ずっと愛してます5
羅衣 作
第44話　　夫婦の絆３


　龍聖は萌衣に案内されてお互い思い入れが深いイベント施設に来た。
　彼女はＡＩに興味があるのか、それとも考え方が柔軟なのか、分からないが、こういう技術見いだして実現してしまう先見性が凄いのだ。
　最新かつ世界初のＡＩ支援付きマジックミラーピーピングシステムはこの手のものとしては前例のないものだと思われる。

　視聴席にはオペラグラスのようなＡＩ眼鏡が備え付けられていて、直接肉眼で俯瞰してマジックミラー越しに見るのも良し、ＡＩ眼鏡を使えば装着者の性的指向をリアルタイムでトレースしたＡＩが視聴者が望む視点と視野で自由に見るのも良しという、超ハイテクな覗き見システムなのだ。
　視覚だけでなく音も視点と距離感感に追従して聞くことが出来るというＡＩシステムは凄すぎるのだ。
　その分、お値段はビックリするような価格だが、現物を見た誰もが絶賛の嵐だったのだ。
　ある意味、自社の評価はこれを提案したことで爆上がりだったのだ。

　龍聖は使途を理解しているだけになにやら胸騒ぎがする。
　萌衣と過ごした衝撃のあの晩、ハプニングバーでの出来事を経験しているだけに妙に生々しい。
　気がつけばプレイルームダウンライトされていて、仮置きなのか不自然にど真ん中に丸く巨大なベットがおかれているのだ。
　萌衣に促されて最前列に座ってこの機器についての話をする流れになる。


　唐突にプレイルームに男女が入ってきたので、思わず凝視してしまう。

「晶子！！　晶子じゃないか！！」

　ビックリして立ち上がろうとしたが萌衣に落ち着くようにと制止される。
　晶子と一緒にいる男性は達也会長であった。
　２人は施設の見学をしている様で、この照明がどうのこうのと会話してるのだ。
　龍聖は妻晶子が同じ福岡に来ているなんて全く知らなかったし、あそこまで達也と懇意にしているなんて知らなかったのだ。
　ビジネスでは男女間には一定の距離感というものが暗黙に存在するが、２人の話す距離と言葉のキャッチボールが違うと龍聖でも分かる。

　急に達也が妻を背後から抱きしめて口説き始める。
　妻は恥ずかしがって嫌々しているが、本気の拒否の姿勢は見えないのが衝撃的だ。
　妻の顔がいつもの母親の顔とは全く別の女の顔だったことに動揺が走る。
　そしてあの下着の匂いが急に蘇ってくる。

「そうか　妻は　峰氏に・・・」

　その様子を横から見ている萌衣は不思議そうな目で見つめている。
　萌衣は寝盗られ願望の男たちは複数人見てきたが、未だに彼らはそれで幸せなのかと疑問なのだ。
　貞操というものを考えなければ、寝盗られ願望という環境はセックスに前向きな妻にすれば正直得なことしかないし、いろいろ経験すればするほど肢体が開発されて視野が広がり見えてくるのは極楽浄土しかないのだ。
　もはや萌衣ですら既にそう思っているのだ。

　萌衣は彼の妻晶子の困惑する気持ちはよく分かる。
　達也と関係を持つと女は為す術もなく食べ尽くされてしまう。
　普通ならそれで彼の愛人にされて堕ちて精神的に思い悩むことはないとすら思う。
　しかし晶子は龍聖を知っていて、肢体の芯から彼のことを愛している自分を自覚していてそれが微動だにせず残っているからこそ苦しいのだ。
　彼女を救えるのは龍聖しかいないのだ。

　ただ龍聖にはまだ時間が必要というのが恋と萌衣の見解だった。
　しかし晶子の状態はどんどん悪化していく。
　三宅真也は紗弥を失ったことで自分の淋しさを晶子で埋めようと抱きついてくるし、晶子は息苦しい状況の中で大人の余裕たっぷりな達也に癒やしを求めて彼に会いに行ってしまうがしっかり食べられてしまうのだ。
　夫に隠れた不貞行為という現実が彼女に重くのし掛かっていたのだ。

　次第に崩されてベットに押し倒されてしまう晶子。
　萌衣ですらその気が無かったのにあっという間に口説かれて抱かれてしまったのは、ひとえに達也は女殺しであることに尽きる。
　彼は抜群の容姿、富と権力、全てを持っているし、女の思考回路や動きを知り尽くしているのだ。
　言葉ではあしらいきれない、逃げようと身体を動かすと先回りして自ら彼の腕の中に嵌まり込んでしまう。
　動揺した瞬間、蕩けるようなキスをされると女はなにも考えられなくなるのだ。

　萌衣は生まれて初めて怖いと思ったのが達也だった。
　正に女にとって最大の強敵という男だ。
　その彼を尻に敷き堂々とオンナとして生きる恋に萌衣は心酔していた。
　彼女に誘われて秘書になることを同意したあの晩、萌衣は恋に口説かれてしまったのだ。
　初めての同性同士の関係に戸惑い抗ったのだが、龍聖のことで揺れ動く心の乱れに忍び込まれて引きずりこれていく。

　その恋に同行して神戸出向いた時に亜紀に引き合わされる。
　既に開発済みの肢体は翻弄されて一方的に狂わされた挙げ句、亜紀の夫凌にも襲われて自分は雌なんだ思い知ったのだ。
　凌とのセックスは、もはや異次元な領域で一気に成層圏突き抜けるような経験だった。
　恋に放心状態で優しく抱きしめられながら、彼女に言われた言葉が未だに胸に強く残っている。

「別に龍聖のこと　忘れるなんて必要ない」
「女は　この人と思った人を」
「自由に　そっと胸の奥にしまっておく　なんて」
「普通のことなのよ」
「そして　それがきっと貴女を強くする糧になるの」
「だから遠慮無く　彼を見守っていくのは自由よ」
「でも　オンナ同士の仁義は大切よ」
「落ち着いてからでも　イイから」
「晶子を助けるの　手伝って欲しいの」
「それが　貴女が再出発するきっかけになると思う」

　そしてとうとうこの日がやって来たのだ。


　ＡＩ眼鏡についたイヤモニから粘質な音が漏れ始めていた。
　２人の舌の絡み合いが奏でる音なのだ。
　もう晶子は達也の手淫の前にすっかりセックスモードに引きずり込まれていて、ここがイベント会場という認識が希薄になっているのだろう。
　萌衣は龍聖がどういう行動を取るか気に掛けていた。
　普通の男性ならば取り乱し怒って隣室に走って行く筈で２人を止めるはずだ。
　心のどこかでそうであって欲しいとの願いがあるが、彼の反応は予想していたとおり真逆なのだった。

　最初こそ驚きの表情を浮かべていたが、いつしか鼻息が荒くなり興奮気味で心なしか股間も大きくしているようだった。
　萌衣はこうなると思っていたが、これも男と女のひとつの形なのだと今の彼女は冷静に受け止められるほど成長したのだ。
　「美あんず九州」に独身女性で参加しているのは萌衣ただ１人であり、龍聖を見守りながら自分は次なる出会いを探すしかないのだ。

　ただここ数ヶ月の経験が彼女を逞しく強靱なオンナに成長させたことは間違いなく、容姿、社会的な地位、ベットで必ず男心を鷲づかみできるという凄い自信、それら背景に虎視眈々と自分に釣り合う男性を物色していくのだった。
　その自信はハッタリではないのだ。
　達也も凌も彼女のお願いを既に断れないほど、完璧に鼻毛を抜かれてデレデレに鼻の下伸ばしていたのだ。

　このシステム自ら見つけて機種選定したのだが、本来は真面目な用途で開発されたシステムでそれを彼女が勝手に「覗きシステム」と名付けて納入したのだが、あまりツボに入ったものなので他人事のように感心してしまう。
　肉眼俯瞰して見ると最前列でも男女がベットの上で縺れ合っているとしか分からず、ある意味ＡＶの方が臨場感がある感じた。
　それがＡＩ眼鏡を掛けると状況が一変する。

　視点だけでなく距離感と視界が、どのように見たいか考えるだけにそのように見えるのだ。
　それもその場でしか聞けない音もリアルタイムに聞けるのだ。
　女の萌衣ですらドキドキが止まらなくなってしまう。
　もう参加している感覚でＡＶを遥かに凌駕する臨場感が見る者を圧倒する。
　試しにキスで舌をどのように絡めているか見たいと思うだけで、唐突に２人のどアップに切り替わるのだ。

　ハッとしてＡＩ眼鏡を外し龍聖の様子を確認すると、彼も既にＡＩ眼鏡を付けて残酷な現実に直面している真っ最中だった。
　萌衣はこのシステムが寝盗られ願望症候群の男たちにとって究極の夢のようなものなのだと知った瞬間で、純粋に彼が見ている視野に興味津々だった。
　持っているタブレットを操作してまだ自分しか知らない管理者ＩＤでシステムにアクセスして龍聖が見ている視野を覗き見てしまう。
　
　萌衣にとってはその視野が意外なもので、ある意味男たちが抱く寝盗られ願望症候群の深淵を覗いてしまった気がするのだ。
　彼が主に見ているのは肢体的なものではなくて晶子の表情と秘部の濡れ具合なのだ。
　妻が性的刺激で徐々に乱れていき妻から女に引き戻され雌の本性を現して、秘部を濡らして性的快楽に負けていく切ない表情に惹きつけられていることが手に取るように伝わってくるのだ。
　ある意味、装着者が見たい角度で見えるこのシステムはあらゆる性癖をもつ人々を魅了していくことだろう。


　晶子は為す術も無く達也に肢体を自由にされてしまっていた。
　萌衣も彼に掴まったら逃げられないし、あっという間に訳が分からなくなり何度も逝かされて全てを残さず食べられてしまうのだった。
　その彼の妻、恋は純粋に凄いと思っていたのに、彼女に紹介された亜紀はもっと凄かったのだった。
　亜紀の夫、凌はもっと凄かった。
　萌衣はセックスで絶叫したのは生まれて初めてだ。
　萌衣は女では到底勝てない男たちの存在を初めて知った形だったが、その男たちをしっかり妻として掌握している彼女たちの存在に感銘を受けたのだ。

　「美あんず」の本質は彼女たちに続かんとするオンナの園なんだと理解した萌衣は早々に迎合し馴染んでいたのだった。
　亜紀や郁美、恋は「美あんず」のメンバーに積極的に情報共有し夫たちを管理共有する体制を築こうとしていたのだ。
　このことを早々に理解した萌衣はレアであり、晶子は未だ気づいておらず漂流していることが今日この日の差となって現れているのだった。


　達也は今回やっと出番が回って来てエロエロだった。
　晶子の肢体は見事に仕上がり、女として熟しきり見頃食べ頃であり正に超高級ステーキなのだ。
　舐めてよし吸ってもよし揉みまわしても良し抱いても良し突いても良し掻き混ぜても良し、もうエロいことしまくっても見事には期待通りピンク色に燃え上がる女なのだ。
　そんな妻を放置していた夫龍聖に対して半分呆れる気持ちもあったのだが、彼には萌衣が肩入れしてることを知って自ら動くことにしたのだ。

　既に達也は優秀で逞しくしたたかな萌衣のことが可愛くて仕方がない。
　仕事の面では彼が事業家として活動し始めて出会った最強・最高の人材が萌衣なのだ。
　その萌衣を取引先のアシスタントだった時にただ１度面談しただけで見いだした恋の眼力に感服したのだ。
　初めは恋専属の秘書という位置づけであったが、その働きぶりに達也は驚愕したのだ。

　もともとは達也はなんでも自分で決めるタイプで、スケジュールですら自分で決めないと些細なことでもイライラする典型的なワンマン独裁者なのだ。
　その目の前で恋がどんどん快適にスケジュールをこなして、確保したプライベート時間を満喫している様子に嫉妬したのだ。
　興味がないふりをして萌衣の仕事ぶりを覗いた彼は驚愕する。
　恋のタブレットに毎日スケジュールが送信されてくるのだが、もうスケジュール表というレベルを超越しているのだ。

　交通関係のチケット手配の全ても、関連する資料・データも全て見やすく分類、リンクされていて、恋はそのタブレットがあれば他は何もいらないという状態になっていたのだ。
　それも資料・データには必ず萌衣が意訳した概要が全て記載されていて、見たい探したいデータをいちいちそれぞれ開かなくても探せてる上に、その意訳があまりに的確で簡潔明瞭すぎるのだ。
　それ見て恋が彼女を絶賛して抜擢した理由を理解したのだ。
　達也は妻に泣きついた。

　なんとか妻に納得して貰い萌衣と面談して再び驚かせられる。
　彼女が導入したいＡＩ情報アプリを提案されたのだ。
　かなりの投資額だが、達也はそのアプリの可能性に瞬時にワクワクさせられたし、そのアプリの価値を見いだす彼女の先見性に驚いたのだ。
　だから若い彼女に全て託してみたのだ。
　その結果は峰ホールディングスに激変をもたらした。
　あっという間に無駄や錯誤が解消されて、それだけで営業利益が増えたのだ。
　達也はＡＩ情報アプリを変幻自在に活用する彼女は天才と確信したのだ。

　そして絶対他社にヘッドハンティングされてはいけない人材と考え、彼女には誰もが手が出せないほどの優遇を与えていくことになる。
　とはいえ逢えば可憐で可愛い美女であったから、思わず口説きまくってしまうのは彼が生粋の女好きの証しだった。
　萌衣は恋愛とセックスそして仕事を見事に自分を分けていくタイプで、達也ですら彼女の人生における彩りの一部にしてしまうしたたか女子であった。
　だからこそ峰夫妻一強であった峰ホールディングス一角にくい込んで圧倒的立ち位置を築いたのだ。


　萌衣は達也になすがままに翻弄されて辱められていく晶子を見ていて改めて女は脆いと実感する。
　なにを隠そう萌衣も達也に抱かれてたら女のアクメに堕ちてなにも考えられなくなってしまうのだ。
　それだけて肢体が開発されたことで得られる快楽は凄まじく、達也が紡ぎ出すアクメは女の理性や知性を飲み込んでしまい残るの肉体しかないのだ。
　まんぐり返しでクンニされている晶子を見て密かに濡れてしまう彼女もただの女なのだ。

　他所の男に女の本性を暴かれていく妻の姿を覗き見ながら興奮している夫。
　萌衣には夫婦という関係にはいろいろな形があるのだしみじみ思う。
　元カレの寝盗られ願望に翻弄されてハプニングバーなどでいろいろ経験したし、大好きな上司だった龍聖とハプニングバーに視察に行った時も生け贄にされてしまったのだ。
　単純に肢体目当てに口説いてくる男たちの方が分かりやすいし、今だからこそそれが正常だと思うのだ。
　しかしそんなノーマルな関係ほど長続きしないし、刺激がなさ過ぎで物足りないと思う自分もいるのだ。

　萌衣は「美あんず九州」に参加して「会」の多くの夫婦に出会ったが、ノーマルな夫婦ほどセックスレスであったり仮面な関係であったり挙げ句の果てに不倫まみれであったりするのだ。
　それが夫の寝盗られ願望症候群に起因する夫婦交換を盛んに楽しんでいる夫婦たちは真逆に夫婦がお互いを見つめ合ってずっと男と女の関係である夫婦関係を成立させている実態にいろいろ考えさせられるのだ。
　龍聖と晶子の夫婦関係に萌衣はいつの間にか深入りしすぎたと思うのだが、龍聖を好きな気持ちは揺らがないし彼には幸せになって欲しい気持ちも強いのだ。

　それが妻晶子への共感に繋がっていく。
　１０年間もセックスレスになった夫に未だ固執するのは彼女が龍聖を本気で愛しているからに他ならない。
　達也とのセックスによる吸引力は凄まじく普通女はあっという間に不倫妻に堕ちてしまうのだ。
　萌衣は彼に会う前に彼の妻恋としっかりオンナ同士の構築していたから割り切れた部分が大きいのだ。
　もしそれが無ければ達也は怖いと思ったのも本心だ。
　そんな女、妻の事情を考えもしない龍聖。
　萌衣は同じ男性を好きになってしまった女として晶子を助けないと、結果的にこの夫婦は駄目になると考えたのだった。

　この時とばかり種付けプレスで晶子を蹂躙する達也は典型的な寝取り野郎だ。
　萌衣ですら彼の立派な逸物が晶子の肢体を貫いていく情景に目が釘付けになるほどだ。
　ＡＩ眼鏡の提供する視覚と聴覚はもはやアダルトビデオを越えているレベルだ。
　実際に彼は部下の妻を寝取って略奪した男だが、彼には桁違いの財力と抜群の容姿があるのだから一番夫婦交換など火遊びしてはいけない相手だと思う。
　妻が正真正銘のピンチに晒されているのに夫の股間はあり得ないほど大きくなっているのだ。


　龍聖は目の前の情景に圧倒されていた。
　ずっと妻の浮気を疑っていたし、それを想像することで奇妙な興奮を覚えていたのも事実だ。
　あの精子の匂いがする下着は決定的な証拠でもあるにもかかわらず、今までスルーしてきたのは彼の性的倒錯が原因でもある。
　そんな中で部下の若い萌衣と肉体関係が出来てしまうことで迷走していく。
　彼が知らなかった妻の姿に感動している自分に戸惑いがある。
　そしてそんな妻が愛おしくて堪らないのだ。

　物心ついた頃から生粋のオナニストであり、結婚以前からリアルなセックスより自慰行為が好きなタイプであったから、妻から告白されなかったら結婚しなかった男であったろう。
　かけがえない息子龍哉を生んでくれて彼を父親にしてくれたこと、晶子には感謝してもしきれないのだ。
　一人息子の誕生で子作り終了を決めた時から、龍聖にとって夫婦関係は変わってしまったのだ。
　彼は夜の夫婦生活から本来の自慰の世界に閉じこもっていくのだった。

　そんな彼でも出産後１年ほど経ってから妻から夜の夫婦生活を再開したいと誘われた記憶はあるのだった。

　夫として最低限の義務を果たしてこなかったという自覚もあるし、アダルトビデオもたくさん見てきて作り話でもその手の知識はそれなりあるから妻を責める資格は自分に無いと思うのだ。

「晶子　そんなに　そのデカマラ　イイのか？」


つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2025年4月13日掲載
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