ずっと愛してます３
羅衣 作
第53話　乳母


　「会」は主たる活動がセックスを主体としたものが表面的には多いが、それ以外にも「会」に属する人々を支援するような機能を併せ持つのが特徴だ。
　そのひとつに乳母養成斡旋機能がある。
　明治時代の頃に確立した歴史ある制度で、「会」は莫大な予算を割いて優秀な女子を抜擢して惜しみない第一級の教育を施して優秀な乳母を提供する責任を担っていた。

　養成された彼女達は、名家名門だけでなく有力政財界の家にも優先的に斡旋されてきたのだ。
　彼女達は優秀な乳母であると共に美貌に恵まれた女性達であり、「会」にとっては閉鎖的なHighSociety社会に優秀な遺伝子を供給する重要な存在でもあった。

　実は亀梨弥生も彼女達と同じ流れを組む女性であり、次世代の者達には最も身近な存在となり彼らに生涯付き添い、仕えた家を盛り立てる側近中の側近候補生でもあったのだ。

　そして２人のエリート乳母候補生が早朝の神戸空港に降り立った。
　女優深○恭子似の肉感的な宮西芽生（めぐみ）２３歳と女優沢○エリカ似のスレンダーな田嶋美雪（みゆき）２２歳の２人だ。
　彼女達はゼウスが郁美懐妊を機に送り込んできた九条家とっておきの秘蔵っ子だ。
　「美あんず」の夫達ですら郁美には過保護と思える反応を見せて女性陣から呆れられていたが、それはゼウスも全く同様であったのだ。

　お節介と思いつつもなにもせずにはいられないという男だけの反応が形になったものであった。
　最高のプレゼントのつもりであろうが、いかんせん肉欲全開の夫達が蠢く場に派遣するには彼女達は美女過ぎたので、かえって女達の心配の種を増やしたようなものであった。

　宮西芽生は、九条家の秘蔵っ子中の秘蔵っ子で、いずれは九条家後継者候補筆頭瑠璃子の子供に仕えると目されたエリート乳母であった。
　ただあまりに男性にモテすぎて乳母として一流だが男扱いも一流であり、孫娘達の婚姻が待ちきれないゼウスは彼女に変な虫がつかないかとヤキモキしていたのだ。

　彼女の実家は数百年も続く九条家に仕える臣下で、過去には五摂家にも何人もの嫁を出している優秀な家系であった。
　その家系の末娘である彼女は周囲の男達にとっては最高の花嫁候補でもあったから当然といえば当然だが、手塩に掛けて育てた育児のスペシャリストであるから九条家としては手出しされては困る事情があった。
　もちろん彼女が郁美と亜紀に接して成長することも期待している部分もあったことは否定出来ないが、ゼウスは神戸に隔離することを企てた背景があった。

　田嶋美雪は、対照的に英国ナニー養成学校に卒業した国際派であり、新しい乳母像基礎を切り開くと期待された逸材であった。
　彼女は孤児出身であり、綾小路優貴のようにゼウスが抜擢、養育した優秀な人材の１人である。
　彼女の場合、知力、ＩＱが飛び抜けており、高校在学中には学力が既に大学卒と同等以上との評価で日本の教育システムに当てはまらない才女であったので、ゼウスの肩入れで英国に留学してそのままナニー養成学校に進学した変わり種だ。

　彼女自身が希望すれば、そのまま学業、学問の道も進めたであろうが、彼女自身は女だけにしか出来ない育児に興味があり最高の育児を追い求める理論派乳母であった。
　ある意味、古来から日本が培ってきた母性の集大成である乳母像を具現化した宮西芽生とは、最も対極に位置する乳母像を具現化したのが田嶋美雪ともいえた。


　九条家の人々は、この派遣劇に驚いたに違いない。
　２人は九条家にとっては次世代教育の要であり、その２人を手放すような行為は到底信じられなかったに違いない。
　もちろん他にも人材がいなかった訳ではないが、間違いなく２人がツートップであったからだ。

　彼女達クラスを乳母に１人雇用するには軽く年間数億円を超えるギャラが必要であり、外国語すらネイティブに使いこなし教育できる彼女達は別格の存在だ。
　乳母はスタッフ、使用人達の中では最高クラスの地位が認められる存在であり、世襲制の執事と並ぶ名家名門の家系を屋台骨を支えるものであった。

　その２人を遠隔地神戸に派遣してしまうゼウスの行動は、彼らの目には女の色香に血迷ったとしか見えなかったと思われる。
　とはいえ面と向かってゼウスに意見を言えるほどの度量がある一族は存在せず、恐らく今は海外暮らしの瑠璃子しかいない体たらくであった。


　そんな周囲の思惑はともかく２人の美女は、唐突に訪れた自由にウキウキ全開であった。
　彼女達は非常に恵まれた生活を送っているが、所詮は大なり小なり敷かれたレールを生きる籠の中の小鳥であり、決して女として楽しい人生を送ってきた訳ではなかった。
　異性関係も決しては自由では無いし、結婚相手も自分の意志だけでは選べないのだ。

　先輩諸氏はそんな運命を受け入れて伝統を守ってきたのだろうが、抜擢組の田嶋美雪は守るべき門地もなにも無いから不満でしょうがない。
　そんな美雪の考え方に共鳴して、末っ子ならではの我が儘と結びついた宮西芽生も同感であった。
　しかし数百年と続いた伝統と格式を彼女達だけでは覆すことは不可能であり、今まで窮屈な重石の中で我慢して生きてきたのだ。

　そんな彼女達が期待する存在が、瑠璃子の存在だ。
　国際派で革新的な彼女の存在が唯一の希望であり、その彼女の子息子女に仕える乳母になることが目標であった。
　つまりこの二人は最大のライバル同士でもあったのだが、いきなり２人は敷かれたレールから下ろされて自由を与えられたのだ。

　人生の目標が失われるようなものであったが、若い女子にはそんなこと小さいことであった。
　今まではなんでも買えるお金もあるのに、洋服一つ周囲の意向に沿わなければならない環境がどれだけ苦痛であったは他人には分からない監獄なのだ。

　九条家を離れても彼女達は育児のスペシャリスト、エリート乳母であって、以前のような億単位のギャラは望めなくても数千万円の年収は保証されているような存在であると理解しているだけに悲観する気持ちは一切無かった。
　神戸という遠隔地であれば五摂家の監視は緩くて、少なくともファッションは自由になる筈であり自然と心が弾む気持ちを抑えられない。
　ましては神戸は女子ファッションの発信地でもあり、実に都合が良い環境でもあった。


　というわけで岩永家、田原家を訪問する前に、ショッピングを楽しもうと２人は始発の飛行機で神戸入りしたというわけだ。
　朝食とコーヒータイムをたっぷり満喫した後に神戸大丸に直行し、更に周辺のブランドショップも巡ると、２人は二十数年我慢を強いられたショッピングを満喫しまくった。
　着てきた衣類などは全て脱ぎ捨て、思いも思いのファッションに一新した。

　２人とも制限無しのチタンカード所有者であるから値段も見ず、欲しいものを買う。
　結果、２人ともたった半日で数千万円のお買い物を楽しんだのだ。
　当然、持ちきれないほどの買い物袋だらけとなるが、彼女達は周囲に隠れて付き従っているＳＰ達を容赦なく呼び寄せ持たせる。
　あまりの有り様に周囲は騒然となるが、店側は突然降って湧いたバブルに大はしゃぎである。

　タクシー数十台を連ねて田原マンションに現れたものだから、田原家のＳＰ達は騒然となる。
　当然お互い面識の無いＳＰ同士悶着に発展するが、ルンルン気分の女達はお構いなしである。
　偶然、１階フロアに居合わせた飯田佐紀子の機転で、事態は収拾されるが、色とりどりの車両がロータリーに溢れかえり男達はしばらく右往左往し続けていた。

　騒動の張本人である２人は、新たな主になるという２人の女性との面会に心躍らせていた。
　自己紹介で案内してくれる女性が亜紀の側近である佐紀子だと認識した時点で、彼女達はやはりここは女が作り上げた理想郷なのだと理解した。
　地方とはいえ関西では５本の指に入る一大企業グループ夫人、その側近がミニスカで美脚を露出するうら若き女子なのだ。
　彼女達と同年代の女子を側近とする亜紀という夫人への興味がそそられる。
　２人はエレベーターホールで出迎えられた美女のオーラに圧倒されてしまう。

亜紀　　「いらっしゃいませ」
　　　　「お２人とも　遠路お疲れ様です」
　　　　「わたくし亜紀と申します　お見知りおきを」
芽生　　「いえ　失礼致しました」
　　　　「お騒がせして申し訳ありません」
美雪　　「はい　ちょっとお買い物し過ぎたみたいで」
亜紀　　「分かります　うふふ」
　　　　「まあ　立ち話もあれだから　こちらへ」
佐紀子　「亜紀姉様　わたくしは１階に戻ります」
　　　　「ちょっとまだ立て込んでるみたいなので」
亜紀　　「あらぁ　そうね　いつもありがとうね」
佐紀子　「はい　お２人様　失礼致します」
　　　　「また　後ほどご挨拶に参ります」
美雪　　「ご迷惑お掛け致します」
　　　　「よろしくお願い致します」
佐紀子　「ごゆっくりされて下さい　では」
亜紀　　「えっと」
　　　　「宮西さんと田嶋さんでしたっけ？」
芽生　　「あっ　大変失礼しました」
　　　　「申し遅れました　宮西芽生と申します」
美雪　　「わたくし田嶋美雪と申します」
　　　　「失礼致しました」
亜紀　　「いえいえ」
　　　　「なんかバタついてしまって　こちらこそ」

　芽生と美雪は、亜紀と話していると同年代の女性ながら圧倒されて自然と背筋が立ってしまう。
　存在感がハンパなく、あの瑠璃子と話しているような錯覚すら覚えるほどだ。
　若年ながら一大企業グループの夫人というのは伊達ではない。
　アロマオイル「ベルガモット」のフルーティで甘い感じの柑橘系の香りが、ちょっと緊張していた２人を落ち着かせた。

　リビング室内はモスグリーンに統一された調度品で落ち着いた雰囲気で、ペントハウスに相応しい一流ホテルスイートルーム真っ青の広さであった。
　そして奥に見えるキッチンらしきスペースから、ティーセットを抱えた制服姿の女子高生であろう女子２人が現れて持てなしてくれる。

亜紀　　「２人ともアリガトね」
　　　　「えっと　こちらが　山田 環ちゃん」
　　　　「そしてこちらが　森田涼子ちゃん」
　　　　「２人とも」
　　　　「わたくしが　お預かりさせて頂いている」
　　　　「金の卵様な子達なの」
環　　　「初めまして　山田 環と申します」
涼子　　「同じく　森田涼子と申します」
　　　　「わたし達　亜紀姉様の元で」
　　　　「花嫁修業させて頂いている」
　　　　「ピチピチ女子高生です」
亜紀　　「まあ　もう　涼子ちゃんたら」
美雪　　「わたくし　田嶋美雪です」
芽生　　「宮西芽生と申します」
環　　　「紅茶　ご用意したのですけど」
　　　　「お口に合うと嬉しいのですが」
美雪　　「美味しいですわ　薫りがしっかりなのに」
　　　　「濃すぎないのが絶妙ね」
芽生　　「うんうん　お店顔負けね」
涼子　　「ありがとうございます」
　　　　「郁美姉様の教えで　頑張ってますぅ」
環　　　「あっ　今少しお待ち下さいね」
　　　　「郁美姉様　もう少しで来られますので」
芽生　　「いえ　突然押しかけしたのは」
　　　　「わたし達の方ですから」
亜紀　　「いえ　なんか　ゼウス様がお気遣い頂いて」
　　　　「お２人にご迷惑お掛けしたみたいで」
美雪　　「ここだけの話」
　　　　「こちらに来られて　嬉しいのです」
亜紀　　「まあ　正直ね」
芽生　　「環さん　涼子さん　とお会いできて」
　　　　「なんか分かった気がします」
美雪　　「はい　亜紀様」
　　　　「わたし達が」
　　　　「生まれ育った籠の中とは違います」
亜紀　　「籠？」
芽生　　「はい」
　　　　「わたしはずっと決められた人生でした」
　　　　「好きな人も好きと言えない人生」
美雪　　「今着ているような」
　　　　「ミニスカートも着られない人生でした」
亜紀　　「まあ　それは辛いわね」

郁美　　「お待たせ致しました　郁美ですぅ」
　　　　「お世話になりますわ」

　芽生と美雪は、再び郁美のオーラに驚く。
　ゼウスが夢中になるという女性こそが彼女なのだ。
　同性ですら感じるほのかに漂う色香が彼女達を戸惑わせる。
　彼女達自身も美しく魅力的な女たらんとと自覚して、日々努力を怠ったことはないし実際に多くの男性から求愛される立場であったからなおさらだ。
　その彼女達ですら容姿だけではない存在感に圧倒されて、彼女が数百年続く男社会を揺るがしているのだと理解したのだ。

　亜紀と郁美の２人は、会って初めて次元が違うと納得した。
　そこで初めて自分達は左遷されたのではなく、要所に送り込まれたのだと理解した。
　ゼウスが幼少の頃から彼女達に、重大転換期に必要となる時に必要とされる人材になれと話聞かせてきた意味を初めて知ったのだ。
　そして自分達は、そのゼウスの期待に応えたからこそ派遣されたのだと理解した。

芽生　　「亜紀様　郁美様」
　　　　「ゼウス様のご命令とは関係無く」
　　　　「お２人にお仕えさせて下さいませ」
美雪　　「はい　お仕えさせて下さいませ」
郁美　　「お仕えだなんて　滅相もない」
亜紀　　「わたし達は　そんな関係望んでません」
美雪　　「そんな。。。。。」
亜紀　　「お２人は　友人としてお迎えしたいのです」
　　　　「もちろん形式上は」
　　　　「乳母として助けて頂くのでしょうが」
郁美　　「はい　それはそれ」
　　　　「わたし達は　女同士　戦友でありたいの」
亜紀　　「出来れば　わたし達の集まり」
　　　　「「美あんず」に入って欲しいわ」
涼子　　「はい　芽生姉様　美雪姉様」
　　　　「お願い致します」
　　　　「わたし達にも　子育て教えて下さい」
環　　　「お願い致します」
芽生　　「それは・・・・・わたし達は」
亜紀　　「色々あるのは理解しています」
　　　　「でも　その前に」
　　　　「お２人には　スタッフである前に」
　　　　「女で居て欲しいの」
　　　　「そのスカート素敵よ」
芽生　　「ありがとうございます」
　　　　「そういうことなんですね」
美雪　　「わたし達に」
　　　　「そのような生き方出来るのでしょうか？」
郁美　　「うふふ　それは　お２人が」
　　　　「今日神戸に着いたときの気持ちが」
　　　　「証明しているはず」
美雪　　「ゼウス様のご意向に背く　そんなことが」
亜紀　　「矛盾してますよ　そのファッション」
　　　　「今更そんなこと　おかしいと思うけど」
芽生　　「かもしれないです　ちょっと実は」
　　　　「調子に乗りすぎかと後悔してるんです」
郁美　　「それが女なんです」
　　　　「着たいファッションがある」
　　　　「欲しいものがある」
　　　　「ずっと　我慢してきたのでしょう」
亜紀　　「こちらでは」
　　　　「我慢しないで　と話しているだけなの」
郁美　　「これは瑠璃子様と意見一致したわ」
芽生　　「えっ。。。。。。。瑠璃子様が」
美雪　　「それは」
涼子　　「お姉さん達　難しく考えすぎでは」
亜紀　　「そうね」
　　　　「まあ　直ぐにとは　いかないでしょうけど」
　　　　「わたし達はそのつもりで」
　　　　「お２人をお迎えしますわ」

　そこからはゾクゾクと「美あんず」メンバーが集合して、さながら臨時女子会となった。
　そして亜紀自慢の２人の天使、愛息子である龍哉、愛娘である恵梨香が活躍する。

　龍哉は早速芽生に懐いて、その豊かな胸元に顔を埋めて満足げである。
　亜紀は我が子は明らかに巨乳好きであり苦笑いを浮かべざるを得ない。
　彼女自身は全く無い訳ではないが巨乳でないのは密かなコンプレックスだ。
　普段からオッパイが豊かな佐紀子、郁美、里奈、麻輝達に抱っこされ慣れている息子は幼いながらにもう完璧な男である。
　皆から甘やかされているので初対面の芽生だろうが容赦ないが、愛らしい笑顔でそのまま押し切る。
　父親が父親なので、正面突破形の血を見事に継承しているのだ。

　皆との会話に意識がいきがちな彼女の隙をついて、大胆なＶカットの胸元に侵入していく。
　中学生時代から乳母として英才教育を受けた彼女は、既に赤ちゃんに接するのはスペシャリストなのだが、男としての欲望を赤ちゃんに発揮されてはタジタジだ。
　可愛い手で乳首を摘まれて我に返るが、見事に整った造作の可愛い顔に浮かぶ天使の笑顔に騙される。
　まだ一歳に満たないのに既に「美あんず」のほぼ全員の美乳を試食済みであり、立場を利用して欲しいままにしている恐るべき赤ちゃんであった。
　赤ちゃんがオッパイに執着するのは珍しいことではないので、芽生は抗うことを止め身を委ねてしまう。

　美雪はナニー養成学校の教えを皆に語りながら、まさに天使のような恵梨香を抱っこして、乳母は自分の天職なのだと実感している最中であった。
　芽生の胸元を攻略していく龍哉を見つめながら、彼女の肉感的なボディをつくづく羨ましいと思った。
　スレンダーな彼女には望めない育児スタイルであり、同じような視線を投げかけている亜紀の存在にふと気がつき、お互い視線を交わして苦笑いであった。
　バスト回りのサイズは、持つもの持たざるものそれぞれ相通ずるものがあるのだ。
　彼女自身、巨乳でないことをそれほどマイナスには捉えていないが、こういう情景を目の当たりにするとさすがに気になるのが女心だ。

　気がつくと亜紀に誘われて一緒にソファーに座って、恵梨香をあやしていた。
　周囲には涼子、佐紀子らが付き添い、美雪の左腕はいつしか亜紀に絡め取られ指が絡み合っていた。
　赤ちゃんの高い体温が心地よく、女性が持って生まれた母性を強く刺激されて自然と彼女の警戒心を溶かしていく。
　自ら敷かれたレール人生と嘆いていたが、もともと大の子供好きで自ら進んで乳母の道に進んだ経緯があり、自身もいち早く母親になりたい願望も強かったのだ。
　だから人一番母性愛が強いタイプであった。
　早くもこんなに可愛い双子の母親となった亜紀が羨ましかったし、同時に同じ女として尊敬する気持ちが湧き上がってくる。

　
　龍哉は不意にお腹が減ってくる。
　そして急に母親が恋しくなる。
　幼いのに楽しむオッパイと母親のオッパイは明解に区別つくのだ。
　母親だけが彼の意志を理解してくると分かっているだけに、そうなると行動は単純明快にママーっと泣くだけだ。
　周囲の女達は彼の意志表示に直ぐ反応してくれることも理解している。
　たちまち彼はその場の主役に躍り出る。

亜紀　　「まあ　龍哉　お腹減っちゃったのかなぁ」
　　　　「うふふ　まんまのお時間ねぇ」
芽生　　「そうみたいです　おしゃぶりちゃんです」
亜紀　　「この子は　よく飲むのよ」
　　　　「よしよし　おいでぇ」

　龍哉は大好きなママに抱っこされてご機嫌だ。
　ママはおっぱい出してくれるので、直ぐに吸いつく。
　ママのミルクはご馳走だ。
　フンフンと堪能する。
　急がないと唯一のライバルが参戦してくるからだ。
　そのライバルが動き出す。

　恵梨香は心地よい抱擁に満足しママの笑顔を見ながら楽しんでいたのに、兄の我が儘でママを奪われて不機嫌になった。
　兄の満足げな吐息でママのオッパイを独占し食欲を満たしていると感づいた。
　猛烈な嫉妬心が彼女を支配する。
　母親だけが彼女の意志を理解してくると分かっているだけに、そうなると行動は単純明快にママーっと泣くだけだ。
　周囲の女達は彼女の意志表示に直ぐ反応してくれることも理解している。
　たちまち彼女は兄からその場の主役を奪い返す。

亜紀　　「あれれ　恵梨香も」
　　　　「お腹減っちゃったのかな」
　　　　「それとも淋しかったのかな？」
美雪　　「ママが恋しいみたいです」
　　　　「目がママを探してます」
亜紀　　「もう　すっかり　恵梨香は女の子なのね」
　　　　「龍哉　そろそろいいでしょ」
　　　　「ちょっと　ポンポンして貰いなさい」
芽生　　「はい　お腹いっぱいでちゃね」
　　　　「ポンポンしましょうねぇ」
亜紀　　「恵梨香　淋しかったでちゅかぁ」
　　　　「よしよし　あら　まんま欲しいの」

　恵梨香はママが大好きで、そばに居るだけでも嬉しいのだがやっぱり抱っこが良い。
　抱っこされると急にお腹がすくからおっぱいおねだりしちゃう。
　ママはすぐ分かってくれるからおっぱいくれるから大満足。
　いつも遊んでくれる涼子も環も潤んだ目で彼女を見つめてくれる。
　彼女は注目されるのが大好き。
　ママに抱きつきながら回りの女性達の興味を惹くように可愛くアピールし続ける。


　龍哉は焦ってミルクを飲んだせいか空気をいつになく飲み込みちょっと気分が悪いが、新しく来た抱っこしてくれる女がなかなかポンポン上手い。
　心地よくゲップが出て彼は大満足。
　満腹となった彼は、新しく手に入れた女への興味が再び膨れあがる。
　とりあえずここは兄らしくママは妹に譲り、抱っこしてくれる女を楽しむことにする。
　思いっきり匂いを吸い込むと、ママとは違う女の薫りに彼の目がキラッと光る。
　目の前には先ほど楽しんだオッパイがあるから、再び手を伸ばす。


つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
羅衣さんの作品集→羅衣さんの他作品
2021年1月17日掲載
Copyright (c) 2020-2021 羅衣 All rights reserved.
▲