ずっと愛してます３
羅衣 作
第36話　オンナ達の目覚めⅠ


　村西薫は、経験したことのない快感に溺れていた。
　こんなにセックスが良いものなんて知らなかった。
　徹の肉棒を見た時の恐怖はどこに行ってしまったのだろうと、ボンヤリ他人事のように考えていた。
　とにかく気持ち良すぎで、彼女の時間はゆっくりと進んでいた。

　彼女は徹の逸物に下から貫かれていて背筋が反り返ってしまうほどの圧迫感にさられているのだが、不思議と痛みなどはなく、背中に当たるジェットバスの泡が心地よく、お湯の熱気が彼女の興奮を包み込んでフワフワしたような不思議な感覚であった。

　広いジェットバスの中央付近で、正対座位で抱かれているので、彼女が縋るものは彼の身体の他ない状況であった。
　股間は彼のモノに占拠されているために、自由が効かない両脚は浮遊しており水流に翻弄されつづけていた。

　定期的にズウゥンと鈍い突き上げで、彼女の大事な最奥を蹂躙されて、息が苦しくなるような快感に意識が跳びそうになっていた。
　その度に情熱的なキスで現実に引き戻される。
　次第に自分が女として生まれてきた悦びに包まれてくる。

　そして自分は、なにが欲しくて男達と張り合って仕事頑張ってきたのだろうと思ってしまう。
　本当は徹のような男性に出会いたかったのかもしれない。
　地位もお金も手に入れたが、決して満たされることのない心の渇きに、正直彷徨っていた数年間であった。

　それは瑠璃子も同じであったろう。
　昨夜の「美あんず」にて、郁美が語っていたことが不意に脳裏に蘇る。

「女は　男とは違う生き物」
「男達が追い求める　成功　地位　名声　お金」
「では　決して満たされることはないの」
「女は　そんなものアクセサリーに過ぎない」
「それらは　女が素直に生きていれば」
「自ら掴まなくても　男達が与えてくるもの」
「でも　それは　それだけだけのもの」
「結局　女が欲しいもの」
「それは　わたし達の奥底にある」
「なにかが解放される時に　初めて見えてくるモノ」
「でも　それは」
「真のアクメを経験したことがある」
「女にしか分からないの」
「瑠璃子さん　弥生さん　薫さん」
「それを是非知って欲しいの」
「知った時　きっと全てが変わるから」

薫　　「そう　これ　これなの」
　　　「凄くいい　あん あんあん」
徹　　「はあぁはあぁ　すげぇ」
　　　「吸い込まれるぅ　やばい」

　シャウゥゥゥゥゥバシャッ！！
　バシャ！！シャウゥゥゥルンゥゥバシャッ！！
　バシャ！！シャウゥゥゥゥゥバシャッ！！バシャ！！
　シャウゥゥゥルンゥゥバシャッ！！
　バシャ！！シャウゥゥゥゥゥバシャッ！！
　バシャ！！シャウゥゥゥルンゥゥバシャッ！！
　バシャ！！

　ジェットバスで女性を桃源郷に導く手口は、もはや徹の十八番だ。
　お湯の熱気は女性の性的興奮をヒートアップする効果があり、ジェット水流は女性の身体を優しくマッサージして愛撫効果もあるのだ。
　そしてセックス経験の浅い女性をリラックスさせる効果もあるのだ。

　特に若い女性が気にする発汗に伴う匂いや汚れを気にしなくて良いので、セックスに没頭できるのだ。
　リラックスは女性の扉を開くには、なにより大切であり、ヴァージンキラーと評される彼の代表作である。
　ただ副作用として、脱水症状起こしやすいので水分補給は欠かせない。
　今回も、既に浴室にベットボトルのアクエリアスＣを持ち込んで準備万端であった。

　薫はクールビューティと称されるドライな女性と思われているが、鎧をはぐと身長は１７２㎝とモデル級の長身であり、B:90cmＤカップ、W:63cm H:96cmというナイスボディの持ち主だったのだ。
　気が強いキャリアウーマンであり、その高身長に惑わされて、その肢体の魅力に気がついていた男は少ないのだろう。

　徹は手淫でその肢体を隅々まで楽しんでいたが、反応が驚くほど直子などの少女達似ていたので驚いた。
　勿体ないことにほとんど未開発であって、彼女が仕事優先の人生を送って、更に周りの男達がご馳走を見逃しているというのがよく分かった。

　恐らく彼女が出会った男達は、自らの快楽ばかりで、男としての真の楽しみを知らない者達なのであろう。
　そのような男達は、前儀、クンニですら義務と感じているのだろうが、もうその段階で敗北者なのだ。
　まあ健二曰く、だからこそ性調教師の仕事は楽な場合が多いのは、多くの男達がオスとしての最低限の義務を果たしていないということがあるのだろう。
　妻に浮気されて被害者面する男達が多いが、ただの負け犬であって、哀れというより軽蔑に値するとの評に徹も同感の思いであった。

　腕の中で身悶える彼女が、やや疲れた表情を見せたので、そつなくアクエリアスＣを自身も飲みつつ、彼女にも口移しで飲ましていく。
　体内から失われた水分はマメに補充するのが、ジェットバスセックスのポイントであった。
　身体に染みるように吸収される感覚が心地よい。

　三口も飲むと、彼女の顔色も直ぐに良くなってくる。
　彼女への愛しい気持ちがこみ上げてきて、優しく髪を掻き上げつつ頭を撫でてあげる。
　今は活動的なショートカットにしているが、彼女は絶対長めのロングヘアが似合うはずであった。
　自分好みの女に染め上げるために、まず髪型を変えさせることを決心したのはこの時であった。
　再度、多めに水分補充して次に備えることにした。

「さて　そろそろ　ベットで本格的に　しよか」

　薫は既に満腹気味で、今まで経験したことがないほど逝きまくってしまったので、正直もう休みたかったであろう。
　しかし時間はまだ午後３時半頃であって、徹は、まだ前儀の前段階にすぎないと考えていたのだ。
　このキャパシティの違いが、薫を経験したことのないアクメの深淵に墜ちてしまうことになる原因となるのだった。

　彼女の経験したことのある男性は、例外なく自分が射精して落ち着くと、途端にテンションが下がって身を退いてしまう。
　徹は真逆であり、ますます丁寧に、そして優しく抱き包んで、抜かず何度も、それも前より激しく彼女を求めてきてカルチャーショックが凄まじかった。
　逝ってしんどいのに、更に深く激しいオーガズムが彼女の肢体をエンドレスに襲ってくるのだ。
　次第に意識朦朧としてきて、ヨダレを垂らしても全く気にならなくなっていった。
　何度もエビぞりになり、逝きまくり続けることになるのだった。




　亀梨弥生は惚けた状態になっていて、何度も押し寄せる性感の津波に翻弄されていた。
　２児の母親であり、アラフォー世代ということで、既に熟女である彼女の大人であるという自信は跡形もなく打ち砕かれていた。
　１５歳もの年下が次々と繰り出してくる性技に圧倒されて、為す術もなく逝きまくってしまっていた。
　そもそもセックスが、これほど女にとって底無しに気持ちが良いものとは知らなかった。

　そして自分の中で女の貪欲な欲望が膨れあがっていくのを、他人事のように実感していた。
　次はもっと強い刺激を、その次はもっと激しく、更に違った刺激を、際限なく膨らみ続ける欲望は一度解放されると押さえることは出来なくなった。
　健二に教えられた女の業は、まだまだ序の口であり、これからという時に逃げ出してしまい彷徨ってしまったのだと今頃気がついたのだ。

　正直、このままで逝きすぎて狂い死にしてしまうと次第に焦りが生じつつあった。
　しかし彼の腕の中から逃げ出す術も、チャンスも、彼女には残されていなかった。
　身を半身動かして逃げようにも、腰を引いて逃れようとしても、既に彼の体が先回りしていて更に深く抱きしめられてしまう。

　郁美の愛弟子といわれる武史という若者は、「会」関東本部で席巻している三銃士と呼ばれているイケメン色事師に匹敵、いや凌ぐ色事師ぶりであり、彼女のような普通レベルの経験しかない女の敵う相手ではないのだと思い知らされていた。
　もう彼女がどうされると喜ぶのかとか、どこが性感ポイントなのかとか、彼女自身も自覚していなかった領域すら知られてしまった。

　不意に両脚を持ち上げられ、彼の両肩に担がれるように屈曲にのし掛かられて、激しく突き降ろされる。
　朦朧とする視界の中で、彼女は見たことの無い壮絶な光景に唖然としてしまう。
　もの凄い極太のデカマラが、彼女の蜜壺になんの問題も無く打ち込まれては、抜かれて、彼女の体液がキラキラと光り飛散していた。
　それにして凄いカリ首の段差で、１回で膣内の粘液が掻き出されてしまうのだろう。
　そもそも自分があのようなデカマラ受け入れられるなんて、知らなかったし考えた事もなかった。
　このような状況でありながら、第三者的な視点で俯瞰するという女というものは不思議な生き物であった。

　若者が全身から汗を迸らせて、一生懸命に頑張る姿に不思議な感動すら覚えていた。
　彼が誠心誠意を込めて彼女を愛そうとしてくれているのが、凄まじい快楽を通して痛いほど伝わってくれる。
　彼女人生で、これほど愛された経験は初めてであり、女に生まれた悦びを感じずにいられない。
　うっすら見える天井鏡には、若者に組み伏せられて、ただ喘ぐばかりに終始している自分の姿が映っていた。
　思わず右に視線を逃がすと、そこにも同じ情景が映し出されている鏡があったのだ。
　急に自責の念が膨らんでくる。

　彼女の３６年間になる人生は、どちらかというと恵まれたものであった。
　九条家に代々仕える執事の家系に生まれた彼女は、なに不自由のない環境で、執事としてだけでなく乳母としても役割を担えるようにあらゆる英才教育を受けて育った。
　特に当主家系の跡取りが、２人娘となった経緯から彼女の存在は重要視された背景があった。

　結果、琴からバレー、教員免許まで持つほどの学業、有段者となった合気道まで、心技体共に、完璧な執事兼乳母としての素養を身に付けたのだ。
　そして彼女は、事実上九条家の当主後継者である瑠璃子の側近として、幼少の時から今まで生きてきたのだ。
　その彼女から見て、仕える瑠璃子の素養は素晴らしいものであった。
　彼女を従者という扱いに留まらず女性としての幸せを捨てさせずに、いつも配慮してくれたのも瑠璃子であった。

　そんな環境に甘えて自分は流れて生きて、夫に対しても、２人の子供達にも、良い妻、良い母親を演じて生きてきたのだと気がついた。
　それなのに自分は、夫の愛情が遠のいていると不満を抱いていたのだと知った。

　昨日は理解出来なかった郁美の言葉が急に浮かんできて重くのし掛かる。
　男性を成長させる、活かすも殺すも女の器量という言葉の意味が今頃分かった。

　武史、徹が凄いのは郁美という女性の存在があったからで、彼らは自ら成長したわけではないのだ。
　彼らの素養を見抜いて伸ばすところは伸ばして、悪いところは改めさせる、という究極の母性が結集した一例に過ぎないのだ。
　自分は妻として演じていただけで、どれだけのことを夫に対して尽くしてきたのだろうかと反省しきりであった。

「そう　いつも　自分は与えて貰うだけ」
「女だから　それで良いと思っていたけど」
「それは間違いだった」
「わたし達が　女が　導けば」
「男達は　成長して　もっと素敵になるのね」
「ごめんなさい　わたし　未熟な妻でした」
「でも　まだ　間に合う」
「この子は　素敵すぎる　でも　わたしも女なの」
「郁美さんに負けていられない」
「わたしは瑠璃子様のそばにずっとお仕えしたいの」
「それには　ここで墜ち放しではいられない」
「いちゃいけないの」


　武史は、快調にピストン運動を満喫していた。
　彼女のような絵に描いたような年上女性と楽しいひとときを過ごせるだけでも超ラッキーな経験であったし、その肢体は、これまた夢に描いたような豊満な熟した肢体であった。
　若い肉欲をぶつけるのに、なんの遠慮する必要も無い状況であり、お構いなしの押しの一手で責めまくっていた。
　彼女が経産婦であったことも、彼に余裕を与えていたのだ。

　やはり環や成美は、若く出産経験が無いだけに身体的負担を考えると、彼の極太マラは配慮しないとリスクがあるのが事実であった。
　例外的に郁美相手だけが、彼の全開パワーで楽しめるのだが、如何せん彼女は忙しくライバルが多すぎる。
　そんな彼に郁美は間違いなく、そんな意図もあって弥生という極上の熟女を紹介してくれたのだと理解していたのだ。

「そう　これ！！」
「脳が破裂するくらいの　征服感！！　これだよ！！」
「俺は　これが　最高！！　姉貴　俺は」
「俺は　絶対！！　姉貴の宝物」
「郁美さんを手に入れてみせるよ」
「健二さん　徹　には　絶対負けない！！」

　まだ若い武史では、腕の中で躍動する熟女の美しい肢体の中で生じた変化を気づくことが出来なかった。




　九条瑠璃子は、人生初めて他者に膝を屈した経験を味わっていた。
　そもそも彼女に跪いてフェラチオを強要する男など存在しなかった。
　初めての経験であり屈辱である筈なのだが、相手が健二なので不思議と悦びのような気持ちが強かった。
　そしてデカマラの迫力に、次第に圧倒されていた。
　彼女の経験した男性、外国人も含まれるのだが、彼らと比較しても、なんら負けないデカマラぶりに彼女の秘めていた部分が動き出していた。

　彼女が男性に求めるものは、自分を凌駕する器量と選ばれた男だけが身に付けた気配りの所作であった。
　正直、慣れないフェラチオであり、再三に渡ってバランスを崩して蹌踉めいてしまうが、彼は絶妙なタイミングで支えてくれるのだ。
　いつしか夢中でむしゃぶりついている自分に、酔ってしまう瑠璃子だった。

　瑠璃子は自ら流れる血の恐ろしさをよく知っていた。

　その血は、先祖代々色と欲にまみれた罪深いものであり、時には多くの命すら左右してきたものだと理解していた。
　血族の男達は祖父に代表されるように享楽にうつつを抜かしながら時代を動かしてきたが、女達は家同士の優劣を競い、時には男達を操って殺し合いまで誘導してきた最も罪深い存在であった。

　かの南北朝時代の争いも、女達が引き起こした権力争いに他ならなかった。
　瑠璃子の母親が九条家の長女であった為に、その血を最も濃く受け継いだ存在が瑠璃子と佳子姉妹であった。
　だからこそ自分自身が、なにかから解放されるきっかけとなる男女の深い関係には一定の距離をおいてきた部分があったのだ。

　妹の佳子は既になにかに目覚めいて、多くの男性を従えて魅了する資質を開花させている様子を、驚愕の思いで見つめていたのだった。
　しかし昨日の亜紀達の経験、そしてずっと押さえつけていた健二への想いが、もはや抑えられない程に膨れあがっていて、彼女の中のなにかが飛び出そうとしていたのは自覚していたが、もはや限界だと感じていたのだ。

　そもそも何故今なのか、神戸に来る前は郁美に対抗心さえあった自分なのに彼女に会った途端に芽生えた不思議な共感、そして紹介された亜紀という１歳年上の女性に感じた親近感が彼女自身を変えてしまったのだ。

　彼女達との女同士の夜伽だけでは説明のつかない、なにか惹き合う魂の共鳴ともいうべき感覚があったのだ。
　ただ少なくとも彼女達の知る世界に、自分は一刻も早く追いつく必要があるのだという意識が芽生えていたのも事実であった。

　九条家は孫世代には傍流も含めて男子が１人もいない状況に陥っており、名家の男系嫡流が断絶の危機に直面していた。
　その結果、女系の流れである瑠璃子には本来では後継者、当主の話など関係無い話であった筈なのに、ゼウスの寵愛を理由に彼女の周囲が騒がしくなった背景があった。

　瑠璃子達の母親は自身も認める凡人であり、婿を迎えた時点で責任を果たしたと公言する人で、早々に後継者候補から外れてしまった。
　そこでビジネス界でメキメキ頭角を現してきたゼウスの孫娘である瑠璃子に注目が集まったのだ。
　ゼウス曰く、母親は娘であったが、妻の血が濃すぎて九条家の資質は引き継いでいない半端者という評価であった。

　父親は同じ超名門の近衛家出身ではあったが、三男坊でありゼウスのお眼鏡に適う器量ではなかったらしい。
　それだけに瑠璃子へのゼウスの寵愛は抜きんでいたのだ。
　女の業を最も濃く凝縮したエッセンスが、瑠璃子に流れる血に流れていて、それが健二という男性によって開封される時を迎えようとしていた。


　健二は、かつて天女だと憧れていた瑠璃子にフェラチオさせている状況に感動していた。
　まさに勝ち組の男だけに許された至福の時を満喫していた。
　まだまだ不慣れで経験不足を感じるテクニックだが、彼女の一生懸命さが伝わってきて、それが余計に征服感を煽った。
　美しい顔を肉棒で汚している情景に、彼の興奮はピークに差し掛かっていた。
　シャワーの音と熱気が彼の冷静な判断力を鈍らしていた。
　次第に追い詰められて壁に背中を預けて、肉棒を喰らい尽くされているのは、いつの間に彼自身なのだと気がつくことが出来なかったのだ。


　女にとって男に奉仕する、させられる、というフェラチオはある意味自虐性が刺激される行為であり、特に経験が少ない女性にはそれなり敷居が高い行為という側面がある。
　瑠璃子に至ってはまだ奉仕されるセックスしか知らない女であるから、カルチャーショックという部分もあった。

　その彼女が男性に奉仕するという状況に、今まで感じたことのないＭ気質に火が灯ったのだ。
　女の本質はＭ気質であり、それは同時に女の業の強さに比例するものらしい。
　自ら業が強いと公言する郁美自身が、自分はドＭ女なのだと認める姿に瑠璃子は感銘すら受けていたのだ。

　そんな郁美に惹かれ共鳴する亜紀の姿に、瑠璃子は強い共感を覚えたのだ。
　瑠璃子も、亜紀も、郁美のように素直に女の業だけでは生きられない部分があって、だからこそ郁美に惹かれるのだろう。
　背負うものが違うと言えば、そうなのであろうが、女としては憧れるシンプルな生き様なのだ。

　不意に瑠璃子の封印されていた資質が目覚めたのは、まさにそんな時であった。
　誰にも教えられたものでもないし、見よう見まねでもない、彼女の血に息づく脈々と引き継がれていた究極のフェラチオがベールを脱いだのだ。

　グイと、唐突にデカマラを飲み込むディープスロートに健二の腰が退けて後ずさるが、強力なバキュームがデカマラを翻弄する。
　白魚のように華奢な指が、パンパンに膨張した玉袋を絶妙なタッチで愛撫して竿を巧みに捌く。
　百戦錬磨の男が次第に腰が退けて後ずさっていく。
　暴発を恐れる男の本能が無意識に彼を後ずらせるのだった。


　健二は一瞬にフェラチオをしているのは妻、郁美だと錯覚した程であった。
　混乱して咄嗟に逃げようとしたが、壁に阻まれて既に追い詰められていることに気がついて焦ってしまった。
　まさかお嬢様、瑠璃子にそんなテクニックが身についているなど想定外であったし、ミイラ取りがミイラになってしまう様なものだ。

　不意に彼女は、あの九条家の子女であるから、それを侮っていた自分の迂闊さを反省していた。
　思えば関東本部では生ける伝説となっている佳子の実姉なのだ。
　可憐の容姿だけでなく、彼女の本質が貪欲な女なのだという認識が不足していたことになる。
　食いついた女からは逃れることが出来ないのだと、健二は初めて教えられた。
　不意にアナルに侵入してきた指の動きに悶絶する。

「馬鹿な　前立腺マッサージだと！！」
「馬鹿なぁあぁぁぁぁぁぁぁ！！」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」

　健二のプライドは、虚しく神戸の夜景に四散して飲み込まれたのだった。

つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2020年9月21日掲載
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