ずっと愛してます３
羅衣 作
第25話　蜃気楼の正体

　徹の胸騒ぎは第５章に突入し、赤く太い蝋燭にたなびく妖しい炎と共に蜃気楼となって揺れていた。


葵　　「皆様　遅くなりましたぁ」
七海　「遅くなりました」
絢音　「うわぁ　盛り上がっているようですね」
優月　「これがＳＭ・・・」
美羽　「遅くなりました」
　　　「こんな造りになっているんですね」
健二　「こらぁっ！！　みんな遅いじゃないか！！」
葵　　「申し訳ありません」
　　　「定例会の打ち合わせが長引いてしまって」
健二　「そうなのか？　また　なにかあったのか？」
葵　　「はい　ゼウス様からご要望が・・・」
健二　「どわぁ　またですか・・・」
　　　「師匠の我が儘も困ったな」
　　　「葵　苦労かけて済まない　いつも助かるよ」
葵　　「うふっ　お任せ下さい」
里奈　「まあ　お二人って」
　　　「郁美に怒られないように気をつけてね」
　　　「うふふ」
健二　「えっ・・・・・脅かさないで下さい」
葵　　「そっ　そうですね」
　　　「郁美さんとは　よく話しておきます」
里奈　「うふっ　まあ　それはそうとして」
　　　「皆さんも早く着替えて合流しないと」
葵　　「あっ　そうですね」
　　　「では　いったん失礼します」
　　　「皆さん　急ぎましょう」


智久　「うおぉぉぉ皆さんひょっとしてボンテージ？」
真也　「まあ　そうかと」
徹　　「うおぉぉぉぉぉぉぉぉドキドキするぅ」
祐司　「いかん　ますます興奮してきたぞ」
凌　　「ですな」
徹　　「こんな日がくるなんて」
健二　「こんな豪華なＳＭ倶楽部は」
　　　「どこにも無いでしょうな」
　　　「あはぁはぁ」
凌　　「正直　ヤバイよ」
真也　「皆さん　申し訳ない」
　　　「ホントなら　うちの紗弥も」
凌　　「そうだぞ　紗弥ちゃんも似合うだろうな」
徹　　「同感ですぅ」
凌　　「おっと　そうだ！！」
　　　「今から写真屋を呼ぶぞ！！」
　　　「パネルを作りたい！！」
　　　「うん　健二君　いいな！！」
健二　「えっ！！　パネルですか！！」
　　　「それは良いアイディアですが」
　　　「店には飾れませんが」
凌　　「当たり前だ！！」
　　　「我ら旦那専用の秘蔵アルバムを作るのだ」
　　　「題して　愛しの我妻達だ！！」
祐司　「素晴らしいアイディアです」
　　　「予算参加します」
　　　「じゃんじゃん投資しましょう♪♪」
凌　　「よし　それでは」
　　　「俺と祐司さんで　予算組みましょう」
　　　「若手の諸君は　出世払いで　がはぁはぁ」
徹　　「ありがとうございます」
　　　「めちゃくちゃ　楽しみです」
智久　「凄すぎます　一生懸命働きますぅ」
健二　「それでは　私は編集頑張らさせて頂きます」
凌　　「うん　任せた　予算上限は気にするな」
　　　「超豪華本にするのだ」
真也　「是非　後から追加できるアルバム形式に」
祐司　「そうだな　紗弥を加えて」
　　　「おかないと　後悔するばい」
智久　「凄いのが出来そうですね」
凌　　「これを機に　男子会を結成し」
　　　「会員証は　その豪華本とするのだ」
健二　「それは凄いですね」
　　　「確かに　我々は　今劣勢です」
凌　　「男子のパワーの源が　豪華本に」
里奈　「・・・・・・・・・もう子供なんだから」
凌　　「心配するな　里奈ちゃんも加えるからな」
徹　　「絶対外せません」
里奈　「いや　そういう意味では　もう」
祐司　「聞いてますよ」
　　　「凌さんと楽しんだそうじゃないですか？」
健二　「そうですよ」
　　　「我々の気持ちは分かっているはず」
徹　　「皆さん　駄目です　里奈さんは」
凌　　「おい　独り占めはイカン」
真也　「それは確かに　そうですね」
智久　「でも　今は皆さん控えましょう」
　　　「彼女は妊婦さんですよ」
徹　　「そうです」
　　　「麻輝さんも言ったように　我慢しましょう」

　徹は、智久の言葉に押されて、必死で里奈を庇い男達の間に立ちはだかった。
　いきり立ち男達は、「そりゃそうだろう　彼女をお前がほぼ独占しいるのだから」と言いたかったが、彼らのプライドが言葉にすることを躊躇わせた。
　それは年少の若者への敗北を認めるようなものだったからだ。

　彼らほどの男達にとっても、徹は羨ましいほどの才能と容姿に恵まれた若者であった。
　多くのオンナ達の愛情を受けて、彼は日々成長して、今では眩しいほどのイケメンに成長していた。
　そしてなにより彼らが嫉妬したのが、彼の成長の影には郁美の存在が見え隠れしていたからだ。
　今では彼らのアイドルと言って良い敬子に相応しい男に成長遂げているのを認めるしか無いレベルであった。


　智久は、この行動に感心していた。
　まだ学生にすぎない彼が、数多くの企業を従える凌、祐司、そして師匠たる健二、先輩真也という相手に、１人の女性のために怯まず行動が出来るのだ。
　智久は、佐紀子の為に同じような行動が出来るのだろうかと、自問自答する。
　今では智久が務める弁護士事務所の筆頭大株主である凌は、絶対的な存在であった。
　社会的地位が人間関係そのものに色濃く反映してしまう男同士と違い、女性陣は男性陣に対しては制約無しに振る舞う。

　妻である佐紀子も凌からは可愛がられていて、彼の家で働く使用人でありながら友人のような関係を成立させていた。
　そもそも自分自身が男女関係、夫婦関係が入り乱れた環境に身を置いていることが信じられなかった。
　あの一夜で郁美と過ちを犯してからというもの、全ての歯車が狂ってしまったような気がする。
　それまで信じていた貞操感、道徳観が虚しいものに思えてきて、美しい女性陣の誘惑に溺れていく一方であった。


　里奈は、興奮する男達の中で唯一女性であったので、妊婦ゆえに恐怖を感じていないといったら嘘になる。
　そんな中で、徹が守ってくる姿にキュンとしていた。
　もともと徹に恋していた彼女は、この瞬間、心の全てを徹に持って行かれてしまった。
　気がつけば、彼の背中に縋っていた。
　里奈も、彼らが乱暴なことをする男達とは思っていなかったが、女の本能として身を守りたいという無意識の行動をしてしまうのは致し方ない。
　徹の鍛え上げられた背中が、年上の女の自尊心を満たすには十分すぎる広さがあったのだ。
　郁美が見つけて育てた若者はイケメン過ぎると思いながら、もはや彼女の心の全ては彼のものに占拠されていたのだった。


　健二は、そんな弟子を羨望の眼差しで見つめていた。
　この若者は郁美と出会って、秘められた才能の全て開花させて、オンナ達の理想を体現する存在として成長したのだ。
　里奈を庇う姿が、自身が麻輝と美帆を庇って数々の修羅場を乗り越えてきた経験と重なる。
　この若者は、この若さで、オンナ達に愛される資格を持っているのだ。
　若者が一番愛する女性は、向こうでラブリー感満載で小悪魔として里奈の夫をいたぶって楽しんでいる健二の愛妻、郁美なのだ。
　彼女は、健二にとって完璧な妻であった。
　料理もプロ級、家事も完璧、ベットでも絶品、「会」パートナーとしても達人であり、もはや「会」では一番注目を集める存在であった。
　それは彼自身の名声を高めることに繋がったのだ。
　「会」において極端に彼女が目立つ行動をするのは、彼女が敬愛する亜紀、里奈、紗弥達に降りかかる負担を遅らそうとする意図が有るのは明らかであった。
　彼女の意図に、敬子と麻輝、美帆も賛同して、関西支部は開設早々盛り上がっていた。
　その彼女達の中心にいる男こそ、徹であった。


　凌は、徹に対しては少なからず嫉妬心があった。
　今でこそ、お盛んとなった亜紀との夫婦関係であったが、妊娠出産前の彼女は淡白の一言であった。
　そんな彼女が唯一積極的な関係が徹とのひとときであった。
　凌が他の女性との関係を許す代わりに、彼女は彼との関係に走ったのだ。
　人並み以上にセックスに自信がある彼は、正直ショックであった。
　彼は、心の隙間を郁美にすっかり埋められてしまったので、表面上は心の動揺を出すことはなかった。
　それほど郁美とのセックスは麻薬のような天国であった。
　その郁美に筆下ろしして貰った彼は、彼女の愛情も、亜紀の愛も、そして次に彼が心を奪われた敬子の愛も、独り占めしていたのだ。
　その上に、里奈まで、という思いがあり悔しかったのだ。


　真也は、徹の行動に感銘を受けていた。
　自分自身に足りないものを見たような気がしていた。
　紗弥に出会って初めて女性を愛する楽しさと素晴らしさを知ったのだが、未だ不器用な形でしか愛を表現できない自分に歯がゆい思いをしていた。
　そう思うようになったのは、帰国して紗弥の紹介で郁美と出会ってからであった。
　初めての彼女が出来て浮かれていたというのものあるが、紗弥の従姉妹である郁美は彼が知っている女性の枠を越えた存在であった。

　そもそも郁美に出会って初めて、紗弥の価値に気がついたほどであった。
　紗弥は真也が初めて惚れた女であったが、彼女の可能性、秘められた才能などには気がついていなかったのだった。
　今となって考えると、だからこそ彼が強く心惹かれたのだろうが、初めて自分の女にしたいと躍起になって追いかけることに必死で打算もなにもなかった。
　年下なのに先輩の妻、郁美に全く歯が立たずに、彼は駆け出しの若者扱いであった。

　真也は、初めは従姉妹との浮気を推奨する紗弥の意図が理解出来なかったが、健二先輩ですら妻を未だに追いかけていることを知ったときの衝撃は小さいものでは無かった。
　健二の側近中の側近であった麻輝と美帆も、郁美を認めていて、いつしか同志としての連帯を日毎に強めているのが、第三者の目でも畏敬の念を抱かずにはいられなかった。
　郁美は、亜紀と里奈という先輩がいて、男達の策謀など入り込む余地などなかったのだ。
　彼女達が核となった女子会は「会」の長老達を脅かすのではと気がついた時点で、彼は任務放棄した。
　紗弥と郁美を守りたいという気持ちが芽生えた時点で彼は調略されてしまったのだ。
　今思えば、郁美を動かしたのは健二であったのではと感じるが、もはやどうでも良いことであった。
　それより郁美が育てたという徹の存在に興味津々であった。
　紗弥も再三にわたって彼への思いを熱く語るし、実は徹は真也にとって直接的ライバルであった。

　徹の里奈を守ろうとする行動に、微塵もわざとらしい部分が感じられず、自然に女性を守りたいとする行動であった。
　彼女も実に自然に彼の庇護の元に身を寄せた。
　いくら肉体関係があるとはいえ、こうも自然に家族以外の女性を堂々と守る行動が出来る男がどれほど居るであろう。
　真也は、里奈のお腹にいる子の父親が、まさか徹だとは夢にも思わなかった。
　この秘密は亜紀と郁美だけしか知り得ない、男達は誰１人として想像もしないものであった。
　後輩と思っていた若者から学ばなければならないことが多いことに、この時ほど思い知った瞬間はなかった。


　場の雰囲気が気まずくなったので、徹は里奈を伴って部屋から退出した。
　里奈も気まずかったのか、無言で彼の左腕に縋って付き従っていたので別室で２人で過ごそうと考えていた。
　とはいえイベントを見過ごすわけにはいかないので、佐紀子から教えて貰ったスタッフモニタールームに行くことにした。

徹　　「里奈さんモニタールームで続き見ましょうね」
里奈　「ありがとう」
徹　　「えっ　気にしないで下さい」
里奈　「わたしのために　ごめんね」
徹　　「大丈夫ですよ　全く問題有りません」
　　　「お陰で　堂々と里奈さん独り占めチャンス」
　　　「あはぁっ」
里奈　「あっ　あなたって人は　うふっ」
徹　　「ずっと淋しかったんです」
　　　「郁美忙しいし　亜紀さんも今は大変だし」
里奈　「ごめんね　わたし　自分のことばかり」
徹　　「いいんです　もうちょっとの我慢ですよね」
里奈　「敬ちゃんと　ひょっとして」
　　　「上手くいってないの？」
徹　　「どうなんでしょう・・・・・」
　　　「すれ違ってばかりかも」
　　　「お互い」
　　　「愛し合っているのは分かっているんだけど」
　　　「でも敬子は悪くないんです」
　　　「僕がしっかりしていないから」
　　　「なんだかんだ　外ではお互い色々してるけど」
　　　「敬子は家では真っ直ぐ」
　　　「僕を見てくれているんです」
　　　「僕は　駄目なんです」
　　　「家でも　里奈さん　亜紀さん」
　　　「郁美のこと考えたりしてる」
里奈　「徹　あなた　そうよね　ごめん」
　　　「わたし達が　イケナイのだわ」
　　　「今度　わたし　敬ちゃんと」
　　　「そのあたり話してみる」
徹　　「うぅぅぅん」
　　　「でも僕が話さないと　敬子怒るかも・・・」
　　　「だから　もうちょっと待って下さい」
里奈　「ずいぶん大人になったね　わたし嬉しいわ」
徹　　「そうなんでしょうか・・・・・・・」

　思わず唇を重ねてしまう２人。

　その２人の背景では、里奈の夫である西川義則を恍惚の表情を浮かべて鞭打つ徹の妻である敬子が４０インチ液晶テレビモニターに映し出されていた。

　夫婦の形も十人十色ではあるが、このかみ合わせの悪さは極端なケースとも言える。



　女性陣がＳＭ入門編としてＳ嬢気分を味わうというイベントであったが、葵達が合流したことにより、十人を超える女達がボンテージファッションに身を包み集まれば、集団心理でプレイは意図しない方向に過激化していった。

　本来であれば経験者の麻輝と美帆がブレーキ役となって対処しないといけない場面であったが、女帝に目覚めた亜紀と鞭の天才と化した敬子の２人に圧倒されて主導権が手中になかった。
　本来なら激痛に見舞われる鞭打ちでも、勃起して我慢汁垂れ流す生け贄の存在が女達を麻痺させたこともあるだろう。
　悠希も佳菜子も、葵達からボンテージ姿について讃えられてすっかり有頂天になっていて生け贄のことなど眼中になかった。

　葵達も、初めて身に付けたボンテージファッションに酔いしれていた。
　彼女達は、自分自身でも知らなかった自身の肢体の魅力にウットリしてしまっていた。
　全員が今回夫達が仕事の都合で参加できなかったことが残念であった。
　彼女達は、いずれも「会」に参加してから複数の男性と関係を持つようになったのだが、それは彼女達を確実に生まれ変わらせつつあった。
　まず自身の肢体について自信を深めて、その魅力のアピールに躊躇いが無くなった。
　そして男性へのフェロモン誘因にも、積極性が顕著となりつつあった。
　結果、彼女達が街を歩けば、多くの男性が妖艶な人妻だなと振り返ってしまう様になっていたのだ。


　敬子は、人を鞭打つという禁断の悦びに目覚めてしまい、アブノーマルな背筋がゾクゾクする快感に夢中になっていた。
　究極のサディズムという魔の感覚というものは、人間の本質に迫る性質ものであるので、彼女のように普通に生まれ育った女性であればあるほど深淵は深くなる傾向があるのだ。
　彼女にすれば扱いにくい競技用リボンに比較して、鞭は実に扱いやすくて、振るうのが面白かった。
　凶器レベルの鞭を人に対して振るう手応えは、人間の奥底に封印されているべきものがざわめき、次第に膨れあがるどす黒い歓喜に彼女は身を委ねつつあった。
　今日の生け贄は、彼女が慕う先輩、里奈の夫であることなど、もはや彼女にとってはどうでも良いことになりつつあった。


　亜紀は、以前ＳＭを見学したときに感じた違和感が、実は自分自身で行っていないという単純な欲求不満が理由だったのだと自覚した。
　レズビアンとして竿役、責め手であったことも、あながちこの自覚と矛盾しないことに驚かせられた。
　そう彼女は、相手が逝く表情、狂おしい痴態に、達成感と充足感を求め続けた生き方に固執して生きてきたのだ。
　だからこそ仕事であるソープ嬢もエンターテーメント感覚で楽しみ極めて、星の数ほどの男達が恍惚の表情で逝く様に彼女は達成感を得て満足していたのだ。
　苦痛を与えると悦ぶ人間の存在を理解すると、彼女の中から沸々と、どす黒い残酷な感情が溢れ出した。
　彼女は、手に持った見たことがない極太の赤蝋燭に貯まった溶けた蝋を無表情のままで、一気に生け贄に浴びせかけた。


　義則の絶叫が会場に鳴り響いたが、それに触発されたように敬子の鞭が打ち込まれた。
　相打ちを入れるように、郁美のハート型のスパンキングラケット乗馬鞭が尻に向かって打ち下ろされる。
　佐紀子が次々と女帝となった亜紀へ極太赤蝋燭を供給して、側近としての役割を演じて場を盛り上げていったのだ。
　絶叫すればするほどオンナ達は激しく残酷になっていく。
　悠希、彩佳、佳菜子、葵達も、亜紀達のコンビネーションと残酷さに呆気をとられていた。

　義則の身体は、鞭であちこち腫れあがり血が滲み、そこに厚い蝋が降り注ぐのだから、もはや地獄の責め苦に匹敵する苦痛であろう。
　拘束具で自由がきかない中で、身をよじって苦痛にのたうつが、そこに鞭と乗馬鞭が交互に打ち据える。
　コックリングで拘束された肉棒は、血流を抑制されて有り得ないほどに肥大化して血管が浮かび上がり、もはや射精したのではないかと思うほどの我慢汁が溢れかっていた。


　あまりの暴走ぶりに、麻輝は唖然としていた。
　困惑してマジックミラーの向こうにいる健二に助けを求めるように視線を投げかけていたが、なんの反応がないので匙を投げた。
　そもそもオンナ達の集団心理は、なによりも恐ろしいと知っている健二も絶句して見入っていたのだから。

　凌は、愛妻の本性を見た思いがして、腰を抜かしていた。
　もはや亜紀は、プレイルームの女帝であった。
　周囲にいる女性陣にあれこれと指示を出して、どんどん過激に義則を折檻し続けていた。

　祐司は、愛妻彩佳の美しさにも満足していたが、姪っ子の郁美がラブリーすぎて勃起してしまい、この気持ちをどうしたら良いのかと困惑していた。
　そして本気で、あのスパンキングラケット乗馬鞭でぶたれたいと思い始めていて、数日後、この倶楽部に持っているプライベートルームで郁美にぶたれることになるだった。

　真也は、自身の最大の失態に気がつき後悔していた。
　せっかく最強のパートナーとなる紗弥を愛妻にしたというのに、彼女を早々に妊娠させて後れをとってしまったのだ。
　彼女がいれば、間違いなく郁美の傍らに居たはずであり、美人従姉妹として「会」を席巻していたのは間違いなかったのだ。

　智久は、今まで見たことが無いほど活き活きしている佐紀子の姿に感動していた。
　彼女が光り輝くのは、亜紀のそばに居ることなんだと理解し、疲れて帰って来た時に、夫として癒してあげるのが大事なんだと思った。
　そしてゾッとする美しさが光る亜紀に、心惹かれている自身の気持ちに気がついて困惑していた。

　美帆は思わぬ同好の士が登場したことに苦笑いして、ますます彼女達を煽った。
　そもそも彼女が極端に残酷な表情を見せるのは、理由があったからだ。
　本質的に彼女は男という生き物を憎悪していたのだ。
　大半の男達は、女を性欲の対象、子供を産む道具としてしか見ていないのが本質であって、健二と出会って初めて１人の男性を認めたのだった。

　彼女には、それ以外の男はクズにしか思っていなかったのだ。
　それが健二に付き従って神戸に来て以来、徹、凌、祐司らと出会って彼女の中でなにかが変わってきたというのに、彼女の活躍の場は再びスポットライトが当たろうとしていると感じていたのだった。

「きてる　とうとう　あのムカつく男達を」
「これでもかと鞭で打ち据える時がきたのね」


　里奈と徹は、お互い受け容れがたい展開に、お互いの肉体に逃げ込んでしまったのだった。
　徹の胸騒ぎは最終章で、この時初めて妊婦とのセックスを経験して、またまた違ったセックスに目覚めてしまう形で終結した。

　神戸の隠れ家で人知れず渦巻いた、煩悩にまみれた男達の欲望とオンナ達の夢芝居は、Ｍ男の絶叫により燃え上がった蜃気楼であった。


つづく
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あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2020年7月5日掲載
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