ずっと愛してます4
羅衣 作
第57話　晶子の目覚め


　晶子は人妻の色香が漂う女優上○彩似の超美形で、実は「美あんず」夫達から大注目の新加入スタッフであった。
　紗弥は彼女の家庭事情も知っていたから「待って」と制止する動きをしていたが、真也がいささかのめり込み過ぎだったので少し怒り気味であった。
　とはいえ大輝美咲夫婦の様な展開もあったばかりなので、神戸メンバーでは気が引ける部分があったのも事実だ。

　そこで郁美と相談して恋を頼ることにしたのだ。
　紗弥にすれば彼女も親戚であるから容易に味方にし易い面もあったろうが、なにより彼女も絶倫の夫を抱えている同志なのだ。
　妻たちの共通認識として、夫に他人妻を独り占めさせてはイケナイというものだった。
　それは焼き餅以前に女は本質的に１人の男性に溺れやすい生き物だから、女性陣の皆を守る為に必要な配慮でもあったのだ。
　これは同時に女は頭で分かっても肢体的な結びつきに心が引っ張られることを認めたことに他ならない。

　達也恋夫婦の関係は絶好調であった。
　恋の覚醒は夫婦関係に激変をもたらしたが、なにより恋が人一番精神的に大人で達観した女性だったことが大きい。
　夫の愛人との関係も許容して、愛人であるありさとの関係も親密度で夫との関係を上回ってしまったのだ。
　事業急拡大の財務基盤を支えたのは彼女の実家によるチカラだ。
　日に日に貪欲になっていく妻に急速に精力を吸われていく絶倫夫は満たされていく。
　良好な夫婦関係は「会」の世界では盤石の体制となっていくのだ。

　夫婦間で「凌とセックスしてみたい」とか、「晶子を抱いてみたい」とか、ダイレクトな会話が公然と成立するのだ。
　真也も晶子も達也恋夫婦から見たら注目のスワッピングしたい対象だったから、恋は紗弥からの相談を快諾したのだ。
　なにより紗弥を射止めた真也は屈指のモテ男であり、身重な紗弥に妻たちは一応遠慮しているに過ぎないし、恋も他ならぬ遠慮していた１人だ。
　以前は意に染まぬスワッピングも経験していたが、いつしか肢体に潜む病みつきなものに目覚めており、それを誤魔化して隠していただけでもはや隠す気すら無い。

　恋はもともと晶子の境遇に同情的だ。
　恋も達也と出会わなければ、まさに彼女と同じような生き方をしたと思うからだ。
　それを真也という女殺しな男性に出会い、いきなり本人ですら自覚していなかった女の部分を目覚めさせられたら戸惑ってしまうのは当たり前だ。
　自分自身も迷走した経験があるだけに、助けたいという気持ちも本心だ。

　ただそこには恋の複雑な感情が入り交じっている。
　それは夫の愛人ありさの存在だ。
　恋にすれば自分自身が早く自覚できなかった結果、彼女を巻き込んでしまい彼女の結婚生活を壊してしまったとの悔いがあるのだ。
　だからこそ自分自身が誰より彼女の味方であろうと行動してきたし、紗弥が抱くであろう懸念を誰より理解しているのだ。
　もちろん恋自身も真也に興味津々だったから渡りに船だったことも事実だが、夫の希望も叶えたいという内助の功もあるのだ。

　夫の強要で開いた禁断の門はもはや閉じることが出来ないが、女にとってはパンドラの箱そのもので日に日に欲張りになる自分が怖くなるのだ。
　気がつけば他所の夫達が気になっている自分を抑えられないが、その自分に自由を与えていつも必要な時に最高の笑顔と共にキツく抱きしめてくれる夫へ感謝しかないのだ。
　だから夫の願いは叶えようと努力する。
　なにより女は頭で理解しても、結局肢体での実感に優るものは無いのだ。
　夫、達也は晶子の視野を広げる相手役として最高な存在でもあるのだ。

　達也は絵に描いたようなビジネスの成功者だ。
　それも全て自身の才覚と感性でつかみ取った稀有な存在だ。
　お酒混じりに披露する経験談は、晶子の心をたちまち奪う。
　達也はターゲットの女性が理想とする男像を演出して見せつける達人だし、実際それだけ真実の引き出しを持っている男だ。
　野心家で上昇志向の強い女にとって彼ほど魅力を感じる男性は稀だし、甘いマスクのイケメンとあっては死角はないと言って良い。

　お酒というスパイスは女が建前で閉じている扉を緩めてしまうものだ。
　達也は晶子が過去判断を迷ったビジネス課題を明快な理由を述べながら即答していく。
　毎日、幾つもの億円単位の案件に判断している彼にとって、それは当たり前のことなのだがキャリア志向の彼女には理想の上司像そのものなのだろう。
　恋は我が夫ながら流石の女たらしぶりに呆れ顔だ。

　恋は晶子を達也に委ねて良い頃合いだと思い、そろそろ真也が気になってくる。
　盛り上がる２人の話を遮って、ホテルラウンジバーに二次会で移動しないかと提案する。
　２人は上の空だが、強引に引っ張って移動する。
　ホテルに戻ってきて我に返った晶子が真也の動向を気にし出す姿が可愛い。
　恋がすかさず彼をバーに誘うように持ちかける。

　真也は晶子が心配で急いで来たようだが、晶子と達也の様子で事態を察したようで、素直に恋の横に座ったのだ。

真也　「これは達也様　ご無沙汰しております」
　　　「この度は　いろいろお世話になります」
達也　「おお　今回は妻が取り仕切っているから」
　　　「妻をよろしく」
真也　「はい　恋様　ありがとうございます」
恋　　「もう　オフなんだから堅苦しいの止めて」
真也　「すみません」
恋　　「ねぇ　窓際の席に２人で移動して」
　　　「お話ししない」
真也　「なるほど　達也様よろしいですか？」
達也　「おお　どうぞ」
真也　「はい　では　恋さんお付き合い下さい」
恋　　「うふふ」

　飲み物片手に２人で移動する。
　真也は未練たっぷり楽しげに話している晶子と達也の姿を見つめている。

真也　「はあぁ　そういうことですか」
恋　　「そう　さすがね　そういうこと」
真也　「そうだよね」
　　　「そろそろ働き掛け来る時期とは思ってた」
恋　　「うふふ」
真也　「ということは　恋さんが俺のために」
恋　　「そうなるかなぁ」
真也　「光栄ですというか　感動です」
　　　「憧れていたから」
　　　「こんなに早くチャンス頂けて俺ラッキーかも」
恋　　「まあ　お世辞上手すぎ」
真也　「いやいや　恋さん僕らの中で別格ですよ」
恋　　「うふっ　話半分で聞いときます」
真也　「では　後ほど証明してみせます」
恋　　「まあ　楽しみ」
真也　「お酒お強いって聞きました」
　　　「なんで」
　　　「ガツンと強いの何杯かお付き合い下さい」
恋　　「まあ　可愛い♡」
　　　「やっぱり彼女ほどの美女だと男の人も・・・」
真也　「はい　正直に言うと　執着します」
恋　　「そうよね　ごめんね　もっと早く私達」
真也　「はあぁ　あかん　俺」
　　　「帰ったら　紗弥に謝らないと」
　　　「頑張ってくれている時に俺浮かれていたかも」
恋　　「まあ　私達はお互い様よ」
真也　「うふふ　さあパアーッと飲みましょう」
恋　　「今日は私　紗弥の名代なの」
真也　「ありがと　お言葉に甘えさせて頂きます」
恋　　「はい」

真也　「本音トーク　聞いて貰って良いですか」
恋　　「はい　一応　私達　親類よ」
真也　「あっ　そうか　そうなるんですね」
恋　　「うふふ」
真也　「実は　紗弥が羨ましいんです」
恋　　「うん？？」
真也　「妻には従姉妹に　郁美様がいて」
　　　「そして祐司さん　彩佳さんがいて」
　　　「達也様　恋さん　皆さん凄い方ばかりで」
恋　　「どうしたの？　もう真也さんも一員よ」
　　　「確かに　あなたも私も他所から入ったけど」
　　　「それは気にしなくても良いと思う」
真也　「そうですね」
恋　　「さあ　飲んで　いつでも私を頼ってね」
　　　「お互い外様同志なんだから」
真也　「はい　手握って良いですか」
恋　　「こちらこそ　うふっ」

　恋は、真也は「会」のエリートであり自信満々の男性というイメージだっただけに少々意外であった。
　彼ですら妻紗弥のバックボーンである郁美に代表される一族のプレッシャーを感じていると知って、やはり男性はいろいろ大変なんだと知ったのだ。
　恋自身は郁美に対して愛情を感じ、亜紀は同好の姉のように思っているから外様のデメリットを感じていないし、むしろ峰家内部の主導権争いではメリットしか無かったからだ。

　自分の肌の温もりで、彼に笑顔が戻ってくる姿に女に生まれて良かったと思う。
　先程までの落ち込んだ暗い表情を浮かべていた人物とは思えないほどの変わり様だ。
　先日の失敗があるから、早々に彼に見え透いた誘いをかける。

恋　　「ふうぅぅぅ　なんか今日　いっぱい歩いて」
　　　「足痛くなっちゃったぁ」
真也　「そっかぁ　いろいろお手間おかけしてます」
恋　　「よろしければ」
　　　「足　少しマッサージして頂けません」
真也　「おお　なるほど　お任せを」
　　　「健二師匠に　学んだテク披露します」
　　　「では　私の部屋に移動しましょう」

　恋は、一瞬に意図を察した彼の瞳がキラキラしだす様子を見て可愛いと思ってしまうオンナなのだ。
　バーを立ち去る際に、牽制球のようにチラと浮気者の夫に視線を投げかけるとそつが無い彼はちゃんとアイコンタクト返してくれる。
　我が夫ながら、こういう妻への配慮ぶりは関心する。
　たったこれだけのことだが、スワッピングする妻のストレスは蓄積せず済むのだ。

　女の感じるストレスや不満は複雑怪奇で、自己中心的で理不尽な感情の堆積する魔物なのだ。
　まず女は自分自身の行動については寛容で考慮しないし無かったことにする。
　なのに夫の行動や言動には、あらゆることがチェック項目となってチリのように不満とストレスを蓄積していくのだ。

　自己矛盾だと男は思うのだが、これをうっかり指摘すると大火傷する。
　妻は夫が違う女と楽しげに話しているだけで、怒りの感情を大なり小なり蓄積しているのだ。
　それは自分が不倫しても一切関係ない。
　ましてセックスしていると認知するだけで、ますます怒りが蓄積していくのだ。
　女は理不尽な生き物なのだ

　達也はこの点を完璧に把握しているから、激変している生活環境の中でも夫婦関係は円満そのものなのだ。
　なにより女性関係については一切隠し事しないし、むしろ報告してきて公然とプレゼントしたいんだけどと相談すらするスタイルなのだ。
　それでいて恋の行動について寛容で発言しないし、一緒に在宅する時は必ず激しく求めて来るから、常に夫に愛されていると感じるからストレスフリーなのだ。



　達也は、恋と真也が先に行動するタイミングをひたすら待っていた。

　このケースでは自分が先に動いてデレデレして晶子を連れ出す姿を妻に絶対見せてはいけない。
　その代償は高くつくし、今後晶子と楽しめるチャンスを激減させるのだ。
　妹、郁美との近親相姦ショーでの痴態を妻に見せたのは大失敗であり、あれで完全に主導権は妻に行ってしまったのだ。
　もう恋はただの嫁では無く、企業グループ全体の財務関係を掌握しているパートナーで、かつ峰家本家の主導権全て握っている立場なのだ。

　嫌みにならない程度にプチ自慢話で晶子のハートはがっちり掴んだとの手応えがあり、早く部屋に連れ込みたくてじっと我慢してたのだ。
　もうしっかりスイートルームは確保済みだ。
　今か今かと待っていたが、２人は窓際の席に移動してから夜景を肴にシングルカクテルを何杯も飲み比べしているようだった。
　妻は可憐な容姿で小柄だが、実は化け物ではないかと思うほどのレベルの酒神だ。
　名だたる九州男児の酒豪達が複数纏めて勝負を挑んで玉砕し、今では彼らは彼女の下僕と化している。
　
　その様子に長期戦を覚悟する。
　妻はもともと美形であったが、あの関西支部開幕に出向いた頃から急に妖艶さが増して美人度が際立ってきたのだ。
　夫である自分自身が一番動揺していると思うし、夫の目から見ても妻はその場の男の視線を一気に集める存在感が日に日に強くなっているのだ。
　郁美の夫、健二が妻を信じているが、不安を抱かずにいられない妻のモテぶりに心穏やかではないという告白を聞いて笑っていた自分が今は恥ずかしいと思う。
　妻の覚醒に不安が尽きないから、妻への配慮は全てに優先するように意識する。

　彼のお預けは思ったより早く終わりを迎える。
　妻が真也を連れて移動を始めるが、いつの間にか２人は手を繋いでかなり親密度を高くしている急変に驚く。
　真也はかなりのイケメンだし従兄妹である紗弥が選んだ夫だけに、自分の行動は棚に上げて本心は妬ける。
　ヘビーフェイスの妻は男性の心をトロトロに溶かして魅了してしまう速度が恐ろしく速いのだ。
　そして男を沼に落とし込んで下僕にしてしまうのだ。
　その証拠にもはや彼の目線には妻しか入らない様子であった。

　思わず妻を目線で追うと、不意に妻の目線がこちらに来る。
　やはり来たかと思いつつアイコンタクトでしっかりアピールすると、妻の笑顔が返ってくる。
　ホッとすると共に、これで今回は心置きなく楽しめると確信したのだ。
　素早く晶子のフォローと怒濤の口説きを開始する。
　まずは真也が他所に行ってしまったことにちょっとご機嫌斜めになってしまった彼女を慰めて、それを肴に彼女を口説いていく。


　晶子は達也と楽しく会話してお酒を楽しんでいたが、やっぱり真也の様子が気になる。
　恋は若くて自分とは正反対なタイプの女性で、会話も上手くて男性が強く惹かれる存在だと思う。
　彼がどんどん彼女に引き込まれていく様子に胸騒ぎが止まらない。
　自分は不倫相手に過ぎないのだが、その状況に焼き餅を抱く自分に複雑な感情が渦巻く。
　２人が部屋に移動する様でラウンジバーから出て行く姿を思わず目線で追ってしまうが、彼は恋しか目に入らない様でそのまま行ってしまう。

　自分が傍にいるのに、気にもとめていない様な素振りに落胆する。
　その心に生じた揺らぎに、達也が優しく言葉をかけてくれる。
　晶子が抱いた女の不満を彼は理解していて、彼女が言葉で欲しかったフォローを真也に代わってしてくれる。
　さすがは大人のジェントルマンだと感動する。
　その刹那、晶子の心の底に秘めた想いが一気に溢れ出して、彼に思いの丈をぶちまけてしまう。
　彼女の中で理性と道徳観が自身が置かれた環境との狭間で悲鳴を上げていたのだ。

　達也はその全てをじっと聞いて頷いてくれる。
　言葉を吐き出しきった後に晶子に押し寄せる自己嫌悪を彼がいきなり否定する。
　そして逆に頑張ったねって褒めてくれる。
　晶子がマイナスに捉えていたことを全て一つ一つプラスに変えていく。
　スーッと心の奥で渦巻いていたものが浄化されていくとなぜか涙が溢れ出す。
　すぐに差し出されたハンカチがとても嬉しかった。
　そして今日、彼と過ごせて良かったと心底思った。

　彼にスイートルーム取っているから、そっちで飲み直そうと誘われて嬉しくて仕方なかった。
　彼女出来る精一杯の答えが満面の笑みであった。
　程よく酔って彼の言葉が心地良くて、スイートルームでの演出もドラマに見るようなものであって楽しい。
　そういう配慮されて口説かれてみて、初めて自分自身の女としてのステイタスを実感する。
　そして次第に生まれて初めての感情を抱く。
　彼に抱かれたいと思った刹那、２人の距離が一気に縮まり唇を重ねていた。



　真也と恋は部屋に入るや、すぐに激しく求め合う。
　お互い色んなことが割り切っていることが分かり合っている２人だから、純粋に肉体を求め合うことが出来るのだ。
　だからお互いの衣服を脱ぐ時間がじれったい。

　まず初めに感嘆したのは真也だ。
　彼は彼女は身長147㎝しかなくベビーフェイスだからロリータ系で大人気だと勝手に思い込んでいたのだが、グラマラスな肢体に圧倒される。
　そこで「会」の長老達が彼女に興味津々なのは当然と納得する。
　ツンと天を仰ぐバストトップが宝石の頂に思える裸身だ。

　恋は既に多くの夫達を魅了し健二や凌もたちまち支持者にしてしまった肢体に絶対の自信を持っていた。
　コンパクトグラマーな肢体は稀少であり、１度抱いたら男達は忘れられなくなってしまう。
　発情した彼女の肢体からはトドメとばかりにフェロモンが匂わんばかりに溢れ出しいく。

　恋はワクワク期待が高まりすぎて、やや焦っている。
　紗弥を夢中にさせたという神棒への期待は大きくて、早く咥え込みたくて仕方がない。
　エイヤーと彼のトランクスを剥く。
　彼女の眼前に噂の逸品がそそり立つと、はしたないことだが涎が出てしまう。
　彼女は本人も自覚している男性器マニアで、その執着は「美あんず」メンバーが退くほどのものなのだ。

「紗弥の宝物　いただきます♪♪」

　男性の多くは女性を口説いた、落としたなどと思いがちだが、実は真逆に誘われてというパターンは意外に多いのだ。


　晶子は女であることを楽しんでいた。
　達也という男性は全ての動作と言葉に愛情が絶妙なバランスで纏わすことが出来る存在なのだ。
　彼女は女であることを子供を産む役割の性という位置づけで捉えて生きてきたし、セックス自体に興味も無かったから、生きる糧は仕事への情熱であった。
　それなのに遅ればせながら性の悦びに目覚めていくにつれて、大人の女としての気恥ずかしさがあるのは事実だった。
　その微妙な女心を理解して包んでくれる彼の存在は究極の癒しであった。

　流れように衣服を剥かれていく状況に酔ってしまう。
　彼は今国内で超有名な経済人で、その彼に女として見られているというシチュエーションにステイタスを感じるのだ。
　１児の母親になってもうオバサンと自分を卑下していた奥底には、やはり１人の女でありたいという本心が隠れていたからこの状況に歓喜する自分がいるのだ。

　唐突に強い刺激に肢体に痙攣が走る。


つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2022年12月30日掲載
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