ぶりは桁違いのレベルであった。 彼は、淫欲だけでなく、本気で全員の女性達を全力で愛していたのだ。 結果、彼女達から盲目の愛を一身に集める存在となり得たのだった。 出産という生き死に直結する経験を経て傷ついていた亜紀にとって、徹とのキスは深く滲みるものであった。 改めて女として生まれた悦びを再認識させられるものであった。 佐紀子と涼子が一生懸命手伝ってくれて、凌からは愛情をタップリ注いで貰って、外観的疲れは解消して癒されたように見えていたのだが、人生観を一変するほどの経験は女として物心芽生えた頃には親の愛を知らずに育った亜紀の心にポッカリ穴を開けてしまった。 生まれてきた子供達への愛情は人一倍強いのだが、どこか虚無感に包まれている気がして迷走していた。 実は産後での体調の悪さの原因は、この精神的不安定にあったのかもしれない。 亜紀は母親としての知識が欠けているところがあり、出産が女としてのゴールみたいな意識があったので、そのゴールを終えてしまったゆえの虚無感であった。 身近には、それを伝えてくれる存在はおらず、同世代の女性ばかりで途方に暮れている状態であった。 普通ならば母親としての現実、子育ての戦場が、そういったモヤモヤしたものを押し流して成長を促すのだろうが、亜紀は恵まれすぎていた。 常に心を許す佐紀子と涼子、麻輝がそばにいてくれるだけでなく、十数人もの使用人達がいて、大抵のことはやって貰える状態であった。 実際、亜紀の仕事は、赤ちゃん達への授乳だけの有り様であった。 正直、亜紀らしくない、迷走状態といえたが、もともとは意志が強く、勉強熱心で博識な聡明な女性である。 女としての業の深さに困惑していただけであり、意識を立て直すチャンスを探っていたのも事実であった。 女の業を満たすことから再出発できるのだろうが、それを果たすのは並大抵のことでは困難であった。 女の業、それはどこまでも貪欲であり、嫉妬深い、決して満たされることのないブラックホールのような欲望の塊であった。 徹は、そんなドロドロとしたものを笑顔だけで洗い流して、素敵なくちづけで亜紀の心の穴をあっという間に満たしてしまった。 亜紀が、女の業が渇望する存在を具現した男性は徹なんだと確信したのは、この時であった。 生まれたままの姿で抱き合う２人。 見つめ合い目で全てを語り合う２人。 徹は、狂おしくいきり立って硬くなっている肉棒を隠すことなく、亜紀の下半身に押しつけて遠慮なく性交をねだった。 産後の体調が芳しくなくてセックスを控えていると、敬子から聞かされていたが、こうして亜紀を抱きしめてしまうと肉欲が膨れあがってもはや我慢など出来ない。 もう１年ほど、ご無沙汰しており彼女の味と匂いを楽しみたかった。 亜紀は体調が悪いだけでなく、母親となった自制心もあって授乳期間は身を慎まなければと、遠慮していたのだ。 もちろん夫である凌を誰よりも愛してはいるのだが、彼のヘビーなセックスは満腹感が強すぎて、産後はなにかと理由つけて逃げていたのだ。 それなのに身も心も徹を望んでいるのだということを自覚して、戸惑っていた。 正直、これは本気の浮気なのではないかと思ったのだが、真っ直ぐな若い肉欲をぶつけてくる徹が可愛くて仕方ないのも否定が出来なかった。 その亜紀の一瞬の心に響いているブレーキを、徹はいとも簡単に崩してしまう。 徹 「亜紀 やっと やっと」 「二人っきりになれたね」 「僕は ずっと 待っていた 夢見ていた」 「亜紀は僕の大切な人なんだ」 「母親として守らなきゃならないものが」 「大切なものがあるのも 知っているよ」 亜紀 「徹 あなた」 徹 「亜紀の宝物は 僕の宝物」 「一緒に守っていく覚悟はあるし」 「責任 責めは 全て僕だけが背負う」 「それが僕の務め」 「だからこそ 言わずに後悔なんてしたくない」 「愛してる そして 抱きたいんだ 君を」 亜紀 「徹 あん わたしも 愛してるぅ」 徹の言葉には偽りはないと亜紀は思ったし、不義の愛を正々堂々と告白してみせる年下の若い男性の誘いに乗らない手はないと感じたのだ。 女は常に言い訳を欲しがる生き物だ。 徹は誰に教えられた訳でもなく、女に言い訳を口実を与えてくれる天才であった。 一瞬にして亜紀の心のサイドブレーキは下りてしまった。 亜紀の右手は、既に鋼鉄のように硬くなった肉棒を掻いておねだりしていたのだ。 徹は、この瞬間が堪らなく好きであった。 これがあるから女性との虚々実々の駆け引きは、最高に楽しいゲームなのだと感じていた。 特に亜紀は、普段は毅然としたお姉さんであって女子会のリーダー的存在であり、いつも凛として男性に媚びることはほとんどない女性だ。 それが２人きりになってセックスをおねだりすると、別人のように淫乱な女性の顔を見せてくれるのだ。 この隠された顔は、間違いなく自分だけに見せくれていると確信していた。 首筋に唇を這わせながら、亜紀をソファーへ誘った。 徹は久しぶりの肢体を楽しむ気満々であったが、これは彼女の積極性が上回った。 気がついたらソファーに腰を下ろしているのは自分であり、膝を割られて彼女の美しい肢体が蠢いていた。 先程まで楽しんだピンク色の美しい唇が開かれて、若いエネルギーが迸る敏感な部分を含んでいった。 思わず吐息を漏らしてしまう。 耐えられず天を仰いで、目の焦点が遠く合わなくなった。 以前では考えられない亜紀の先制攻撃であった。 口内で脈打つ逞しい肉棒が堪らなく愛おしいものと感じていた。 徹が快楽に負けて無抵抗になった様子が彼女をますます加速させていく。 もう秘部は大洪水であり、自分自身が雌なんだとの実感があった。 亜紀は小学生高学年で既に同性である女性が好きという感情を理解して、中学生時代、高校生時代を通して、お姉様キャラと共にレズビアンとしての性生活を満喫したのだ。 その頃は男性に対しては興味が無く、別の生き物としか思っていなかった。 そんな亜紀を変えたのは、３人の男達であった。 田原 凌、男性に興味が無かった彼女を変えるきっかけを作った、そして彼女が初めて人生を託しても良いと感じた男性であった。 お金の為とはいえ社会の底辺まで落ちた彼女を愚直までに愛して、突き放しても猛烈な勢いで愛を示してくれたのだ。 数年の年月を経て、彼女はあらゆることから彼に守られていたのか思い知らされたのだ。 愛されているという認識は、自分は女という生き物なんだという自覚に繋がり、次第に彼女に我が儘な女特有の業を目覚めさせていくことになる。 そうなると女の冷静な打算が蠢き、不思議と彼を愛する気持ちが膨らんでいく。 まして彼は、男女のセックスには冷めた視点を持つ彼女を圧倒して女のアクメを極めさせた初めての男性だった。 郁美との出会いも、亜紀の多大な影響を与えたのだ。 郁美が純粋なまでに岩永健二に執着して愛し続けている姿は正直カルチャーショックであったが、ある意味それが亜紀に男性を愛することを教えたのだ。 亜紀が凌のちゃんとしたプロポーズを待つ様になった心境の変化のきっかけであった。 その亜紀を動揺させる男に出会ってしまう。 岩永健二、郁美が無償の愛を捧げる男性だ。 出会ったときは、まさかその男性が郁美が追い求めている男性とは夢にも思わず、身体を許してしまう。 そして生まれて初めて身も心も癒されるセックスというものを、身体の芯まで叩き込まれてしまったのだ。 女のアクメの奥深さを思い知らされた経験は、彼女を確実にオンナに変えてしまった。 人生観が天と地がひっくり返った状態であったが、郁美の入れ知恵でプロポーズしてきた凌に引き戻されたのだ。 絶妙のタイミングだった。 それでも頭と心、肢体が一枚岩とはいかず、不協和音はあったのは否定出来ない。 そんな亜紀を、満足させて、ある意味、凌の妻として生きていく決意をさせてくれた若者が現れる。 郁美が育てたと言って良い、そして郁美の恋人であった「山田 徹」である。 彼は、惚れ惚れするくらいの男ぶりをみせる若者であった。 郁美に真っ直ぐの愛をぶつける姿は見ていて気持ちよい程であった。 正直、男性に対しては冷淡で冷めた視点を持つ亜紀と里奈ですら、そんな男性がいる、実在するなんて信じられないイケメンぶりだった。 若くして男の性欲と向き合ってきた女達にとって、徹は幻の王子様そのものであった。 亜紀は、当時は徹という存在に惹かれていたが、同時に身の危険も感じていた。 彼は間違いなく、あの一夜にして亜紀を女にしてしまった健二と同じ資質をもつ若者だ。 そうでなければ郁美をあそこまで夢中にさせる筈がないと考えていたのだ。 だから里奈ほど楽観的に考えられない気持ちが強かったのだが、健二と出会ったがゆえに、そう感じるのと当時に、強烈に惹きつけられてしまった。 肢体の奥に潜んでいた女の業が１度健二によって引っ張り出されてしまうと、もはや封印は不可能であった。 女性という生き物は、結局のところ、男性に愛されてこそ初めて真の幸せを感じるものなんだと人生観を一変させられてしまったのだ。 郁美は、そんな亜紀の変化をお見通しであって、彼女に片意地を張らずに女として気楽に、そして欲張りに生きて欲しいと考えていた。 だから徹の女修行という名目で、亜紀を誘惑して徹とのひとときを設けたのだ。 もちろん徹の素晴らしさと無限の可能性を秘めた恋人を見極めて欲しいと思っていての行動であった。 結果は郁美が期待した通りになり、亜紀は郁美が惚れ惚れするほどのオンナに変化して輝きを増したのだ。 徹は、亜紀に心身の安定をもたらして、彼女がオンナとしての自分、そしてレズビアンとしての自分をバランスよく共存させていくキーマンになったのだ。 面白いことだが、それが亜紀の凌への愛を決定的にした最大の理由であった。 だからオンナとしてスイッチオンになった亜紀は、かつての彼女とは別人のように貪欲で淫乱な雌として顔を見せるようになった。 その欲求は女同士の繊細で深い快楽を知り尽くした彼女だからこそ、求めるものは高度な領域となったのは当然であった。 それに応えられるのは、徹など限られた選ばれた男達しか居なかったのだ。 時には繊細に、時には獣のように激しく、彼女の欲求に全て応えられる存在は、徹だけであった。 徹は言葉は必要とせず、女性の求めるセックスを出来る達人、もはや天才と言って良い王子様だった。 それが女子会全員から愛を一身に集める理由だ。 今は防戦一方で快感に溺れている徹だが、そのうちに逆襲されて１０倍返しされて天空を舞うほどのアクメを極めさせられると、心の何処かで期待している彼女だった。 そして、それは現実化して亜紀はこの後人生で初めて絶叫してしまうのだった。 つづく |
| 【前頁】/【次頁】 |
| あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。 |
羅衣さんの作品集→ |
| 2020年3月21日掲載 |
| Copyright (c) 2020 羅衣 All rights reserved. |