ずっと愛してます5
羅衣 作
第39話　優月


　田原グループからの「会」スタッフである尾崎拓海の妻である優月(ゆつき)も、葵や美羽らと同じく人生が激変してしまった女性だ。
　５人のスタッフ妻達の中では、亜紀・凌夫妻に一番深く関わっているのが優月だ。

　優月はもともとは関西に本社がある超有名家電メーカー社長秘書を務めていたキャリア志向の強い女性であったが、田原グループ設備関係を取り仕切る若手幹部社員だった尾崎拓海と出会い彼に猛アタックされて結婚したのだ。
　拓海は情熱家だったし年収も彼女の自尊心を満たすだけの高収入だったから、彼女は打算もあって家庭に入ることを選択して自身のキャリアを放棄したのだった。

　尾崎夫妻は子供に恵まれて４歳になる一人娘がいる。
　優月が期待した通り拓海の年収は同世代と比べて極めて高くて、その生活水準は高く家政婦などを雇用する絵に描いたようなHIGH SOCIETYに近づくものであった。
　優月にすれば、このまま夫が出世すれば４０歳代後半には長者番付の仲間入り間違い無しだったから女として勝ち組安定コースであり、順風満々で夫へのサポートを怠らなければ間違いないと考えていたことだろう。

　まさにそんな時に、拓海が新たな重大事業の担当して田原氏から抜擢される。
　当初は更なる夫の出世を期待した彼女だったが、自ら当事者になる展開に狼狽えた。
　彼女にすれば学生時代から会社員秘書時代に至るまで恋愛経験を重ねて、自身の人生を委ねる存在として選びに選び抜いた結果が夫である拓海なのだ。

　彼女は打算だけの女ではなく徹底していて、妻としてのケジメとして男という存在は夫だけと堅く決めているからよそ見しないし、彼への愛情も一切手抜きしないで常に彼へのアピールも欠かさないし、彼から常に女に見られるように努力も惜しまなかった。
　お互い子供は１人で良いと意見一致して、その結果２人は楽しむセックスに特化して夫婦生活はお盛んそのものだったのだ。
　だから夫婦で色んな刺激的な経験もしている中での話しであったから、彼女的には動揺がある。

　夫である拓海だけに限っているから、女として興味はあるが怖いと感じる快楽の領域に踏み込んでいると自覚しているからだ。
　田原氏からの誘いは当たり前だがその領域に日常的に踏み込むものであり、本能的に夫以外の男性とその領域に達したら自身がどうなるか恐怖しか感じなかった。
　避けたい、止めたいという気持ちを持ちながら、事態は進行してそのまま引きずり込まれていく。


　目の前で同様な環境に引きずり込まれた妻たちが次々犯されていく中で、拓海はお気楽にも快楽の大河を先に渡ってしまっていることに呆然自失に陥る。
　場に広がる男と女の快楽にほだされて、彼女の意識に関わりなく肢体は高ぶっているのだ。
　田原氏の妻、亜紀に呼ばれて堪らず彼女に同行してその場から逃げ出してしまうが、行った先には田原氏が待ち構えていたのだ。

　優月は自身の結婚式で出会った拓海の総帥である田原氏に、自身が女として見られていると本能的にその時に自覚していたのだ。
　恋愛経験豊富な彼女の女としての本能であろう。
　だからこそ目立たないように、きっぱり仕事も辞めて家庭に籠もったのだ。
　この感覚は拓海にはさすがに話していない。

　彼女ほどのキャリアがあれば、当時、田原氏は結婚イコールHIGH SOCIETYの生活という結婚したいランキングダントツの資産家であることは百も承知だ。
　その彼女にとっても田原氏は高嶺の花であり、まさか自分が彼の目にとまるなんて想定外の事態だったのだ。
　もちろん既に拓海のことを愛しているし、もはや今更彼を裏切るなんて考えたくもないからのケジメだ。

　そこまでして数年間穏便に過ごしてきたのに、遂に田原氏の魔の手が自分に伸びてきたのだと観念した。
　彼のような男性に執着されたら、自分のような一般女性に逃れる術は無いのだと実例をたくさん見て知っていたのだ。
　田原氏が若妻を迎えていたから懸念はもうないだろうと油断していた優月は、あっさり彼の腕の中に捕捉された。
　堂々と若妻に手引きさせて自分を招き寄せるなんて想像できる限界を超えていたのだ。
　心のどこかで、いつの日か田原氏に抱かれる日が来るかもしれないという予感が的中したのだった。


　案の定、田原氏は女というものをよく知っている。
　たちまち押し倒されて情熱的なキスをされて、肢体をあっという間に高められていく。
　女の悦びを知っているだけに踏みとどまるなんて無理だし、彼女の貞操感は既に夫自らぶち壊しなのだ。
　田原氏とのセックスは破壊的だった。
　彼女の性的キャパシティをあっと間に吹き飛ばして、快楽の奴隷に落としていった。
　正直、途中から記憶が跳んでいる。
　一度崩れた貞操はもはや元には戻れない。

　優月は「会」関西支部専属秘書に任じられて、気がつけば奔放なセックスライフを送る代表的な妻となっていたのだ。
　次から次へと男達に言い寄られて快楽に堕ちていく彼女をずっと抱きしめて守ってくれたのは夫の拓海であった。
　結局、彼女には誰よりも愛してくれる拓海が心の拠り所だったのだが、狂乱に明け暮れるアクメの果てに彼女がだとりついたものは「オンナの欲望に限界はない」という悟りであった。

　
　あれから２年近く経ったが、オンナとして毎日が充実している。
　同時に諦めていたキャリアウーマンの人生を取り戻していた。
　もともとビジネス英語は得意で前職では海外担当の秘書として活躍していただけに、亜紀が九条家に戻ると当時に関西支部の交友関係は一気にグローバル化して優月は多忙であった。
　なにより女として総帥田原氏から寵愛されていることが同時に彼女に多くの権限が付与されたことが大きい。

　前職は窓口と調整役が主だったのだが、今では同時に決裁者という立場であるから仕事として醍醐味があって彼女の封印していたキャリア志向が蘇りつつあった。
　仕事が順調であればあるほど、セックスの面でもより刺激的なものを求めるようになっていくは男も女も同じなのだ。
　普通であれば夫へ裏切りであり家庭的破綻を考えるから女は自制するが、彼女の場合は夫自ら彼女を解き放つような行動するし、むしろ彼女の大胆な行動を喜んで賛美してよりキツく抱きしめてくれるから、もはや彼女は怖いもの無しになってしまったのだ。

　「会」関西支部専属秘書の責任者になった優月の権限と影響力は、かつての東証上場企業の秘書とは異次元でかつての上司であった社長らも超越してなんと自治体の長である知事も越えてしまうのだ。
　５大老に対する拝謁調整も関西地区では優月が窓口の全権を握っていて彼女が認可しなければ予定すら組まれないのだ。
　関東本部にすれば彼女の権限が大きすぎで懸念を抱いたが、彼女の背後には亜紀が見えていたし、なにより彼女自身も５大老から可愛がられていたので彼らは皆一様に沈黙し静観するしかなかった。
　亜紀の治世は要の要職に優月のような女性を据えることが特徴であり、その始まりが足元の関西支部からだったのだ。


　優月の唯一の懸念が田原氏に身も心も全て奪われることが怖くて仕方なかったのだが、亜紀という絶対的な存在がその懸念を打ち消してくれたことが大きい。
　既に奔放な性生活を送っている状況であるが、夫である拓海への愛情はむしろ「会」に関わる以前より強く執着している感情であった。
　なにより拓海が常に抱きしめてくれることが、自身でも不甲斐ないと思うほど男たちの間を揺れ動く女心をいつも彼の方へ強く引き戻してくれることがなにより幸せに感じるのだ。
　これは妻にとって大切なことなのだ。

　関西支部専属秘書という立場を与えられたことで、優月は「美あんず」に属しながらもっともビジネス色が強い傾向があってある意味特異なメンバーでもあった。
　もともとはキャリア志向が強いタイプであったが、実際には社会に出て男に比べてあまりに女が不利な現実を目の当たりにして心が折れて結婚に逃げたのだ。
　正直悔しかったが、民間企業では女は色んなものを犠牲にしないと駄目と思い知らされたのだった。
　その彼女が女だからこそ手に入れた影響力と地位は格別なステイタスを彼女にもたらした。

　男社会相手に彼女はあえて強烈に女丸出しで対応し始めるのだ。
　時には気まぐれで強烈に我が儘だし、なにより彼女の好き嫌いで物事を決め始めるのだ。
　優月は５大老ヘルメスのお気に入りであって、彼の寵愛が彼女を無双する権力を保障し独裁を可能にしてしまった背景があるのだ。
　既に５大老は政財界より「美あんず」の女たちの方が興味津々であり皆お気入りが存在して寵愛していた。
　実際、５大老は政財界の親父と面談するより優月と過ごしたいと本気で思っていて、彼女が彼らをどう扱おうが興味すら無かったのだ。

　以前であれば彼らの寵愛する女は愛人や囲い者であって表舞台社会的地位を持って活動することはほとんど無かったのだが、「美あんず」の女たちは優月を初めとして皆表舞台で活動するからこのような事態が続出していくことになるのだ。
　これは五大老自身が気づいたりして自重するほか無い状態で、この件で意見を言ったり文句を言っただけで５大老に対する反逆行為という禁忌に触れ忖度されて粛正されてしまうのだ。

　という背景で、なにより女は昔の出来事を執念深く記憶しているから恐ろしいのだ。

　彼女が現役時代に当時執行役だった男が現在社長になっているのだが、彼女は当時彼にセクハラされたことを根に持っていて彼に対する扱いは極めて冷淡なのだ。
　彼は当時のことなど覚えていない故に、会社ＯＧの彼女が協力してくれないことに苦しむことになるのだ。
　これが単なる女の嫌がらせ報復では済まない。
　彼の率いる会社は数々の不利益を被る事態に追い込まれていき、業績が低迷してしまうのだ。
　５大老を中心とした統治機構への根回し成否が日本の経済界では大きな要素を占めているのだ。
　結果的に彼は業績不振の責任をとって辞任することになるのだった。


　優月は本人も一度は諦めた社会的地位を手に入れた形であったが、彼女自身がそもそも望んだ女としての幸せを手に入れたのかは意見が分かれるだろう。
　彼女自身は華麗な恋愛遍歴は経てはいたが、道徳観はしっかりしていて恋愛の同時進行などは一切無くて１つの恋愛に真剣に向き合い終わりを迎えたら区切りがつくまでは次の恋愛に向き合えない生真面目なタイプだったのだ。
　その彼女が夫として拓海を決めてからは彼に身も心も一途に尽くしてきたのは紛れない事実なのだ。
　優月は得たものもあれど、女として失ったものもあるのだ。

　郁美という若妻による誘惑に負けてしまった夫の安易な行動により、彼女は予期しない男と女の欲望が渦巻く世界に投げ込まれてしまったのだ。
　だからといって愛する夫を見捨てられないのだ。
　そんな彼女に凌があっさり手を伸ばしてきた。
　散々、夫と肢体開発を楽しんでいただけに、凌との激しいセックスに優月はあっという間に奈落の底に堕とされていってしまった。

　夫とのセックスで満足していた筈なのに、実は井の中の蛙でパートナーが違えば異質なセックスの世界があることを知ってしまったのだ。
　次々知らなかった経験したことのない深い女の性感は知ってしまうと、彼女の肢体に潜んでいたモノが目を覚まして疼き出して、どんどん加速的にセックスに溺れていく自分を抑えられなくなっていく。
　周りに流されて何人もの夫たちとベットを共にするとまた違う男性が欲しくなっている自分に気づき動揺が隠せなくなっていく。

　結婚前には感じなかった感覚であり、自身の肢体がどんどん鋭敏になっているのだ。
　既に性的道徳観は崩壊しており、当初はどんどん破廉恥になっていく自分に戸惑っていたが、いつしかあまりのセックスの気持ち良さに開き直った。
　もともと夫とハプニングバーやカップル喫茶に行って人前で大胆なセックスしたりして、乱交こそしていなかったが刺激的なセックスには興味津々だったのだ。
　周囲を見渡せばみんな大胆にセックス楽しんでいて、自分だけ生真面目に思い悩んでも無意味だと感じたのだった。

　開き直って自らの快楽へ素直に向き合うようになるともっともっと気持ち良くなりたいのだ。
　夫にも凌にも素直にリクエスト出来るようになって、彼らは忠実に応えてくれるから何度も宙を舞うほど逝くことが出来るようになっていきもはや病みつきだ。
　以前では怖かったアクメの向こう側にも躊躇無く身を投げるようになっていくのは、夫たちが必ず自分を引き戻してくれると信じているからだ。

　そんな時に関西支部開幕の催しがあり、ヘルメスに出会ったのだ。
　ヘルメスお持てなし役としてずっと傍に居たのだが、予想通り時間さえあれば肢体を求められて犯され続けたのだった。
　それ以来、ヘルメスに気に入られて特別に寵愛されて彼が彼女のあらゆることの後ろ盾になったのだ。
　初めは祖父のような老人に抱かれることに抵抗感が無いと言ったら嘘であったが、彼は女体を知り尽くしていて前戯だけで何度も逝かされてしまうことが繰り返されていくうちにいつしか彼女は彼に逢うことを楽しみになっていたのだ。

　そしてヘルメスに未知のＭ的性癖を肢体の芯まで調教されて緊縛妻として深淵に堕ちていった。
　今では縛られて吊されただけで蜜壺が大洪水になってしまう典型的なＭ女であった。
　夫たちとは決して開門しなかったであろう肢体の奥底に潜んでいた禁断アクメに目覚めてしまったのだ。
　そんな従順な優月をますますヘルメスは可愛がり、いつしか最も寵愛する女性になっていくのだった。
　ヘルメスは若い彼女の心を次第に独占したくなっていって、嵯峨家伝来の媚薬まで駆使して彼女を虜にしていくことに手段を選ばなくなっていく。

　すっかり緊縛女に堕ちた優月にとって媚薬がもたらす快楽は破壊的だった。
　彼女は徐々に強められていく媚薬の魅力に夢中で、今ではヘルメスが連絡したら直ぐに逢いに来るほどであったし、自ら欲しいとおねだりするほど堕ちていたのだ。
　５大老達は高齢ゆえに若い男に精力では敵わないが、経験と知識そしてテクニックについては一日の長があるのに負けるのはプライドが許さない。
　どんなに年老いても気に入った若い女を自分のモノにしたいのだ。
　その切り札が彼らが独占する五摂家伝来の媚薬だ。


　ヘルメスの究極目的は優月の独占であった。
　とある週末、尾崎拓海・優月夫妻はヘルメスの私的夕食会に招待される。
　優月は一抹の不安に抱くが為す術も無い。
　優月は夫には自分がヘルメスとかなり深い関係にあるとは隠していたし、緊縛女に堕ちたなんて明かしていないのだ。
　女がみんな抱える自己矛盾の塊が現在の優月だった。
　妻として夫として愛しているのは未だ拓海なのに、頭ではそう考えているのに肢体はヘルメスとのセックスに傾斜していると自覚しているのだ。

　案の定夫から引き離されて別室でヘルメスに襲われてしまう。
　おかしいなと思っていたが、既に飲み物に媚薬を盛られていて抗うことが出来ない。
　あっという間に身ぐるみ脱がされて全裸で縛られていつものように片脚を上げた姿勢で吊される。
　数々の淫具で責められ辱められてどんどん大洪水になっていく蜜壺。
　溢れ出て片脚に伝っていく蜜がヘルメスは大好物だ。
　優月は目の前にある巨大な鏡に映る自分の姿に絶望し打ちひしがれる。
　そうそれが夫が知らない自分の本当の姿であり本性なのだ。

　吊されたまま背後から為す術も無く挿入され突き上げられる。
　ヘルメスは８０代半ばの高齢とは思えないパワフルさで優月を翻弄していく。
　押し寄せるアクメに飲み込まれて夫に聞こえるかもしれない喘ぎ声を抑えられなくなっていく。
　立って吊らされて急激に高められると次第に凄まじい尿意に晒される。
　さんざんビールなどを勧められて飲んだから尚更だ。
　不意に敏感なお豆さんを手淫されるとあえなく決壊してしまった。

　シャルゥ♪♪シャルゥシャアァァァァァァァァァ♪♪

　派手に失禁してしまうともはやどうでもなれとなってしまうのはいつものことだ。



　マジックミラーの向こうで夫、拓海は膝を突いてうな垂れていた。
　愛妻、優月はヘルメスに完全に調教されて緊縛妻になってしまったと初めて知ったのだ。
　初めて取引先で出会った彼女は凜とした美しいキャリアウーマンだった。
　一目惚れして彼女のことを調べて、あの手この手使って、やっと口説き落として付き合いプロポーズして結婚した愛妻中の愛妻だ。
　毎日楽しい結婚生活で我が子に恵まれて、あとは夫婦生活を満喫しようと工夫しながら子育てと両立していろいろ楽しんできた。
　どんどん性に芽生えていく妻が楽しい。

　マジックミラーの出来事で妻を責める気は起きない。
　そもそもだが妻をこのような世界に連れてきたのは自分自身なのだ。
　恩義があり尊敬する田原氏に付き従いたいと自ら行動した結果なのだ。
　妻が担った役割も知っているし、それでヘルメスを初め多くの夫達と肉体関係が出来ていることも認識しているし、そもそもだが自分自身も「会」の世界にどっぷり嵌まり込んでいるのだ。
　それでもマジックミラー向こうにある妻の姿が彼が全く知らないものだったことがショックだったのだ。

　ヘルメスの意図は拓海を圧倒して挫かせて優月を略奪するものであったろう。

　しかしそれは逆効果であった。

　拓海は跪きながら得体の知れない興奮に襲われてズボンを下げてマスを掻き始めていたのだ。
　新たに寝盗られ願望症候群という性癖に目覚めた夫が１人現れたのだ。
　
　そのことで拓海と優月の夫婦仲がそれまで以上に強固になるとはヘルメスは全く予想もしていなかったのだ。

　摩訶不思議な男と女の人間模様。


つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2024年11月24日掲載
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