ずっと愛してます３


ずっと愛してます３羅衣作
第54話　女帝の目覚め　宮西芽生と田嶋美雪の加入は亜紀の負担を大幅に軽減した。　ゼウスは郁美の為に彼女たちを派遣してきたと皆が思っていたが、むしろ亜紀がその恩恵が大きい状況であった。　特に亜紀を喜ばせたのが、佐紀子にも余裕が出来て常に彼女の傍らにいてくれるようになったことであろう。　今までは郁美が代行してくれていた「会」関西支部主宰の妻という立場、関西有力財閥の妻という立場、双子の母親という立場、弁護士の卵として司法修習を受ける立場、一気に押し寄せる責任ある立場は夫である実業家凌と大差ない多忙の毎日である。　改めて郁美の存在の大きさを思い知る。　どうしても双子の母親という立場にしわ寄せがいきがちであったが、佐紀子の手助けで乗り切っていた。　もはや片腕といって良い彼女が他の活動で行動が共に出来ないのは厳しかったのだ。　芽生と美雪が来てくれたおかげで、このジレンマが一気に解消されて全て効率よく物事が進むようになった。　産後から気になる身体的なケアは、健二が柔道整復師という産後骨盤矯正のプロであり、同時にエステシャン顔負けの極上ボディマッサージも施術してくれるものだから短期間での回復を果たしていた。　既に心配した産後のダメージは気にならないほどであり、以前にも増して色つや増していると周囲は感じていたほどであった。　肢体の充実は女性のテンションを高める効果は絶大であった。　つくづく健二の才能の多彩さに頭が下がる。　妊娠中に胎教ボディマッサージ施術できますよと、彼から提案があったにもかかわらず、凌に気を遣って辞退した自分の判断を悔やんでいた。　郁美達が彼にぞっこんなのは当たり前だと今更ながら思い知った。　理容師、整体師、エステ、と弁護士以外にも専門家という顔を持ち、その全てが一流の技量とセンスを持ち合わせているのだから、恐るべき男だと思う。　今では「美あんず」のメンバーは全員彼の施術を色々と受ている状態で、オンナ達にとってもはや欠かせない存在であった。　亜紀に余裕が生まれると「会」関西支部運営の中心を担う葵との連携もスムーズになり、各種イベントが盛り上がる。　大好評の筆下ろし制度も月に複数回開催されるようになり、郁美が懐妊以来落胆して訪問が途絶えていた５大老達もゼウスを除いて度々訪れるようになる。　司法実務修習は幸いなことに神戸地方裁判所で終えることが出来たので、弁護士バッチ目前であった。　郁美のお腹も安定期に入り全ての懸案が片付いてきたので、亜紀としてはそろそろゼウスに会ってお礼したいところであったが、彼だけは何度もお誘いしても訪問してくれなかった。　郁美は彼の健康を真剣に心配する有り様である。　亜紀としては、かねてから話を頂いている小田原出仕を果たさなければ成らない時期がきたと感じていた。　彼女としては授乳期は動けないので、それを避けて司法集合修習を受講するスケジュールにしていただけに、その時に一緒に果たそうと考えていた。　彼女の知力は現役弁護士である健二と智久ですら舌を巻くほどであり、法曹家とは別に統率者としての才能も次第に発揮し始めつつあった。　「会」関西支部も彼女を中心に、健二と葵が切り盛りする形が定着しつつあった。　凌は彼女に一任していたが、もちろん無責任に放置していたわけでない。　金銭的な部分や計画実行はかなり積極的に関わっていたし、むしろ前面に出て取り仕切っていた。　それでも細部に渡る決定権は妻に任せて、その決定を恐ろしい豪腕で実現しているといって良い。　彼にすれば男には気が回らないであろう参加者へのおもてなし的配慮が、亜紀と葵に任せておけば感心するほど行き届いているのだ。　今更であるが彼のビジネス面で参考になる点がかなりあって、妻達の発案や意見を実現させるのが自身の務めなのだと感じつつあったほどだ。　凌にとっても芽生と美雪が来てくれて嬉しいことこの上ない。　まずは手の届く間近に極上の若い美女が２人も増えるということ、そして夫婦の時間が確保しやすくなるということ、お金を出せば保育士はいくらでも集められるが信頼できる人材がなかなか見つからなかったことが解決したことなどがある。　今までは亜紀が信頼を寄せる佐紀子しかおらず、彼女も子供育て経験が無いという不安があり、雇った保育士の協力無しでは難しい状態であった。　やはり信頼できる大切な我が子を全面的に任させられる人材が欲しかったのが本心であった。　「会」に乳母養育制度があると知って当たっていたのだが、やはり優秀な人材は有力な家お抱えとなっていて新参の田原家では出遅れが否めなかった。　もちろん優秀な人材のスカウトと養育に惜しみなく投資は始めていたが、残念ながら我が子には間に合いそうにないと断念して郁美の出産に間に合わせようと配下の企業内社員とその妻達に適切な人材がいないか調査させている真っ最中であったのだ。　だからこそ凌は、ゼウスに対して返しきれない恩義を頂いたと認識していた。　郁美に対する度の過ぎた求愛行為を繰り返す彼に対して、一時は怒りにも似た感情を抱いていたのだが、当の郁美に諌められてずっと我慢していたのだ。　亜紀達は気にしていない様だが、芽生と美雪という人材の価値が数十億数百億に匹敵するというのが、「会」乳母養育制度を深く調べたからこそよく分かるのだ。　彼女達は数万人にのぼる候補者の中から１人までに選び抜かれて、そこから更に数千人の１人にまで絞り込まれて教育された超トップエリート乳母なのだ。　本来であれば招聘費用として１人あたり数百億円ほどの金銭が投じられてもおかしくない人材なのだ。　彼女達は若いが、既に保育士、看護士、臨床心理士、栄養士などの資格を持ち、全ての超第一級スペシャリストなのだ。　実際、凌は彼女達クラスの人材が呼べるならと大きなプロジェクト廃止して数百億円用意していたほどであった。　そして凌にはおいしい特典があった。　妻には言えないが、密かな楽しみが芽生と美雪達と子作りにしても良いという待遇があったのだ。　乳母は字のごとく母乳を赤ちゃんに与えて、養育するのが本来の仕事だ。　それには妊娠出産しないと仕事出来ない。　亜紀は母乳がよく出て不自由なかったし間に合わなかったこともあり、そのような必要は無かったが、郁美の出産に備えて考える必要があった。　まあ難しいことは置いておいて、彼が一番嬉しかったのは夫婦の時間が確保されるということが一番嬉しかったのは間違いない。　亜紀が別人のように積極的になって毎日朝晩お盛んになった夫婦の時間に、それまではどうしても制約が有るのは致し方ない。　乳幼児であり肝心な時に限って、必ず泣いてくれる。　可愛い我が子だが、この時ばかりは正直恨めしい。　凌と双子の亜紀争奪戦は、日に日に激化していた。　男という生き物は欲望の不発が重なるとストレスになるが、女という生き物は母親モードへの切り替えが実に巧みだ。　授乳終えて戻ってきて、さて続きしようかと笑顔で言われても男は既に空回りしてスッキリしない。　せっかく淡白妻が積極妻になったのに、これは拷問に等しいと半泣き状態であった時の状況変化は好都合であった。　そろそろ離乳食始める時期が近づいていただけに、育児スペシャリストまさに適材適所だ。　そんなご都合主義の夫を可愛く思う亜紀であったが、ゼウスの思惑を怖く感じる部分もあったのは否定出来ない。　初めはスパイかと疑う部分もあったが、彼女達の経歴や人となりがその可能性を明確に否定していた。　それ以前に彼女達の知識レベルの高さに脱帽が先にあったのだ。　亜紀も負けず嫌いであり育児は人一倍勉強したし、先輩である里奈からも経験談を積極的に聞いていたにも関わらず、その差は歴然としていた。　なにより医療の知識があるのとないの差が埋めようのない。　悔しいが確かに育児の不安がほとんどなくなったのは事実であった。　最新医療、最新育児学などを取り入れた理想的な保育環境が自宅にいながら提供される快適さは言葉に出来ない。　絶対音感と語学力に繋がる周辺環境、感受性豊になるような保育環境も彼女達によって３日と経たずに整えられた。　そうなると動き出した女の欲望が顔を出し始める。　朝晩に渡って夫とたっぷり楽しんでも、２０数年疎かにしてきた男の味が欲しくて堪らない。　妊娠中に郁美達からオンナがどれほど楽しいか、凄まじい体験談と報告を聞かされただけに、その反動は言葉では表現できない。郁美真っ青のスケジュールで、他の男達との愛瀬を本格的に楽しみ始める。　彼女は、もともと妊娠する直前から男に目覚めて完全なバイセクシャルと化していたところに、妊娠期間中に「会」関西支部関連が活発化する周囲に欲求不満がたまりにたまっていたのだ。　クールレディだった悠希が変貌遂げて活発に楽しんでいたが、亜紀の場合はもともとセックス面の経験が豊富でありアクメへの経験も深いだけに、その反動は凄まじい。　パワフルが売りの凌を食べ尽くして、郁美が妊娠してちょっと淋しい健二とがっつり楽しんで、それでも足りず多忙な徹を呼び出して楽しんでいたのだ。　更に剛とも逢い引きしてお口直しも忘れないという激しさだ。　なにより食べられた男達が彼女の変化に驚いた筈だ。　数々の面で女王様気質を開花させていた彼女だが、ベットでの激しさと貪欲さは郁美と双璧をなすものになりつつあったからだ。　あのタフガイで鳴らした凌が連日連敗なのは当然だと他の男達は焦りまくっていた。　もし彼が連日奮戦していなかったら、彼らは今以上に責め立てられるのではないかと恐れていた。　徹だけは彼女が変化した後でも、例外であった。　郁美と共に、男ではただ１人彼だけは亜紀本来の資質にかなり以前から気がついていたからだ。　双子の離乳食が始まると、亜紀は空いた時間を利用して気になっていた男性に接近を謀った。　それは郁美の叔父である達木祐司である。　もちろん彼の妻である彩佳と彼の娘である紗弥、そして郁美の了解は既に取り付けている。　彼女達にすればレズビアンであった亜紀がそのように動き出したことを好意的に受けとめていたし、桃亀の素晴らしさを亜紀に知って欲しいと以前から思っていたので大歓迎であった。　女達の動き、考えは一切彼に伝えられることはない。　祐司は限られた日数とはいえ若妻がホステスアルバイトする様になれば、当然自由時間が増える形になるのだが、遊び回ったのは３日で終わって後は妻が働く倶楽部に入り浸るようになっていた。　郁美は妊娠してしまい最大のアバンチュール相手が休業となれば、優衣と定期的に楽しんでいたが彼女も多忙である。　結果、悠希と佳菜子に煩雑に逢いに来るようになってしまうのは避けれない、　そこに亜紀が降臨する。　彼にすれば彼女は憧れはすれど、やはり手が届かない存在でもあった。　彩佳からレズビアンだとも聞かされていたし、オーラの存在感も年下の女性とは思えない圧があり所作に隙が無いのだ。　ただ彩佳と凌との間の関係もあって、彼には亜紀と関係を設けても許される立場でもあったのだが、普段の亜紀はまぶしすぎて気後れしてしまったところもある。　悠希に案内されて亜紀が現れ、同席を勧められた時には驚きが先に立った。　なにか相談事かと思ったが、亜紀の今まで見たことのない笑顔が彼の構えた気持ちを打ち壊した。　彼女ほどの美女が自分だけに笑顔を見せてくれているという事実に彼は舞い上がった。亜紀　「こんばんわぁ　祐司さん♪」祐司　「おお　亜紀さん　こんばんわ」亜紀　「うふっ」　　　「今日は　祐司さんに会いたくて来ちゃった」祐司　「おお　嬉しいこと言ってくれるねぇ」　とっさに先日、健二から聞いた亜紀の噂を思い出す。「おっとぉぉぉ　女神きたぁぁぁぁぁぁぁ」　祐司はだからといって焦らない。　酒量を控えつつ、亜紀との会話を楽しむ。　たまに妻の彩佳と悠希が通り過ぎるから、さりげなく彼女達の様子を伺い状況把握に努める。　オンナ達の逆鱗に触れるようなことは避けないと後が面倒だとよく知ってるだけに慎重だ。　そもそもだが若妻の職場で浮気が許されるなんて普通あり得ないシチュエーションだ。　そんな彼に亜紀は普段ではあり得ない隙を見せる。　初めての子育てに悩み、その心労からくる憂いを含んだ表情だ。　若妻らしい表情に色香を感じてしまう。　一般家庭なら子育てを妻に任せて、妻を母親扱いして女として見なくなる男も多いだろう。　確かに出産後から授乳期間は女は母親モード一色であるが、離乳食が始まる頃になると身体的な回復も終えてるから女に戻ってくる時期なのを気づかない男も多い。　祐司は亡き妻から多くのこと学んでいるから、その瞬間の見極めは目敏い。　実体験も踏まえウエットに富んだ話でどんどん亜紀を引き寄せていく。　亜紀の悩みも彼にとっては興味深い。　彼女の場合、子育ての支援者多すぎて自身の思いとのギャップがあるから、というある意味贅沢なものであった。　いつもはキリッと何事にも動じず指導者としてのカリスマ性を漂わす彼女も、まだ幼い若さ有しているんだと思うと年長者として守ってあげたくなっていく。祐司　「うぅぅぅむ」　　　「その気持ち誰かに言ったことある？」亜紀　「無いわ　だってみんな一生懸命だし」　　　「それに　みんな専門家だし」祐司　「じゃあ　我慢し続けるの？」　　　「亜紀ちゃん　らしくないなぁ」亜紀　「うふっ　そうね」祐司　「なんというか　なになにしろ　とか」　　　「命令じゃなくてさ」　　　「自分はこうしたいんだけど」　　　「みたいに　相談してみたらどうかな」　　　「彼女たちって　利発な子ばかりだから」　　　「きっと亜紀ちゃんの考え取り入れてくれるよ」亜紀　「なるほどぉ　そうかも」　亜紀は感心していた。　彼は郁美の叔父で人生の大先輩なのだ。　人生経験は一日の長がある。　姪っ子や愛娘にも手を出してしまうドエロな顔もあるが、ただ女性が大好きな好き者ではなく女性の信奉者で一番の支援者なのかもしれないと感じていた。　実際、野心とコンプレックスの塊のような彩佳を包み込んで、受け入れて守っている姿は素晴らしい。　そしていつの間にか、さん付けからちゃん付けにして急接近してくる手口。　見え透いた手口だが、彼の所作が自然で嫌みが無い。　亜紀は無意識に彼の手をソファーの上で絡め取ってしまう。　それになんのリアクションもなしに応える彼に思う。　そう彼は正真正銘の「女好き」なのだ。　郁美の言葉が脳裏によみがえる。「祐司のおじさまは　決してあたし達を裏切らない」「なにがあっても　あたし達の味方なの」「とっても　エッチだけど　うふっ」「たぶん　健二よりエッチよ」　亜紀はふと思う。　郁美と紗弥の二人が持つ「魔性」の血、実は祐司が守り育ている神官なのではないかと察したのだ。　以前はその色香に魅入られた縁者なのかと誤解していたことに気がついたのだ。　自身の洞察力の未熟さを恥じた。　そしてもっと早く彼を深く知れば、もっとよりよい結果を得ることが出来ただろう。　後悔は先に立たずだが、彼女のリカバリーは早い。　亜紀は早々に「美あんず」三銃士となる三人目の男捕獲に乗り出した。「ごめんね　郁美　あたし理解してなかった」「何度も　教えてくれていたのよね」　亜紀は徹を愛するあまり、「美あんず」三銃士は凌と健二、そして徹だとばかり思い込んでいたのだ。　思えば徹は次世代のエースであり、まだ早い。　「そうなのね　わたし達の三銃士」「凌　健二　そして　祐司なのね」「遂に揃った　わたし達の最強の守護者」」　亜紀は祐司の口説きゲームに乗った。　彼との会話は実に楽しい。　世の中の出来事について見方も、彼女が考えもしなかった視点から語ってみせる。　それでいて聞き上手なのだ。　彼は完璧に女性の話を最後まで聞いてくれるし、決してお節介な意見は言わない。　必ず共感して男性しか出来ないだろう相づちを打つのだ。　倶楽部のホステス達に彼が大人気なのがよく分かる。　ホステスは一人でも多くの固定客を掴んで売り上げを上げて、自身の収入アップを競い合う世界で女の熾烈な競争社会だ。　そこに同僚の夫が毎日のように来るのは、いくら上客といえども普通なら面倒な存在だろう。　それなのに彼はすっかり溶け込んでいるし、彼女たちの精神的癒やしになっているのがよく分かる。　たわいない会話なのに、亜紀は久しぶりにケラケラと笑ってしまう。祐司　「さてっと　そろそろお出かけしようか？」亜紀　「あらっ」祐司　「楽しい店があるんだ」　　　「今から行かないか？」亜紀　「また　楽しみ　行きますわ」　亜紀は素直に楽しみであった。　思えばこういう大人の夜遊びは初体験だ。　凌と出会った頃もレストランなどデートは重ねたが、当初から結婚もしくは愛人化を求められる流れだったからちょっと違う。　ありふれたパターンだと、おいしいお夜食に誘われホテルに誘われるという流れと予想するが、彼がそんな陳腐な手口使うとは思えないから期待が高まる。つづく
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2021年1月23日掲載
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