ずっと愛してます5
羅衣 作
第６話　美桜２


　圭太は告白して直ぐＯＫ貰えて有頂天だった。

　もうツーリングが楽しくて仕方がない。
　期待通り皆に「彼氏」になったと言ってくれる彼女が嬉しくて仕方がない。
　二人っきりになると甘えんぼにキャラ変する彼女のギャップにメロメロになってしまう。
　もうそうなるとガォーと跳びかってキスせずにはいられない。

　美桜は圭太がトラウマのように抱えている過去の失敗エピソードをことごとく覆していく。
　その結果、圭太が意識しないうちに彼の中でバイクより大きい存在になっていく。
　なにより仕事は彼女の方が多忙であり毎日自由に会えないという現実があり、会える時を大切にしないと不完全燃焼になってしまうからだ。
　急激に惹かれ合う若い２人にとって、それは余計燃え上がる逆境でもある。

　バイクツーリングカップルは、車と違い男の気苦労は計り知れない。
　女の子は本心では同意しているはずなのに、建前上はラブホテルに立ち寄ることをはぐらかして簡単に同意してくれないのだ。
　バイクの場合は、彼女も自ら運転して同行してくれないと駄目なのでそこが辛い。
　圭太にすれば、１度部屋に入ったらむしろ彼女の方が積極的でエロいのに毎回繰り返される無線での攻防に不満だった。

　その日は美桜が行き先で多少ご機嫌斜めになってしまったから、いつも以上に苦労した。
　仲直りの意味合いもあるが、１度ステディな関係になってしまうと男はデートしたらセックスしたいのだ。
　今日を逃すとまた１週間以上会えないかもしれないと思うとますます焦る。
　無線トークで懇願ぽくなってしまう。

美桜　「もう・・・そんなに寄りたいの？」
圭太　「寄りたい　美桜とキスしたい」
美桜　「・・・私　どこにも行かないよ」
圭太　「今日も寄りたいし　いつも寄りたい」
美桜　「あはぁっ　そうなんだ」
　　　「分かった　こないだ寄ったとこ行こうか」
圭太　「うん　そうしよ」


　美桜も実は我慢しているのだ。
　圭太に惹かれすぎで早々に肉体関係になってしまったことを後悔しているのだ。
　彼には軽い女だと思われたくないし、結婚も意識しているから女としてブランディングしたいのだ。
　ただ彼とのセックスが良すぎで次第に化けの皮が剥がれるような気がして戸惑っていたのだ。
　美桜もそれなりのセックス経験はあるし、決して嫌いではないからセックスにのめりこんでいく自覚があるから尚更だ。

　圭太はかなり情熱的なタイプで、美桜は過去経験したことがないほどベットで乱れてしまうのだ。
　肢体に残る彼の残像に戸惑う。
　愛されていると感じるが、まだ付き合い始めて数ヶ月なのに肉体関係が深くなるのが早過ぎて怖いのだ。
　女の本能だ。
　このまま彼にドップリ依存してしまったら、もし別れたりして彼を失ったら立ち直れず生きていけないと感じるのだ。
　過去の恋愛では感じてこなかった感覚なのだ。

　それなのに彼は逢うたびに肢体を求めてくる。
　美桜にとっては一時の快楽だけではなくて、次第に彼に侵蝕されていくと感じるから悩ましい問題なのだ。
　そんな状況だから１度愛し合い始めてしまうと、彼女自身も歯止めがかからないで積極的になってしまう。
　もう自分が自分でなくなってしまうし、彼の気持ちような顔を見るとどこまでも尽くしたくなってしまう。


　そんな２人は部屋に入ると、早々に抱き合ってキスしてしまう。
　ギュッと抱きしめてキスしてくれたら、彼女の不機嫌などたちまち消失してしまう。
　美桜はいろいろ考えても、もう肢体が彼を求めてるのだから抱き合ったら総崩れだ。

　圭太は美桜と２人っきりなると獣になってしまう。
　こんな感覚は初めてなので既に彼女への執着は本人は意識していないが、かなり強くなっていたのだ。
　だから素面では言わないだろう言葉で求愛しまくる。
　もう遠慮なんてしないで、彼女のライダースーツファスナーを一気に押し下げる。

美桜　「もう　あっあぁぁぁあん♡」
圭太　「愛してるッ　もう俺　狂いそうなんだ」
美桜　「あっあぁ　はやいぃえっそぉれっあん」
圭太　「汗掻いてるやん　ぬごうッ　ほらぁ」
美桜　「あっいやぁん　舐めないでぇ　あっあぁ」
　　　「もおぉぉぉッ　あっいやぁ　あっあっ」
　　　「そこぉだめっ　あん　弱いのぉあっだぁめ」

　圭太は彼女をベットに押し倒しライダースーツに手を侵入させて愛撫しまくる。
　どんどんはだけていくスーツが超エロい。
　汗ばんだ豊かな膨らみの谷間におもいっきり顔を埋めて舐め回す。
　もうこうなったら彼女は逃げる術は無い。
　首筋も舐め回して耳たぶも囓る。
　彼にとっては彼女の汗ですら大好物なのだ。
　
　美桜は毎度毎度失敗する。
　彼の性癖は嫌ってほど知っていたのに、入室して直ぐにキスに応じてしまうのだ。
　そのままセックス始まってしまい、汚れた身体をおもいっきり楽しまれてしまうのだ。
　それは嫌だと思うのに、それで興奮して一緒に燃え上がってしまうことに気がついて戸惑いが生じて、ハッキリ拒絶できない自分に負けてしまうのだ。

　そもそもこんなに肢体を舐めてくる男性は初めてで、動揺が先にあったのだ。
　文字通り舐め尽くされて、足の指の間までペロペロされてしまうと全く知らなかった性感に目覚めてしまう。
　初めは彼の唾液のニオイが全身に付くので気持ち悪いと嫌々していたのだが、彼の愛情が肢体に染みこむように感じていく感覚に次第に悦びに変わっていく。
　もう恥ずかしいと思う肢体のニオイ全てを知られて舐め尽くされると、もう肢体が勝手に快楽を貪り始める。

　恋愛ゲームでは美桜が完勝であったが、ベットでの戦は圭太が圧倒しつつあった。
　女の子同士のディープな恋愛トークでは、男たちが想像していないほど赤裸々にベットで経験したことが話題になる。
　そしてその会話においても女同士はマウンティングが行われるのだ。
　性感帯ひとつとっても奥で逝く経験した女は上位に立つし、潮噴き経験有無も同様だ。

　美桜の場合、なんとなく奥が目覚めつつあったところに圭太に出会ったので、彼にポルチオ性感帯を開発されてしまうと病みつきになってしまう。
　１度目覚めてしまうと脳が溶けてしまいそうな快楽が彼女を支配していくと同時に彼への依存度を強くしていくことになる。
　その上、彼は歴代彼氏と比較して精力が突出していて正直これが絶倫なんだとビックリしていたのだ。

　平気で２回戦３回戦と求めてくる彼に、初めこそ困惑していたが、今では奈落の底に堕ちるほど快楽を貪っている状態だったのだ。
　もう彼女が予備知識として持っていた次元を超越していて、女としての快楽の扉に興味津々夢中であった。
　そうなると彼女は女丸出しになり、彼との関係を決定的にしたいとエゴ丸出しだ。

　次第に結婚を彼に匂わし始める。
　その方策は、遠慮無く先輩である紗弥や彩佳の知恵を借りることに遠慮が無い。
　そして年下であるが徹という超イケメンの妻になった敬子という参謀が味方に付いていたのだ。
　長すぎる濃厚な肉体関係は短期決戦なのだと恋愛偏差値の高い美桜は本能で理解しているし、敬子も同意見だったから女の攻勢はあの手この手で繰り出されていくことになる。


　この展開に、徹は苦笑いしながら積極的に関与する。
　彼にすれば美桜に興味津々だったから、是非二人には結婚して欲しかったのだ。
　もちろん自身の願望のためでもあるのだ。
　徹はある意味妻である敬子の女としての共感をしたたかに利用した形であるが、不思議なほどに敬子に限らず多くの妻達を味方にしてしまう天性スケコマシ面目躍如であった。
　もはや彼は子供ではない。
　自身の社会的立場そして「会」における役割など理解している。

　心の片隅には絶対的な女神である郁美への想いは息づいているが、自身の絶対的なパートナーは敬子で嘘偽りなく一番愛していると自覚している。
　敬子と２人で郁美の期待に応えるのが彼の夢だ。
　つまりは自分達の目指す理想の夫婦像は郁美健二夫婦なのだ。
　普通の道徳観では異端であろうが、男と女は共に経験無しでは生涯知ることが出来ない領域があり、それを少しでも多くの人達に知ってもらいたいという想いだ。

　郁美健二夫妻は、その実践をしてきた存在であり、それを継承し次世代を担うのが敬子徹夫妻なのだ。
　健二が郁美へのリスペクトを抱くのと同じく、徹も敬子には特別な想いが息づいているのだった。
　敬子は郁美のように「魔性」の遺伝的資質を持たない女性であるが、郁美から溢れんばかりの愛情を受けて既に「魔性」持つ女性達を凌ぐキャパシティを持つまでに成長した稀な存在だ。
　だからこそ徹は敬子を守ることを郁美から託されたのだと自覚していた。


　敬子は他人の恋愛事情が興味津々で色々と関わることが楽しい盛りであり、紗弥から手伝ってあげてと言われたから積極関与しているところもあったのだ。
　早々に人妻になってしまったこともあり、他人ながらリアルな恋愛話は大好物なのだった。
　そうこうするうちに美桜がみるみる美しくなっていく過程を目の当たりにして感動一塩だった。
　ただ唯一の気かがりが夫である徹の美桜を見る目であったが、小泉圭太があまりにイケメン男子であって彼女自身にも不純な気持ちが芽生えているからスルーしてしまったのだった。

　敬子は自身の中で目覚めた強烈に欲張りなオンナな面に、かつて郁美の驚かされた行動の数々を重ねて昇華しつつあった。
　急速に変貌を遂げていく肢体を駆け巡る快楽が暴走していくことをいつしか楽しいと思い始めていた。
　郁美が自身に伝えたいとずっと話してくれたことを追体験して理解したのだ。
　それは敬子自身が女であるとこを楽しむことに他ならない。
　その目覚めによって彼女は男たちを可愛いと感じるようになったのだが、それは郁美が以前から体現していた境地に他ならない。

　だがそんなオンナになってしまうと、それは道徳的にも常識的にも外れた悪女になることに意味する。
　郁美が健二という夫を必要とした様に、敬子にとっては徹は存在ありきなのだ。
　お互いが必要不可欠な存在である夫婦なのだ。
　そんな若夫婦から見て、美桜と圭太というカップルは素質十分な存在であって是が非でも自分達の世界に引き込みたいと思っていた。
　敬子と徹は会話で別に相談した訳ではないが、２人共に結果的に不純な動機が理由でありながら、その本質は勧誘そのものだったのだ。


　惹かれ合う若いカップルにとって、敬子と徹という若夫婦の存在は強烈な誘惑となる。
　自然と旅行などの行楽を一緒にする機会が増えると、究極な理想的な若夫婦像を見せつけられるのだ。
　美桜にすれば身近に憧れの紗弥真也夫婦もあるから、急激に膨れ上がる結婚願望に自身で戸惑う。

　そんな美桜に敬子は女は結婚したいと思った男を見つけたときは遠慮したら駄目、一気に捕まえてしまうのが勝利の鉄則だと煽りまくる。
　美桜はまだまだ仕事が多忙だし、まだ社会人として駆け出しだから迷いがあるから躊躇がある。
　そこに敬子はトドメの言葉を言う。

「私達　当時お互い学生だったけど」
「あのタイミング逃していたら」
「今こうしていないと思う」
「男と女って　お互い人生で向き合える瞬間って」
「束の間なの」
「その組み合わせって　多分　次って無いと思う」
「だって　徹以上の人　今後出会える気しないし」
「彼が居るから　私　最高に幸せだよ」
「女にとって　そんな人に出会えるなんて」
「それって　極めて幸運なのことだと思うの」
「美桜さん　どうなの？」
「圭太さん 美桜にとって　どんな存在かだよ」


　敬子は徹と協力して圭太が美桜にプロポーズするように暗躍していくことになる。
　徹も敬子と同様に圭太に惚れた女は逃すなと煽りまくる。
　美桜のような綺麗な女の子への他の男たちのアプローチは、自分達男が思う以上に日常的に凄いんだぞと脅かすことも忘れない。
　ただ徹の妻である敬子のモテぶりを何度も見せつけられているだけに、その説得力はかなりのものだった。
　圭太にすれば出会ってまだ数ヶ月だし、彼女がどれほど仕事に情熱を傾けているかも理解しているだけに躊躇がある。
　そこに徹はトドメの言葉を言う。

「今はお互い出会って　一番盛り上がってる時」
「そして限られた時間が　余計燃えるんだよ」
「でも次第にセックスばかりになってないかい？」
「恋人というよりセフレぽくなってきてないか？」
「それでいいのか？」
「彼女のこと　独り占めしたいんじゃないか？」
「彼女の仕事応援する気持ちは分かるけど」
「男と女って　お互い人生で向き合える瞬間って」
「一瞬だと思う」
「タイミング間違うと　ボタン掛け間違えて」
「元に戻れなくなってしまうよ」
「恋愛に　タラレバなんて　虚しいすれ違いの記憶」
「つまりは　次って無いと思う」
「敬子とは　お互い学生の時に出会った」
「まだ敬子大学生だけど　逃しちゃいけないと思った」
「だって　敬子以上の人　今後出会える気しないし」
「彼女が居るから　毎日　最高に充実してる」
「男にとって　そんな女性に出会えるって」
「稀なことだと感じている」
「だから圭太には後悔して欲しくない」
「彼女こと考えるなら　決して早くない　今だよ」


　数ヶ月後にはかなり緊張した圭太の姿が美桜の実家にあった。



　彼にすれば半年ぐらい前には当時の彼女に振られながら、社会人としてスタートきった苦い時期だったのだ。
　それが美桜に出会ってあれよあれよと急展開して、気がつけば一大決心して人生の節目を迎えようとしているのだ。
　別に今更後悔しているのではない。

　両手両足の指の数では足りないほどの「彼女」という存在を経験したが、美桜ほど理想に近いというか理想そのものと言って良い存在は初めてだ。
　徹が言うように彼女を手放したら一生後悔するのは間違いないと確信している。
　それでも社会人になったばかりで、早くも人生の伴侶を決めるということに迷いが無いと言ったら嘘になる。

　彼自身はモテる男だと多少なりとも自負もあるし、実際モテて彼女を作ることに苦労した記憶は無いのだ。
　ただ圭太は徹という存在に出会った。
　彼は妻帯者だが、見ていて呆れるほど女性にモテる。
　同じ職場の女性達からも支持率が高くて、彼と一緒に居るだけでなにかと優遇されて美味しい思いしたことは１度や２度ではない。
　徹の場合はモテるだけでなく女性の常に味方で優しくて驚くことだが、社内の女性社会にしっかり食い込んでいることだ。

　会社では未だ新人なのに女性スタッフ陣から支持されている徹の存在感は大きいのだ。
　設計事務所の社長夫人も建築士なのだが、その彼女からも露骨に寵愛されている。
　そんな存在がいると知ったことで、圭太はある意味心に余裕がなくなったのだ。
　徹のような男性がもし美桜の前に現れたら、あっさり奪われてしまうのではないかという強迫観念だ。
　実際、徹と美桜は思わず嫉妬してしまうほど仲が良くて、その距離感が気になってしまうのだ。

　もちろん友人として徹を信じる気持ちも大きいし、彼には敬子という正直羨ましい妻がいて彼女も美桜と仲が良いので無用な杞憂であるとは理解している。
　そんな感情もありながら、敬子の存在が気になっているという複雑な男の業が揺れ動くのだ。
　美桜もかなりの美人だが、敬子が纏う色香は年下とは思えない破壊力抜群なのだ。
　実際、彼女がアルバイトで働く高級倶楽部に連れられて遊びに行った際に、圭太の心は揺れ動いてしまったのだ。

　もちろん友人の妻であり、ちゃんと自制する気持ちもあるのだが、見たことが無い若妻の色香に羨望のまなざしを投げていたのだ。
　ただ敬子も夫である徹に匹敵するモテ女子であることをヒシヒシと感じたのだ。
　それだけに徹の言葉が重くのし掛かる。
　男と女の関係は簡単に引き剥がされてしまいかねないのだと感じたのだ。
　そこに敬子はトドメの言葉を言う。

「良いのかな？」
「美桜さん未だ仕事で頑張っている時間帯でしょ」
「徹と一緒に遊んでばかりいたら駄目よ」
「徹は何気に　私を心配で来てるだけだし」
「私　夜に　友人の為とはいえ」
「アルバイトして　彼に心配させちゃっているけど」
「これって　彼の妻だから出来るって感じ」
「彼が見守ってくれるから　私　揺らいだりしないの」
「女って　愛してくれる人が居ると強いのよ」
「逆に居ないと　糸が無い凧のようになっちゃう」
「美桜さん　美人さんだから油断したら後悔するわよ」
「これ友人として　女としての　アドバイスよ」


　美桜は過去の恋愛経験ではないほど圭太とのセックスに溺れていく自分に戸惑っていた。
　相性が良すぎるのか、没頭していく快楽に自分を見失ってしまいそうで日に日余裕が無くなりつつあった。
　それは彼への依存であり、同時に彼を失うことへの恐れが大きくなっていくのだ。
　仕事は多忙で休みも少なくて、彼と過ごす時間も限られているから彼が目移りしてまう可能性も小さくない。
　そんな感情を抱くのも初めての経験だった。

　もはや女の本能であろう。
　早々に美桜は圭太を生涯の伴侶にしたいと意識していたのだ。

　ただお互い社会人１年生であり彼が直ぐにそんな決断してくれるとは思えないし、ましてそんな話を自分から持ち出しても重い女だと思われるだけだと揺れていた。
　彼女の頼りは敬子徹夫妻が味方で居ることだった。
　敬子とはガールズトークで苦しい胸の内を共有して常にストレス解消していたのだが、彼女は全面協力を約束してくれて何かと動いてくれるのが救いだった。


　敬子は明快な目的意識があったのだ。


つづく
【前頁】/【次頁】
あなたのひと言が作者の励みとなり、新たな作品が生まれます。ご感想宜しくお願いします。
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2023年5月6日掲載
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