ずっと愛してます３
羅衣 作
第12話　禁断１


　義姉となる元同級生の恋（れん）と結ばれた郁美は、高校卒業以来胸の内に秘めていたモヤモヤが解決して清々しい気持ちであった。
　当時彼女自身は、岩永健二への愛で一杯一杯で、それ以外のことは全て疎かになっていたのは事実であった。
　ましてお嬢様育ちであり、女同士の愛というものが全く理解も意識もしてなかったのだ。

　郁美が女同士の愛に目覚めたのは、亜紀との出会いであった。
　亜紀に出会って、それで初めて彼女自身に潜んでいたものを自覚したことは人生観を一変させるものであったのだ。
　そのお陰で一族の女性が伝統的に受け継いでいる、もうひとつの人格の存在を肯定的に考えられるようになったのだ。

　その変化と共に２つの人格は融合したかのような経過を辿っていて、明確な形での交代劇は少なくなっていたのだった。
　反面、共存していると自覚するほど、特にセックスに関連する行動は大胆さと貪欲さが加速していた。
　受身姿勢が強くＭ的気質の強い郁美、攻撃姿勢が強くＳ的気質の強い「郁美様」と役割が分担されているのだが瞬時にコロコロ変化しながら、いつしかベットでは男を喰らい尽くすオンナに変貌を遂げていた。

　長い人生を謳歌して女という生き物を知り尽くしたと自負していた「５大老」ですら、たちまち魅了してしまった。
　特にゼウスの彼女への執着は誰の目にも明らかであった。
　この変化に気がついて理解してくれたのは亜紀と凌の２人だけであった。

　辺境の名家で続いてきた排他的な近親結婚による濃い血による継承は、数々の忌まわしい資質の土壌となってきた。
　郁美の唯一の気がかりは、共通の悩みを持つ従姉妹の紗弥のことであった。
　亜紀と凌は、紗弥のことも親身に手助けしてくれて、彼女が再出発する機会を与えてくれた。
　一族の女性が忌み嫌って長らく封印してきた資質は、もはや克服できる時がきたのだ。

　郁美の母親は、一族以外から嫁に入った女性であり、一族の血が濃い郁美を本能的に嫌悪して避けたのだ。
　だからこそ未婚の大事な娘が、単身神戸で隠遁暮らしすることも易々と受け入れたのだ。
　紗弥の母親、亜弥子も同じく一族以外から嫁に入った女性であった。
　彼女は、対照的に、同じく一族の血が濃い末娘の紗弥と共に、郁美をとても可愛がってくれた。
　親族では一番の理解者であった亜弥子の存在は、紗弥と郁美にとって大切なものであった。
　特に家族の中で孤立しがちだった郁美を、紗弥と共に愛情で包んだ影響は小さいものでは無かった。
　２人が愛情豊かな美しい娘に成長したのは、全て亜弥子の功績であった。

　郁美は、神戸に移り住むことにより、亜弥子の庇護が受けられなることが一番不安であった。
　しばらくは迷走して荒んだ生活を送っていたが、亜紀との出会いが彼女を救ったのだ。
　郁美が去った後の地元では、その亜弥子が急逝することになる。
　結果、最愛の母親を失った紗弥が、頼るべき人が不在で窮地に立たされていくことになる。

　一番頼りたい従姉妹である郁美の所在は不明で、更に本来は唯一の頼りである筈の父親、祐司が自暴自棄になって目が離せない状態であった。
　２人の姉達は自らに流れる血を忌み嫌って、実家に寄りつこうともしなかった。
　紗弥は、就職で神戸に出てきてしまっていたので、実家にただ１人残された父親のことが心配で気が気でなかった。
　父親をなんとしても立ち直りさせたい彼女は、祐司に自分のところに生活の拠点を移すように勧めることになる。
　迷走する祐司は、末娘の紗弥に縋り付いてしまう。
　
　もともと毎日何回も情交を交わす、いわゆるお盛んな夫婦生活を送っていた祐司と亜弥子であったから、そのパートナーを失った祐司の肉欲は日に日に膨れあがっていたのだ。
　社会人になって成長した末娘、紗弥は、母親、亜弥子によく似た美しい娘に成長を遂げていて、親子の情が男と女の情と見分けがつきがたい状態に陥る。
　故郷から遠く離れた地で２人きりであり、周囲に障害がなにも無かったから、２人は、禁断の領域に踏み込んで近親相姦の深淵に墜ちてしまう。
　２人には一族の呪われた血が流れており、近親間の情交が現実として存在していた環境であったので、一般より抵抗感が少なかったこともあったのだ。

　２人の禁断の関係は郁美との再会がきっかけとなり終焉の時を迎えるが、今度は郁美が加わって叔父と姪の近親相姦と変質していくことになる。
　今でこそ郁美の親友である彩佳が祐司の後妻、新妻となったので事態は収束の方向であったが、郁美と祐司の関係は公認されて定期的な愛瀬は続いていたのだ。
　代わりに彩佳は自由に健二や徹ともデートを楽しむなど、近親相姦などを内包しながら郁美を中心とした女子会の男共有ネットワークは日に日に過激さを増していった。



　昨晩からゼウスに夜通し愛されて、続けて夫、健二と愛を確かめ合って、更に休まず再会した義姉となる恋と女同士睦み合ったのだ。
　さすがの郁美も、疲労でグッタリであった。
　敬子と徹のことが心配であったが、もはや限界であった。
　使われていないベットルームに忍び込むと、なにも言わずベットに倒れ込んだ。
　洗いたてのシーツからの柔軟仕上げ剤の香りが心地よく、あっという間に睡魔に襲われて意識を閉ざしていった。

「わたし　前　ひとりで寝たのって」
「いつだっけ？。。。。。。。。いつも健二」
「・・・・・・・・・・・」

　

　郁美が「関西支部　第１回特別な集い　開幕の儀」の喧騒から逃れて、睡眠を貪っていた５時間ほどの間に、フィナーレ目玉とされていた「九州地区会員選抜男性陣ＶＳ名古屋嬢代表Ｎｏ．１美女輪姦ショー」に手違いが生じて、健二を代表とするスタッフ陣は大騒ぎとなっていた。
　予定されていた名古屋嬢代表Ｎｏ．１美女こと、テレビなど活躍する若手女優が深酒で酩酊する状態となったのだ。

　とてもイベントに参加する状態でないので代役を立てる必要があったが、血気盛んな九州男子５人相手の輪姦ショーに対処出来る女性はそうそう見つかるものではものではないからだ。
　主旨が関西支部設立に際して、関西支部下部組織となる九州地区と、関東本部下部組織の中京地区名古屋との親睦を深めようというものであった。

　健二としては、多少の予定変更でも関西支部の女性陣なら目の肥えた「会」の人々も満足してくれると打算があったが、如何せん人材が底をついていた。
　全国区の美帆、麻輝は対象外であったのに加えて、関西支部の主要女性スタッフは５大老の付き添いなどにあたっていて、体調的な理由で無理な亜紀、紗弥などを外していくと、進行役で頑張っている葵とオープニングで活躍した敬子しかいなかった。
　悠希もゼウスに捕らえられて、とても抜け出せそうもなかった。

　健二は、改めて彩佳が欠席、紗弥が無理なのが痛かったと後悔していた。
　初めと終わりが同じ女性では形がつかないので敬子には頼めないし、配膳など切り盛りしている葵を外すわけにいかない。
　そもそも５大老全員、更にご隠居のご老体方々も全員参加と、関東本部ですらほぼ無いスケールの会となってしまい、女性スタッフが全く足りない事態となり、想定外としか言えない有り様であった。

　健二の頭の片隅には、愛妻、郁美が浮かんでいたが、ある理由で意図的に避けていた。
　ここ数週間、郁美は休み無く動き回ってくれて、もはや限界であり、休ませたいという思いが強かった。
　そして一番の懸念が、九州地区会員選抜男性陣のリーダーは、郁美の実兄である達也なのだ。
　近親相姦させることになるし、なにより達也が秘めている実妹、郁美に対するどす黒い欲望を見抜いているだけに避けたいとの思いが先に立っていた。

　達也が「会」で最も注目されている若手男性であり、そのセックスは女を狂わせると話題の人物であった。
　実際、ゼウスが褒めたという逸話があるほどだと知っていただけに、馬鹿げたことだが郁美を奪われると危険視した存在だった。
　近親相姦の背徳感に潜むポテンシャルは、常識では計れないと考えていたのだ。

　オープニングショーをこなした敬子は、なにかに目覚めたのか、全てにノリノリで今回もピンチヒッターで登板する気満々であった。
　こういう時に自然と敬子を諌めてくれる亜紀と悠希がその場にいないので、健二は必死で宥める羽目に陥っていた。
　口を尖らさせて、じゃあ誰が出れるんだと、反論して健二を責めたててくる。
　閉口していたところに麻輝がやってきて、うまい具合に敬子を諌めてくれたので救われた。
　すると、それまでは他人事のようにして横に座っていた美帆が健二の耳元で囁いたのだ。

美帆　「郁美さん　奥様の出番だと思うけど」
　　　「そんなに　彼女のこと　妬けるわ」
　　　「でも　彼女のこと　侮っちゃ駄目よ」
　　　「そんなこと分かっているって」
　　　「言いたげな顔してるけど」
　　　「本当の彼女は」
健二　「うぅぅぅん　参ったな　分かっているんだが」
　　　「そう　恐らく　ここは郁美しかいないって」
　　　「分かっているんだ」
麻輝　「もう健二ったら　妬けるわ」
健二　「すまん　俺は郁美を」
　　　「誰より彼女を愛しているんだ」
美帆　「まあ　そうもヌケヌケと言うなんて　悔しい」





　郁美は夢を見ていた。

　それは郁美がまだ幼稚園年長組の頃のものであった。
　既におませな女ぶりを発揮して、周囲の男達を惑わしていた幼女時代のとある日。
　幼稚園から豪邸の広い自宅に帰ってきた彼女は、自室の扉が半開きになっていることに気がついて不審に思った。
　子供ながら不審な気配を感じて、恐る恐る忍び足で自室を覗いたのだ。
　彼女のお気に入り、真っ白の天蓋付きお姫様ベットに人影があり、恐怖を感じて動揺していた。
　危険を感じた彼女は使用人を呼ぼうかと考えた途端、その人影は７歳年上の大好きな兄だと気がついたのだ。

　咄嗟にあげようとしていた声を飲み込んだ。
　兄はなにをしているのだろうと思ったが、本能的に声をかけてはいけないと思ったのだ。
　幼女であったが、もう既に男性が女性に向ける不思議な感情を察知していたので、兄はなにか変な行動をしていると察したのだ。
　すると好奇心が強くなり、一歩前に出て兄の様子を伺おうと行動に出る。
　自分の部屋なのに、覗き見る感覚が不思議であった。
　レース越しになので見づらいが、目をこらすと兄が彼女の枕に顔から倒れ込んでいるのが分かった。
　そして股間のあたりで、右手を動かしているのだ。

　まだ幼女であり男性の性などは知らない頃であって、それがなにを示しているかなどは理解は出来なかった。
　でも女のカンで、それがなにかしら嫌らしいものだとは理解していたのだ。
　経験したことがない驚きが彼女を包んだ。
　そしてこの情景を自分が見たことを兄に知られてはいけないと思ったのだ。
　大好きな兄を傷つけてしまうと、なぜそう思ったのかなど、本人でも分からない。

　彼女は、そっとその場を離れようとするが、唐突に使用人が自分を呼び探す声が聞こえてきて、全身をビクッとさせて驚いた。

　その瞬間、ふっと夢から解放されて、現実に引き戻されて微睡みの中を彷徨っていた。
　そして彼女を呼ぶ声がしたのだ。

敬子　「お姉ちゃん！！　お姉ちゃん　一大事」
　　　「起きてぇ！！」
　　　「疲れているとこ悪いけど」
　　　「健二さんピンチ！！」
郁美　「はぁう。。。。。。。。。。。。。。？？」
敬子　「お姉ちゃん　しっかりして」
郁美　「えっ？　今何時？」
敬子　「もうすぐ６時だよ」
郁美　「ゲェゲェゲゲ！！　マジですか！！」
　　　「寝過ごしたぁ」
敬子　「しょうがないよ」
　　　「お姉ちゃん　忙しかったから」
　　　「みんなで　起こさないようにしようって」
郁美　「あらら　みんなに負担かけちゃったね」
　　　「ヤバイ　みんなに謝らなくちゃ」
敬子　「そんなことより　一大事」
郁美　「なに？」
敬子　「フィナーレに出るはずだった」
　　　「女優さんがダウンしちゃったの」
郁美　「えっ　なんで　し過ぎ？」
敬子　「あはぁっ　違うよ　お酒飲み過ぎ」
郁美　「うふっ　わたしと違うか！！」
敬子　「もう　呑気な　それで健二さんピンチ」
郁美　「ごめん　そうだね」
　　　「確かに　人いないもんね」
　　　「わたし　サボりすぎぃ」
　　　「分かった　わたしが出るって」
　　　「健二さんに伝えて」
　　　「ちょっと　今からシャワー浴びるから」
敬子　「お姉ちゃん　大丈夫？」
郁美　「復活しました！！　なんちゃって」
敬子　「でも相手の人達って　九州の」
郁美　「あはぁ　そこかぁ　イイのよ　それは」
　　　「いつか兄とは　結ばれるって」
　　　「思っていたから」
敬子　「えっえぇぇぇ　それって」
郁美　「敬ちゃんには　まだ分かんないかぁ」
敬子　「だって　モロ近親相姦だよ」
　　　「そんなの　わたし」
郁美　「確かに　まだ　敬ちゃんに話してないこと」
　　　「たくさんあったね」
　　　「今度　全て教えてあげる　ごめんね」
　　　「健二さんを　選んだときに」
　　　「覚悟できていたの」
　　　「これが　わたしの選んだ道なの」
　　　「そして　逃げれないの」
　　　「それに急な予定変更だけど」
　　　「近親相姦ショーって告知すれば」
　　　「会場の人は満足するはず」
敬子　「そんなことが」
郁美　「あるの」
　　　「健二さんの言葉借りて言えば」
　　　「Ｓ級性調教師に抜擢された実力を」
　　　「示すチャンスなの」

　敬子は自分自身で郁美を起こしながら、彼女の選択に半信半疑であった。
　それでも彼女からの伝言を健二に急ぎ伝えたのだ。
　その時の健二の表情で、２人の信頼関係の大きさを改めて思い知らされたのだ。
　むしろ、そばに居た麻輝と美帆が驚く様子に、やっぱり郁美の行動は凄いことなのだと知ったのだ。
　そして自分は、そもそも郁美を起こしに行ったのかという矛盾に気がついたのだ。

「わたし　こうなるって分かっていたのに」
「それなのに」
「このドキドキは　なんなの？」



　郁美は頭から熱いシャワーを浴びて、これから自分がしようとしていることについての常識的な忌避感を洗い流していた。
　達也は実兄であり、叔父の祐司の時以上に違和感が強いのは事実であった。
　彼女の中で達也は、今でも最愛の兄であり、いつも彼女の味方をしてくれる兄であった。
　旧家で裕福であったゆえ、やっかみで苛められることも少なくなかった子供時代でも、兄は妹を毅然と守り通してくれた。
　しかし彼女が初めて異性と意識したのも、他ならぬ兄達也であった。
　きっかけは、兄が自分を異性として意識していると知った幼児期の体験であった。
　あの時は何事もなくやり過ごしたが、兄は自分を異性として意識している、愛しているんだという事実は衝撃であった。

　あれ以来、郁美はその事実から目を背けた。
　全て知らなかったことにして、その事については一切考えないようにして、可愛い妹を演じきったのだ。
　もし明らかにしたり、兄の気持ちに応えたりしたら、家族が崩壊すると本能的に理解していたのだ。
　それでも彼女は孤独でなかったのは、従姉妹である紗弥とその母親の亜弥子の存在であった。

　特に同じ忌まわしい血を濃く受け継いでいる紗弥の存在は大きかった。
　そんな中で、紗弥の父親であり、叔父でもある祐司が彼女へ性的欲望を向けてきたことについて不思議と嫌悪感はなかった。
　それが自分に流れる血につきまとう運命なのだと理解し、真正面から受け入れることが出来るようになりつつあったのだ。
　それを人は成長と言うのだろう。

　だからこそ達也と紗弥の許婚という約束が一族で話題になった時も、彼女は違和感を感じなかった理由でもあった。
　従兄妹という関係で結婚するということが、一族では頻繁に行われていることでもあったので、ますます受け入れてしまう土壌となったのも否定出来ない。
　しかし紗弥は公然と違和感を唱えて、一族の風習に逆らったのだ。
　その行動を見た郁美も、それが普通の感覚だし、家同士が勝手に決めてしまう結婚というものが普通ではないのだと、初めて客観的に意識して知ったのだ。

　それは価値観の根幹を揺るがすものであったが、まさに多感な高校生時代の出来事であったからこそ、柔軟に乗り越えることが出来たのだ。
　そして自然と視野を広げることに繋がって、彼女の一生全てを変えてしまう男性に出会い、愛を貫くことになるのだった。

　汚れきった身体を洗い流すことによって、自身が内に秘めている淫欲か底無しなんだと改めて実感していた。
　リフレッシュした肢体には、更なる快楽享受への欲望が満ちていくのが分かるほどであった。
　１７歳で処女を健二に捧げてから８年間の間に、もはや数え切れない数の男性とセックスを経験したが、その肢体の美しさは全く損なわれていなかった。
　初めの頃は秘部やバストまわりが黒く変色するのではないかと心配になったものだが、今でもどちらも美しい桜色を保っていて、ちょっとした自慢でもあったほどであった。
　特に徹と出会ってからの心身共に充実した日々が、彼女の美しさに磨きをかけていた。
　ウエストまわりもグット引き締まり、バストもきゅと持ち上がり、更にボリュームアップしてＥカップと理想的なサイズに成長していたのだ。

　男女問わず大人気の肢体持つ女性が、郁美であった。
　その影響力は、もはや夫となった健二でも想像できないレベルに達していた。
　あの５大老全員が、もはやベットでは彼女とのピロートークに夢中であった。
　５大老にとっては、郁美はひ孫と言って良い年齢の若い女性であった。
　その彼女とのセックスは彼らにとってはもはや極楽浄土であり、ベットの淫乱さは彼らが知る女性の中ではダントツの存在であった。

　ミイラ取りがミイラになったようなもので、彼らは自らの権力で彼女とのセックスを楽しんでいると勘違いしていたが、既に主導権は彼女にあったのだ。
　その証拠が、前例無視のＳ級性調教師抜擢であった。
　これは彼女の上位者は、もはや自分達５大老しかいないという伝統無視ともいえる抜擢であった。

　彼女の美しさを誰より実感していたのは、まだ１７歳の現役女子高生の環であった。
　１０代真っ直中の彼女ですら脱帽の肌の美しさで、シャワーでの水弾きも彼女に全く劣らないパワフルな肢体であった。
　環自身もモデル並みの肢体を有しており、今では神戸では知らない人はいないほどの新体操のエースだ。
　その同性の彼女ですら、郁美の肢体の魅力には圧倒されていたのだ。
　身長はむしろ小さくて一見目立たないタイプでありながら、まさにダイナマイトコンパクトグラマーの化身であった。

　全身から湯気を立てながら、バスタオルを身にまとった彼女が浴室から出ているだけで、殺風景なベットルームが一転艶やかな雰囲気に包まれていった。

　ショートカットの髪をタオルドライしながら鏡を見つめる彼女には、数年前までにはあった、どことなく頼りなさげな迷うような雰囲気は一切存在せず、凛とした強いオンナに成長した姿があったのだ。

「達也兄さん　今日からわたし達は」
「あの日あの時から　やり直すのよ」


つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2020年4月4日掲載
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