ずっと愛してます5
羅衣 作
第２話　女帝降臨２


　アグライア（亜紀）に魔杖で突然指された観客の４０代男性は驚いたことであろう。

アグライア　「そなた」
４０男　　　「えっ・・・・・・」
ゼウス　　　「無礼者が！！」
４０男　　　「ひいぃぃぃぃぃ申し訳ございません」

　その瞬間、観客達は自分たちが置かれている立場を認識したのだ。

　彼女は絶対者であり、ゼウスの孫娘なのだ。
　彼女に対して粗相があればゼウスの叱責を受けるという現実を目の当たりにしたのであり、それは一歩間違えれば社会的抹殺を意味するのだ。
　観客は傍観者じゃなく、当事者となったのだった。
　会場がざわつくが、再び彼女の挙手で静まりかえる。

アグライア　「そなた」
４０男　　　「はい　失礼致しました」
アグライア　「お気になさらず」
　　　　　　「こやつの処罰について意見を訊きたい」
４０男　　　「は・・・それは・・・」
　　　　　　「鞭打ちで十分かと考える所存です」
アグライア　「ほお　では　右隣　女性の方は？」
４０女　　　「はい　局部丸焼きがよろしいかと」
　
　４０女の意見に会場の男達がざわめく。

アグライア　「それもよし」
　　　　　　「これに異論がある者がいるのか」
　　　　　　「そこの男　どうじゃ」

　反対側の席に居た５０男が突然指されて驚く。
　
５０男　　　「はあ　それは」

　その瞬間、鳴り響く鞭の音に一同ビクッとする。

　ビバァチィィィィィィィィィン！！

マリア　　　「いつ　休んで良いと言った」
　　　　　　「はあ？」

　バァチィィィィィィィィィン！！

生け贄　　　「あっあぁあぁぁぁゆるぅあぐぅ」

５０男　　　「私も鞭打ちで十分かと考えます」
アグライア　「そうかぁ　ふふふ」

　そう言いながら、電撃最弱にした杖で生け贄の貞操帯をつつく。

　バチッ！！　バチッ！！

生け贄　　　「ぐあっあぁぁぁぁぁぁ」
アグライア　「まあ　この男！！」
　　　　　　「ここ大きくしているのね」
瑠菜　　　　「ほんと　はしたない子」
マリア　　　「この変態には　天罰が必要です」

　さほどの４０女が「丸焼き～」と連呼しだすと、それが会場中の女性に広がって大合唱に発展する。

　そしてアグライアを讃える声が広がっていく。

　同伴者の様子に男たち皆が狼狽えたようにキョロキョロしている様子が滑稽だ。

　再び彼女の挙手で静まりかえる。

アグライア　「裁定下りました」
　　　　　　「電撃の刑に処します」

　その言葉で、会場中の女性達が「丸焼き」と大合唱が再び始まる。

　アグライアが魔杖を掲げると、生け贄が拘束されている杭の先端が丸く玉になっているのだが、そこと杖の間が落雷したようにバチバチとショートしだしたのだ。

　バチッー！！　バチバチィ！！バチッー！！　

生け贄　　　「ぎゃあぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ！！」

　生け贄男の身体が感電して痙攣して悶絶していた。
　毛髪は跳ね上がり、バタバタ逃れようとするのだが、かえって杭と接触するから電撃を喰らう体たらくだ。

アグライア　「女の恨みを思い知るが良い」
マリア　　　「こいつ射精してるよ　変態」
瑠菜　　　　「アグライア様　ご介錯を」
アグライア　「ではＭＡＸパワーで　逝くが良い」

　そのままアグライアは躊躇いも無く、魔杖を男の肩口に振り下ろした。

　バァチイィィィィィィィィィィィィィン！！

　凄まじい火花と閃光で走り、皆の視界が眩むほどだ。

　次に観客が目にしたのは、肩付近が黒焦げでピクピク痙攣して泡を吹いている男の姿だった。

　その男を右手手首だけで「どけろどけろ」とジェスチャーするアグライアの姿に、５大老は絶句する。

　自分たちが召喚した者が本物の女帝なのだと知ったのだ。


　１人目犠牲者は黒服達に担架で運び出されていく。

　これは暴力か、拷問か、と問われれば一般人であれば多くの者が同意するだろうが、この会場の観客達はよく志願した、よくやったと讃える気持ちがほとんどだ。
　そもそも彼らは莫大なお金を寄付して、自ら志願した者達だからだ。
　実際、半身黒焦げの男は快楽の果てに再び射精して果てていたのだ。


　牢屋から２人目の生け贄がマリアによって引きずり出されようとしていた。
　アグライアの冷酷さはマリアの残虐性を加速させて、当たり前のように生け贄の脇腹を蹴り上げる。
　既に局部付け根にコックリングを付けられて、肥大化させている肉棒が赤黒くなっている。

　瑠菜は四つん這いになった生け贄のアナルに電極のようなものを押し込む。
　男が抗うと、瑠菜は腰に下げていた警棒のようなものを手に取り、したたか男の尻に打撃を打ち込む。

　ガチィイィィイイイン！！
「ぐああぁぁぁぐうぅあぁ」

　今度は中央杭前床にある四肢拘束フックに男はうつ伏せに拘束される。
　少しでも抗うとマリアの蹴りと瑠菜の打撃が加えられる。
　男が明らかに負っているダメージから、そこらで行われているＳＭプレイなどお飯事に過ぎないことが一目瞭然だ。
　プレイにあらず、殴る蹴るのバイオレンスショーなのだと皆が理解した。
　だが生け贄も観客達もありきたりのプレイに飽きていて、この異常なバイオレンスな刺激が飢えた心に刺さるのだ。

　もともとマリア(美帆)の過激残酷プレイが拍手喝采されて評価されたのは、そういった「会」に所属している支配者層のニーズを満たしていた側面もあったのだ。
　ただ言うのは優しい。
　平和謳歌して、人が亡くなるのは病気、事故、犯罪以外では皆無になる中で、他人に公然と危害を加える者は稀なのだ。
　まして社会で適合して生き抜く中で、かつ女性でそういった過激残酷な行為が出来る人は皆無に等しい。

　当たり前だが、こういった行為は安全ではない。
　当然、怪我したり、障害を負ったり、最悪死に至ることもあり得る。
　「会」支配層の人間でも常識があるから、そこは避けたいし、やはり免罪符がないと踏み切れない行為だ。
　マリアはポセイドンという絶対者が存在するから、仮に事故が起きても誰も彼女に罪を問う者は存在しない。
　アグライアの場合は、彼女自身が絶対者なのだ。
　これは「会」の中と言うに及ばず日本国内で、唯一無比な存在感なのだ。


　広い会場にボールギャグで封じられた男のアウアウ声だけが響き渡る。

　再び事実に基づいた尋問が始まる。
　これはある意味、従来にない恐怖を演出していく。
　アグライアは一個人を調べようとすれば、あらゆる個人の行動、変遷、言動を全て調べさせられる絶対者なのだ。
　些細な女性トラブルでも、アグライアが身勝手な行動だと見做せば即叱責の対象になるのだ。
　「会」の男達では、そんな話はゴロゴロ直ぐ出てくる者が多数だろう。
　だからこそ絵空事でない折檻なのだから、リアリティショーなのだ。

　アナルに突っ込まれた電極の配線は、魔杖に接続された。
　観客は、これから行われるであろう出来事にワクワクがとまらない。
　それを煽るように、マリアと瑠菜２人による交互鞭打ちが連続して行われる。
　アグライアに仕えて傍にいる瑠菜も、人格が変わったように残酷だ。


　飯田智久はスタッフモニター室で愛妻佐紀子こと瑠菜の変貌ぶりに唖然としていた。
　彼が知っている彼女とは別人過ぎるのだ。
　ここ数年、亜紀の側近として過ごすにつれて、彼女が冷静沈着で頭脳明晰な部分が際立ってきたと思っていたのだが、プライベートでは年齢相応の可愛い妻なのだ。

　その彼女が鬼女のようになっているのだから、まだまだ一般人感覚がある彼には相当ショックだろう。
　ただ彼女は、亜紀と行動を共にすると誰よりも強い女性なのだとは改めて思い知らされたのだ。
　彼に出来るのは、そんな彼女が素に戻ったときの心の痛みを癒やせる存在であることだけだった。


　健二は女たちの集団心理が怖くなりつつあった。

　潜在的に女たちはＳＭでは責められる側に晒される機会が多いし、性的にＭ気質が切っても切れないし、性感が結びつきやすいのは事実だ。
　だがＳＭで責められてアクメを感じていても、彼女達がそれで幸福を感じているとは限らない。
　それを彼は、郁美、美帆、麻輝から学んだのだ。
　確かに女たちは調教されて従属的になるが、それは愛情ではなく支配されての行動なのだ。

　女性が責められるＳＭ公開ショーでは女性の観覧希望者は非常に少ないにも関わらず、今回のような男性が責められる女王様ショーは大盛況で女性単独観覧希望も多いのだ。
　それは女性達の本音が見え隠れしている結果ではないかと思うのだ。
　そしてこれまでは男達が主導する女王様ショーだったから、それほど女性達の不満は表面化しなかったのだ。

　そして女性達は、遂に同性の圧倒的絶対者を手に入れたのだ。
　結果、女性達は男性に苛烈な仕打ちをすることを望むことに遠慮しなくなったし、積極的な意見や行動する者達が激増していくことになる。
　本質的に女たちは嫉妬と残酷さを内包している生き物だから、それが集団心理で増幅されるとなにが起こるか予測不能だ。
　その懸念は後日現実化する。

　亜紀が主導するパープルリボン匿名委員会の設置だ。
　これは完全匿名で全国「会」所属女性達から無作為選抜された１００名の委員会組織で、主旨は女性達を不当な暴力や抑圧から守ろうというものだ。
　完全匿名であるから、家族や夫すら妻が委員と分からないシステムなのだ。
　１００名は亜紀に直訴することが許されるのだ。
　これはさながら秘密警察が出来たようなものだから恐怖のなにものではないが、５大老ですらスルーした事柄を異議唱えただけでも反逆者となるので男達は泣き寝入りだ。


　ゼウスは孫娘の変貌ぶりにご満悦であった。
　そして孫娘が刺激がなくて退屈極まりない余生を一変させて楽しませてくれるのだと確信して嬉しくて堪らない。
　間違いなく今後「会」は一変するであろう。
　思えばあの郁美も孫娘が見つけてくれたかけがえのない存在なのだ。
　息子が残した娘は、間違いなく九条家が千数百年待ち望んだ女性なのだ。
　改めて自分自身が近視眼過ぎて息子が愛した女性を邪険にしてしまったのは誤りだったと認めたのだ。

「予は愚かであった」
「今こそ詫びよう　そして彼女を息子の嫁として」
「正式な形で　聖母として九条家に向かい入れよう」


　ポセイドンは正直羨まし過ぎてたまらない。
　今は没落してしまった三条家と共に「魔性」持つ女達も多数輩出して我が世の春を謳歌していた鷹司家の勢いも低下の一途だ。
　才能を大して評価していなかったゼウスの弟子、健二は正に伏兵であった。

　思えば彼が麻輝、美帆と非凡な才能を「会」にもたらした時点で気がつくべきだった。
　彼の妻、郁美に会ったときの衝撃は凄まじかった。
　そして彼がなんと九条家の女帝亜紀と懇意にしているなど天と地がひっくり返るほどの話だった。
　結局、彼は九条家の忠実な臣下だったのだ。

　自分自身も星の数ほどいる弟子の中で、たった１人三宅真也だけが、郁美と従姉妹の女性を娶るという大金星を挙げているだけで他は良いところ無しという体たらくだ。
　その真也も郁美の影響力に取り込まれてしまっている現状だが、なにを隠そうポセイドン自身も郁美には惚れてしまっているから彼を責めることが出来ない。

　亜紀と郁美と最強の組み合わせを持つ九条家には当分太刀打ちできそうもないが、それでも鷹司家将来の種を蒔こうとする努力は怠ることは出来ないのだ。
　鷹司家の悩みは、九条家の真逆に男子出生率が高すぎて女子出生率が極端に低いことだった。
　当主後継者問題は皆無なのに、「魔性」の持つだろう女性が枯渇していたので、このような「魔性」女性時代が訪れてしまうとほぼお手上げ状態だったのだ。

「数百年間現れなかった「真・魔性」が現れるとは」
「なんという時代じゃ」


　佳子は貴賓席で観客として観覧していたのだが、従姉妹の桁違いの覚醒に唖然としていた。

　彼女が知りうる限り五摂家に誰１人として彼女のように「女帝」として覚醒した存在を知らなかったのだ。

　男系嫡流女子として敬意は払うつもりはあったし、実姉瑠璃子と同年代の家系内先輩女子としての距離感にも配慮していたのだが、そこはライバル視していないと言ったら嘘になるであろう
　それが意図していなかった女同士の関係に引きずり込まれた挙げ句に、もうすっかり圧倒されていて彼女は彗星のように九条家の全権を握っていたのだった。

　名門女子として求められる子供も男子女子とバランス感覚抜群な形に既に設けているのだ。
　そしてなにより彼女の強みは、実弟の存在だ。
　彼の存在で、九条家は次期当主の問題は解決してしまったのだ。
　それだけにとどまらず実弟はまだ学生なのに、若く資質に恵まれた妻の環を迎えているのだ。
　環が男子に恵まれれば、九条家は盤石なのだ。

　そういう流れだけでも彼女は九条家を席巻しているのに、今眼前で繰り広げられているパフォーマンスは桁違いなものだ。
　「会」男性達を魅了しているが、それだけではないのが「会」女性達の羨望のまなざしが全てを物語っているのだ。
　今まで「会」にとどまらす支配者層は男社会で男達の支持母体が骨格としてあったので、女達は夫を通して影響力を行使してきたしそれが普通であったのだ。

　それが彼女の登場で木っ端微塵に破壊されたのだ。
　佳子は、その認識は自分だけではなく会場の女性達全員が感じていると察していたのだ。

　今までは先程のような観客女性の発言は無かったし、皆遠慮があったはずなのだ。
　一般的には「男女平等・同権」とうたい社会は動いているような体だが、日本は微動だにしない男尊女卑の国の代表格なのだ。
　それは支配者層がその屋台骨だったからだ。
　潜在的に女達は我慢という諦めがあったのだが、各自自身が男社会と戦っていくなんて気概は無いし、お気楽な立ち位置も決して不満でなかったからスルーしていたのが実態だ。

　だからこそ女性達は、女帝の登場にあっさり迎合したのだ。
　明日から夫達は妻から投げかけられる辛辣な言葉に驚くことになるだろう。
　そして強気な妻達に次第に圧倒されていくだろう。
　そもそも家内の勢力争い、マウンティングは妻達が実権を握っているのだ。
　仕事場はともかく近所付き合い、友人関係、そのほとんどは妻達のネットワークが張り巡らされているのだ。


生け贄　　　「はあぁぁ　はあぁ　はあぁぁぁ」
アグライア　「この男！」
　　　　　　「なかなか立派なものをお持ちね」
瑠菜　　　　「はい　これで悪行重ねたようです」
マリア　　　「下劣な　女の敵です」
アグライア　「皆の意見を訊こう」
　　　　　　「そこの女性の方　いかに？」

　再び魔杖で５０代女性観客を指名する。

５０代女性　「はい　貞操帯１年の刑がよろしいかと」
アグライア　「なるほど　こやつには良さげな」
生け贄　　　「むがぁいやぁ　やあっめぅてぁぅぅぅ」
マリア　　　「それは素敵　うふふ」
瑠菜　　　　「なるほど」

アグライア　「左隣の女性の方は　いかに？」

５０代女性　「はい　その禍々しいモノを」
　　　　　　「赤蝋燭で痛めつけて欲しいです」
アグライア　「それもよし」
　　　　　　「左の男　どうじゃ」
４０代男性　「はあ　鞭打ち１００はいかがでしょう」
アグライア　「１００とな　死ぬぞ？」
マリア　　　「それ最高」
瑠菜　　　　「まあぁ」
アグライア　「あと　アナル丸焼きも面白かろう」
瑠菜　　　　「はい」

　会場中の男達がザワつきだすが、再び女性観客達の合唱に圧倒されていく。

「貞操帯！！　貞操帯！！　貞操帯！！」

　それをアグライアの挙手が制する。

アグライア　「裁定下りました」
　　　　　　「局部赤蝋燭地獄」
　　　　　　「と同時にアナル電撃の刑に」
　　　　　　「しかし　それだけでは生ぬるい」
　　　　　　「その上で　貞操帯１年の刑に処します」
　　　　　　「女性６人も泣かした大罪は」
　　　　　　「見逃せません」
マリア　　　「アグライア様」
　　　　　　「我が鞭も振るいとうございます」
瑠菜　　　　「うふふ」
アグライア　「それも一興」
　　　　　　「電撃に合わせて　よしなに」
マリア　　　「はっ　ありがとうございます」
　　　　　　「では　生け贄よ　覚悟せよ」

　会場の男達が「貞操帯の刑」に反応し動揺が広がっていく。
　しかしアグライアの次の行動で静まりかえる。

アグライア　「ほおぉ　そなた　貞操帯に不満か？」
生け贄　　　「ぐはぁやめてぇぐぅがあやめぐう」
アグライア　「そうか　そちは」
　　　　　　「このアグライアに従えぬというのだな」
生け贄　　　「ぎぁぐぅあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

　アグライアはそう言うと、仰向けに転がされた男の胸にピンヒールの靴でのし掛かっていく。
　そしてグギッと鈍い音が会場に響いたのだった。

マリア　　　「まあ　うふふ　あばら折れたみたいね」
アグライア　「下僕の分際で　身の程知らずめ」
生け贄　　　「ぎあぐぁあああぐあぁぁぁ」

　アグライアは、意に介さず暴れる男の手のひらもピンヒールで踏みつけていく。

　バァシイイィィィィィィィィィィ！！

マリア　　　「見苦しい　暴れるな！！」

　マリアは暴れることに怒り、男の両脚を鞭打つ。
　再びグギッと鈍い音が会場に響いたのだった。


マリア　　　「あらら　手もいっちゃった？」
アグライア　「二度と無駄口挟まぬように」
　　　　　　「もう一本　あばら辺りいくか」
マリア　　　「素晴らしいですわ」
瑠菜　　　　「では　反対側を」

　もはや会場の男達は言葉が無いし、３女王を止められる者は存在しないのだ。

　唯一の希望は５大老だけであるが、ポセイドンは興奮してかぶりつきで見入っている有様なのだ。

　むしろ会場の女性達に同情というか憐れみの感情が広がったのかもしれない。
　再び「貞操帯！！」という合唱が会場に鳴り響く。

　それに応えるアグライアの挙手に会場が静まりかえった。

瑠菜　　　　「アグライア様　ご介錯を」


つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2023年3月4日掲載
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